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静かなる礼拝堂に安らぎを
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宮殿入り口の戦いに終止符が打たれた少し後、残る戦場は屋上で戦うミア達のみとなっていた。部屋に篭り、籠城を決め込んでいたリヒトル一行は依然部屋から出る様子もなく、犯人らの思惑である消滅の時を待っていた。
そしてレオンとアンドレイを屋上へ送り届けたオイゲンとケヴィン、カルロスらは司令室でベルンハルトを足止めしているブルースらの為に、チェンバロの置かれている部屋を探していた。
頼みの綱であったマティアス司祭とクリスは、恐らく犯人側の差金と思われる謎の人物達による襲撃により崩壊した部屋で別れて以降、行方不明となっている。
オイゲンとケヴィンは司令室にて、宮殿内のカメラを確認していたが、宮殿内部の構造を完全に把握できている訳でもなかった為、カメラで見た映像を思い出しながら脳内で宮殿のマップを作り上げていく。
「チェンバロらしき物が置かれていた部屋に心当たりは?」
「残念ながら私は・・・幾つか楽器の置かれていた部屋がありますので、それらを手当たり次第に当たっていくしかないでしょうね。カルロス君はどうですか?」
「俺も宮殿の中は詳しくは・・・。ただ演奏の際に案内された部屋には幾つか心当たりがありますよ。期待は出来ないでしょうけどね・・・」
「ん?」
実際にパーティーの時に演奏を行っていたというカルロスは、待合室や楽器を運び出す際に訪れた部屋が幾つかあったと語ったが、その日の内のプログラムが終了した後、役目を終えた楽器達は直ぐに搬送の準備へと回されていたらしい。
「それじゃぁ既にチェンバロは宮殿に無い・・・?」
「どうっスかねぇ・・・チェンバロはそもそも古い楽器ですから。俺の時の演奏じゃぁ使われていませんでしたよ」
「全て把握していた訳ではないのか?」
「勘弁してくださいよ。順番と何の演奏をするのかくらいは気にしてましたけど、俺だって自分の演奏の準備や調整があったんですから」
「そうか・・・。ならやはり、ケヴィンの言う通り手当たり次第に当たるしか・・・ん?」
丁度屋上から降りて来た一行は、覚えている限りで上の階層から順番に。楽器の置かれた部屋を、虱潰しに総当たりしようとしていたが、何処からかパイプオルガンのものと思われる演奏が彼らの耳に届けられた。
「これは・・・?」
「パイプオルガンっスね。確か場所は・・・」
「一階ですよ!こんな状況で演奏なんて・・・。きっと犯人の関係者か、或いは犯人そのものかも知れませんよ!急ぎましょう!」
突如として宮殿内に鳴り始めた演奏。ケヴィンの言う通り、宮殿内はあちらこちらで戦闘が行われる殺伐とした状況になっている。そんな中で楽器を演奏しようとするなど、正常な判断とは思えない。
もし犯人以外の誰かだとしたら、その時点で宮殿内部に蔓延る謎の人物らに発見され襲われている筈だからだ。だが一行が耳にしている演奏は、直ぐには止まらず今も尚続けられている。
そして一階に近付くにつれて、その音色はより鮮明に彼らの耳へと伝わっていく。パイプオルガンのあるの礼拝堂。道中、彼らの邪魔をする謎の人物達は現れない。宮殿の廊下には護衛隊や警備の者達の姿もない。
襲撃が行われて暫く、いつの間にか宮殿内での戦闘も大詰めを迎えているのか、不気味な静けさの中に彼らの足音だけが響いていた。
一階では入り口の方でシンやプラチド達が戦っている筈だが、彼らが通る通路からでは戦闘の様子を見ることは勿論、音を聞くことさえ叶わなかった。意識が演奏に向いていたと言うこともあるだろうが、それにしても大きな音が聞こえないというのはおかしい。
それでも今は仲間達を信じ、犯人がいるかも知れない礼拝堂の前へと到着するオイゲン達。彼らもまた、戦闘を行えるのはオイゲンだけ。犯人の素性が全く分からないが、これだけの事をやってのける相手だ。
本人も多少なり戦闘の心得はあるだろう。果たして二人を守りながら戦うことが出来るだろうか。そんな不安を抱えつつも、彼らの前では力強く頷き、礼拝堂の扉を勢いよくこじ開けた。
扉の音でパイプオルガンを弾いていた人物は手を止める。そこに座っていたのは、何と司令室でブルースとバルトロメオが戦っていたベルンハルト・バッハだったのだ。
「なッ・・・何故奴がここに・・・!?」
