1,416 / 1,646
記憶に眠る一日
しおりを挟む
先に司令室に入っていたニノンが、前もってオイゲンに話をつけておいてくれたお陰で、一行が避難するスペースを確保する事ができた。荷物を持って移動する中、一行は見覚えのある顔を目にした。
「あの人達って確か・・・」
「歌手のカタリナと、アルバの音楽監督のフェリクスだ。彼らも避難していたんだな」
カタリナはバッハ博物館にて、音楽学校の生徒であるジルを逃すために警備隊によって、重要参考人として宮殿へ連行されていた。
フェリクスも同じく、ジークベルト大司教との面会後、アルバの音楽監督を降板させられると言うことをジークベルト本人から言い渡されている。彼を殺した動機があるとしたら、最も候補に上がるであろう名前がフェリクスだった。
無論、彼は自分の身の潔白を主張したが、それを証明することが出来ておらず、カタリナと同じく宮殿へと連行されていた。
「彼らがここにいると言う事は・・・」
「あぁ、お察しの通り宮殿にいる要人達の元へは、それぞれ教団の使いが向かっているそうだ。希望者はこの司令室で匿うと」
ニノンの会話を聞きつけ、司令室に残っていたケヴィンがどこに隠れていたのか突然現れ、話に割って入ってきた。
「勿論、それだけではありませんよ?使いの方々には、私の持ち込んだカメラを置いてきて頂くよう頼んであります」
「カメラですか?」
「えぇ、レディには少し怖い代物かもしれませんが、カメラは映像だけでなく音声や振動も視覚化させることが出来るんです」
「振動?」
ここでケヴィンがハッとした表情をすると、何かを隠すかのように言葉を濁し、カメラの説明を終えてしまった。彼が最後に口にした意味深な単語として、“振動“と言う言葉が印象的だった。
彼の事だから、無駄に備え付けられた機能ではないことだけは確かだろう。となれば、犯人を特定する上で重要になってくるのは、何らかの振動ということになる。
だが、シン達一行には振動というものに心当たりのあるものは無かった。ケヴィンはシン達にも内緒で何らかの調査を行なっている。もしかしたら司令室に連れて来られたことにも、何か関係しているのだろうか。
ケヴィンはシン達から質問をされる前に、仕事があるからとその場を離れて行ってしまった。
「怪しいね・・・」
「あぁ、何か隠してるに違いない。俺達にも言えないことか?」
一行は自分たちのために設けられた避難スペースに荷物をまとめると、そそくさとオイゲンの元へ戻って行ったケヴィンの姿を目で追っていた。その視線を遮るように前に立ったニノン。どうやら彼女は、シン達にとあるお願いがあって司令室に着いて来て貰ったのだと語る。
「さっきもケヴィンから聞いた通り、宮殿内は監視カメラや彼の持ち込んだ機材を使って、犯人の動きや反応を探っている」
「犯人が分かったんですか!?」
「いや、それまだ分からない。ただ宮殿内にいる可能性もあるから調べてるんだ。そうじゃない!私が貴方達に頼みたいのは、その機材が宮殿の外で機能しない事に関して調べる為に、手を貸して欲しいという事だ」
ニノンの話では、宮殿内では正常に機能しているケヴィンのカメラだが、街の様子を確かめに行こうとしたところで、何らかの妨害を受け電子機器が機能を停止してしまったのだという。
「ジャミングって事か?」
「ジャミング・・・?」
「あぁ、妨害電波によって通信機器などの電波を混信させて使い物にならなくするって事だ」
「・・・分からない。だが現象としてはそれに近い・・・らしい」
「らしい?」
話を聞いていると、どうやらニノンは機械に疎く、そういった言葉や話は全くと言っていいほど分からないらしい。しかし、それなら何でそのニノンが街の様子を見にいく事になったのか。
それを尋ねると、彼女は深刻そうな表情へと変わり、外で起きている事態について詳しく話し始めた。彼女が街の調査を任命される前、当然ながら教団の護衛隊やアルバの警備隊によって、先に調査が行われていたのだという。
しかし、宮殿の外にいた者達は軒並みその姿を消しており、調査に向かった者達もそれっきり帰って来ないのだという。それだけ外で何が起きているのか不明であり危険であることを意味していた。
「おいおい、そんな危ないところに女子供を連れて行こうってのか?」
「安心してくれ。流石に子供の手を借りる程落ちぶれちゃいない。男性陣のどちらかか、或いは貴方でも・・・」
ニノンが同行者を誰にするか、当事者であるシン達と話し合っていると、そこへ彼らの失われた記憶にも無い新たな展開が起こり始める。それは体調不良を訴えていたブルース・ワルターのところへ向かっていた使いが戻ってきた事によって知らされる事になる。
