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第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
地下水路探索⑦
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「……とにかく、まずは水をせき止めよう。【設計】【加工】【製作】」
僕はあえてカルラを見ないようにしながら地面に手をつき、水路の再構築と水門を設置した。
「す、すごいわね……」
後ろでそれを見ていたカルラは、驚きと感嘆が入り混じった声を漏らした。
「……これも、ライラ様とハンナさんがいたからこそ、できるようになったんだ」
「……そう」
僕はわざとそう告げると、カルラは特に興味がないとばかりの声で返事した。
「さあ……二人の元に戻ろう」
「ええ」
水門を閉じて水をせき止めた後、僕達はまた地下水路の中へと戻る。
「「アデル様!」」
僕の顔が見えるなり、二人が駆け寄ってきた。
「あはは、無事戻りました」
「はい……」
「うふふ、良かったです」
そう告げると、二人がはにかむ。
一方のカルラは、そんな僕達を無視して通路に上ってサッサと着替えを済ませていた。
……僕も着替えよう。
同じように通路に上がると、僕も装備に着替え、カバンを背負う。
「では、ソフィア様達のいるところへ戻りましょう」
「「はい!」」
「ええ!」
ライラ様とハンナさんがいつものように返事する。
そして、それはカルラも……。
すると二人は、僕とカルラを交互に見た。
恐らくカルラの様子から、水をせき止めた時に何かあったんじゃないかと勘繰っているんだろう。
だから。
「……大丈夫。僕は、誓って二人に後ろめたいようなことはありませんから」
「「あ……は、はい……」」
二人を安心させるためにそう話すと、二人は顔を赤らめながらホッと胸を撫で下ろした。
◇
「あ! アデル様! 皆さん!」
僕達が戻ると、ソフィア様が笑顔で出迎えてくれた。
“黄金の旋風”は……うん、やっぱり僕達を睨んでくる。
「……いい加減、そんな目で見られると目障りなんだけど」
「「「「っ!?」」」」
冷たく言い放ったカルラに、“黄金の旋風”の面々が思わず息を飲んだ。
まあ……まさかついさっきまで仲間だったカルラにそう言われたら、驚くに決まってるよな……。
とにかく。
「それで、紋様がある場所はどうでしたか?」
僕はそんなカルラと“黄金の旋風”を無視し、ソフィア様に尋ねる。
「はい、こちらです」
ソフィア様に案内され、下に降りる。
そこには……確かにあの紋様と、小さな穴が一つ開いていた。
「恐らく、この穴に鍵を差し込むのかと」
「ですね……」
ソフィア様の言葉に、僕は頷く。
書斎の隠し扉の先に羊皮紙と一緒に保管されていたあの鍵……それが、『天国への階段』へと至るための正真正銘の“鍵”ということか。
「では、早速開いてみますか?」
「お願いします」
ソフィア様の了承も得たので、僕はライラ様から鍵を受け取って鍵穴に差し込む。
「……動かないですね」
僕は鍵を右にも左にも回そうとするが、ピクリとも動かない。
これ……ここの鍵じゃないのかな……って、いやいや! ここじゃなかったらどこの鍵だっていうんだよ!?
「ひょ、ひょっとしたら錆びついているのかも……」
カルラが僕を擁護するかのようにそう呟くけど……そもそもこの水路、錆びたり腐食したりしない未知の素材でできてるんだから、それはあり得ないから。
「だ、だったら力づくで回してみましょう!」
ライラ様が僕とバトンタッチし、鍵に手を掛ける。
その時。
「っ……あああああああああ……っっ!?」
「ラ、ライラ様!?」
突然ライラ様が苦しみ出し、激しくもがく。
こ、これは一体どういうことだ!?
「っ! ライラ様っ! とにかく鍵を離してください!」
僕はライラ様の両肩をつかんで強く揺する。
だが。
「ああああああああああああああっっっ!?」
ライラ様は悲鳴を上げるばかりで、一向に鍵を離す気配がない!?
「アデル様! だ、駄目です! お嬢様が離してくれません!」
ハンナさんも必死でライラ様の手を引っ張るが、まるで動いていない。
そうしている間にもライラ様の悲鳴は大きくなり、その右の瞳から徐々に光が失われていく。
くそ……こうなったら……!
「あ! アデル様!」
「——【加工】!」
僕は鍵と鍵穴の部分に手を触れ、全力で能力を発動させた。
——ブシュウウウウ!
僕の顔中の穴から血が噴き出る。
だけど……だけどっ! このままだとライラ様がっ!
