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奏者達の到着
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彼の離脱も考えると、その後の宮殿内の探索はより効率的に行わなければならない事が予想される。その点に関しては、宮殿内の構造に詳しいマティアスとクリスの消失は、今の彼らにとって痛手だったとも言える。
多少なりとも敵の感知が可能なケヴィンを最後方に配置しながら全体をカバーし、敵の襲撃にはオイゲンが臨機応変に対応し屋上へとやって来た一行。
先頭のオイゲンが扉を開けて外へと飛び出していくと、そこにはそこら中の壁や床に弾痕が散りばめられ、宮殿の外壁を削りながら戦ったのだろうと思われる、建物の破片が撒き散らされた荒れた戦場が広がっていた。
少し遅れてやって来た一行も、屋上の荒れた様子に驚いた表情を浮かべながら、周囲を見渡しブルースの言っていたバッハの一族の霊であるアンブロジウスと、それと戦うミアとニノンの姿を探す。
しかし一見して彼らの周りに、何かが動くような気配は感じられない。
「な・・・何だこれ・・・!」
「おいおい・・・、まさかもう勝負がついちまったって事ぁねぇよな!?」
最初に口を開いたレオンとカルロス。率直な感想としては皆同じような事を思い浮かべていただろう。だがその時は直ぐに訪れた。次に誰かが口を開こうとした瞬間、それまで視界に映らなかったモノが彼らの前に現れたのだ。
それは彼らにとっても記憶に新しいモノであり、アルバに住む者なら誰しもが慣れ親しんでいたモノ。今回の事件が起こるまでは、それがこんなに恐ろしいモノであるなどと思いもしなかった、音を中に閉じ込める“シャボン玉”だったのだ。
何もないところから急に現れたシャボン玉は、僅かな空間に歪みと光の反射でによりその姿を一行の前に晒した。それと同時に響き渡ったのは、数発の銃声だった。
何処からくる攻撃に備えていたオイゲンが、一行を覆うようなドーム状のバリアを展開する。シャボン玉に驚いていた一行は、オイゲンの咄嗟のスキルに身構え何事かと周囲への警戒を強める。
「銃声!?」
「大丈夫です、この銃声は味方のものッ・・・!?」
ケヴィンにはその銃声がミアのものであることが分かっていた。だが突然の攻撃にいっこうを落ち着かせようと声を掛けた彼の思惑を裏切るように、銃弾は周囲のシャボン玉幾つか破りながらオイゲンのバリアへと命中する。
「ケヴィンさん!銃弾がこちらへ飛んで来ましたが!?」
「ミアさんッ・・・!?一体何故・・・?」
すると、何者かが急接近して来ることに気が付いたオイゲンが、一行に注意を促す。
「気を付けろッ!何か来るぞ!」
彼の発した声とほぼ同時に、オイゲンの張るバリアの直ぐ側に司令室で彼らを襲撃したベルンハルトとよく似た格好をした霊体が姿を現し、その手に持ったヴァイオリンで音を奏でようとしていた。
「マズイッ!攻撃が来る!!」
オイゲンの脳裏に過ったのは、彼のバリアを透過して来るベルンハルトの音を使った攻撃だった。このままでは一行を守る為のバリアが、そのまま一行を一網打尽にする鳥籠になりかねないと。
直ぐにスキルを解除しなければ取り返しのつかない事になる。しかし、既に楽器を構え、弓を引くだけの状態に既に入っている。もう間に合わないかと半ば諦めかけていたその時、今まで気配すら感じさせなかったニノンが瞬く間にオイゲンの視界に飛び込んで来ると、間一髪のところでアンブロジウスの演奏を阻止する事に成功した。
「なッ・・・ニノン!?無事だったのか!?」
「話は後!みんなを開けたところへ!」
目にも止まらぬ速度で駆けつけたニノンの拳は、オイゲンのバリアに迫っていたアンブロジウスを遠ざけるように吹き飛ばした。攻撃が命中している。いや、ニノンの拳はアンブロジウスに触れる直前のところで、見えぬ何かに阻まれていた。
