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第二章 復讐その二 ジェームズ=ゴドウィン
侯爵の末路
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「オマエの……オマエのせいでええええ!」
「ガッ!? ギャ!?」
僕はゴドウィンにつかみ掛かり、ひたすらこの男を殴りつけた。
この男は……この男は、ライラ様がこんな姿になっても悪びれもしない。
それが……どうしても許せなかったんだ!
「ライラ様は! 本当ならご両親やハンナさんや、たくさんの人に囲まれて幸せに暮らしていた筈だったんだ! そんな未来を、オマエの都合で勝手に奪ったんだ!」
——ゴッ、ガッ!
「そのせいで……そのせいで、ライラ様は……!」
「アデル様! そこまでです!」
なおも殴り続ける僕の腕にしがみつき、ハンナさんが止める。
「放してください! 僕はこの男が許せない! 許せないんだ!」
「ですが! アデル様のお身体のほうが大切です!」
そう言われ、僕は自分の右拳を見ると、強く殴り過ぎたせいで骨が折れ、その一部が手の甲から飛び出していた。
「あ……うう……」
そして、ゴドウィンは呻き声を上げながら僕へと倒れかかってきた。
「…………………………」
僕は無言でゴドウィンを引き上げると、橋の上に横たわらせる。
「アデル様……」
気づけば、いつもの様子に戻っていたライラ様が、心配そうに僕を見つめていた。
その右の瞳に、涙を湛えながら。
「す、すいません……ライラ様の復讐を汚すような真似をしてしまいました……」
僕はライラ様に深々と頭を下げた。
そもそも僕にはゴドウィンに手出しする理由も権利もないのに、僕は勝手にゴドウィンを痛めつけた。
復讐する権利があるのは、ライラ様だけなのに。
すると。
「そんなことはありません! 私は……私は、何よりもアデル様が私のことを想ってお怒りくださったことが、本当に嬉しかったんです」
「ライラ、様……」
ライラ様は僕の左手に触れると、涙を一滴零しながら僕を見つめた。
その、優しい瞳で。
「……とにかく、ゴドウィン卿を起こしましょう」
ライラ様とハンナさんのお陰で冷静になれた僕は右手でポーションを取り出すと、気絶しているゴドウィンの顔にふりかけた。
「うう……」
「起きろ、ゴドウィン」
「グフッ!?」
僕は乱暴にゴドウィンの腹を蹴り上げ、無理やり起こす。
「ぐう……お、おのれ……!」
「もう、そういうのはいいんだよ。それより、いい加減オマエの本当の目的を言えよ。アイザックの街を欲しがったのは何でだ? あの街に何がある?」
「…………………………知らん」
僕の問い掛けに、ゴドウィンは顔を背けて回答を拒否すると。
——ザシュ。
「ギャアアアアアアアアアア!」
また“死神”に戻ったライラ様がゴトウィンの右腕を切り落とした。
ゴドウィンはそのあまりの痛みに、傷口を押さえながらもんどり打つ。
「あは♪ アデル様がお聞きなんですから、真面目に答えなさい♬」
「……し、知らん……本当に、知らんのだ……」
——ザク。
「グアアアアアアアアアアアアア!」
ライラ様が、今度はゴドウィンのその左脚を根元から切り落とした。
「あは♪ じゃあ次は右脚を……「ま、待て! 言う! 私の知っていることは全て話す! だから……!」」
さすがに腕と脚を一本ずつ切り落とされ、痛みに耐えかねたゴドウィンが口を開いた。
「初めからそう言えば良かったんだよ」
僕はゴドウィンの傷口にポーションをふりかける。
まだ、死ぬのは早いからね。
「それで、オマエの目的は何なんだ?」
「わ、私は王命に従い、あの街を手に入れようとしただけだ……」
「王命? 国王陛下があの街を欲しがっているのか?」
「そ、そうだ……陛下は仰った……『アイザックの街には、誰も触れてはならないものがある』、と……」
「ふむ……」
見る限り、ゴドウィンが嘘を吐いている様子はない。
とすると、国王陛下は何故わざわざゴドウィンを介してアイザックの街を狙った?
普通に考えれば、国王陛下の権限で領地替えをすれば済む話だし、王命ならば先代の伯爵様だって従……ってはいないのか。
となると、先代の伯爵様はあの街について何か知っていた?
