61 / 146
第三章 復讐その三 ハリー=カベンディッシュ
拉致
しおりを挟む
「ふふ、美味しいですね」
ヘイドンの街に滞在して五日目。
僕達は今日もあの屋台で買ったお菓子を食べている。
「ですが、二人共本当にそのお菓子を気に入りましたね」
「「はい♪」」
うん、まあ……二人が幸せそうで何よりです……って。
「ライラ様、ちょっと失礼しますね」
「? ……………………あ」
僕はライラ様の口の周りに付いていた生クリームを指で拭き取ると、その指をくわえて舐め取った。
「あう……アデル様はいつも無自覚にそうやって……」
するとライラ様は、顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。
少し子ども扱いしてしまったから、怒ってしまったのかな……。
「……お嬢様、少々あざといのではないのでしょうか」
指で眼鏡をクイ、と持ち上げ、ハンナさんがジト目でライラ様を見るけど、何で!?
その時。
「はむ!」
「「「あっ!」」」
突然現れたメルが、僕のお菓子にかぶりついた。
「へへーん! 油断するニーチャンが悪いんだよ!」
「コノヤロー!」
鼻をこすりながら笑顔で逃げるメルに、僕は笑いながら抗議した!
メルもあの日以降、かなり明るくなったような気がする。
初めて出会ったあの時は、メルの瞳に余裕なんて何一つなかったからなあ……。
「……メルには少々お仕置きが必要ですね」
「同感です、お嬢様」
だけど、どうやら二人には子どもの無邪気ないたずらはお気に召さなかったようだ……。
「ま、まあまあ、男の子のいたずらなんて、可愛いものじゃないですか……」
「「ハア!? 何を言っているのですか!?」」
な、何故か二人に怒られてしまった……。
「はあ……アデル様には、もう少し目を養っていただく必要がありますね……」
「本当です……そうでないと、私達は休まることができませんから……」
二人から、非常に残念なものを見るような視線を送られてしまった。
じょ、女性のことはよく分からない……。
あ、そうだ。
「ライラ様、ハンナさん、せっかくなのでこのお菓子をあの子達にも食べさせてあげてはいかがでしょうか? メルも美味しそうにしてましたし」
「お嬢様、そうしましょう。そして、もう二度とあんな真似をしないよう、メルに釘を刺しておくのです」
「それは妙案です!」
も、目的は違うけど、どうやら二人共賛成みたいだ。
ということで。
「すいませんが、お菓子をあと八……「「私も食べます!」」……十個作ってもらっていいですか……?」
「あいよ!」
親父さんは威勢よく返事すると、手際よく次々と小麦粉の生地を焼いていく。
そして、あっという間にお菓子を十個用意してくれた。
「へい! お待ち!」
「あ、ありがとうございます」
お代を払ってお菓子を受け取ると、僕達は屋台を後にして地下水路へと向かう。
「あれ? あの子は……」
地下水路の入口のところに男の子……テオが一人立っていた。
「やあ、テオ」
「っ!? あ、は、はい……」
声を掛けると、テオは一瞬驚いた顔をしたかと思うと、どこか気まずそうに俯いてしまった。
前もおどおどしていたし、結構人見知りなのかな……。
「ええと、メルや他のみんなは中にいる?」
「あ、うん……た、多分……」
「そっか。あ、これ」
僕はテオにお菓子を一つ渡す。
「これは……」
「あはは、おすそ分けだよ」
そう言うと、何故かテオは少し悲しそうな表情を浮かべた。
「あ、ありがとうございます……!」
「あ、テオ……」
テオはお菓子を持ったまま、ここから走り去ってしまった。
「どうしたんだろう……?」
僕はテオが消えた建物の角を眺めながら、首を傾げた。
「アデル様、早く行きましょう」
「あ、はい」
ライラ様に促されて僕も地下水路の中へと入り、子ども達のねぐらへと目指した。
だけど。
「誰もいない……」
どういうことだ?
子ども達は人攫いの連中を警戒して、メルとテオ以外はここで隠れている筈……。
「お嬢様! アデル様!」
ハンナさんが突然僕達を呼んだ。
「どうしました!?」
「これを……!」
ハンナさんが指差すところに明かりを照らしてみると……これは、血痕……!?
「っ!? ま、まずい! 子ども達が攫われた!」
「やっぱり……! 急ぎましょう!」
僕達は大急ぎで地下水路から出ると。
「僕は北門を見てきます! ライラ様は南門を! ハンナさんは街の人に聞き込みをお願いします!」
「「はい!」」
そう指示を出すと、僕達は弾かれたようにそれぞれの場所に向かう。
そして、街の北門に着いた僕は、辺りをくまなく見回すが……クソツ! どこにもそれらしき連中は見当たらない!
「す、すいません! この門を怪しい男達か、もしくは大型の馬車が通ったりしませんでしたか?」
「い、いや、そんな連中は見てないが……お前は知ってるか?」
「俺も見てないなあ……」
北門を護る衛兵二人に尋ねるが、二人共目撃していないようだ。
その様子からも嘘を言っているようには見えないし……。
「あ、ありがとうございました!」
「「お、おう……」」
衛兵に礼を言うと、今度は街の広場へと向かう。
住民の誰かに目撃者がいるかもしれない……とにかくハンナさんと合流しよう。
「あ! アデル様!」
「ハンナさん! どうですか?」
「駄目です! 誰も目撃している人はいません! そちらは?」
「こちらも同じです! 衛兵にも聞いてみましたが、そんな連中は門を通過していないと!」
クソツ! 誰か一人くらい目撃してると思ったのに……!