だがニノンは、攻撃を阻むその何かごと押し退けていたのだ。
「チッ・・・!またそれか」
屋上でずっと戦っていた彼女は、アンブロジウスの戦い方や能力をある程度理解しているようだ。だがその上でも攻撃が本体にダメージを与えていないという事は、彼女らにはそれ以外にとる手段がないという状況に置かれている事が分かる。
しかしピンチという訳でもなさそうだ。確かにこのまま戦闘が長引けば、彼女らの体力と魔力切れでジリ貧になる事は明白。だがそれも今直ぐにという訳ではない。それは彼女の動きがと表情が証明している。
ニノンの表情は焦りもなければ余裕というものでもない。ただ、彼女らは司令室内でのオイゲンら以上に、落ち着いて相手の攻撃に対処出来ているようだ。彼らを開けたところへ避難させたのも、一見遮蔽物の多い室内へ逃げた方が安全そうに思えるが、音の物質を透過する能力を考慮しての事だったのだろう。
「ニノン、これはどういった状況だ?」
オイゲンらがニノンの指示で開けた場所へ移動した後、そこへ彼女も合流すると退けたアンブロジウスを一行から遠ざけるように、様々な方角から奇妙な軌道を描く銃弾が飛び交う。
「安心して。この銃弾はミアの物。彼女はポイントを変えながら私を援護する銃撃を行ってくれている。奴が楽譜を取り出して演奏してから、攻撃のパターンが一気に変わって対応するのに苦労したわ」
「やはり楽譜を・・・」
「やはり?何か知っているの?」
「俺達はその楽譜の効果を打ち消す為に来た。奴が弱体化したら何とかなりそうか?」
オイゲンは司令室で起きた出来事をなるべく簡潔に彼女へ伝えた。そして楽譜は他の者でも演奏する事が可能であり、楽譜ごとに対応する楽器で演奏する事で、アンブロジウスの強化を解除する事ができる。
その為に奏者と楽器を持って来たのだと。そして宮殿内の別のところで戦う者達の為にも、急ぎ次の場所へと向かわねばならぬ事を伝え、戦力的に問題ないかと彼女に問うと、弱体化されるのであれば勝機もあると心強い返事を返してくれた。
多少なりとも敵の感知が可能なケヴィンを最後方に配置しながら全体をカバーし、敵の襲撃にはオイゲンが臨機応変に対応し屋上へとやって来た一行。
先頭のオイゲンが扉を開けて外へと飛び出していくと、そこにはそこら中の壁や床に弾痕が散りばめられ、宮殿の外壁を削りながら戦ったのだろうと思われる、建物の破片が撒き散らされた荒れた戦場が広がっていた。
少し遅れてやって来た一行も、屋上の荒れた様子に驚いた表情を浮かべながら、周囲を見渡しブルースの言っていたバッハの一族の霊であるアンブロジウスと、それと戦うミアとニノンの姿を探す。
しかし一見して彼らの周りに、何かが動くような気配は感じられない。
「な・・・何だこれ・・・!」
「おいおい・・・、まさかもう勝負がついちまったって事ぁねぇよな!?」
最初に口を開いたレオンとカルロス。率直な感想としては皆同じような事を思い浮かべていただろう。だがその時は直ぐに訪れた。次に誰かが口を開こうとした瞬間、それまで視界に映らなかったモノが彼らの前に現れたのだ。
それは彼らにとっても記憶に新しいモノであり、アルバに住む者なら誰しもが慣れ親しんでいたモノ。今回の事件が起こるまでは、それがこんなに恐ろしいモノであるなどと思いもしなかった、音を中に閉じ込める“シャボン玉”だったのだ。
何もないところから急に現れたシャボン玉は、僅かな空間に歪みと光の反射でによりその姿を一行の前に晒した。それと同時に響き渡ったのは、数発の銃声だった。
何処からくる攻撃に備えていたオイゲンが、一行を覆うようなドーム状のバリアを展開する。シャボン玉に驚いていた一行は、オイゲンの咄嗟のスキルに身構え何事かと周囲への警戒を強める。
「銃声!?」
