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第三章 復讐その三 ハリー=カベンディッシュ
宰相の末路
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「……“エドガー=フォン=アルグレア”」
僕はこの国の王の名を、ポツリ、と呟いた。
その威厳に満ちた表情と姿は、まさに王と呼ぶに相応しいものである。
だが……この男が、ライラ様を絶望の底に叩き落したんだ。
「国王陛下の御前である! 平伏せよ!」
国王のお付きの一人が僕達をジロリ、と一瞥した後、尊大な口調で僕達に命令した。
「……うふふ、殺しますか?」
ハンナさんがお付きの男を見て微笑んだ後、僕にそっと耳打ちする。
「そのようなことはせずともよい。此度は、この国の王として臣下であるカートレット卿に謝罪に参ったのだ」
「「「謝罪!?」」」
僕達三人は、国王の予想外の言葉に思わず聞き返した。
「うむ……」
国王は髭を触りながらチラリ、と側近の一人を見やると、側近が一歩前に出て話し始める。
「ハッ! ご報告します! 王国による調査の結果、我が国の宰相“ハリー=カベンディッシュ”侯爵がカートレット伯爵家が所有するアイザックの街を手に入れようと画策し、軍務大臣“ジェームズ=ゴドウィン”侯爵と共謀、 “ルーク=カートレット”伯爵を賊の仕業に装って襲撃していたことが判明いたしました」
ライラ様達を襲撃した事件について、つらつらと述べる側近の一人。
「……此度は誠に悲しい事件であった……大切な部下であり、友人でもあったルークを失ったことは、痛恨の極みである。部下である宰相と大臣を御せなかったこと、カートレット卿には心より謝罪する」
そう言うと、国王はライラ様に向かって頭を下げた。
「……連れてまいれ」
「ハッ!」
国王はまたもや側近の一人を見やってそう告げると、その側近は王宮内へと戻り騎士に両脇を抱えられた男を連れて来た。
「宰相……」
そう……宰相であるハリー=カベンディッシュ、その人であった。
宰相は混乱した表情を浮かべたまま僕達の前に連行されると、騎士に無理やり首を押さえられ、額を地面に擦りつけた。
「この者こそが、カートレット卿の両親を殺した張本人である。本来ならば法に則り然るべき処罰をするところであるが、余の謝罪の証として、この者の生殺与奪の権をカートレット卿に与える」
「っ!? へ、陛下!?」
「控えよ!」
国王の言葉に勢いよく頭を上げ、驚きの声を上げる宰相。
だが、それも騎士の手によって再度抑えつけられると、猿轡を着けられて一切の発言を制限された。
「さあ、カートレット卿よ。好きにするがよい」
「んん!? んーっ!?」
国王の両手を広げて促すと、宰相は涙目で何かを訴えている。
だが、猿轡のせいで何を言っているか分からない。
「ライラ様」
僕はライラ様の傍に寄り、そっとその名前を耳打ちする。
僕の意図を汲み取ったライラ様は軽く頷いた後、死神の鎌を肩に担ぎ、宰相の前に仁王立ちした。
「んーっ! んんーっ!?」
「あは♪」
——ザシュ、ザク、ゴリ。
「んんんんんんんんんんんんん!?」
「あはははは! 私と同じようになった気分はどうですか!」
ライラ様は宰相の両腕と両脚を切断し、くぐもった絶叫を上げる宰相を壊れた笑顔で見下ろす。
その横で、僕とハンナさんは宰相がすぐに死んでしまわないようにポーションをふりかけた。
「あはははは……はあ、つまらないですね」
どうやら宰相の反応がお気に召さなかったライラ様は、宰相の首元に鎌の刃をピタリ、と当てると。
「あは♪ 向こうで恋人と仲良くなさいな♬」
「んんんんんんんんんん——————————!?」
——ザシュ。
無情な音と共に、涙や鼻水、よだれにまみれた顔が、ゴロン、と地面に転がった。
残された首から下は、噴水のように血しぶきをあげながら。
「ふむ……これで、卿の無念は晴らせたか?」
「…………………………」
ライラ様は国王の問い掛けを無視し、無念の表情を浮かべる宰相の顔をジッと眺めている。
「……まあよい。今回の件によってモーカムの街及びその周辺地域について、統治者が不在なっておる。ついては、カートレット卿には、ゴドウィン侯爵の旧領を与えると共に、現在の伯爵位から侯爵位に陞爵する」
「「「っ!?」」」
国王の宣言に僕達は思わず息を飲んだ。
陞爵!? ライラ様が!?
