World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
1,476 / 1,646

目まぐるしく入れ替わる戦況

しおりを挟む
 そして彼が演奏を始めた時、これまでのレオンの演奏とはくれべものにならない効果が現れた。当然、今ミアやニノンに掛かっているアンブロジウスのバフ効果は打ち消され、その代わりに攻撃力や防御力といった基礎能力の向上と、これまで負ってきたダメージや疲労が徐々に回復していく効果が発揮されたのだ。

 それは戦闘中のミアの元にも現れていた。これまでの勝手に能力が活性化され無駄遣いされていた状態とは明らかに違うのが直ぐに理解できたようだ。

「おぉ!なんだ、急に身体の調子が・・・。それに何だか魔力も回復してんのか?これが本来の楽譜の正しい効果って訳か」

 遮蔽物に身を隠しながらアンブロジウスの様子を伺うミア。どうやら彼の方でもレオンの演奏による効果が現れていたようだ。彼もまた月光写譜無くして演奏をし続けているが、徐々にその効果は失われていきその霊体に弱体効果が徐々に現れ始める。自らの演奏に違和感を感じているのか、落ち着かない様子で周囲を見渡すアンブロジウス。

 まるで何かを探しているかのようにキョロキョロと首を動かしていると、やがてその動きを止める。その視線の先には、同じくヴァイオリンを演奏するレオンの姿を捉えていた。その直後、激しい身振りで弓を動かし始めるアンブロジウス。再び彼は狙いをレオンに定め、謎の人物達を召喚するとレオンの演奏を止めさせろと言わんばかりに刺客を送り込む。

 一斉に飛び掛かっていく謎の人物達。しかしその前には、レオンの月光写譜による正しきバフ効果を得たニノンが立ちはだかる。

「同じ轍は踏まないッ!よぉく覚えておけ、アンブロジウス!演奏の邪魔をするなど音楽家にあるまじき行為だと。そして思い出せ、本来のお前の血に眠る偉大な血族の才能と誇りを!」

 迫り来る謎の人物達を可能な限りレオンに近づけさせる。今度のレオンは敵の接近や攻撃に動揺することはなく、気を散らす事なく演奏に集中できている。演奏に乱れはない。ニノンを信じきっているのだろう。その期待に応えなければと自らを奮い立たせた彼女は、レオンの身に何かあれば直ぐに駆けつけられる範囲にまで謎の人物達を引き入れると、強化された身体能力で今度は心置きなく本当の力を振るい、瞬く間に謎の人物達を次々に打ち倒していった。

 周りで気の散る行動を取らざるを得なかったニノンは、自身の行動でレオンの演奏に支障はなかったかと視線を送ると、彼もまた片目を閉じながら口角を上げてニノンと視線を合わせる。万全の防御体制を整えるニノンは、隙あらば拳に溜めた光弾や足に纏った衝撃波を飛ばし、アンブロジウスへの妨害と攻撃を加える。

「あっちも順調みたいだな。向こうが気を引いてくれたおかげで、調合する時間が取れた。風の精とやらが力を貸してくれるか分からんが、奴のシャボン玉にはこれが一番効く」

 謎の人物達を打ち倒されたアンブロジウスは、ミアの目論見通り今度は例の音の衝撃を生み出すシャボン玉を発生させる。こればかりはニノン体術ではどうしようもない。触れれば割れたシャボン玉の中に閉じ込められていた振動が周囲へ伝わりダメージを与える。かといって振り払おうものなら、その動きで生じた風に乗って移動し、レオンの元へ飛んでいってしまう可能性もあるからだ。

「くッ・・・!こればかりはどうにもッ・・・」

 するとそこへ、一発の銃声と共に彼女らの側にミアの魔弾が着弾する。何事かと視線を送ると、その場に風が巻き起こり次第に周囲へ影響を与える程の風力で広がり、彼女らの周りに現れたシャボン玉を風に乗せ遠ざけていった。銃弾という時点でそれがミアによる援護だと理解したニノンは、再びシャボン玉の召喚に魔力を割いているアンブロジウスへ光弾を放つ。

 相変わらずアンブロジウスも、その霊体を活かした身軽な動きで躱す。今度はヴァイオリンの弦のような糸を使い、ニノンやレオンに攻撃を仕掛けようとするも、そうはさせまいと、またしてもミアの風を生み出す魔弾によって阻止されてしまう。だがシャボン玉の時とは違い、こちらは風だけでは完全に排除することは出来ず糸の発生している根本部分をニノンの足技による体術によって生み出す、鋭い刃のような衝撃波によって刈り取ることで消滅させる事ができた。

 元よりバッハの霊体達が生み出す糸は、オイゲンやバルトロメオの魔力や、紅葉の炎によって焼き尽くす事ができた。オイゲンやバルトロメオが扱う魔力は、属性の性質上”聖属性”を持っている事がクラスからも分かる。紅葉に関しては詳細な情報がまだ分かってはいないものの、彼らと同じく糸を焼き切る事ができていることからも、聖属性を持った炎であることが予想される。

 そしてニノンもまたオイゲンと同じく聖なる属性を扱うクラスである為、その衝撃波に込められた属性によりアンブロジウスの糸を断ち切ることが出来ていた。これらにより、今やほとんどの攻撃に対処することが出来るようになった一行だが、そんな中でも一つだけ原理も分からない、そもそもそれがアンブロジウスの攻撃かも分からないものが存在する。

 レオンの演奏により勢いづく一行の力を再び地に落とすかのように、その現象は再度彼女らを襲う。心臓付近に走る痛み。それは彼女らの身体の内側から駆け巡る衝撃。防御も回避も叶わぬその攻撃は、今まで積み重ねてきたものを最も容易く崩壊させる一撃に他ならなかった。

「うッ・・・!!クソッ・・・またこれかッ!?一体何だっていうんだ!!」

「内部からの痛みッ・・・!?これも彼の攻撃だとでも言うの・・・?レオン・・・!」

 演奏に対する姿勢や心持ちは既にレオンの中に備わったが、こればかりは彼には耐え難い苦痛として襲い掛かった。目に見えぬ攻撃に、いくらニノンであってもその攻撃からレオンを守ることは出来ない。月光写譜の演奏は中断され、一行に掛かっていたバフ効果も途切れてしまい、再びアンブロジウスによる演奏効果が上書きされる。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

処理中です...