「ああああああああああああ!」
僕はさらに能力を強め、そして……。
——サアア……。
鍵と鍵穴は、砂へと変化した。
「ハアッ……ハアッ……!」
「「アデル様!」」
「アデルッ!」
ハンナさん、ソフィア様、カルラが一斉に僕の名を叫ぶ。
そしてカルラは、僕の身体に飛びついて支えてくれた。
「ぼ、僕のことはいい……! それよりも……ライ、ラ……様……は……!」
「お、お嬢様は無事です! 意識を失っていますがちゃんと息もあります!」
「よ、よか……った……」
「アデル!?」
ハンナさんの言葉に安堵した僕は、そのまま意識を手放そうとして……っ!?
「——【神の癒し】」
ソフィア様から放たれた淡く優しい光が、僕の身体を包み込む。
すると、あれほど激痛が走っていた全身の痛みが消え、瞬く間にその身体が癒えてゆく。
「こ……これは……」
呆然としながら、僕は両手を見つめる。
そう……気がつけば、僕の身体が元通りになったのだ。
「……ふう、良かった……」
ソフィア様が額を流れる汗を拭うと、ニコリ、と微笑んだ。
「い、今のは……?」
「はい、これは私の[聖女]の能力の一つ、【神の癒し】です」
「【神の癒し】……」
僕は無意識にソフィア様の言葉を繰り返す。
それほど……僕はソフィア様のその力に衝撃を受けてしまった。
いつもは限界を超えて[技術者]の力を発動すると、程度の差はあれ必ず意識を失い、身体の一部が壊れてしまうのに……。
「アデル様、その……大丈夫、なんですか……?」
ハンナさんがおそるおそる尋ねる。
事情を知っているハンナさんにしても、この奇跡が信じられないんだろう。
「はい……どこも、壊れたところはなさそうです……」
さすがに既に壊れてしまっている左眼と右手の感覚、それに舌は元通りという訳にはいかないけど、それでも……僕の身体が壊れなかったのは初めてだ。
「ソフィア様っ! ……ありがとう……ございます……!」
ハンナさんがぽろぽろと大粒の涙を零しながら、ソフィア様に感謝の言葉を伝える。
「いえ……私も、アデル様を癒すことができてよかったです……」
ソフィア様が慈愛に満ちた表情でささやく。
これが……[聖女]、か……。
僕はあえてカルラを見ないようにしながら地面に手をつき、水路の再構築と水門を設置した。
「す、すごいわね……」
後ろでそれを見ていたカルラは、驚きと感嘆が入り混じった声を漏らした。
「……これも、ライラ様とハンナさんがいたからこそ、できるようになったんだ」
「……そう」
僕はわざとそう告げると、カルラは特に興味がないとばかりの声で返事した。
「さあ……二人の元に戻ろう」
「ええ」
水門を閉じて水をせき止めた後、僕達はまた地下水路の中へと戻る。
「「アデル様!」」
僕の顔が見えるなり、二人が駆け寄ってきた。
「あはは、無事戻りました」
「はい……」
「うふふ、良かったです」
そう告げると、二人がはにかむ。
一方のカルラは、そんな僕達を無視して通路に上ってサッサと着替えを済ませていた。
……僕も着替えよう。
同じように通路に上がると、僕も装備に着替え、カバンを背負う。
「では、ソフィア様達のいるところへ戻りましょう」
「「はい!」」
「ええ!」
ライラ様とハンナさんがいつものように返事する。
そして、それはカルラも……。
すると二人は、僕とカルラを交互に見た。
恐らくカルラの様子から、水をせき止めた時に何かあったんじゃないかと勘繰っているんだろう。
だから。
「……大丈夫。僕は、誓って二人に後ろめたいようなことはありませんから」
「「あ……は、はい……」」
二人を安心させるためにそう話すと、二人は顔を赤らめながらホッと胸を撫で下ろした。
◇
「あ! アデル様! 皆さん!」
僕達が戻ると、ソフィア様が笑顔で出迎えてくれた。
“黄金の旋風”は……うん、やっぱり僕達を睨んでくる。
「……いい加減、そんな目で見られると目障りなんだけど」
「「「「っ!?」」」」
冷たく言い放ったカルラに、“黄金の旋風”の面々が思わず息を飲んだ。
まあ……まさかついさっきまで仲間だったカルラにそう言われたら、驚くに決まってるよな……。
とにかく。
「それで、紋様がある場所はどうでしたか?」
僕はそんなカルラと“黄金の旋風”を無視し、ソフィア様に尋ねる。
「はい、こちらです」
ソフィア様に案内され、下に降りる。
そこには……確かにあの紋様と、小さな穴が一つ開いていた。
「恐らく、この穴に鍵を差し込むのかと」
「ですね……」
ソフィア様の言葉に、僕は頷く。
書斎の隠し扉の先に羊皮紙と一緒に保管されていたあの鍵……それが、『天国への階段』へと至るための正真正銘の“鍵”ということか。
「では、早速開いてみますか?」
「お願いします」
ソフィア様の了承も得たので、僕はライラ様から鍵を受け取って鍵穴に差し込む。
「……動かないですね」
僕は鍵を右にも左にも回そうとするが、ピクリとも動かない。
これ……ここの鍵じゃないのかな……って、いやいや! ここじゃなかったらどこの鍵だっていうんだよ!?
