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救助活動と黒衣の男
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一方、黒い衣の男に投げ飛ばされ山道を駆け上がって行くツクヨは、先程一行と一緒に登った八号目付近までやって来ていた。周囲を見渡すと、何処かで見覚えのあるような箇所が所々見受けられる。
恐らく一行と登っている途中や、野営の防衛で仲間から離れた位置に移動した時に見た光景が、似たものとしてそう見えているのかも知れない。
「この辺りは確か八号目・・・山頂までも直ぐな筈。何処だ・・・何処にいるんだ?ミネさん」
山の神の食事である神饌が行われるまで時間がない。急ぎミネの連れている生物の列を見つけ、そこからトミの妻であるユリアを探し出さなくてはならない。
どの道、ミネを救うには神饌を滞りなく行わせなければならない。そして気掛かりなのは、シンが忠告を受けたという儀式の邪魔をするなというものと、先程目の前に現れた黒い衣の男が言っていた、ツクヨを“喰わせるのも一興”という言葉。
黒い衣の男は、ツクヨが山の神の神饌に巻き込まれ、喰われる方が都合がいいみたいに言っていた。それは彼の持つとある物を見つけてから、そのような考えに変わったように思われる。
正直なところ、ツクヨもミネと共に山の神とやらに喰われた後の方が、共に脱出を図りやすいと考えていた。
この後に自分が行う行動を頭の中で整理していると、彼の中に宿ったリナムルでの獣の力が、ミネの連れる生物の反応を感知する。
「あった!生物の反応だ!ミネさん、必ずユリアさんを無事に救出してみせるからね・・・!」
強い決意と共に、踏み込む足に力を込めるツクヨ。目的地がハッキリしたことにより、彼の速度も上がっていく。光脈の精気で巨大に育った樹木を駆け上がり、木々の枝を次々に飛び継いでいくと、漸く山のヌシとなったミネの連れる生物に列の最後尾を発見する。
息を切らしながらそれを見下ろすツクヨ。参列している生物達に敵意は無いようだが、彼は念の為そのまま上から列を確認し、何処かにいるユリアを探す。
その頃、いち早く神饌の範囲から外れ、安全な場所へ避難したシン達一行は、整備された山道の方へ向かい、ギルドの捜索隊と合流して山の現状を伝えようとしていた。
だが、一行がギルドの野営に到着した頃には、まだ捜索に出掛けた何人かの隊員と、ミネを探しにやって来たギルドの隊長であるライノが上りに行った後だったのだ。
「なッ・・・山に入って行っただと!?」
「あぁ、捜索隊は入って大分経つな。ライノ隊長が上を目指して山道を登り始めたのはつい先程だ」
「けど隊長、妙に急いでたよな?何かあったのか?」
「・・・どうするケネト。このままじゃギルドの人達も神饌に巻き込まれるぞ?」
「どうするも何も、その神饌の前に出来るだけ彼らを連れ戻すしかあるまい。事情を話し、動ける奴らだけで捜索に向かったギルドの隊員達を連れ戻すぞ」
既に野営を発ってしまった者達を助ける為、急遽シン達は神饌のその時まで彼らを連れ戻すのに手を貸すことになった。だがこの機に乗じて名乗りを上げたのは、他でも無い今はただ一人となってしまった調査隊であるカガリだった。
しかし彼の魂胆は、ケネトやシン達にはお見通しだった。混乱に乗じて山を登り、必ずやミネの元へ向かおうとする。カガリの身の安全は、他でも無いミネの頼みであるが為に、それを許すことは出来ない。
「俺には他の人達には無い、山特有の感知能力がある!俺であれば捜索隊を、より確実に効率的に探すことが出来る!だから手伝わせて欲しいッ!」
「くッ・・・!確かに調査隊には彼らだけに伝わる、生物や光脈の位置を探す能力があると言われている。一丁前に交渉を持ち掛けてくるとは・・・」
「ケネト!時間がない、カガリには誰かをつけて捜索を手伝わせよう。それしか犠牲を抑える方法はない!」
「背に腹は代えられぬか・・・。分かった、カガリには俺がつく。急ぎギルドの捜索隊を探しに行くぞ!」
シン達の部隊からは、シンとミア、そしてケネトとカガリが捜索隊を救出に向かい、ツバキとアカリ、並びに紅葉はギルドの野営にて捜索の援護を行う事となった。
ツバキは言わずもがなカメラ搭載のガジェットを上空へ放ち、紅葉は再度大きな紅の鳥へと姿を変えて、同じく上空からギルドの捜索隊の救出に向かった。
時を同じくして、黒い衣の男と対峙していたアクセルは、ボロボロの状態となって地に伏せていた。彼とは対照的に、汚れ一つ無い状態で刀を鞘に入れたまま握る黒い衣の男。
アクセルの身体に斬られたような傷が無いことからも、その男が一切本気を出していなかった事が伺える。それ程までに二人の間に力の差があったという事だ。
「さて、そろそろ頃合いかな・・・?」
「くッ・・・クソ、待ちやがれッ・・・!」
必死に地を這いずりながら腕を伸ばすアクセルを、まるで虫を見るような目で見下す黒い衣の男。すると彼はゆっくりとアクセルの元へ歩いていくと、倒れたアクセルを片手で掴み、今度はツクヨとは逆に山から降ろすように下方へ向けて投げ飛ばしたのだ。
「変に邪魔されるのも癪だし、お前には神饌から離れてもらう」
飛んで行くアクセルを見送った後、黒い衣の男はツクヨが向かった山頂の方を見つめながら姿を消した。