その時。
「アデル様! ハンナ!」
ライラ様も広場へとやって来た。
ただし……その白銀の手でテオを引きずって。
ヘイドンの街に滞在して五日目。
僕達は今日もあの屋台で買ったお菓子を食べている。
「ですが、二人共本当にそのお菓子を気に入りましたね」
「「はい♪」」
うん、まあ……二人が幸せそうで何よりです……って。
「ライラ様、ちょっと失礼しますね」
「? ……………………あ」
僕はライラ様の口の周りに付いていた生クリームを指で拭き取ると、その指をくわえて舐め取った。
「あう……アデル様はいつも無自覚にそうやって……」
するとライラ様は、顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。
少し子ども扱いしてしまったから、怒ってしまったのかな……。
「……お嬢様、少々あざといのではないのでしょうか」
指で眼鏡をクイ、と持ち上げ、ハンナさんがジト目でライラ様を見るけど、何で!?
その時。
「はむ!」
「「「あっ!」」」
突然現れたメルが、僕のお菓子にかぶりついた。
「へへーん! 油断するニーチャンが悪いんだよ!」
「コノヤロー!」
鼻をこすりながら笑顔で逃げるメルに、僕は笑いながら抗議した!
メルもあの日以降、かなり明るくなったような気がする。
初めて出会ったあの時は、メルの瞳に余裕なんて何一つなかったからなあ……。
「……メルには少々お仕置きが必要ですね」
「同感です、お嬢様」
だけど、どうやら二人には子どもの無邪気ないたずらはお気に召さなかったようだ……。
「ま、まあまあ、男の子のいたずらなんて、可愛いものじゃないですか……」
「「ハア!? 何を言っているのですか!?」」
な、何故か二人に怒られてしまった……。
「はあ……アデル様には、もう少し目を養っていただく必要がありますね……」
「本当です……そうでないと、私達は休まることができませんから……」
二人から、非常に残念なものを見るような視線を送られてしまった。
じょ、女性のことはよく分からない……。
あ、そうだ。
「ライラ様、ハンナさん、せっかくなのでこのお菓子をあの子達にも食べさせてあげてはいかがでしょうか? メルも美味しそうにしてましたし」
「お嬢様、そうしましょう。そして、もう二度とあんな真似をしないよう、メルに釘を刺しておくのです」
「それは妙案です!」
も、目的は違うけど、どうやら二人共賛成みたいだ。
ということで。
「すいませんが、お菓子をあと八……「「私も食べます!」」……十個作ってもらっていいですか……?」
「あいよ!」
親父さんは威勢よく返事すると、手際よく次々と小麦粉の生地を焼いていく。
そして、あっという間にお菓子を十個用意してくれた。
「へい! お待ち!」
「あ、ありがとうございます」
お代を払ってお菓子を受け取ると、僕達は屋台を後にして地下水路へと向かう。
「あれ? あの子は……」
地下水路の入口のところに男の子……テオが一人立っていた。
「やあ、テオ」
「っ!? あ、は、はい……」
声を掛けると、テオは一瞬驚いた顔をしたかと思うと、どこか気まずそうに俯いてしまった。
前もおどおどしていたし、結構人見知りなのかな……。
「ええと、メルや他のみんなは中にいる?」
「あ、うん……た、多分……」
「そっか。あ、これ」
僕はテオにお菓子を一つ渡す。
「これは……」
「あはは、おすそ分けだよ」
そう言うと、何故かテオは少し悲しそうな表情を浮かべた。
「あ、ありがとうございます……!」
「あ、テオ……」
テオはお菓子を持ったまま、ここから走り去ってしまった。
「どうしたんだろう……?」
僕はテオが消えた建物の角を眺めながら、首を傾げた。
「アデル様、早く行きましょう」
「あ、はい」
ライラ様に促されて僕も地下水路の中へと入り、子ども達のねぐらへと目指した。
だけど。
「誰もいない……」
どういうことだ?
子ども達は人攫いの連中を警戒して、メルとテオ以外はここで隠れている筈……。
「お嬢様! アデル様!」
ハンナさんが突然僕達を呼んだ。
「どうしました!?」
「これを……!」
ハンナさんが指差すところに明かりを照らしてみると……これは、血痕……!?
「っ!? ま、まずい! 子ども達が攫われた!」
「やっぱり……! 急ぎましょう!」
僕達は大急ぎで地下水路から出ると。
「僕は北門を見てきます! ライラ様は南門を! ハンナさんは街の人に聞き込みをお願いします!」
「「はい!」」
そう指示を出すと、僕達は弾かれたようにそれぞれの場所に向かう。
そして、街の北門に着いた僕は、辺りをくまなく見回すが……クソツ! どこにもそれらしき連中は見当たらない!
「す、すいません! この門を怪しい男達か、もしくは大型の馬車が通ったりしませんでしたか?」
「い、いや、そんな連中は見てないが……お前は知ってるか?」
「俺も見てないなあ……」
北門を護る衛兵二人に尋ねるが、二人共目撃していないようだ。
その様子からも嘘を言っているようには見えないし……。
「あ、ありがとうございました!」
「「お、おう……」」
衛兵に礼を言うと、今度は街の広場へと向かう。
住民の誰かに目撃者がいるかもしれない……とにかくハンナさんと合流しよう。
「あ! アデル様!」
「ハンナさん! どうですか?」
「駄目です! 誰も目撃している人はいません! そちらは?」
「こちらも同じです! 衛兵にも聞いてみましたが、そんな連中は門を通過していないと!」
クソツ! 誰か一人くらい目撃してると思ったのに……!
その時。
「アデル様! ハンナ!」
ライラ様も広場へとやって来た。
ただし……その白銀の手でテオを引きずって。
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる