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月光写譜とバッハとの関与
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「月光写譜って・・・あのバッハが書き写したっていう楽譜か?」
「あれだけこの街が大切にしている物だけが戻されてないなんてあるかしら・・・」
「大切だからまだ宮殿にあるとかじゃないのか?それにバッハの遺物がアルバにあるってのは、音楽界隈じゃぁ周知の事実じゃねぇか。仮にそんな物を盗んだところで直ぐに足がついちまうだろ」
ジルはカルロスの意見を聞いて、同じ発想に至ったことに驚きつつも、その目は確信めいたものへと変わっていく。それにカルロスの言うようにバッハの当時の遺品ともなればその価値は高く、高額で照り引きされそうなものだが噂になれば直ぐに足がついてしまう。
何よりもWoFの世界に広く布教が進んでいると言われている教団が関与しているともなれば、裏の情報にも詳しいはず。とてもではないが他国や組織、個人の手に渡りその所在を断つなどほぼ不可能に近い。
勿論カルロスの言うように大事だからこそ未だに宮殿にあるとも考えられるが、どうにも腑に落ちないといった様子のジル。彼女にはどうしても事件の犯人に関係している、或いは教会で行われている怪しい儀式に用いられているのではないかと思えてならなかったのだと、カルロスに語ったのだ。
「何だってそんな風に思うんだよ・・・?」
「宮殿で起きたっていう大司教様の殺人事件、それと同時期に起こり始めた異変と教会での不審な演奏会。それに街に彷徨う謎の人物に、不自然に消えた月光写譜・・・。これらが何の繋がりもないただの偶然だなんて思える?」
「そう言われると確かに・・・。だが楽譜なんて盗んで何になるんだよ?」
「それが分かれば苦労しないわ。ただその線で調べてみるのも決して無駄ではないと思うの。それに・・・」
ジルが疑問に思っている事については、博物館で聞いたカタリナの話が引っ掛かっていたからだった。彼女曰く、カタリナとバッハは遠い血縁関係にあるのだそうだ。
何故あの時、カタリナがジルに対してあんな話をしたのかは分からないが、バッハに関係するものが無くなっている事から、カタリナが何らかの形で事件か犯人に関与しているのではないかと不安になっていたのだ。
自身の足りない部分を見極め、音楽家としての先輩としてアドバイスをくれたり、誰にも話さなかったような話をしてくれたりと、心を開いてくれた憧れの存在である彼女が、今アルバで起きている事件を調べれば調べるほど関係している可能性が出てくることに、何とかしてカタリナが事件とは無関係だと言える証拠が見つからないかと探している。
それが今のジルの中にある、事件の調査に対するモチベーションの一つであった事に変わりない。
「兎に角、折角ここまで来たんだから、月光写譜の内容について調べてみましょう。誰でも見学できる物なんだから、その内容についての説明も用意されているはずよ。カルロスは月光写譜の内容について詳しくない?」
「そりゃぁ名前とか存在自体は知ってるけどよぉ・・・。興味でも持ってないと詳しく知りたいなんて思うものでもないだろ?お前こそ何も知らないのか?」
「私も同じようなものよ。知識としては認知してるけど、それがどんな物でどんな内容が記されているのかなんて思い出せないわ」
有名な物だが詳しくは知らない、という事はないだろうか。有名な名所や人物、歴史ある建造物や骨董品など。誰しもがその歴史について一度は名前や写真などといったものを見たことはあるが、詳しい内容については全く覚えていないという事。
アルバの音楽学校でも当然バッハの歴史や作曲など、授業や練習などでも楽譜の模造品を用いて習ったことはあるが、あくまでそれは模造品であり、実際の代物に記されているような、当時のバッハが書き込んだと思われるものは省かれてしまっていた。
故にカルロスの言うように、余程興味でもない限り博物館へ行き調べてみようなどという風には思わないだろう。これは地元に住んでいるからという理由もある。
他国や他所から来た観光客などからしたら、見て回りたいと思うものかも知れないが、いつでも見られるというものほどあまり興味をそそられるものではなかったのだ。
ただ二人の予想通り、博物館の月光写譜が展示されていた場所には、音楽に詳しくない人にでも分かりやすいように簡単な言葉でまとめられた紹介文が記されていた。
しかしそれは音楽学校の優秀な生徒である二人からした、当然知っているような内容しか書かれてなく、新たに分かった情報といえば、その楽譜に記されている曲くらいだった。
「思っていた通りの情報しかないな・・・」
「分かってはいたけど、これだけじゃ・・・。もっと重要な事があるかもしれない。普段入れないところにも行ってみましょう」
「おいおい、でも鍵が掛かってるだろ?どうやって入る気だよ?」
「鍵の場所なら知ってるわ。以前来た時にカタリナさんが教えてくれたの」