しかも、それがこの国にとって非常にまずいものであることも。
「……ひょっとして、先代の伯爵様が王国にとって不利益なものを所持していた、ということ?」
「……少なくとも、私はそう考えた……そして陛下は、沈痛な面持ちでこの私に託されたのだ。アイザックの街の抹消を……」
ゴドウィンが唇を噛みながら、その目を瞑った。
「ライラ様、ハンナさん、何かご存知だったりしますか?」
「い、いえ……」
「私も、何も……」
二人は困惑した表情を浮かべながらかぶりを振る。
「……そ、それで……もはや私の腕や脚はどうでもいい……頼む! どうかアイザックの街を、この私に明け渡してくれ! この国を、救うために!」
五千の軍勢を滅ぼされ、このような状態に追いやられてもなお王国を思って僕達に頭を下げるゴドウィン。
その姿は、まさに忠臣と呼ぶにふさわしいだろう。
だけど。
「……これ以上はもう情報もなさそうですね。ライラ様」
「あは♪」
ニタア、と口の端を吊り上げ、死神の鎌を構える。
「っ!? ど、どうして……!」
「正直言うと、僕達にとってこの国がどうなろうと、知ったことじゃないんですよ。それよりも、オマエの……いや、王国の都合でライラ様をこんな目に遭わせた。僕は……それを絶対に許さない」
狼狽えるゴドウィンに、僕は冷たく言い放つ。
「あはあああ……! 嬉しい! 嬉しいです! アデル様にそこまで想っていただけるなんて! このライラ、それだけで天にも昇る心地です!」
ライラ様は頬を染めてうっとりとした表情を浮かべながら、右手に持つ鎌を振り上げると、鎌の刃先が陽の光で眩しく輝いた。
「あは♪ 貴様も私と同じ苦しみを味わえ」
——ザシュ、ザン。
「ギャアアアアアアアアアアア!」
残っていた左腕と右脚を切り落とされ、ゴドウィンはジェイコブ達と同じ姿になった。
——ドカッ。
ライラ様はゴドウィンを蹴飛ばし、湿地帯の水の中へと落とす。
「ゴボ!? ゲホガボバ!?」
「あはははは! 芋虫が水の中で溺れてますよ!」
もがくゴドウィンを眺めながら、ライラ様は高らかに嗤う。
そして。
「あは♪ 手が滑った♬」
そう呟くと、死神の鎌を手放し、そのままゴドウィンの腹に落ちた。
「ゴボボ……ゴボ……………………」
ゴドウィンは水の底に沈み、うねうねと身体をよじるが、鎌が重すぎて抜け出すことができない。
……しばらくすると、ゴドウィンは目を見開いたまま、動くことを止めた。
「ガッ!? ギャ!?」
僕はゴドウィンにつかみ掛かり、ひたすらこの男を殴りつけた。
この男は……この男は、ライラ様がこんな姿になっても悪びれもしない。
それが……どうしても許せなかったんだ!
「ライラ様は! 本当ならご両親やハンナさんや、たくさんの人に囲まれて幸せに暮らしていた筈だったんだ! そんな未来を、オマエの都合で勝手に奪ったんだ!」
——ゴッ、ガッ!
「そのせいで……そのせいで、ライラ様は……!」
「アデル様! そこまでです!」
なおも殴り続ける僕の腕にしがみつき、ハンナさんが止める。
「放してください! 僕はこの男が許せない! 許せないんだ!」
「ですが! アデル様のお身体のほうが大切です!」
そう言われ、僕は自分の右拳を見ると、強く殴り過ぎたせいで骨が折れ、その一部が手の甲から飛び出していた。
「あ……うう……」
そして、ゴドウィンは呻き声を上げながら僕へと倒れかかってきた。
「…………………………」
僕は無言でゴドウィンを引き上げると、橋の上に横たわらせる。
「アデル様……」
気づけば、いつもの様子に戻っていたライラ様が、心配そうに僕を見つめていた。
その右の瞳に、涙を湛えながら。
「す、すいません……ライラ様の復讐を汚すような真似をしてしまいました……」
僕はライラ様に深々と頭を下げた。
そもそも僕にはゴドウィンに手出しする理由も権利もないのに、僕は勝手にゴドウィンを痛めつけた。
復讐する権利があるのは、ライラ様だけなのに。
すると。
「そんなことはありません! 私は……私は、何よりもアデル様が私のことを想ってお怒りくださったことが、本当に嬉しかったんです」
「ライラ、様……」
ライラ様は僕の左手に触れると、涙を一滴零しながら僕を見つめた。
その、優しい瞳で。
「……とにかく、ゴドウィン卿を起こしましょう」
ライラ様とハンナさんのお陰で冷静になれた僕は右手でポーションを取り出すと、気絶しているゴドウィンの顔にふりかけた。
