機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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幕間②

幼馴染の現状

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■カルラ視点

「ホントにもう! しっかりしなさいよ!」

 [魔法使いマジシャン]のレジーナが、金で雇った[運び屋ポーター]に八つ当たりする。

 だけど、それも仕方ないのかもしれない。
 せっかくお金を出して[運び屋ポーター]を雇ったのに、まだ今回のクエストの目的である遺跡探索が、半分も攻略できてないんのだから。

「キャハハ、まあボクとしてはのんびりできて嬉しいんだけどねー」

 頭の後ろに両手を組みながら、[斥候スカウト]のロロが呑気に呟く。

「そうも言っていられんぞ……今回の遺跡探索で成果を得られねば、赤字になってしまう。そうなれば、私のこの盾の修理もままならん……」

 盾をまじまじと見つめながら、[騎士ナイト]のセシルは溜息を吐いた。

「わ、分かっているさ。それもこれも、この遺跡の奥にむ“サラマンダー”さえ討伐すれば、余裕で黒字どころかお釣りがくるよ」

 リーダーのエリアルは仲間達を鼓舞しようと、そんなことを言っているが……正直言って、今回のクエストは失敗だろう。

 [運び屋ポーター]一人に任せている物資の量は重量オーバーで、それが私達の進行速度にも影響が出ているし、それでいて物資が足りているかといえば心もとないときている。

「……やっぱり、もっとお金を払ってでも優秀な[運び屋ポーター]を雇うか、せめてもう一人[運び屋ポーター]を連れてくるべきじゃなかったかしら」

 私はわざと聞こえるようにそう呟くと。

「なによ! 今までこんなことなかったじゃない! その[運び屋ポーター]がヘッポコなだけよ!」
「キャハハ、まあねー」
「うむ。それに、高い金を払ってでもと言うが、この程度の[運び屋ポーター]にですら、それなりの金を払っているのだぞ? これ以上金を出してしまったら、赤字になるどころか私の盾の修理代すらままならなくなってしまうぞ」

 三人は口々に反対の意を示す。

「まあまあ、レジーナ達の言うことももっともだよ。俺達の資金だって有限なんだ。計画的に使わないと、な」

 そう言って、エリアルは私の肩にポン、と手を置く。

「……触らないで」

 私はその手を払うと、メンバーを無視して前を歩く。

 はあ……本当にみんなは分かっていない。
 そもそもクエストを達成しなければ、それだけで赤字なのに。

 おまけにエリアル達ときたら、一体どの口で資金のことを語るんだろう。

 私が知らないと思っているんだろうか。
 四人が、資金に手を付けて夜な夜な豪遊していることに。

 それでも、今までは難しいクエストであっても全て達成し、資金も潤沢だったけど、最近はクエストを失敗することも珍しくない。
 今回はそんな状況を打破するためにも、この高難度のクエストを受けたというのに。

 それに。

「えへへ……エリアル、このクエストが終わったら、その……ね?」
「むー……レジーナ、抜け駆けズルくない?」
「コ、コホン、そうだぞレジーナ。ちゃんと順番を守れ。そういったルールだっただろう?」

 あろうことか、この三人は全員エリアルの恋人だ。

 これまでは、そうであっても露骨に態度に示したことがなかったが、あの日・・・を境にこういった行動が目立つようになってきた。

「ははは、仕方ないなあ。じゃあ、今回は全員で……」

 そしてエリアルも、メンバーに対して遠慮がなくなった。
 まるで、この世の女は全て自分のものであるかと勘違いしている程に。

 その証拠に、この三人に内緒でいつの間にか受付嬢のサラも自身の恋人にしている。
 この私にすら色目を使ってくるのだ。もはや見境なしである。

 まだ・・恋人だった頃の、アデルがいた時から。

 はあ……本当に“サラマンダー”のいる階層までたどり着けるんだろうか……。

 ◇

「お帰りなさいませ! エリアル様!」

 ギルドに戻ると、サラが嬉しそうに声を掛けてきた。
 ただし、エリアルにだけ。

「ああ。お蔭で今回は無事、サラマンダーを討伐できたよ」
「さすがです! エリアル様!」
「「「…………………………フン」」」

 サラの露骨なアプローチに、面白くない三人が鼻を鳴らす。

「それより、早く“サラマンダー”を換金して欲しいのだけれど」

 私は一刻も早くここから立ち去りたくて、サラを促す。

「はは、はい! そ、そうですね……」

 この前のこともあってか、サラは私を恐れるようになった。
 まあ、私としてはやりやすくて都合が良い。

 サラがカウンターから出てきて素材の確認を始める。
 だけど……今回はやっぱり失敗、かな……。

「うーん……今回は素材の損傷が大きいですので、金貨八枚でしょうか……」

 サラが悲しそうな表情でそう告げる。
 ……もっと少ないと思ったんだけど、って、そういうことね。

「バカな! あの“サラマンダー”だぞ! 金貨二十枚が下らないだろう!」
「そうだそうだ!」
「そんな安い訳がない!」
「あわわ……」

 でも、サラが色を付けてくれたことに気づかない三人が口々に文句を言うと、サラの身体がすくむ。
 肝心のエリアルも納得がいかないのか、顔をしかめていた。

 そこへ。

「どうした? 揉め事か?」

 執務室から、ギルドマスターのゴライアさんが出てきた。

「あ、い、いえ……」

 今回ばかりはサラも口ごもる。
 それはそうだろう。ギルドの正式な査定よりも多く報酬を支払おうとしたんだから。

「ふうん……って、オイオイ、コイツはサラマンダーか?」

 指を差しながら残念な表情でゴライアさんが尋ねる。

「は、はい……」
「かーっ! なんてもったいない狩り方するんだよ……これじゃ、金貨五枚も出せねえぞ……」
「「「き、金貨五枚!?」」」

 ゴライアさんの言葉に、四人が驚きの声を上げる。

「だ、だけどサラマンダーなのよ!? もっと高くても……!」
「馬鹿を言え。こんなズタズタになった皮膚、炎袋も破れてるし……使えそうなのは魔石くらいだろ」

 ヤレヤレといった表情でかぶりを振るゴライアさんと、それを受け入れられず呆けた表情になる四人……いや、五人か。

「……アデルがいれば、違ったのかな」

 私はポツリ、と呟く。

 アデルは本職の[運び屋ポーター]ではなかったけど、その[技術者エンジニア]の能力で、現地で調達できるものはできる限り省き、真に必要なものだけを運んでくれた。

 交渉だって全てアデルが行い、本来かかる費用よりも安く抑えたりしてくれていた。
 今回の雇った[運び屋ポーター]への報酬だって、多分半分程度まで安くなっていた筈だ。

 いえ……そもそもアデルがいれば、[運び屋ポーター]を雇う必要すらないんだから。

「……何を今さら」

 私は自嘲気味にそう呟く。
 アデルを追い出したのは、他ならぬ私だ。

 なら、今の現状を受け入れるしかないじゃない……。

 私は今もなおギルドと揉めている仲間達を眺めながら、アデルを追い出したことへの後悔と、明日への不安を募らせていた。
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