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宮殿入り口への援軍
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宮殿の入り口はまるで猛獣が暴れたかのように、壁やら床、天井に至るまで崩壊していた。そんな荒れ果てた場所の中央で、倒れるツクヨを抱えている一人の男が大きな穀物の種のような物の側で周囲を警戒している。
「何だ・・・こりゃぁ・・・。えらい様変わりしちまってるじゃねぇかよ、ホントに入り口か?ここ」
「ツクヨは・・・もう戦いは終わったのか?」
その場には敵らしき者の姿は見えない。全く状況が飲み込めないシン達一行が、これまで宮殿入り口で戦ってきたであろう中央の男に近づく。すると彼はシン達の接近に大きな声で注意を促した。
「近づくな!そこら中に奴の攻撃がッ・・・」
しかし彼の注意も間に合わず、その言葉の通り宮殿の入り口をここまで崩壊させた不可思議な攻撃がシン達を襲う。先頭を歩いていたシンがその異変に気がついた時、彼の身体を強い衝撃が前方へと押し出した。
「危ねぇッ!!」
シンの背中を突き飛ばしたのは、ガジェットを装備したツバキだった。彼は自ら開発した魔力を溜め込んだ魔石を動力に、近接戦闘のクラスである武闘家にも劣らぬ戦闘力を身につけた。
シンの側に突如見えた、球体状の空間の歪み。それは間違いなくアルバの街で馴染んでいた、音を閉じ込めているシャボン玉だった。どうしてここまで視認しづらくなっているのかは定かではなかったが、中央で周りに警戒する男の様子を見て、ツバキは何かを察していたのかもしれない。
人間が視認してから身体を動かすのには、ある程度のラグがある。分かっていても反応が間に合わないという事は、日常の生活の中でも良くある事だろう。
だが、ツバキのガジェットは装備者本人の意識と連結し、強制的に身体を動かすことが出来る。これにより戦えぬ一般人の、ましてまだ少年である彼でもある程度熟練した武闘家の超人的な動きも再現できるのだそうだ。
ただそれだけの力を何のデメリットも無しに行える程、便利な物ではなかった。肉体を強制的に動かすことで身体への負担は大きくなる。本来、装備している者が出せぬ動きや力であれば尚更負担は大きくなる。
ツバキのような戦えぬ少年であれば、その負担は大人の比ではない。彼がシンを音の衝撃を生むシャボン玉から救った超反応は、海上戦で凄まじい武術を披露したハオランにも劣らない。
「クッ・・・!!」
全身に走る稲妻のような痛みに、表情を歪めるツバキ。そして突き飛ばしたのはシンのいた場所にシャボン玉が姿を現すとその場で破裂し、まるで爆弾でも爆発したかのような衝撃波が周囲に発生した。
「うわッ!?」
「きゃぁッ!!」
爆心地に最も近かったシンとツバキは、それぞれ前と後ろに吹き飛ばされていき、ツバキの少し後ろにいたアカリやジルも、爆発の衝撃に吹き飛ばされて足が地面から浮いてしまう。
主人の危機に目覚めたのか、アカリと共にいた紅葉が衝撃を察知するや否や光を放ちながら、その姿を人間の少年並みに大きく変化させ、両翼を羽ばたかせると左右にそれぞれアカリとジルを受け止め、爆風に耐えてみせた。
「紅葉ッ・・・!?貴方そんな力、いつの間に・・・!?」
「キェー!」
突如姿を変えた紅葉に困惑するジルと、紅葉の逞しい姿にまるで弟の偉業を讃えるかのように笑みを浮かべるアカリ。だが問題はこれから。今彼らに差し迫っている危機は、何処かに潜んでいる何者かの攻撃であろう視認しづらいシャボン玉。
二人を後方の安全な位置に連れて行くと、紅葉は二人の前で羽ばたき盾となるように立ちはだかる。
「私達を守ってくれるの?気を付けてね紅葉!」
「えっ、私の役割は?月光写譜を持つ相手はどこ!?」
「くっ・・・こんな状況で呑気なもんだなッ・・・」
紅葉が二人を連れて来た場所の側に、吹き飛ばされたツバキがいた。シャボン玉の中に入れられた衝撃波を、腕のガジェットで咄嗟に防いだのか彼の腕に取り付けられた機械が大きく破損していた。
「あぁ~あ・・・これじゃぁ片腕しか使えねぇな」
「ちょっと!まだやる気なの!?私達は後方支援でしょう!それにジルさんをサポートしなくちゃ」
「サポートったってなぁ、まだ敵さんの姿すら見つけられてねぇってのに・・・」
一方、ツバキに押し出されたシンは偶然か必然か、広場中央の男の近くに飛ばされていた。直ぐに自分を吹き飛ばしたものの方を見ると、そこには衝撃波により破壊された床と、同じく反対側に飛ばされたツバキ達の姿があり、どうやら彼らも何とか攻撃を避けられたのだと安堵する。
「アンタは確か司令室にいた・・・」
声の主は司令室でチラッとその姿を確認していたプラチドだった。
「そこで寝てる彼の仲間で、シンと言う者です」
「そうか、彼の・・・」
「それで、ここの相手は何処に?」
シンの質問にプラチドは首を横に振る。彼の話では、アンナという歌声を武器にして戦う相手この場所の月光写譜を持つであろう敵なのだが、楽譜を取り出した途端、これまでの攻撃パターンが変わり、アルバ特有のシャボン玉を用いた攻撃を使うようになったのだという。