「あの人達って確か・・・」
「歌手のカタリナと、アルバの音楽監督のフェリクスだ。彼らも避難していたんだな」
カタリナはバッハ博物館にて、音楽学校の生徒であるジルを逃すために警備隊によって、重要参考人として宮殿へ連行されていた。
フェリクスも同じく、ジークベルト大司教との面会後、アルバの音楽監督を降板させられると言うことをジークベルト本人から言い渡されている。彼を殺した動機があるとしたら、最も候補に上がるであろう名前がフェリクスだった。
無論、彼は自分の身の潔白を主張したが、それを証明することが出来ておらず、カタリナと同じく宮殿へと連行されていた。
「彼らがここにいると言う事は・・・」
「あぁ、お察しの通り宮殿にいる要人達の元へは、それぞれ教団の使いが向かっているそうだ。希望者はこの司令室で匿うと」
ニノンの会話を聞きつけ、司令室に残っていたケヴィンがどこに隠れていたのか突然現れ、話に割って入ってきた。
「勿論、それだけではありませんよ?使いの方々には、私の持ち込んだカメラを置いてきて頂くよう頼んであります」
「カメラですか?」
「えぇ、レディには少し怖い代物かもしれませんが、カメラは映像だけでなく音声や振動も視覚化させることが出来るんです」
「振動?」
ここでケヴィンがハッとした表情をすると、何かを隠すかのように言葉を濁し、カメラの説明を終えてしまった。彼が最後に口にした意味深な単語として、“振動“と言う言葉が印象的だった。
彼の事だから、無駄に備え付けられた機能ではないことだけは確かだろう。となれば、犯人を特定する上で重要になってくるのは、何らかの振動ということになる。
だが、シン達一行には振動というものに心当たりのあるものは無かった。ケヴィンはシン達にも内緒で何らかの調査を行なっている。もしかしたら司令室に連れて来られたことにも、何か関係しているのだろうか。
ケヴィンはシン達から質問をされる前に、仕事があるからとその場を離れて行ってしまった。
「怪しいね・・・」
「あぁ、何か隠してるに違いない。俺達にも言えないことか?」
一行は自分たちのために設けられた避難スペースに荷物をまとめると、そそくさとオイゲンの元へ戻って行ったケヴィンの姿を目で追っていた。その視線を遮るように前に立ったニノン。どうやら彼女は、シン達にとあるお願いがあって司令室に着いて来て貰ったのだと語る。
「さっきもケヴィンから聞いた通り、宮殿内は監視カメラや彼の持ち込んだ機材を使って、犯人の動きや反応を探っている」
「犯人が分かったんですか!?」
「いや、それまだ分からない。ただ宮殿内にいる可能性もあるから調べてるんだ。そうじゃない!私が貴方達に頼みたいのは、その機材が宮殿の外で機能しない事に関して調べる為に、手を貸して欲しいという事だ」
ニノンの話では、宮殿内では正常に機能しているケヴィンのカメラだが、街の様子を確かめに行こうとしたところで、何らかの妨害を受け電子機器が機能を停止してしまったのだという。
「ジャミングって事か?」
「ジャミング・・・?」
「あぁ、妨害電波によって通信機器などの電波を混信させて使い物にならなくするって事だ」
「・・・分からない。だが現象としてはそれに近い・・・らしい」
「らしい?」
話を聞いていると、どうやらニノンは機械に疎く、そういった言葉や話は全くと言っていいほど分からないらしい。しかし、それなら何でそのニノンが街の様子を見にいく事になったのか。
それを尋ねると、彼女は深刻そうな表情へと変わり、外で起きている事態について詳しく話し始めた。彼女が街の調査を任命される前、当然ながら教団の護衛隊やアルバの警備隊によって、先に調査が行われていたのだという。
しかし、宮殿の外にいた者達は軒並みその姿を消しており、調査に向かった者達もそれっきり帰って来ないのだという。それだけ外で何が起きているのか不明であり危険であることを意味していた。
「おいおい、そんな危ないところに女子供を連れて行こうってのか?」
「安心してくれ。流石に子供の手を借りる程落ちぶれちゃいない。男性陣のどちらかか、或いは貴方でも・・・」
ニノンが同行者を誰にするか、当事者であるシン達と話し合っていると、そこへ彼らの失われた記憶にも無い新たな展開が起こり始める。それは体調不良を訴えていたブルース・ワルターのところへ向かっていた使いが戻ってきた事によって知らされる事になる。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる