1,536 / 1,646
イタチごっこ
しおりを挟む
哀愁漂う曲調の音楽がクリストフを中心に流れ始めると、シンが見ていた極彩色の景色から次々に色が失われていった。キャンパスに塗られた色がまるで溶けていくようにボトボトと床に落ちていく。
「何だッ!?色がどんどん消えていく・・・?」
色を失った物は輪郭だけを残し、白と黒だけで表現されるモノトーン調へと変貌した。床に落ちた極彩色の液体も、まるでタールのように真っ黒なものへと変色しながら床へ溶け込んでいった。
これによりクリストフとその共感覚を受けたシンの二人が見ている礼拝堂内の景色は、キャンパスに鉛筆で描かれた風景がのように黒の濃淡のみで見えていた。
ここで極彩色な景色に視力をやられていたシンは、自らの体内の影を使い視界を覆うことで、サングラスのようなフィルターを目に張っていたのだが、今度は逆にそれが視界を妨げる障害となった。
「折角対応策を考えてもこれか・・・。これじゃイタチごっこだな。そうだ、奴のシャボン玉は?」
直ぐにスキルを解除し、暗くなっていた視界を元の明暗値へと戻す。だがその時、シンは新たな問題が起きていることに気がつく。それは白と黒以外の色が失われたことで、ただでさえ見づらかったシャボン玉が全くと言っていいほど、目で見る事が出来なくなっていたのだ。
「これはッ・・・!!」
「その能力を解除したところで同じですよ。貴方にはコレを確認する事はできない。しかし俺には音で分かる。今度はどうやってこの障害を乗り越えるのか楽しみです」
そう言いながら両腕を伸ばして動きを止めるクリストフ。明らかに挑発するような無防備を晒しているのだが、これは罠と見て間違いない。ここで彼に向かって飛び込んで行くほど単純ではない。
恐らくそこら中に撒かれたであろう音のシャボン玉。普通に考えればクリストフのいる位置からシャボン玉がやって来ると判断する事だろう。しかし戦闘に長けていないはずのクリストフが、これまで宮殿に集まった各音楽家が連れていた護衛達を出し抜くだけの能力や戦略を用いてきた事からも、その行動すら本当の狙いを隠す為のフェイクである可能性も捨て切れない。
そこでシンが目を付けたのが天井だった。正確には天井付近の空間にはシャボン玉は撒かれていないと考えた。それにシンがアンナとの戦いで見せた空中移動には、ツバキの発明品であるアンカーを打ち出すガジェットを用いる。
つまり、シン本人が飛んで行く前にアンカーがその軌道上が安全であるかを先に確かめてくれる。無論、アンカーとそのワイヤーが確かめられる範囲は限られているが、地上を移動するよりも遥かに安全だろう。
そしてその先には、更にシンの目的もあった。作戦を思いついた時には、既にシンの身体は動き出していた。
柱が近い天井に狙いを定めると、ガジェットを取り付けた腕をその位置に向けて伸ばし、アンカーを打ち出す。予想外の行動だったのか、クリストフも彼の行動に僅かながらの焦りを見せる。
その間にシンは、アンカーが打ち込まれた天井の方へと飛んで行く。そして途中でアンカーを外して、今度は柱の先の方の天井へアンカーを打ち出し、ワイヤーに引っ張られるように空中で弧を描くように横移動をしながら、クリストフから見て柱の陰になる位置へ飛び込んで行く。
柱の裏に回り込む勢いから、例え後ろに隠れたとしても直ぐに反対側から直ぐに姿が現れるはず。それを見越したクリストフは、アンナの召喚する謎の人物達が用いていた、音の振動を弾丸のように撃ち出すスピーカーを取り出して、狙い撃ちにしようとしていた。
しかし、反対側からシンが現れることはなかった。
「何ッ!?まさかあの一瞬で・・・」
シンを直接狙い撃つことを止め、彼が隠れたであろう柱そのものをへし折らんと、そのまま柱の左右にシャボン玉を撃ちだし、それぞれ一つのシャボン玉の破裂を利用して、柱の後ろに他のシャボン玉の弾丸の軌道を変え送り込む。
クリストフの位置からでは見えない場所で、シャボン玉の爆発が起こる。柱の裏を爆発の衝撃で破壊したような破片が辺りに飛び散る。しかしその中にシンの衣類らしきものや血液は混じっていない。
仕留め損ねたことを悟り、舌打ちをしながら柱を回り込みスピーカーを構えるクリストフ。柱の陰やその周囲にシンの姿は見当たらない。どこへ移動したかという足取りを掴めそうなものも残されていないことから、完全にシンの行方を見失うクリストフ。
だがここでも彼は慌てることなく、シンの行方を探る為の次なる行動へと移っていた。目を閉じて神経を研ぎ澄ますクリストフ。音の振動を利用して、アンナが行っていたソナーの能力を用いて、礼拝堂内にあるありとあらゆる物の位置と動きを読み取っていく。