それによって宮殿入り口がこの有様だと語った。
「何だ・・・こりゃぁ・・・。えらい様変わりしちまってるじゃねぇかよ、ホントに入り口か?ここ」
「ツクヨは・・・もう戦いは終わったのか?」
その場には敵らしき者の姿は見えない。全く状況が飲み込めないシン達一行が、これまで宮殿入り口で戦ってきたであろう中央の男に近づく。すると彼はシン達の接近に大きな声で注意を促した。
「近づくな!そこら中に奴の攻撃がッ・・・」
しかし彼の注意も間に合わず、その言葉の通り宮殿の入り口をここまで崩壊させた不可思議な攻撃がシン達を襲う。先頭を歩いていたシンがその異変に気がついた時、彼の身体を強い衝撃が前方へと押し出した。
「危ねぇッ!!」
シンの背中を突き飛ばしたのは、ガジェットを装備したツバキだった。彼は自ら開発した魔力を溜め込んだ魔石を動力に、近接戦闘のクラスである武闘家にも劣らぬ戦闘力を身につけた。
シンの側に突如見えた、球体状の空間の歪み。それは間違いなくアルバの街で馴染んでいた、音を閉じ込めているシャボン玉だった。どうしてここまで視認しづらくなっているのかは定かではなかったが、中央で周りに警戒する男の様子を見て、ツバキは何かを察していたのかもしれない。
人間が視認してから身体を動かすのには、ある程度のラグがある。分かっていても反応が間に合わないという事は、日常の生活の中でも良くある事だろう。
だが、ツバキのガジェットは装備者本人の意識と連結し、強制的に身体を動かすことが出来る。これにより戦えぬ一般人の、ましてまだ少年である彼でもある程度熟練した武闘家の超人的な動きも再現できるのだそうだ。
ただそれだけの力を何のデメリットも無しに行える程、便利な物ではなかった。肉体を強制的に動かすことで身体への負担は大きくなる。本来、装備している者が出せぬ動きや力であれば尚更負担は大きくなる。
ツバキのような戦えぬ少年であれば、その負担は大人の比ではない。彼がシンを音の衝撃を生むシャボン玉から救った超反応は、海上戦で凄まじい武術を披露したハオランにも劣らない。
「クッ・・・!!」
全身に走る稲妻のような痛みに、表情を歪めるツバキ。そして突き飛ばしたのはシンのいた場所にシャボン玉が姿を現すとその場で破裂し、まるで爆弾でも爆発したかのような衝撃波が周囲に発生した。
「うわッ!?」
「きゃぁッ!!」
爆心地に最も近かったシンとツバキは、それぞれ前と後ろに吹き飛ばされていき、ツバキの少し後ろにいたアカリやジルも、爆発の衝撃に吹き飛ばされて足が地面から浮いてしまう。
主人の危機に目覚めたのか、アカリと共にいた紅葉が衝撃を察知するや否や光を放ちながら、その姿を人間の少年並みに大きく変化させ、両翼を羽ばたかせると左右にそれぞれアカリとジルを受け止め、爆風に耐えてみせた。
「紅葉ッ・・・!?貴方そんな力、いつの間に・・・!?」
「キェー!」
突如姿を変えた紅葉に困惑するジルと、紅葉の逞しい姿にまるで弟の偉業を讃えるかのように笑みを浮かべるアカリ。だが問題はこれから。今彼らに差し迫っている危機は、何処かに潜んでいる何者かの攻撃であろう視認しづらいシャボン玉。
二人を後方の安全な位置に連れて行くと、紅葉は二人の前で羽ばたき盾となるように立ちはだかる。
「私達を守ってくれるの?気を付けてね紅葉!」
「えっ、私の役割は?月光写譜を持つ相手はどこ!?」
「くっ・・・こんな状況で呑気なもんだなッ・・・」
紅葉が二人を連れて来た場所の側に、吹き飛ばされたツバキがいた。シャボン玉の中に入れられた衝撃波を、腕のガジェットで咄嗟に防いだのか彼の腕に取り付けられた機械が大きく破損していた。
「あぁ~あ・・・これじゃぁ片腕しか使えねぇな」
「ちょっと!まだやる気なの!?私達は後方支援でしょう!それにジルさんをサポートしなくちゃ」
「サポートったってなぁ、まだ敵さんの姿すら見つけられてねぇってのに・・・」
一方、ツバキに押し出されたシンは偶然か必然か、広場中央の男の近くに飛ばされていた。直ぐに自分を吹き飛ばしたものの方を見ると、そこには衝撃波により破壊された床と、同じく反対側に飛ばされたツバキ達の姿があり、どうやら彼らも何とか攻撃を避けられたのだと安堵する。
「アンタは確か司令室にいた・・・」
声の主は司令室でチラッとその姿を確認していたプラチドだった。
「そこで寝てる彼の仲間で、シンと言う者です」
「そうか、彼の・・・」
「それで、ここの相手は何処に?」
シンの質問にプラチドは首を横に振る。彼の話では、アンナという歌声を武器にして戦う相手この場所の月光写譜を持つであろう敵なのだが、楽譜を取り出した途端、これまでの攻撃パターンが変わり、アルバ特有のシャボン玉を用いた攻撃を使うようになったのだという。
それによって宮殿入り口がこの有様だと語った。
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