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神代 コウ

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司祭の過去と思い

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 しかし、確認させたところでどうやってその結果を知ろうというのだろうか。犯人を宮殿内に留めておきたくて外部との行き来を制限しているのに、一度外に出した人間を再び宮殿内部に入れてしまっては元も子もない話だ。

 だがクリスが言うには、それが警備や護衛の精査を通った伝言や手紙であれば内部の人間にも届くのだそうだ。

 「へぇ~、それってのは俺達にも出来るのか?」

 「どうだろう?出来るのかもしれないけど、判断するのは外の警備の人達や中の偉い人達だから、正確なことは僕にも・・・」

 「まぁそりゃそうか。クリスは司祭様からの頼まれごとをこなしてるだけだもんな」

 クリスの話を聞いてカルロスは、宮殿の外からどうやって中にいるマティアス司祭に報告するのかと尋ねたが、同じく話を聞いていたジルとレオンはそんな事よりも、クリスの語ったルーカス司祭の過去と思いに驚きを隠せなかった。

 「いや、今突っ込むところはそこじゃないだろ・・・。ルーカス司祭にそんな過去が・・・」

 「えぇ、驚きね・・・」

 二人が驚いていたのは、単純なルーカス司祭の過去にというよりも、彼のその話から事件の発端へと繋がったからだった。

 ルーカス司祭には、ジークベルト大司教を殺害する動機がある。そして昨日の早朝に遺体が発見されたという事件が起こる。無論、何も事情を知らない者からすれば、その話が直結しルーカス司祭が殺したという結論に至るのが普通だろう。

 「ルーカス司祭はどこに?」

 「宮殿の中で取り調べを受けてるとは思うけど・・・ごめん、僕もルーカス司祭とは会ってないんだ。だからどんな状態なのか何をしているのかは分からない。でも警備や護衛の人とは一緒にいると思う」

 レオンとジルの質問に答えたところで、クリスは二クラス教会の奥で調べたというルーカス司祭のことを報告しに行かねばならないと席を立ち始める。

 「カルロスの記憶が戻ったようで安心したよ。それじゃ僕はそろそろ資料をまとめて宮殿に報告へ行かないと・・・」

 「あぁ、ありがとうな!クリス。お前には恩が出来ちまったな」

 「恩だなんてそんな・・・。役に立てたようで何よりだよ」

 「引き止めて悪かったな。手伝い、頑張ってくれ」

 学校ではあまり接点のなかったレオンやジルに見送られ、クリスは忙しいながらも少し嬉しそうな表情をしていた。これまで彼の耳に届いていたのは、マティアス司祭に取り繕うことで学校の成績を工面してもらおうとしているのだという誤解と偏見からくる陰口ばかりだった。

 それが、学校の優等生である二人はクリスのことを全くそんな目で見ていないということが感じられて嬉しかったのだろう。

 三人と別れ、資料室を後にしたクリス。一方のレオン達はクリスから聞いた話を整理し、ルーカス司祭に関する各々の見解について意見を出し合っていた。

 「ルーカス司祭が大司教の悪事を知り、止めようとして殺した。普通に考えればそうなるよな?」

 「あぁ。だがクリスの言っていた宮殿の状況やマティアス司祭の使いの件を考えると、まだ犯人であると断定したわけじゃなさそうだ」

 「宮殿の中でも捜査が行われているようね。その容疑者の一人として、有力なのがルーカス司祭・・・。でも彼がそんな事をするような、感情に流されて行動するタイプには思えないけど」

 アルバ出身の者達や、シン達のように付き合いが浅い者達であっても、ルーカス司祭に抱くイメージは同じだった。動機こそあれど、殺人に手を染める人なのだろうか。

 「結局、人間の本性なんて分からねぇモンさ。周りから見えてるものなんて、表面的なものでしかねぇんだからよ」

 「これからどうするの?確かに少しずつではあるけれど、事件について情報が出てきたわね。このままクリスを尾行する?」

 「いや、今クリスを尾行したところで大した情報は手に入らないだろう。それよりもカルロスの記憶も戻った事だし、俺達が記憶を失うきっかけとなった演奏とその場所であるグーゲル教会を調べてみないか?」

 クリスを尾行したところで、宮殿の中へ入っていこうとそうじゃなかろうと恐らくこれ以上クリスから事件に関する情報は得られないだろう。二クラス教会からの失踪について問い詰めることも出来るかもしれないが、それをしたところで彼の警戒心を煽るだけで、余計な疑いをかけられかねない。

 「なぁ~、それよりよぉ」

 「どうしたカルロス?」

 「腹ぁ減らねぇか?何だか安心したら急に減ってきちまって・・・」

 「・・・・・」

 焦らず事件のことを少しずつ探っていこうとは決めたものの、カルロスの間の抜けた様子を見て呆れ顔をするジルとレオン。しかしここまでずっと気を張ってきた二人にも休息が必要だろう。

 この状況でなかなか言い出しづらかった事を代弁してくれたカルロスに、内心感謝しつつ三人はそのまま学校内に設けられている食堂へと向かい、腹ごしらえを済ませることにした。
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