「ひょ、ひょっとしたら錆びついているのかも……」
カルラが僕を擁護するかのようにそう呟くけど……そもそもこの水路、錆びたり腐食したりしない未知の素材でできてるんだから、それはあり得ないから。
「だ、だったら力づくで回してみましょう!」
ライラ様が僕とバトンタッチし、鍵に手を掛ける。
その時。
「っ……あああああああああ……っっ!?」
「ラ、ライラ様!?」
突然ライラ様が苦しみ出し、激しくもがく。
こ、これは一体どういうことだ!?
「っ! ライラ様っ! とにかく鍵を離してください!」
僕はライラ様の両肩をつかんで強く揺する。
だが。
「ああああああああああああああっっっ!?」
ライラ様は悲鳴を上げるばかりで、一向に鍵を離す気配がない!?
「アデル様! だ、駄目です! お嬢様が離してくれません!」
ハンナさんも必死でライラ様の手を引っ張るが、まるで動いていない。
そうしている間にもライラ様の悲鳴は大きくなり、その右の瞳から徐々に光が失われていく。
くそ……こうなったら……!
「あ! アデル様!」
「——【加工】!」
僕は鍵と鍵穴の部分に手を触れ、全力で能力を発動させた。
——ブシュウウウウ!
僕の顔中の穴から血が噴き出る。
だけど……だけどっ! このままだとライラ様がっ!
「ああああああああああああ!」
僕はさらに能力を強め、そして……。
——サアア……。
鍵と鍵穴は、砂へと変化した。
「ハアッ……ハアッ……!」
「「アデル様!」」
「アデルッ!」
ハンナさん、ソフィア様、カルラが一斉に僕の名を叫ぶ。
そしてカルラは、僕の身体に飛びついて支えてくれた。
「ぼ、僕のことはいい……! それよりも……ライ、ラ……様……は……!」
「お、お嬢様は無事です! 意識を失っていますがちゃんと息もあります!」
「よ、よか……った……」
「アデル!?」
ハンナさんの言葉に安堵した僕は、そのまま意識を手放そうとして……っ!?
「——【神の癒し】」
ソフィア様から放たれた淡く優しい光が、僕の身体を包み込む。
すると、あれほど激痛が走っていた全身の痛みが消え、瞬く間にその身体が癒えてゆく。
「こ……これは……」
呆然としながら、僕は両手を見つめる。
そう……気がつけば、僕の身体が元通りになったのだ。
「……ふう、良かった……」
ソフィア様が額を流れる汗を拭うと、ニコリ、と微笑んだ。
「い、今のは……?」
「はい、これは私の[聖女]の能力の一つ、【神の癒し】です」
「【神の癒し】……」
僕は無意識にソフィア様の言葉を繰り返す。
それほど……僕はソフィア様のその力に衝撃を受けてしまった。
いつもは限界を超えて[技術者]の力を発動すると、程度の差はあれ必ず意識を失い、身体の一部が壊れてしまうのに……。
「アデル様、その……大丈夫、なんですか……?」
ハンナさんがおそるおそる尋ねる。
事情を知っているハンナさんにしても、この奇跡が信じられないんだろう。
「はい……どこも、壊れたところはなさそうです……」
さすがに既に壊れてしまっている左眼と右手の感覚、それに舌は元通りという訳にはいかないけど、それでも……僕の身体が壊れなかったのは初めてだ。
「ソフィア様っ! ……ありがとう……ございます……!」
ハンナさんがぽろぽろと大粒の涙を零しながら、ソフィア様に感謝の言葉を伝える。
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