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濃霧晴らす紅鳥の息吹
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以前に体調を崩し、今回森の中で精気を纏った動物達の痕跡を見つけてから、再び大きな動きを見せる紅葉。だが今回は何の前触れもなくアカリの元を離れ、そして前回の時とは違い身体を大きくして羽ばたいて行った。
「おいおい!紅葉の奴どうしちまったんだぁ!?」
「わっ分からない!どうしちゃったの!?紅葉!」
上空へ飛び上がって行った紅葉は、その大きな身体で木の枝の隙間を器用に潜り抜け、霧の掛かる森の上空へと上がって行く。そして立ち込める霧の中で紅葉は、何かに狙いを定めるようにして口から火炎を吹いた。
「えッ!?紅葉ってあんな事が出来たの!?」
「俺も初めて見るッ・・・!やはり紅葉はただの魔法生物じゃない?」
シンは紅葉と共に姿を現したアカリの方を見る。しかし彼女はどこか紅葉のあの様子を知っているようだった。実際アカリは、リナムルの街が襲撃された際にも、紅葉の覚醒によってその場を救われている。
ただその時とは使っている能力が違うようだった。リナムルでは彼女らを庇ってやられた獣人の魂を炎の魔人へと変えて迎撃していたが、今回は紅葉自身が火炎を吹いている。
魔法生物であれば、あれは特別なスキルなどではなく生物として身体に備わっている機能になる。以前から自身の出征や紅葉の生態について、植物学を学びつつ調べていた彼女は、どの文献にも紅葉の特徴と似た生物を見つける事ができなかった。
しかしその特徴は、鳥類というよりも飛竜種に似ていた。文献でのみ似ていると思っていた紅葉の特徴が、今まさに彼女の眼前で繰り広げられている。普段の大人しい様子の紅葉からは想像もつかない猛々しさと、彼ならばこの状況を打開できるのではないかという頼もしさをアカリは感じていた。
暫く飛び回り、何かを追いかけ回すように火炎を吹いていた紅葉の働きが、何か森に施されていた仕掛けを解いたのか、一行のいる上空に立ち込める霧を見事に晴らして見せたのだ。
「おい見てみろよ!紅葉が暴れたおかげで、上空の霧が晴れてきたぜ!」
「本当か!山頂や麓の方角はわかるか?」
「そう急がせるなって、今やってるから」
アクセルに急かされツバキは、待機させていたガジェットを上空へと飛ばし、紅葉の火炎に巻き込まれないように上昇すると、そのカメラで山頂の方角を捉える。
「見えた!山頂の方角はあっちだ!」
一行は何とか紅葉の活躍により、霧に囚われていた状況を打開する事に成功する。しかし、それまで周りに感じなかったモンスターの気配が、霧が晴れた途端に現れ始め、紅葉の火炎の光に誘われて一行の元へと向かい始めたのだ。
「モンスターだ!こっちに来るぞ!」
「囲まれたらマズイッ・・・!山頂の方角へ走れッ!!」
アクセルとケネトが先導し走り出す。彼らの言う通り、個々では大した相手にもならない精気を纏ったモンスター達だが、群れに囲まれれば苦戦を強いられるのは必至。
カガリを森の中で見つけた際にも、同じような展開で窮地に立たされている一行。同じ轍は踏むまいと、囲まれる前に目的地を目指し、追いつかれたらその都度迎撃しながら数を減らすという強行策に出た。
「アカリ!紅葉を戻せないか!?あれに誘われてモンスター達がやって来ているみたいなんだ」
「御免なさい、でも分からないの!まるで私の声が届いてないみたいで・・・」
「紅葉ならアカリの気配を見つけられるだろう。ツバキ!お前のガジェットでアタシらの位置を紅葉に教えてやれないか?」
「分かった、やってみるぜ!」
「今は走ろう。紅葉なら大丈夫だ」
「はい・・・」
ミアに手を引かれ、上空で飛び回る紅葉を残し山頂への道を駆け上がりアカリ。何度も紅葉の方を振り返っては、小さくなって行く紅葉の火炎を心配そうに見つめながら、迫り来るモンスター達との距離をミアが見定める。
そして追い付かれそうになると、ツクヨとシンが最後尾で撃退を行う。だがいちいち倒していては時間が掛かる上にキリがないので、二人は追ってこられないように工夫を凝らした攻撃を行っていた。
ツクヨは単純に剣や刀の鞘でモンスターの足に打撃を与え、戦闘における麻痺の状態異常を部分的に引き起こさせていた。そしてシンの方は、夜の森という事もあり、影の質量には困らぬ好条件を利用し、様々な場所に自身の影をリンクさせ、宛らトラップのように影を踏んだモンスターの動きをその場に止める。
範囲外に出れば能力は解除されてしまうが、それでも足止めという用途だけなら優秀で、影がある限り決してシン達に近づくことは出来ない。
