機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第三章 復讐その三 ハリー=カベンディッシュ

遭遇

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 ハンナさんが驚いた表情を見せるが、その理由は僕にも分かる。

 だって……入口の向こうから、むせかえるような血の匂いが漂ってきたのだから。

「この地の匂いは一体……」
「分かりません……ですが、少なくとも何か・・がこの中で起こっているかと……」

 僕の呟きに、ハンナさんが答える。
 その何か・・というのが、最悪の事態を招いていなければいいけど……。

「とにかく……行きましょう」
「「はい……」」

 ハンナさんを先頭に、僕達は建物の中に入る。
 だけど、血の匂いは充満しているけどその原因となる死体などは見当たらない。

「……血の匂いは、この上から漂ってきますね」

 ハンナさんが警戒しながらゆっくりと階段を上る。

 そして。

「これは……!?」
「どうしました、ハンナさん?」

 驚くハンナさんの後ろから覗き込む。

 すると。

「うっ……!?」

 そこには、男達数人の死体が転がっていた。

「この連中は……人さらい、か……?」

 僕は、どこからどう見ても怪しい恰好をした連中の死体を確認する。
 ……鋭利な刃物で綺麗に切断されてる。

 チラリ、と周りの壁や家具を確認するけど……特に傷や荒れた様子がない。

 それでも、ここまで見事に連中を仕留めているんだ。
 コイツ等を殺した相手は、相当な手練れだな……。

「ハンナさん……」
「ええ……とにかく、この建物をくまなく探しましょう……」

 ハンナさんの言葉に、僕とライラ様は無言で頷いた。

 僕達は二階を隅々まで探索した後、また一階へと戻る……その前に、僕はチラリ、と転がる死体のうちの一つを見やった。

 この顔……この街のどこかで見かけたような……?

「アデル様」
「はい、行きましょう」

 ライラ様に促され、僕はかぶりを振って足早に階段を下りた。

「ですが、二階にもあの子達がいないとなると、一体どこに……」
「少々お待ちください」

 そう言うと、ハンナさんがゆっくりと、まるで確かめるようにウロウロと歩く。

 そして。

「……どうやらここのようです」

 ハンナさんがコンコン、とつま先で叩いた。

 僕は傍に寄り、床に手をかざすと。

「【加工キャスト】」

 床の一部を破壊すると、下へと続く階段があらわになる。

「この下に、メル達が……」

 そう呟いた後、僕は階段に足を踏み入れようとすると。

「アデル様、私が先頭を歩きます」
「ライラ様……では、お願いします」

 コクリ、と頷くライラ様に先頭を譲り、僕達は下へと降りる。

「そんな……!?」

 僕達は思わず絶句する。

 だって……人攫いの連中も、子ども達も、みんな裸の状態で全身を切刻まれ、全て死んでいたから。

「っ!? メル!?」

 そして、男……あのお菓子の屋台の親父と繋がったまま・・・・・・、目を見開いたメルが親父の下敷きになった状態で死んでいた。

 その瞳から零れる涙と、無念の表情を浮かべながら。

「クソオッ!」

 僕は親父を蹴飛ばし、汚物と血で汚れたメルを抱きかかえると、その瞳に手を当て……そっと閉じてやった。

「なんで……なんで……!」
「「アデル様……」」

 ライラ様とハンナさんが、僕に寄り添ってくれた。
 まるで、僕の心を慰めるように。

「クハハ! いやあ、まさかここで出くわすとはなあ!」
「「「っ!?」」」

 僕達は一斉にその声のする方向へと視線を向けると、どこからともなく、愉快そうに笑う男が現れた。

 コイツは一体……。

「……師匠」
「「師匠!?」」

 唐突に放たれたハンナさんの言葉に、僕とライラさんは思わず聞き返した。
 師匠って、ハンナさんを買った貴族から救った、あの……!?

「クハハ、久しぶりじゃねえか……って、そうでもねえか」

 師匠と呼ばれた男は、苦笑しながら頭を掻く。
 その様子は、どこか憎めないというか、そんな印象を受けた。
 だけど……この師匠と呼ばれた男は、人さらいはおろか、子ども達までその手に掛けたんだ。

「師匠……どうして……?」
「ん? その『どうして』ってのは、どれのことだ? 俺がここにいることか? それとも皆殺しにしたことか?」
「両方、です……」
「両方ねえ……」

 すると師匠と呼ばれた男は、顎をさすりながら思案する仕草を見せた。

「クハ、まあいいか。じゃあまず、俺がここにいる理由だけど、お前達の動向を探るように依頼を受けたんだよ」

 ……『依頼を受けた』、か。
 つまり、この男の依頼人は国王もしくはその側近といったところか。

「その依頼人を教えていただくことはできますか……?」
「クハハ! 依頼人を明かす[暗殺者アサシン]がどこにいんだよ!」

 僕の問い掛けに、男は腹を抱えて笑う。
 まあ、教えてもらえるとは思っていなかったけど、ね……。

「し、師匠! では、どうしてここで暗殺を!」
「ん? オマエ等が菓子ばっかり食ってたから暇でなあ。つーか、まさか人さらいの元締めの手作り菓子を美味そうに食ってるお前等を見た時は、面白過ぎて笑い転げたけどな」
「っ!」

 男の言葉に、ハンナさんは少し悔しそうに唇を噛んだ。

「クハハ! んで、コイツ等を皆殺しにした理由なんて、俺の姿を見た奴は全員殺すに決まってるだろ?」

 男はそう語りながら、部屋に転がる死体をニヤニヤしながら眺める。

「……それは、私達も・・・、ですか……?」
「クハ、ご明察♪」

 すると、男が突然……壁にもたれた!?
 な、何もしないのか……?

「あは♪」

 “死神”モードになったライラ様が、死神の鎌を振り上げると、一歩前に進もうとする。

 すると。

「お嬢様! お待ちください!」

 ハンナさんが焦りながらライラ様を制止した……っ!?

 ——スウ。

 ピタリ、と止まったライラ様の首筋に、一本の赤い線が走る。

「ハンナさん! これは……!?」
「……アデル様、覚えていますか? モーカムの街で見た、あの大道芸人を」
「大道芸人……………………あ」

 あの時の、空中で止まったように見せた、あの大道芸人か!?

「クハハ、まあお前なら気づくわな。つーか、わざと見せたんだけどよ」

 男はおどけながら正解だと告げる。
 ということは、ライラ様の首元に見えない金属の糸が!?

「ハンナさん、どうしますか……?」
「……私がアデル様の周囲にあるを解除して師匠と刃を交えます。その隙に、アデル様はお嬢様と……」
「解除、ですか……でしたら」

 僕は床に手をつくと、そっと呟く。

「——【加工キャスト】」
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