World of Fantasia

神代 コウ

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動き出した組織

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「どういう事だ?制圧されたって・・・それじゃぁアサシンギルドのみんなは!?」

「詳細は不明です。何とか連絡を取ろうとはしているのですが、何処の支部も誰に連絡を取ろうとしても繋がらないんです」

「けど死んだとも思えねぇよ。俺達だってこうやって生き延びたんだ。朱影の旦那や輝阿の姉貴だってきっと生きてるに違いねぇって!」

 自信満々に語る宵命の言葉に明確な根拠はなかった。ただそうであろうという希望に過ぎない。だがシンもそれは感じていた。双子と共に行動を共にしていた朱影や、それに匹敵する実力の持ち主達が一網打尽にされるところなど、想像が出来なかった。

 それに彼らはシンと同じく影のスキルを扱うアサシン達。こと脱出に関しては他のクラスよりも優れていると言っていい。

「私もそう思います。いや、そう思いたいというのが本音です。皆さん実力で言えば僕達以上です」

「それはどうかな?俺達“二人”なら負けねぇけど!」

「話の腰を折らないでよ宵命。兎に角、僕達もシンさんや朱影さんと別れてから襲撃を受けましたが、何とか逃れながら今に至ります。その後、本部の白獅さんに連絡を取ろうと試みてはいるんですが、誰とも連絡は取れず・・・」

「んで、瑜那のハッキングでアサシンギルドの情報をかき集めてみたら、殆どの支部が荒らされていて無人の状態になってる事が分かったんだ」

「犯人は特定出来ているのか?」

「証拠や手掛かりはありません。ただ・・・」

 言葉を詰まらせた後、顔を見合わせる瑜那と宵命。そして犯人について心当たりがあるといった様子で瑜那が話を続ける。

「この世界には僕達の他に異世界から来たという者達がいます。彼らはこの世界で異世界にアクセス出来るシンさんや他のWoFのユーザーを探しては捕え、協力させていると聞きます。恐らくは彼らがアサシンギルドの存在を嗅ぎつけて襲撃しに来たのだと考えています」

 瑜那の言う、異世界から来た者達の組織についてシンはよく知っている。潜入捜査を行った際に、その組織に囚われていた同じWoFのユーザーである“井筒いづつ 涼寿りょうじゅ”と言う人物に救われ、組織への導きを得た。

 彼もまたその組織に従うフリをしながら、志を同じくする同士を集め反撃の時を伺っていた。だがそんな彼も、京都への遠征時に消息を絶ったと言われている。

「フィアーズ・・・」

「ッ!?」

 シンの口から溢れたその名に、双子は驚いたような表情を浮かべて顔を見合わせる。そして何故シンがその組織の名を知っているのかと尋ねる。すると彼は、自分を窮地から救ってくれた男にフィアーズへの手引きをして貰った事を二人に告げる。

「潜入捜査・・・ですか」

「それで!?そのフィアーズってのはどれくらいの組織なんだよ、シンの旦那!?」

「かなり手広く活動している組織だった。それこそアサシンギルドよりも遥かに大規模な活動をしていると思う」

「彼らの活動自体は、アサシンギルド内でも薄々は調査が進んでいました。しかし向こうもかなりの警戒をしている組織らしく、迂闊に踏み入る事はできませんでした。しかし、彼らはシンさんのような人を集めている。確かに貴方なら疑われずに捕虜として潜入する事も出来るでしょう」

「じゃぁシンの旦那に内部から調べて貰えれば解決じゃんかッ!」

 宵命は単純に考えているようだが、その難しさはシンと瑜那には十分過ぎるほど分かっていた。そんな簡単な話なら、別のWoFユーザーでも捕まえて情報を聞き出していけば直ぐに辿り着ける事だろう。

 双子がその捜査に踏み出していないのは、瑜那がその危険性に気がついているからだった。

「そんな簡単な話じゃないんだよ。それに同じアサシンであるシンさんを、こんな不十分な環境下で情報を抜き出してもらうにはあまりにも危険だよ。それにその辺のWoFユーザーに声を掛けなかったのは、既に彼らが懐柔されていて、逆に僕達の情報が向こうにいかないのを阻止するためだったんだから」

「なッ!?お前知ってたのかぁッ!?」

「宵命は直ぐに突っ走るでしょ?だから隠してたの!」

 秘密にしていた事が気に障ったのか、小競り合いを始めてしまう双子。シンはそんな中、WoFの世界へ向かう時に別れた仲間達の事を思い出していた。彼らは無事なのだろうか。

 特に神奈川調査チームで誰よりも行動を長くした、ヒーラー職のにぃなの事が気掛かりだった。調査を終え、休暇を与えられた彼女は一度実家の方へ帰ると言っていたが、今フィアーズが動き出しているということは、彼女にも出動要請が出ている筈。

 WoFユーザーを消耗品としか思っていないフィアーズの面々。その指示で危険な事をさせられていなければいいのだがと思うシン。そしてその任務の中に、アサシンギルドの襲撃が含まれていない事を願うばかりだった。
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