宮殿の物品の片付けに参加していたジルは、カタリナから博物館の鍵の位置もその時に教えてもらっていた。しかしその事もまた、彼女が事件に関与しているのではないかという思いを強める要因にもなっていた。
「あれだけこの街が大切にしている物だけが戻されてないなんてあるかしら・・・」
「大切だからまだ宮殿にあるとかじゃないのか?それにバッハの遺物がアルバにあるってのは、音楽界隈じゃぁ周知の事実じゃねぇか。仮にそんな物を盗んだところで直ぐに足がついちまうだろ」
ジルはカルロスの意見を聞いて、同じ発想に至ったことに驚きつつも、その目は確信めいたものへと変わっていく。それにカルロスの言うようにバッハの当時の遺品ともなればその価値は高く、高額で照り引きされそうなものだが噂になれば直ぐに足がついてしまう。
何よりもWoFの世界に広く布教が進んでいると言われている教団が関与しているともなれば、裏の情報にも詳しいはず。とてもではないが他国や組織、個人の手に渡りその所在を断つなどほぼ不可能に近い。
勿論カルロスの言うように大事だからこそ未だに宮殿にあるとも考えられるが、どうにも腑に落ちないといった様子のジル。彼女にはどうしても事件の犯人に関係している、或いは教会で行われている怪しい儀式に用いられているのではないかと思えてならなかったのだと、カルロスに語ったのだ。
「何だってそんな風に思うんだよ・・・?」
「宮殿で起きたっていう大司教様の殺人事件、それと同時期に起こり始めた異変と教会での不審な演奏会。それに街に彷徨う謎の人物に、不自然に消えた月光写譜・・・。これらが何の繋がりもないただの偶然だなんて思える?」
「そう言われると確かに・・・。だが楽譜なんて盗んで何になるんだよ?」
「それが分かれば苦労しないわ。ただその線で調べてみるのも決して無駄ではないと思うの。それに・・・」
ジルが疑問に思っている事については、博物館で聞いたカタリナの話が引っ掛かっていたからだった。彼女曰く、カタリナとバッハは遠い血縁関係にあるのだそうだ。
何故あの時、カタリナがジルに対してあんな話をしたのかは分からないが、バッハに関係するものが無くなっている事から、カタリナが何らかの形で事件か犯人に関与しているのではないかと不安になっていたのだ。
自身の足りない部分を見極め、音楽家としての先輩としてアドバイスをくれたり、誰にも話さなかったような話をしてくれたりと、心を開いてくれた憧れの存在である彼女が、今アルバで起きている事件を調べれば調べるほど関係している可能性が出てくることに、何とかしてカタリナが事件とは無関係だと言える証拠が見つからないかと探している。
それが今のジルの中にある、事件の調査に対するモチベーションの一つであった事に変わりない。
「兎に角、折角ここまで来たんだから、月光写譜の内容について調べてみましょう。誰でも見学できる物なんだから、その内容についての説明も用意されているはずよ。カルロスは月光写譜の内容について詳しくない?」
「そりゃぁ名前とか存在自体は知ってるけどよぉ・・・。興味でも持ってないと詳しく知りたいなんて思うものでもないだろ?お前こそ何も知らないのか?」
「私も同じようなものよ。知識としては認知してるけど、それがどんな物でどんな内容が記されているのかなんて思い出せないわ」
有名な物だが詳しくは知らない、という事はないだろうか。有名な名所や人物、歴史ある建造物や骨董品など。誰しもがその歴史について一度は名前や写真などといったものを見たことはあるが、詳しい内容については全く覚えていないという事。
アルバの音楽学校でも当然バッハの歴史や作曲など、授業や練習などでも楽譜の模造品を用いて習ったことはあるが、あくまでそれは模造品であり、実際の代物に記されているような、当時のバッハが書き込んだと思われるものは省かれてしまっていた。
故にカルロスの言うように、余程興味でもない限り博物館へ行き調べてみようなどという風には思わないだろう。これは地元に住んでいるからという理由もある。
他国や他所から来た観光客などからしたら、見て回りたいと思うものかも知れないが、いつでも見られるというものほどあまり興味をそそられるものではなかったのだ。
ただ二人の予想通り、博物館の月光写譜が展示されていた場所には、音楽に詳しくない人にでも分かりやすいように簡単な言葉でまとめられた紹介文が記されていた。
しかしそれは音楽学校の優秀な生徒である二人からした、当然知っているような内容しか書かれてなく、新たに分かった情報といえば、その楽譜に記されている曲くらいだった。
「思っていた通りの情報しかないな・・・」
「分かってはいたけど、これだけじゃ・・・。もっと重要な事があるかもしれない。普段入れないところにも行ってみましょう」
「おいおい、でも鍵が掛かってるだろ?どうやって入る気だよ?」
「鍵の場所なら知ってるわ。以前来た時にカタリナさんが教えてくれたの」
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