「うう……」
「起きろ、ゴドウィン」
「グフッ!?」
僕は乱暴にゴドウィンの腹を蹴り上げ、無理やり起こす。
「ぐう……お、おのれ……!」
「もう、そういうのはいいんだよ。それより、いい加減オマエの本当の目的を言えよ。アイザックの街を欲しがったのは何でだ? あの街に何がある?」
「…………………………知らん」
僕の問い掛けに、ゴドウィンは顔を背けて回答を拒否すると。
——ザシュ。
「ギャアアアアアアアアアア!」
また“死神”に戻ったライラ様がゴトウィンの右腕を切り落とした。
ゴドウィンはそのあまりの痛みに、傷口を押さえながらもんどり打つ。
「あは♪ アデル様がお聞きなんですから、真面目に答えなさい♬」
「……し、知らん……本当に、知らんのだ……」
——ザク。
「グアアアアアアアアアアアアア!」
ライラ様が、今度はゴドウィンのその左脚を根元から切り落とした。
「あは♪ じゃあ次は右脚を……「ま、待て! 言う! 私の知っていることは全て話す! だから……!」」
さすがに腕と脚を一本ずつ切り落とされ、痛みに耐えかねたゴドウィンが口を開いた。
「初めからそう言えば良かったんだよ」
僕はゴドウィンの傷口にポーションをふりかける。
まだ、死ぬのは早いからね。
「それで、オマエの目的は何なんだ?」
「わ、私は王命に従い、あの街を手に入れようとしただけだ……」
「王命? 国王陛下があの街を欲しがっているのか?」
「そ、そうだ……陛下は仰った……『アイザックの街には、誰も触れてはならないものがある』、と……」
「ふむ……」
見る限り、ゴドウィンが嘘を吐いている様子はない。
とすると、国王陛下は何故わざわざゴドウィンを介してアイザックの街を狙った?
普通に考えれば、国王陛下の権限で領地替えをすれば済む話だし、王命ならば先代の伯爵様だって従……ってはいないのか。
となると、先代の伯爵様はあの街について何か知っていた?
しかも、それがこの国にとって非常にまずいものであることも。
「……ひょっとして、先代の伯爵様が王国にとって不利益なものを所持していた、ということ?」
「……少なくとも、私はそう考えた……そして陛下は、沈痛な面持ちでこの私に託されたのだ。アイザックの街の抹消を……」
ゴドウィンが唇を噛みながら、その目を瞑った。
「ライラ様、ハンナさん、何かご存知だったりしますか?」
「い、いえ……」
「私も、何も……」
二人は困惑した表情を浮かべながらかぶりを振る。
「……そ、それで……もはや私の腕や脚はどうでもいい……頼む! どうかアイザックの街を、この私に明け渡してくれ! この国を、救うために!」
五千の軍勢を滅ぼされ、このような状態に追いやられてもなお王国を思って僕達に頭を下げるゴドウィン。
その姿は、まさに忠臣と呼ぶにふさわしいだろう。
だけど。
「……これ以上はもう情報もなさそうですね。ライラ様」
「あは♪」
ニタア、と口の端を吊り上げ、死神の鎌を構える。
「っ!? ど、どうして……!」
「正直言うと、僕達にとってこの国がどうなろうと、知ったことじゃないんですよ。それよりも、オマエの……いや、王国の都合でライラ様をこんな目に遭わせた。僕は……それを絶対に許さない」
狼狽えるゴドウィンに、僕は冷たく言い放つ。
「あはあああ……! 嬉しい! 嬉しいです! アデル様にそこまで想っていただけるなんて! このライラ、それだけで天にも昇る心地です!」
ライラ様は頬を染めてうっとりとした表情を浮かべながら、右手に持つ鎌を振り上げると、鎌の刃先が陽の光で眩しく輝いた。
「あは♪ 貴様も私と同じ苦しみを味わえ」
——ザシュ、ザン。
「ギャアアアアアアアアアアア!」
残っていた左腕と右脚を切り落とされ、ゴドウィンはジェイコブ達と同じ姿になった。
——ドカッ。
ライラ様はゴドウィンを蹴飛ばし、湿地帯の水の中へと落とす。
「ゴボ!? ゲホガボバ!?」
「あはははは! 芋虫が水の中で溺れてますよ!」
もがくゴドウィンを眺めながら、ライラ様は高らかに嗤う。
そして。
「あは♪ 手が滑った♬」
そう呟くと、死神の鎌を手放し、そのままゴドウィンの腹に落ちた。
「ゴボボ……ゴボ……………………」
ゴドウィンは水の底に沈み、うねうねと身体をよじるが、鎌が重すぎて抜け出すことができない。
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