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第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
書斎探索①
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「うーん……特に何も見つかりませんねえ……」
本棚から取り出した本をパラパラとめくりながら、僕はそう呟く。
先代伯爵様の書斎に来た僕達は、早速四人で手分けしてソフィア様の言う『天国への階段』の手掛かりを探してもう数刻が過ぎ、お蔭で外もすっかり暗くなっていた。
「とりあえずこんな時間ですので、夕食にいたしましょう……」
少し肩を落とし、ライラ様がそう告げる。
「では、すぐにご用意いたしますので、お嬢様とソフィア様はそれまでおくつろぎくださいませ」
ハンナさんが優雅にカーテシーをすると。
「「あれ? アデル様は?」」
ライラ様とソフィア様が口を揃えて不思議そうに尋ねる。
「あ、あはは……僕は侍従ですので……」
僕は苦笑しながら頭を掻く。
というか、ライラ様は僕がそういう設定だということはご存知ですよね?
「うふふ、お二人を待たせてもいけませんので、早く準備に取り掛かりましょう」
「わ! ハンナさん!?」
そう言うと、ハンナさんは微笑みながら僕の右腕をグイ、と引っ張り、僕は少しよろけてしまい……。
——ムニュ。
「あ……うふふ♪」
咄嗟に出した左腕が、ハンナさんの胸をつかんでしまった!?
「あ、あああああ!? すいませんすいません!」
僕は慌てて左手を引っ込める。
「うふふ、大丈夫ですよ……アデル様なら(ボソッ)」
頬を赤くしたハンナさんがはにかむ。
うう……何というか、その……申し訳ないと思いつつも、ハンナさんが可愛くて仕方ない……。
すると。
「むううううううううううううううう!」
あ、はい、ライラ様が頬をプクーと膨らませておりました。
「アデル様、私の胸も負けておりません」
何故か対抗意識を燃やしたソフィア様が、見事な双丘をグイ、と突き出した……って、何してるんですか!?
「そそ、それでは失礼します!」
「「あ!」」
僕はハンナさんの手を取り、声を上げるライラ様とソフィア様を無視して書斎を出た。
「ふう……あ、あははー、参りましたね……」
僕は額を流れる冷や汗をグイ、と腕で拭い、苦笑しながらハンナさんに話し掛ける。
「……わ、私の胸でよろしければ、いつでも……」
「ああああああああああ!?」
潤んだ瞳で、グッと両腕で胸を持ち上げるハンナさんに恥ずかしくなり、僕は一人ダッシュで厨房へ逃げた。
……まあ、結局はハンナさんと合流するんだけどね。
◇
「ご馳走様でした」
食事を終えたソフィア様が、ナプキンで口を拭く。
「ふふ、ソフィア様のお口に合いましたでしょうか?」
「はい、大変美味しかったです」
ライラ様が尋ねると、ソフィア様はニコリ、と微笑みながら賛辞を述べた。
「ですが……」
すると、ソフィア様はチラリ、と僕の顔を覗き込む。
その表情は、少し心配をしているように見受けられた。
「ああ、僕達は後でいただきますので。ね、ハンナさん」
「うふふ……はい」
ティーカップに紅茶を注ぎながら、ハンナさんが頷く。
「それよりも、この後も書斎で手掛かりを探しますか?」
「はい。一刻も早く、『天国への階段』の調査に乗り出したいですので」
僕の問い掛けに、さも当然とばかりにソフィア様は頷く。
そしてそれは、ライラ様も同じ思いらしく、ソフィア様と同様にウンウン、と頷いていた。
「分かりました。僕とハンナさんも後片づけが終わり次第、そちらに加わりますので」
「「はい!」」
ライラ様とソフィア様が嬉しそうに返事する。
というかこの二人、意外と仲が良い?
ということで、ライラ様とソフィア様は席を立ち、また書斎へと向かって行った。
「うふふ、お嬢様も必死ですね」
二人が出て行った扉を見つめながら、ハンナさんがクスリ、と微笑みながらそう呟いた。
「ええと……それはどういうことですか?」
僕は意味が分からず、ハンナさんに尋ねる。
「お嬢様は、早くその『天国への階段』というものを見つけて、ソフィア様にここから立ち去って欲しいのですよ」
「ああー……」
そうかー、だからライラ様はこんなに頑張ってたのかー……って。
「ですが、見ている限りは二人共仲が良さそうですけど?」
「あくまでも表面上は、ですね。二人共、隙あらばアデル様に手を出そうとするので、お互い牽制し合っている、といったところでしょうか?」
「あ、あははー……」
ハンナさんの言葉に、僕は苦笑するしかなかった。
「それにしても……ソフィア様はなんでそこまで僕に興味を持ったのでしょうか?」
「さあ……」
これには僕もハンナさんも首を傾げるばかりだ。
あの王都の噴水での一件があったとはいえ、それだけでここまであの[聖女]様に懐かれるなんて到底思えない。
それに……。
「……ハンナさん。いずれにせよ、あのソフィア様からは目を離さないようにしましょう」
「……それはどうしてですか?」
ハンナさんが訝し気な表情で尋ねる。
「はい……なんとなく、ではあるのですが……どうしても気になってしまって……」
「そうですか……」
ハンナさんはそれ以上僕に聞いてくることはなかったが、どこか腑に落ちないといった感じだった。
僕もハッキリと説明できればいいんだけど、応接室を出る時のソフィア様の表情……だけではさすがに説明もつかない。
とはいえ、警戒しておくに越したことはない。
万が一、ソフィア様がライラ様とハンナさんに危害を加えるような真似をするのであれば……。
——その時は、容赦はしない。
本棚から取り出した本をパラパラとめくりながら、僕はそう呟く。
先代伯爵様の書斎に来た僕達は、早速四人で手分けしてソフィア様の言う『天国への階段』の手掛かりを探してもう数刻が過ぎ、お蔭で外もすっかり暗くなっていた。
「とりあえずこんな時間ですので、夕食にいたしましょう……」
少し肩を落とし、ライラ様がそう告げる。
「では、すぐにご用意いたしますので、お嬢様とソフィア様はそれまでおくつろぎくださいませ」
ハンナさんが優雅にカーテシーをすると。
「「あれ? アデル様は?」」
ライラ様とソフィア様が口を揃えて不思議そうに尋ねる。
「あ、あはは……僕は侍従ですので……」
僕は苦笑しながら頭を掻く。
というか、ライラ様は僕がそういう設定だということはご存知ですよね?
「うふふ、お二人を待たせてもいけませんので、早く準備に取り掛かりましょう」
「わ! ハンナさん!?」
そう言うと、ハンナさんは微笑みながら僕の右腕をグイ、と引っ張り、僕は少しよろけてしまい……。
——ムニュ。
「あ……うふふ♪」
咄嗟に出した左腕が、ハンナさんの胸をつかんでしまった!?
「あ、あああああ!? すいませんすいません!」
僕は慌てて左手を引っ込める。
「うふふ、大丈夫ですよ……アデル様なら(ボソッ)」
頬を赤くしたハンナさんがはにかむ。
うう……何というか、その……申し訳ないと思いつつも、ハンナさんが可愛くて仕方ない……。
すると。
「むううううううううううううううう!」
あ、はい、ライラ様が頬をプクーと膨らませておりました。
「アデル様、私の胸も負けておりません」
何故か対抗意識を燃やしたソフィア様が、見事な双丘をグイ、と突き出した……って、何してるんですか!?
「そそ、それでは失礼します!」
「「あ!」」
僕はハンナさんの手を取り、声を上げるライラ様とソフィア様を無視して書斎を出た。
「ふう……あ、あははー、参りましたね……」
僕は額を流れる冷や汗をグイ、と腕で拭い、苦笑しながらハンナさんに話し掛ける。
「……わ、私の胸でよろしければ、いつでも……」
「ああああああああああ!?」
潤んだ瞳で、グッと両腕で胸を持ち上げるハンナさんに恥ずかしくなり、僕は一人ダッシュで厨房へ逃げた。
……まあ、結局はハンナさんと合流するんだけどね。
◇
「ご馳走様でした」
食事を終えたソフィア様が、ナプキンで口を拭く。
「ふふ、ソフィア様のお口に合いましたでしょうか?」
「はい、大変美味しかったです」
ライラ様が尋ねると、ソフィア様はニコリ、と微笑みながら賛辞を述べた。
「ですが……」
すると、ソフィア様はチラリ、と僕の顔を覗き込む。
その表情は、少し心配をしているように見受けられた。
「ああ、僕達は後でいただきますので。ね、ハンナさん」
「うふふ……はい」
ティーカップに紅茶を注ぎながら、ハンナさんが頷く。
「それよりも、この後も書斎で手掛かりを探しますか?」
「はい。一刻も早く、『天国への階段』の調査に乗り出したいですので」
僕の問い掛けに、さも当然とばかりにソフィア様は頷く。
そしてそれは、ライラ様も同じ思いらしく、ソフィア様と同様にウンウン、と頷いていた。
「分かりました。僕とハンナさんも後片づけが終わり次第、そちらに加わりますので」
「「はい!」」
ライラ様とソフィア様が嬉しそうに返事する。
というかこの二人、意外と仲が良い?
ということで、ライラ様とソフィア様は席を立ち、また書斎へと向かって行った。
「うふふ、お嬢様も必死ですね」
二人が出て行った扉を見つめながら、ハンナさんがクスリ、と微笑みながらそう呟いた。
「ええと……それはどういうことですか?」
僕は意味が分からず、ハンナさんに尋ねる。
「お嬢様は、早くその『天国への階段』というものを見つけて、ソフィア様にここから立ち去って欲しいのですよ」
「ああー……」
そうかー、だからライラ様はこんなに頑張ってたのかー……って。
「ですが、見ている限りは二人共仲が良さそうですけど?」
「あくまでも表面上は、ですね。二人共、隙あらばアデル様に手を出そうとするので、お互い牽制し合っている、といったところでしょうか?」
「あ、あははー……」
ハンナさんの言葉に、僕は苦笑するしかなかった。
「それにしても……ソフィア様はなんでそこまで僕に興味を持ったのでしょうか?」
「さあ……」
これには僕もハンナさんも首を傾げるばかりだ。
あの王都の噴水での一件があったとはいえ、それだけでここまであの[聖女]様に懐かれるなんて到底思えない。
それに……。
「……ハンナさん。いずれにせよ、あのソフィア様からは目を離さないようにしましょう」
「……それはどうしてですか?」
ハンナさんが訝し気な表情で尋ねる。
「はい……なんとなく、ではあるのですが……どうしても気になってしまって……」
「そうですか……」
ハンナさんはそれ以上僕に聞いてくることはなかったが、どこか腑に落ちないといった感じだった。
僕もハッキリと説明できればいいんだけど、応接室を出る時のソフィア様の表情……だけではさすがに説明もつかない。
とはいえ、警戒しておくに越したことはない。
万が一、ソフィア様がライラ様とハンナさんに危害を加えるような真似をするのであれば……。
——その時は、容赦はしない。
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