山のヌシの大名行列の中からユリアを探すツクヨ。神饌の範囲内へと入ってしまったと思われるギルドの捜索隊を助けに向かうシン達一行。それぞれに課せられたやるべき事を進める中、山の神は神饌の儀の為にゆっくりと動き出す。
恐らく一行と登っている途中や、野営の防衛で仲間から離れた位置に移動した時に見た光景が、似たものとしてそう見えているのかも知れない。
「この辺りは確か八号目・・・山頂までも直ぐな筈。何処だ・・・何処にいるんだ?ミネさん」
山の神の食事である神饌が行われるまで時間がない。急ぎミネの連れている生物の列を見つけ、そこからトミの妻であるユリアを探し出さなくてはならない。
どの道、ミネを救うには神饌を滞りなく行わせなければならない。そして気掛かりなのは、シンが忠告を受けたという儀式の邪魔をするなというものと、先程目の前に現れた黒い衣の男が言っていた、ツクヨを“喰わせるのも一興”という言葉。
黒い衣の男は、ツクヨが山の神の神饌に巻き込まれ、喰われる方が都合がいいみたいに言っていた。それは彼の持つとある物を見つけてから、そのような考えに変わったように思われる。
正直なところ、ツクヨもミネと共に山の神とやらに喰われた後の方が、共に脱出を図りやすいと考えていた。
この後に自分が行う行動を頭の中で整理していると、彼の中に宿ったリナムルでの獣の力が、ミネの連れる生物の反応を感知する。
「あった!生物の反応だ!ミネさん、必ずユリアさんを無事に救出してみせるからね・・・!」
強い決意と共に、踏み込む足に力を込めるツクヨ。目的地がハッキリしたことにより、彼の速度も上がっていく。光脈の精気で巨大に育った樹木を駆け上がり、木々の枝を次々に飛び継いでいくと、漸く山のヌシとなったミネの連れる生物に列の最後尾を発見する。
息を切らしながらそれを見下ろすツクヨ。参列している生物達に敵意は無いようだが、彼は念の為そのまま上から列を確認し、何処かにいるユリアを探す。
その頃、いち早く神饌の範囲から外れ、安全な場所へ避難したシン達一行は、整備された山道の方へ向かい、ギルドの捜索隊と合流して山の現状を伝えようとしていた。
だが、一行がギルドの野営に到着した頃には、まだ捜索に出掛けた何人かの隊員と、ミネを探しにやって来たギルドの隊長であるライノが上りに行った後だったのだ。
「なッ・・・山に入って行っただと!?」
「あぁ、捜索隊は入って大分経つな。ライノ隊長が上を目指して山道を登り始めたのはつい先程だ」
「けど隊長、妙に急いでたよな?何かあったのか?」
「・・・どうするケネト。このままじゃギルドの人達も神饌に巻き込まれるぞ?」
「どうするも何も、その神饌の前に出来るだけ彼らを連れ戻すしかあるまい。事情を話し、動ける奴らだけで捜索に向かったギルドの隊員達を連れ戻すぞ」
既に野営を発ってしまった者達を助ける為、急遽シン達は神饌のその時まで彼らを連れ戻すのに手を貸すことになった。だがこの機に乗じて名乗りを上げたのは、他でも無い今はただ一人となってしまった調査隊であるカガリだった。
しかし彼の魂胆は、ケネトやシン達にはお見通しだった。混乱に乗じて山を登り、必ずやミネの元へ向かおうとする。カガリの身の安全は、他でも無いミネの頼みであるが為に、それを許すことは出来ない。
「俺には他の人達には無い、山特有の感知能力がある!俺であれば捜索隊を、より確実に効率的に探すことが出来る!だから手伝わせて欲しいッ!」
「くッ・・・!確かに調査隊には彼らだけに伝わる、生物や光脈の位置を探す能力があると言われている。一丁前に交渉を持ち掛けてくるとは・・・」
「ケネト!時間がない、カガリには誰かをつけて捜索を手伝わせよう。それしか犠牲を抑える方法はない!」
「背に腹は代えられぬか・・・。分かった、カガリには俺がつく。急ぎギルドの捜索隊を探しに行くぞ!」
シン達の部隊からは、シンとミア、そしてケネトとカガリが捜索隊を救出に向かい、ツバキとアカリ、並びに紅葉はギルドの野営にて捜索の援護を行う事となった。
ツバキは言わずもがなカメラ搭載のガジェットを上空へ放ち、紅葉は再度大きな紅の鳥へと姿を変えて、同じく上空からギルドの捜索隊の救出に向かった。
時を同じくして、黒い衣の男と対峙していたアクセルは、ボロボロの状態となって地に伏せていた。彼とは対照的に、汚れ一つ無い状態で刀を鞘に入れたまま握る黒い衣の男。
アクセルの身体に斬られたような傷が無いことからも、その男が一切本気を出していなかった事が伺える。それ程までに二人の間に力の差があったという事だ。
「さて、そろそろ頃合いかな・・・?」
「くッ・・・クソ、待ちやがれッ・・・!」
必死に地を這いずりながら腕を伸ばすアクセルを、まるで虫を見るような目で見下す黒い衣の男。すると彼はゆっくりとアクセルの元へ歩いていくと、倒れたアクセルを片手で掴み、今度はツクヨとは逆に山から降ろすように下方へ向けて投げ飛ばしたのだ。
「変に邪魔されるのも癪だし、お前には神饌から離れてもらう」
飛んで行くアクセルを見送った後、黒い衣の男はツクヨが向かった山頂の方を見つめながら姿を消した。
山のヌシの大名行列の中からユリアを探すツクヨ。神饌の範囲内へと入ってしまったと思われるギルドの捜索隊を助けに向かうシン達一行。それぞれに課せられたやるべき事を進める中、山の神は神饌の儀の為にゆっくりと動き出す。
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