「大丈夫です、この銃声は味方のものッ・・・!?」
ケヴィンにはその銃声がミアのものであることが分かっていた。だが突然の攻撃にいっこうを落ち着かせようと声を掛けた彼の思惑を裏切るように、銃弾は周囲のシャボン玉幾つか破りながらオイゲンのバリアへと命中する。
「ケヴィンさん!銃弾がこちらへ飛んで来ましたが!?」
「ミアさんッ・・・!?一体何故・・・?」
すると、何者かが急接近して来ることに気が付いたオイゲンが、一行に注意を促す。
「気を付けろッ!何か来るぞ!」
彼の発した声とほぼ同時に、オイゲンの張るバリアの直ぐ側に司令室で彼らを襲撃したベルンハルトとよく似た格好をした霊体が姿を現し、その手に持ったヴァイオリンで音を奏でようとしていた。
「マズイッ!攻撃が来る!!」
オイゲンの脳裏に過ったのは、彼のバリアを透過して来るベルンハルトの音を使った攻撃だった。このままでは一行を守る為のバリアが、そのまま一行を一網打尽にする鳥籠になりかねないと。
直ぐにスキルを解除しなければ取り返しのつかない事になる。しかし、既に楽器を構え、弓を引くだけの状態に既に入っている。もう間に合わないかと半ば諦めかけていたその時、今まで気配すら感じさせなかったニノンが瞬く間にオイゲンの視界に飛び込んで来ると、間一髪のところでアンブロジウスの演奏を阻止する事に成功した。
「なッ・・・ニノン!?無事だったのか!?」
「話は後!みんなを開けたところへ!」
目にも止まらぬ速度で駆けつけたニノンの拳は、オイゲンのバリアに迫っていたアンブロジウスを遠ざけるように吹き飛ばした。攻撃が命中している。いや、ニノンの拳はアンブロジウスに触れる直前のところで、見えぬ何かに阻まれていた。
だがニノンは、攻撃を阻むその何かごと押し退けていたのだ。
「チッ・・・!またそれか」
屋上でずっと戦っていた彼女は、アンブロジウスの戦い方や能力をある程度理解しているようだ。だがその上でも攻撃が本体にダメージを与えていないという事は、彼女らにはそれ以外にとる手段がないという状況に置かれている事が分かる。
しかしピンチという訳でもなさそうだ。確かにこのまま戦闘が長引けば、彼女らの体力と魔力切れでジリ貧になる事は明白。だがそれも今直ぐにという訳ではない。それは彼女の動きがと表情が証明している。
ニノンの表情は焦りもなければ余裕というものでもない。ただ、彼女らは司令室内でのオイゲンら以上に、落ち着いて相手の攻撃に対処出来ているようだ。彼らを開けたところへ避難させたのも、一見遮蔽物の多い室内へ逃げた方が安全そうに思えるが、音の物質を透過する能力を考慮しての事だったのだろう。
「ニノン、これはどういった状況だ?」
オイゲンらがニノンの指示で開けた場所へ移動した後、そこへ彼女も合流すると退けたアンブロジウスを一行から遠ざけるように、様々な方角から奇妙な軌道を描く銃弾が飛び交う。
「安心して。この銃弾はミアの物。彼女はポイントを変えながら私を援護する銃撃を行ってくれている。奴が楽譜を取り出して演奏してから、攻撃のパターンが一気に変わって対応するのに苦労したわ」
「やはり楽譜を・・・」
「やはり?何か知っているの?」
「俺達はその楽譜の効果を打ち消す為に来た。奴が弱体化したら何とかなりそうか?」
オイゲンは司令室で起きた出来事をなるべく簡潔に彼女へ伝えた。そして楽譜は他の者でも演奏する事が可能であり、楽譜ごとに対応する楽器で演奏する事で、アンブロジウスの強化を解除する事ができる。
その為に奏者と楽器を持って来たのだと。そして宮殿内の別のところで戦う者達の為にも、急ぎ次の場所へと向かわねばならぬ事を伝え、戦力的に問題ないかと彼女に問うと、弱体化されるのであれば勝機もあると心強い返事を返してくれた。
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