微睡の霧を抜け、追手を振り払うように一行が辿り着いたのは、山道でいうところの八号目辺りの場所だった。これより先は更に精神的な異常をきたしやすく、光脈が活発になるヌシの継承時期だと、他では見られない異形の生物が目撃されたという記録がある範囲だとアクセルらは語る。
「おいおい!紅葉の奴どうしちまったんだぁ!?」
「わっ分からない!どうしちゃったの!?紅葉!」
上空へ飛び上がって行った紅葉は、その大きな身体で木の枝の隙間を器用に潜り抜け、霧の掛かる森の上空へと上がって行く。そして立ち込める霧の中で紅葉は、何かに狙いを定めるようにして口から火炎を吹いた。
「えッ!?紅葉ってあんな事が出来たの!?」
「俺も初めて見るッ・・・!やはり紅葉はただの魔法生物じゃない?」
シンは紅葉と共に姿を現したアカリの方を見る。しかし彼女はどこか紅葉のあの様子を知っているようだった。実際アカリは、リナムルの街が襲撃された際にも、紅葉の覚醒によってその場を救われている。
ただその時とは使っている能力が違うようだった。リナムルでは彼女らを庇ってやられた獣人の魂を炎の魔人へと変えて迎撃していたが、今回は紅葉自身が火炎を吹いている。
魔法生物であれば、あれは特別なスキルなどではなく生物として身体に備わっている機能になる。以前から自身の出征や紅葉の生態について、植物学を学びつつ調べていた彼女は、どの文献にも紅葉の特徴と似た生物を見つける事ができなかった。
しかしその特徴は、鳥類というよりも飛竜種に似ていた。文献でのみ似ていると思っていた紅葉の特徴が、今まさに彼女の眼前で繰り広げられている。普段の大人しい様子の紅葉からは想像もつかない猛々しさと、彼ならばこの状況を打開できるのではないかという頼もしさをアカリは感じていた。
暫く飛び回り、何かを追いかけ回すように火炎を吹いていた紅葉の働きが、何か森に施されていた仕掛けを解いたのか、一行のいる上空に立ち込める霧を見事に晴らして見せたのだ。
「おい見てみろよ!紅葉が暴れたおかげで、上空の霧が晴れてきたぜ!」
「本当か!山頂や麓の方角はわかるか?」
「そう急がせるなって、今やってるから」
アクセルに急かされツバキは、待機させていたガジェットを上空へと飛ばし、紅葉の火炎に巻き込まれないように上昇すると、そのカメラで山頂の方角を捉える。
「見えた!山頂の方角はあっちだ!」
一行は何とか紅葉の活躍により、霧に囚われていた状況を打開する事に成功する。しかし、それまで周りに感じなかったモンスターの気配が、霧が晴れた途端に現れ始め、紅葉の火炎の光に誘われて一行の元へと向かい始めたのだ。
「モンスターだ!こっちに来るぞ!」
「囲まれたらマズイッ・・・!山頂の方角へ走れッ!!」
アクセルとケネトが先導し走り出す。彼らの言う通り、個々では大した相手にもならない精気を纏ったモンスター達だが、群れに囲まれれば苦戦を強いられるのは必至。
カガリを森の中で見つけた際にも、同じような展開で窮地に立たされている一行。同じ轍は踏むまいと、囲まれる前に目的地を目指し、追いつかれたらその都度迎撃しながら数を減らすという強行策に出た。
「アカリ!紅葉を戻せないか!?あれに誘われてモンスター達がやって来ているみたいなんだ」
「御免なさい、でも分からないの!まるで私の声が届いてないみたいで・・・」
「紅葉ならアカリの気配を見つけられるだろう。ツバキ!お前のガジェットでアタシらの位置を紅葉に教えてやれないか?」
「分かった、やってみるぜ!」
「今は走ろう。紅葉なら大丈夫だ」
「はい・・・」
ミアに手を引かれ、上空で飛び回る紅葉を残し山頂への道を駆け上がりアカリ。何度も紅葉の方を振り返っては、小さくなって行く紅葉の火炎を心配そうに見つめながら、迫り来るモンスター達との距離をミアが見定める。
そして追い付かれそうになると、ツクヨとシンが最後尾で撃退を行う。だがいちいち倒していては時間が掛かる上にキリがないので、二人は追ってこられないように工夫を凝らした攻撃を行っていた。
ツクヨは単純に剣や刀の鞘でモンスターの足に打撃を与え、戦闘における麻痺の状態異常を部分的に引き起こさせていた。そしてシンの方は、夜の森という事もあり、影の質量には困らぬ好条件を利用し、様々な場所に自身の影をリンクさせ、宛らトラップのように影を踏んだモンスターの動きをその場に止める。
範囲外に出れば能力は解除されてしまうが、それでも足止めという用途だけなら優秀で、影がある限り決してシン達に近づくことは出来ない。
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