「後のことについては、追って沙汰を出す。それまではアイザックの街で励むがよい」
そう言うと、国王はその身を翻し、また王宮内へと戻って行った。
僕達と死体だけを残したまま。
「「……アデル様」」
「ええ……とにかく時間は稼げました。しばらくは、その時が来るまで準備を進めましょう……」
僕は、王宮の玄関をジッと見据えながら、二人にそう告げた。
……ハッキリ言って、国王が何を考えているのかまるで分からない。
ここにきて何故、国王は宰相を人身御供に差し出し、かつ、ライラ様を陞爵までさせて、取り繕うような真似を……。
「「アデル様……」
見ると、ライラ様とハンナさんが心配そうな表情で僕を見ていた。
僕はそんな二人を見て、かぶりを振ると。
「すいません……では、帰りましょうか」
「「はい」」
そう言うと、二人は静かに頷く。
そして僕達は、胸の中にしこりが残りながらも、無理やり胸を張って王宮の正門から堂々と出る。
その時、ライラ様はクルリ、と振り返ると。
「……………………あは♪」
いつか王を討ち取るその日を想い、口の端を吊り上げた。
僕はこの国の王の名を、ポツリ、と呟いた。
その威厳に満ちた表情と姿は、まさに王と呼ぶに相応しいものである。
だが……この男が、ライラ様を絶望の底に叩き落したんだ。
「国王陛下の御前である! 平伏せよ!」
国王のお付きの一人が僕達をジロリ、と一瞥した後、尊大な口調で僕達に命令した。
「……うふふ、殺しますか?」
ハンナさんがお付きの男を見て微笑んだ後、僕にそっと耳打ちする。
「そのようなことはせずともよい。此度は、この国の王として臣下であるカートレット卿に謝罪に参ったのだ」
「「「謝罪!?」」」
僕達三人は、国王の予想外の言葉に思わず聞き返した。
「うむ……」
国王は髭を触りながらチラリ、と側近の一人を見やると、側近が一歩前に出て話し始める。
「ハッ! ご報告します! 王国による調査の結果、我が国の宰相“ハリー=カベンディッシュ”侯爵がカートレット伯爵家が所有するアイザックの街を手に入れようと画策し、軍務大臣“ジェームズ=ゴドウィン”侯爵と共謀、 “ルーク=カートレット”伯爵を賊の仕業に装って襲撃していたことが判明いたしました」
ライラ様達を襲撃した事件について、つらつらと述べる側近の一人。
「……此度は誠に悲しい事件であった……大切な部下であり、友人でもあったルークを失ったことは、痛恨の極みである。部下である宰相と大臣を御せなかったこと、カートレット卿には心より謝罪する」
そう言うと、国王はライラ様に向かって頭を下げた。
「……連れてまいれ」
「ハッ!」
国王はまたもや側近の一人を見やってそう告げると、その側近は王宮内へと戻り騎士に両脇を抱えられた男を連れて来た。
「宰相……」
そう……宰相であるハリー=カベンディッシュ、その人であった。
宰相は混乱した表情を浮かべたまま僕達の前に連行されると、騎士に無理やり首を押さえられ、額を地面に擦りつけた。
「この者こそが、カートレット卿の両親を殺した張本人である。本来ならば法に則り然るべき処罰をするところであるが、余の謝罪の証として、この者の生殺与奪の権をカートレット卿に与える」
「っ!? へ、陛下!?」
「控えよ!」
国王の言葉に勢いよく頭を上げ、驚きの声を上げる宰相。
だが、それも騎士の手によって再度抑えつけられると、猿轡を着けられて一切の発言を制限された。
「さあ、カートレット卿よ。好きにするがよい」
「んん!? んーっ!?」
国王の両手を広げて促すと、宰相は涙目で何かを訴えている。
だが、猿轡のせいで何を言っているか分からない。
「ライラ様」
僕はライラ様の傍に寄り、そっとその名前を耳打ちする。
僕の意図を汲み取ったライラ様は軽く頷いた後、死神の鎌を肩に担ぎ、宰相の前に仁王立ちした。
「んーっ! んんーっ!?」
「あは♪」
——ザシュ、ザク、ゴリ。
「んんんんんんんんんんんんん!?」
「あはははは! 私と同じようになった気分はどうですか!」
ライラ様は宰相の両腕と両脚を切断し、くぐもった絶叫を上げる宰相を壊れた笑顔で見下ろす。
その横で、僕とハンナさんは宰相がすぐに死んでしまわないようにポーションをふりかけた。
「あはははは……はあ、つまらないですね」
どうやら宰相の反応がお気に召さなかったライラ様は、宰相の首元に鎌の刃をピタリ、と当てると。
「あは♪ 向こうで恋人と仲良くなさいな♬」
「んんんんんんんんんん——————————!?」
——ザシュ。
無情な音と共に、涙や鼻水、よだれにまみれた顔が、ゴロン、と地面に転がった。
残された首から下は、噴水のように血しぶきをあげながら。
「ふむ……これで、卿の無念は晴らせたか?」
「…………………………」
ライラ様は国王の問い掛けを無視し、無念の表情を浮かべる宰相の顔をジッと眺めている。
「……まあよい。今回の件によってモーカムの街及びその周辺地域について、統治者が不在なっておる。ついては、カートレット卿には、ゴドウィン侯爵の旧領を与えると共に、現在の伯爵位から侯爵位に陞爵する」
「「「っ!?」」」
国王の宣言に僕達は思わず息を飲んだ。
陞爵!? ライラ様が!?
「後のことについては、追って沙汰を出す。それまではアイザックの街で励むがよい」
そう言うと、国王はその身を翻し、また王宮内へと戻って行った。
僕達と死体だけを残したまま。
「「……アデル様」」
「ええ……とにかく時間は稼げました。しばらくは、その時が来るまで準備を進めましょう……」
僕は、王宮の玄関をジッと見据えながら、二人にそう告げた。
……ハッキリ言って、国王が何を考えているのかまるで分からない。
ここにきて何故、国王は宰相を人身御供に差し出し、かつ、ライラ様を陞爵までさせて、取り繕うような真似を……。
「「アデル様……」
見ると、ライラ様とハンナさんが心配そうな表情で僕を見ていた。
僕はそんな二人を見て、かぶりを振ると。
「すいません……では、帰りましょうか」
「「はい」」
そう言うと、二人は静かに頷く。
そして僕達は、胸の中にしこりが残りながらも、無理やり胸を張って王宮の正門から堂々と出る。
その時、ライラ様はクルリ、と振り返ると。
「……………………あは♪」
いつか王を討ち取るその日を想い、口の端を吊り上げた。
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