光が反射して物が見えているように、音の振動が物体に伝わる反応や、空気宙を動く僅かな風の流れすらもクリストフには、手に取るように伝わってくる。
しかしながら彼のソナーも万能という訳ではなく、振動が物体に接触し音の変化が現れるまでクリストフにはその動きを知ることは出来ない。要するに素早く動くものには、必ず後手に回ってしまうということだ。
更に彼のミスを誘ったのは、その音楽家としての集中力だった。僅かな変化も見逃さないという意識が、かえって彼のミスを誘う結果となってしまったのだ。
シンは直ぐに動き出すことはせず、クリストフが柱を狙っている間に、影のスキルを使えるようになった環境を最大限に利用して、素早く周囲の柱や椅子の影を移動して、自身の影とリンクさせていたのだ。
これにより本人がその影に入っていなくても、遠隔でそれぞれの影から攻撃を仕掛けることが出来るようになる。こちらもメリットばかりではなく、リンクさせた影の数や大きさによって、攻撃出来る威力が弱まっていったり、行動できる範囲やスキルの種類もどんどん制限されていくというデメリットもあった。
要するに、数を増やせば攻撃は弱くなり、逆に一カ所だけなら本体であるシンが使うスキルに、限りなく再現度の近い攻撃が可能ということだ。
今回シンが礼拝堂内の影にリンクさせた数は、手当たり次第という非常に多い数。これでは大した攻撃など出来る筈もないのだが、元よりシンはコレを攻撃に利用するつもりなどなかった。
つまり、急いで駆け回り繋げた影はクリストフの隙を作る為の揺動だったのだ。過剰に周囲の動きに敏感となったクリストフには、そこら中から何かが動き出す反応がすれば標的を絞れなくなるのは必然。
「どうせ例の能力で姿を隠しているんでしょう?それならもう一度ッ・・・!」
クリストフがもう一度音楽を切り替え、極彩色の景色に戻そうとしたが、それよりも早くシンは動き出していた。作戦通り、クリストフの周りにあるありとあらゆる影から何かが飛び出す反応が伝わる。
感覚を研ぎ澄ましていたが故に、周囲から一辺に音の振動がクリストフを包み込むように伝わり、全身を痺れさせるような振動が彼を襲う。実際に影から飛び出したのは、そこら中に散らばる小さな瓦礫のかけらだった。
それも飛び出すとは言えど、実際には僅かに飛び跳ねる程度で、とても攻撃と言えるものではなかった。
「何だッ!?色がどんどん消えていく・・・?」
色を失った物は輪郭だけを残し、白と黒だけで表現されるモノトーン調へと変貌した。床に落ちた極彩色の液体も、まるでタールのように真っ黒なものへと変色しながら床へ溶け込んでいった。
これによりクリストフとその共感覚を受けたシンの二人が見ている礼拝堂内の景色は、キャンパスに鉛筆で描かれた風景がのように黒の濃淡のみで見えていた。
ここで極彩色な景色に視力をやられていたシンは、自らの体内の影を使い視界を覆うことで、サングラスのようなフィルターを目に張っていたのだが、今度は逆にそれが視界を妨げる障害となった。
「折角対応策を考えてもこれか・・・。これじゃイタチごっこだな。そうだ、奴のシャボン玉は?」
直ぐにスキルを解除し、暗くなっていた視界を元の明暗値へと戻す。だがその時、シンは新たな問題が起きていることに気がつく。それは白と黒以外の色が失われたことで、ただでさえ見づらかったシャボン玉が全くと言っていいほど、目で見る事が出来なくなっていたのだ。
「これはッ・・・!!」
「その能力を解除したところで同じですよ。貴方にはコレを確認する事はできない。しかし俺には音で分かる。今度はどうやってこの障害を乗り越えるのか楽しみです」
そう言いながら両腕を伸ばして動きを止めるクリストフ。明らかに挑発するような無防備を晒しているのだが、これは罠と見て間違いない。ここで彼に向かって飛び込んで行くほど単純ではない。
恐らくそこら中に撒かれたであろう音のシャボン玉。普通に考えればクリストフのいる位置からシャボン玉がやって来ると判断する事だろう。しかし戦闘に長けていないはずのクリストフが、これまで宮殿に集まった各音楽家が連れていた護衛達を出し抜くだけの能力や戦略を用いてきた事からも、その行動すら本当の狙いを隠す為のフェイクである可能性も捨て切れない。
そこでシンが目を付けたのが天井だった。正確には天井付近の空間にはシャボン玉は撒かれていないと考えた。それにシンがアンナとの戦いで見せた空中移動には、ツバキの発明品であるアンカーを打ち出すガジェットを用いる。
つまり、シン本人が飛んで行く前にアンカーがその軌道上が安全であるかを先に確かめてくれる。無論、アンカーとそのワイヤーが確かめられる範囲は限られているが、地上を移動するよりも遥かに安全だろう。
