機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
110 / 146
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

『天国への階段』探索②

しおりを挟む
「ん?」

 一瞬、闇の中に何かが動いたように見えた。

「? どうしました?」

 左隣に座るハンナさんが不思議そうに尋ねる。

「あ、ああいえ……今、何かが動いたような気がしたんですが……」
「……本当ですか?」

 僕の言葉を聞いたハンナさんは、少し腰を浮かせて階段の先……闇の中を見据える。

「……ソフィア様、念のため僕達の後ろに回っていただけますか?」
「は、はい……」

 ソフィア様はメイスを手に取り、ゆっくり僕の後ろに回った。

「……誰、ですか?」

 ライラ様が死神の鎌を構えて正面に立ち、暗闇に向かってささやく。

 すると。

 ——ヒュッ。

 突然、ナイフが暗闇から飛んできた!?

「っ!」

 ライラ様は左眼を紅く輝かせると、左腕でそのナイフを弾いた。

「アデル様……四……いえ、五人います」
「五人……“黄金の旋風”ですか?」
「いえ……また違う連中です」
「っ!?」

 “黄金の旋風”じゃない!?
 じゃあここにいるコイツ等は一体誰なんだ!?

「っ! 来ます!」

 ライラ様の声と同時に暗闇から赤い帽子を被った子どもくらいの背格好をしたが飛び出し、僕達に襲い掛かってきた。

「あは♪」

 正面の一人が剣を突き出すよりも早く、ライラ様が鎌を横薙ぎに振るうと、敵の胴体が真っ二つになった。

 その瞬間。

「何っ!?」

 半分になった上半身を踏み台にして、仲間の三人が飛び上がり、上からナイフを次々と投げつけてきた。

「うふふ♪」

 ——ドン! ドン! ドン!

 フギンとムニンを構え、ハンナさんが微笑みながら弾丸でナイフを全て破壊……いや。

「ギャ!?」
「ガッ!?」

 赤い帽子の連中のうち、二人の額と心臓を撃ち抜いていた。

「っ!? 一匹逃した!」

 だけど、一人だけハンナさんの弾幕をかいくぐってソフィア様に迫る。

「っ! ソフィア様!」

 クソッ!? 躊躇ためらってる場合じゃないか!?

 僕は慌ててしゃがみ、そして。

「【加工キャスト】!【クラフ……!?」
「くふ♪」

 [技術者エンジニア]の能力を、限界を超えて発動させようとしたところで、ソフィア様の微笑む声が聞こえると。

 ——グシャ。

「ブベッ!?」

 ソフィア様がメイスを振るい、敵の頭を一撃でざくろ・・・のように潰した。

「ソ、ソフィア様……?」
「ふふ、それなりに護身術もたしなんでおりますので……」

 そう言ってソフィア様ははにかむけど……護身術って、そんなレベルじゃないですよね!?

「アデル様、とりあえずは全員倒したようです」

 ライラ様が残り一人を倒し、紅く輝く左眼で見回してからそう告げた。

「そうですか……ですが、この連中は一体……」

 僕は死体となった赤い帽子の連中の衣服などを調べる。
 しかし……顔は明らかに大人の風貌なのに、身体は十歳くらいの子どもと変わらないな……………………っ!?

 衣服をはぎ取ると、緑色の肌が現れた。

「これは……!」

 緑色の肌……まさか、ゴブリン!?
 いや、だけど、ゴブリンがあんなに見事な連携をするか!?
 それに、顔は人間のそれ・・だし……。

 さらに僕は衣服を調べる。
 すると、服の裏側に王国の紋章が刺繍されていた。

 つまり。

「……この連中は、王国の暗部、ということか」

 転がるゴブリンもどきの連中を一瞥し、僕はそう呟く。

「ですが……王国がなんでこの『天国への階段』に?」

 ライラ様が右の瞳で僕を見つめ、尋ねる。

「……分かりません。ですが、これで王国の目的はハッキリしました」

 これから僕は、少し残酷なことをライラ様に告げなくてはならない。
 ライラ様もそれを感じ取っているのか、ギュ、と白銀の拳を握った。

「王国は、この『天国への階段』を狙っている。そして……そのためにライラ様……カートレット伯爵家を襲ったのだと」
「…………………………っ!」

 ライラ様がキュ、と唇を噛み、血を流す。

「ソフィア様」
「……なんでしょうか?」

 僕は振り返り、ソフィア様に声を掛ける。
 ソフィア様も、僕が何を言いたいのか……何を聞きたいのか理解しているんだろう。
 その表情は、僅かに強張っていた。

「この『天国への階段』とは、一体何なのですか……?」
「……それは、以前にもお話した筈ですが」

 そう言うと、ソフィア様はそっと目を伏せた。

「ですが、まだあるんじゃないですか? この『天国への階段』には」
「…………………………」
「あるん、ですね?」
「…………………………(コクリ)」

 観念したのか、ソフィア様が静かに首を縦に振った。

「っ! それは! 一体何なのですかっ! 私達を絶望に追い込んで手に入れる程の……そんなものだとでも言うのですかっ!」
「ラ、ライラ様、落ち着いて!」

 ソフィア様の胸倉をつかんで詰め寄るライラ様を、僕は慌てて止める。
 ライラ様の右の瞳は、怒りに満ちていた。

「……本当に、聞かれるのですか?」
「「「っ!?」」」

 ソフィア様の雰囲気が変わる。
 先程までの慈愛をにじませたものではなく、無機質で、威厳に満ちたものに。

 だけど。

「……はい、教えてください。この、『天使への階段』がどういうものなのか」

 ライラ様は迷いのない瞳で即答した。

「分かりました……では、語りましょう」

 ソフィア様は僕達を見つめ、そして静かに告げる。

「——この『天国への階段』が、何なのかを」
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...