オルガンに注意を引かれていた一行だったが、その側の椅子にはアンナの姿と真っ黒に覆われた何者かの姿。そしてもう一人、椅子の背もたれでよく見ることは出来なかったが、何者かがベルンハルトの演奏を静かに聴き入っていた。
そしてレオンとアンドレイを屋上へ送り届けたオイゲンとケヴィン、カルロスらは司令室でベルンハルトを足止めしているブルースらの為に、チェンバロの置かれている部屋を探していた。
頼みの綱であったマティアス司祭とクリスは、恐らく犯人側の差金と思われる謎の人物達による襲撃により崩壊した部屋で別れて以降、行方不明となっている。
オイゲンとケヴィンは司令室にて、宮殿内のカメラを確認していたが、宮殿内部の構造を完全に把握できている訳でもなかった為、カメラで見た映像を思い出しながら脳内で宮殿のマップを作り上げていく。
「チェンバロらしき物が置かれていた部屋に心当たりは?」
「残念ながら私は・・・幾つか楽器の置かれていた部屋がありますので、それらを手当たり次第に当たっていくしかないでしょうね。カルロス君はどうですか?」
「俺も宮殿の中は詳しくは・・・。ただ演奏の際に案内された部屋には幾つか心当たりがありますよ。期待は出来ないでしょうけどね・・・」
「ん?」
実際にパーティーの時に演奏を行っていたというカルロスは、待合室や楽器を運び出す際に訪れた部屋が幾つかあったと語ったが、その日の内のプログラムが終了した後、役目を終えた楽器達は直ぐに搬送の準備へと回されていたらしい。
「それじゃぁ既にチェンバロは宮殿に無い・・・?」
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「全て把握していた訳ではないのか?」
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「そうか・・・。ならやはり、ケヴィンの言う通り手当たり次第に当たるしか・・・ん?」
丁度屋上から降りて来た一行は、覚えている限りで上の階層から順番に。楽器の置かれた部屋を、虱潰しに総当たりしようとしていたが、何処からかパイプオルガンのものと思われる演奏が彼らの耳に届けられた。
「これは・・・?」
「パイプオルガンっスね。確か場所は・・・」
「一階ですよ!こんな状況で演奏なんて・・・。きっと犯人の関係者か、或いは犯人そのものかも知れませんよ!急ぎましょう!」
突如として宮殿内に鳴り始めた演奏。ケヴィンの言う通り、宮殿内はあちらこちらで戦闘が行われる殺伐とした状況になっている。そんな中で楽器を演奏しようとするなど、正常な判断とは思えない。
もし犯人以外の誰かだとしたら、その時点で宮殿内部に蔓延る謎の人物らに発見され襲われている筈だからだ。だが一行が耳にしている演奏は、直ぐには止まらず今も尚続けられている。
そして一階に近付くにつれて、その音色はより鮮明に彼らの耳へと伝わっていく。パイプオルガンのあるの礼拝堂。道中、彼らの邪魔をする謎の人物達は現れない。宮殿の廊下には護衛隊や警備の者達の姿もない。
襲撃が行われて暫く、いつの間にか宮殿内での戦闘も大詰めを迎えているのか、不気味な静けさの中に彼らの足音だけが響いていた。
一階では入り口の方でシンやプラチド達が戦っている筈だが、彼らが通る通路からでは戦闘の様子を見ることは勿論、音を聞くことさえ叶わなかった。意識が演奏に向いていたと言うこともあるだろうが、それにしても大きな音が聞こえないというのはおかしい。
それでも今は仲間達を信じ、犯人がいるかも知れない礼拝堂の前へと到着するオイゲン達。彼らもまた、戦闘を行えるのはオイゲンだけ。犯人の素性が全く分からないが、これだけの事をやってのける相手だ。
本人も多少なり戦闘の心得はあるだろう。果たして二人を守りながら戦うことが出来るだろうか。そんな不安を抱えつつも、彼らの前では力強く頷き、礼拝堂の扉を勢いよくこじ開けた。
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「なッ・・・何故奴がここに・・・!?」
オルガンに注意を引かれていた一行だったが、その側の椅子にはアンナの姿と真っ黒に覆われた何者かの姿。そしてもう一人、椅子の背もたれでよく見ることは出来なかったが、何者かがベルンハルトの演奏を静かに聴き入っていた。
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