そしてその先には、更にシンの目的もあった。作戦を思いついた時には、既にシンの身体は動き出していた。
柱が近い天井に狙いを定めると、ガジェットを取り付けた腕をその位置に向けて伸ばし、アンカーを打ち出す。予想外の行動だったのか、クリストフも彼の行動に僅かながらの焦りを見せる。
その間にシンは、アンカーが打ち込まれた天井の方へと飛んで行く。そして途中でアンカーを外して、今度は柱の先の方の天井へアンカーを打ち出し、ワイヤーに引っ張られるように空中で弧を描くように横移動をしながら、クリストフから見て柱の陰になる位置へ飛び込んで行く。
柱の裏に回り込む勢いから、例え後ろに隠れたとしても直ぐに反対側から直ぐに姿が現れるはず。それを見越したクリストフは、アンナの召喚する謎の人物達が用いていた、音の振動を弾丸のように撃ち出すスピーカーを取り出して、狙い撃ちにしようとしていた。
しかし、反対側からシンが現れることはなかった。
「何ッ!?まさかあの一瞬で・・・」
シンを直接狙い撃つことを止め、彼が隠れたであろう柱そのものをへし折らんと、そのまま柱の左右にシャボン玉を撃ちだし、それぞれ一つのシャボン玉の破裂を利用して、柱の後ろに他のシャボン玉の弾丸の軌道を変え送り込む。
クリストフの位置からでは見えない場所で、シャボン玉の爆発が起こる。柱の裏を爆発の衝撃で破壊したような破片が辺りに飛び散る。しかしその中にシンの衣類らしきものや血液は混じっていない。
仕留め損ねたことを悟り、舌打ちをしながら柱を回り込みスピーカーを構えるクリストフ。柱の陰やその周囲にシンの姿は見当たらない。どこへ移動したかという足取りを掴めそうなものも残されていないことから、完全にシンの行方を見失うクリストフ。
だがここでも彼は慌てることなく、シンの行方を探る為の次なる行動へと移っていた。目を閉じて神経を研ぎ澄ますクリストフ。音の振動を利用して、アンナが行っていたソナーの能力を用いて、礼拝堂内にあるありとあらゆる物の位置と動きを読み取っていく。
光が反射して物が見えているように、音の振動が物体に伝わる反応や、空気宙を動く僅かな風の流れすらもクリストフには、手に取るように伝わってくる。
しかしながら彼のソナーも万能という訳ではなく、振動が物体に接触し音の変化が現れるまでクリストフにはその動きを知ることは出来ない。要するに素早く動くものには、必ず後手に回ってしまうということだ。
更に彼のミスを誘ったのは、その音楽家としての集中力だった。僅かな変化も見逃さないという意識が、かえって彼のミスを誘う結果となってしまったのだ。
シンは直ぐに動き出すことはせず、クリストフが柱を狙っている間に、影のスキルを使えるようになった環境を最大限に利用して、素早く周囲の柱や椅子の影を移動して、自身の影とリンクさせていたのだ。
これにより本人がその影に入っていなくても、遠隔でそれぞれの影から攻撃を仕掛けることが出来るようになる。こちらもメリットばかりではなく、リンクさせた影の数や大きさによって、攻撃出来る威力が弱まっていったり、行動できる範囲やスキルの種類もどんどん制限されていくというデメリットもあった。
要するに、数を増やせば攻撃は弱くなり、逆に一カ所だけなら本体であるシンが使うスキルに、限りなく再現度の近い攻撃が可能ということだ。
今回シンが礼拝堂内の影にリンクさせた数は、手当たり次第という非常に多い数。これでは大した攻撃など出来る筈もないのだが、元よりシンはコレを攻撃に利用するつもりなどなかった。
つまり、急いで駆け回り繋げた影はクリストフの隙を作る為の揺動だったのだ。過剰に周囲の動きに敏感となったクリストフには、そこら中から何かが動き出す反応がすれば標的を絞れなくなるのは必然。
「どうせ例の能力で姿を隠しているんでしょう?それならもう一度ッ・・・!」
クリストフがもう一度音楽を切り替え、極彩色の景色に戻そうとしたが、それよりも早くシンは動き出していた。作戦通り、クリストフの周りにあるありとあらゆる影から何かが飛び出す反応が伝わる。
感覚を研ぎ澄ましていたが故に、周囲から一辺に音の振動がクリストフを包み込むように伝わり、全身を痺れさせるような振動が彼を襲う。実際に影から飛び出したのは、そこら中に散らばる小さな瓦礫のかけらだった。
それも飛び出すとは言えど、実際には僅かに飛び跳ねる程度で、とても攻撃と言えるものではなかった。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる