121 / 146
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
二人の想い
しおりを挟む
■ハンナ視点
「「っ!? アデル様!?」」
突然、師匠がアデル様とすれ違いざまに彼の身体を蹴り飛ばし……アデル様が穴の中へ……っ!?
気がつけば、私は走り出していた。
でもそれは私だけでなくて、お嬢様も。
「クハ! 待てよハンナ!」
師匠が私を止めようと手を伸ばすのが見える。
だけど。
——ドン!
「っ!?」
私はその師匠……いえ、アデル様を暗闇へと突き落とした憎き男、ジャックに対し、躊躇なくフギンの弾丸を撃つ。
それが予想外だったのか、師匠はそれを避けるのに精一杯で、私から距離を空けてしまった。
その隙に。
——タン。
私は、暗闇の穴の中へと飛び込んだ。
命綱もないのに。
下には、バケモノが待ち構えているのに。
私は、チラリ、と隣を見やる。
そこには、復讐で身を焦がすことでしか表情を変えることができなかったお嬢様が、今にも泣きそうな表情を浮かべながら、ただ暗闇のみを見据えている。
ああ……お嬢様も、本当に……。
この時、私の中にあったのは二つの感情。
一つは、アデル様を救うこと。
救えないのならば、せめてその最後の時をアデル様と共に……。
そして、もう一つ……。
絶望し、復讐を果たすことだけが全てだったライラ様の、それすらも放棄してしまう程のアデル様への愛に対する……私の、嫉妬。
アデル様への愛だけは、誰にも負けたくない。
それは、たとえお嬢様であっても。
だから。
——ドン! ドン! ドン! ドン!
私はクルリ、と反転して上を向くと、天井へとフギンとムニンの引き金を引いた。
その反動により、私の身体は穴の底に向けて加速する。
うふふ……これで、私のほうが先にアデル様にたどり着ける。そう思っていた。
でも。
——キイイイイイイイイイイイン……!
お嬢様はクロウ=システムを発動させ、そして。
「アデル様あああああああああああ!」
私を置き去りにして、一直線にアデル様へと飛び出して行った。
「悔しい……なあ……!」
私は涙を零しながら、ポツリ、と呟く。
あの、白銀の脚から青白い光を放つ、お嬢様の背中を見つめながら。
◇
■ライラ=カートレット視点
「アデル様あああああああああああ!」
私は暗闇に向かって叫ぶ。
愛しい……世界中の誰よりも愛しいアデル様を想って。
アデル様を突き落とすなどという暴挙に出たあの男を八つ裂きにするのは後回し。
今は、アデル様をお救いすることだけを考えるんだ!
私はクロウ=システムの出力をさらに上げ、穴の中へと突撃すると………………………いた!
私の左眼に、アデル様が半ば諦めるかのような表情で、穴へと吸い込まれていく姿が映った。
アデル様……私が来ましたから、もう大丈夫です……!
私はさらに……限界ギリギリで突き進む。
ああ……アデル様……!
このライラ=カートレット、今、あなたのお傍へと参ります……!
そして、とうとう右の瞳でもアデル様の姿を捉える。
アデル様は驚いた表情でこちらを見ているけど……ふふ、アデル様のそんな表情も可愛く、愛おしく想ってしまい、つい笑みが……………………って。
「私が……笑み、を……?」
私は思わず白銀の手で自分の頬を撫でる。
アデル様を想って、この私の表情が変わるだなんて……!
「ああ……! あああああ……!」
私は……私は……!
すると。
「ライラ様あああああああああああ!」
アデル様が必死で私の名を呼ぶ。
ただ、この私だけを見つめながら。
だから。
「アデル様あああああああああああ!」
私も、愛しいアデル様の名を必死で叫ぶ。
そして。
「アデル様!」
「ライラ様!」
捕まえた……とうとう、この腕の中にアデル様を……!
「本当に……ライラ様は……」
「ふふ……アデル様のいない世界に、何の価値がありましょう……」
私はアデル様に向け、おどけながら微笑みかけると、アデル様が息を飲んだ。
「ライラ様……その、お顔は……!」
「……あなたのお陰で、私は……取り戻せました……」
私の言葉に、アデル様の瞳から涙が溢れ出す。
「ライラ様……よかった……よかった……!」
「はい……はい……!」
私はクロウ=システムによってその場で静止すると、アデル様を抱き締める。
アデル様も、愛おしそうに私の頭を撫でながら、強く抱き締めてくれた。
そして。
「ん……ちゅ……」
アデル様が、優しく口づけをしてくれた。
「ライラ様……」
「アデル様……さあ、戻りましょう!」
「はい!」
——オオオオオオオオオオオオオ……。
穴の底からバケモノ共の声が聞こえる中、私はアデル様を抱き締めながらクロウ=システムで壁を滑るようにして昇る。
これは……あのヘイドンの街でハンナがフギンとムニンの訓練している時に見つけた、クロウ=システムの活用方法。
あの時、これを見つけておいてよかった……。
そのまま上昇を続ける私達。
そして。
「っ! ハンナ!」
紅く輝く私の左眼が、アデル様を追って頭から落下するハンナを捉えた。
「「っ!? アデル様!?」」
突然、師匠がアデル様とすれ違いざまに彼の身体を蹴り飛ばし……アデル様が穴の中へ……っ!?
気がつけば、私は走り出していた。
でもそれは私だけでなくて、お嬢様も。
「クハ! 待てよハンナ!」
師匠が私を止めようと手を伸ばすのが見える。
だけど。
——ドン!
「っ!?」
私はその師匠……いえ、アデル様を暗闇へと突き落とした憎き男、ジャックに対し、躊躇なくフギンの弾丸を撃つ。
それが予想外だったのか、師匠はそれを避けるのに精一杯で、私から距離を空けてしまった。
その隙に。
——タン。
私は、暗闇の穴の中へと飛び込んだ。
命綱もないのに。
下には、バケモノが待ち構えているのに。
私は、チラリ、と隣を見やる。
そこには、復讐で身を焦がすことでしか表情を変えることができなかったお嬢様が、今にも泣きそうな表情を浮かべながら、ただ暗闇のみを見据えている。
ああ……お嬢様も、本当に……。
この時、私の中にあったのは二つの感情。
一つは、アデル様を救うこと。
救えないのならば、せめてその最後の時をアデル様と共に……。
そして、もう一つ……。
絶望し、復讐を果たすことだけが全てだったライラ様の、それすらも放棄してしまう程のアデル様への愛に対する……私の、嫉妬。
アデル様への愛だけは、誰にも負けたくない。
それは、たとえお嬢様であっても。
だから。
——ドン! ドン! ドン! ドン!
私はクルリ、と反転して上を向くと、天井へとフギンとムニンの引き金を引いた。
その反動により、私の身体は穴の底に向けて加速する。
うふふ……これで、私のほうが先にアデル様にたどり着ける。そう思っていた。
でも。
——キイイイイイイイイイイイン……!
お嬢様はクロウ=システムを発動させ、そして。
「アデル様あああああああああああ!」
私を置き去りにして、一直線にアデル様へと飛び出して行った。
「悔しい……なあ……!」
私は涙を零しながら、ポツリ、と呟く。
あの、白銀の脚から青白い光を放つ、お嬢様の背中を見つめながら。
◇
■ライラ=カートレット視点
「アデル様あああああああああああ!」
私は暗闇に向かって叫ぶ。
愛しい……世界中の誰よりも愛しいアデル様を想って。
アデル様を突き落とすなどという暴挙に出たあの男を八つ裂きにするのは後回し。
今は、アデル様をお救いすることだけを考えるんだ!
私はクロウ=システムの出力をさらに上げ、穴の中へと突撃すると………………………いた!
私の左眼に、アデル様が半ば諦めるかのような表情で、穴へと吸い込まれていく姿が映った。
アデル様……私が来ましたから、もう大丈夫です……!
私はさらに……限界ギリギリで突き進む。
ああ……アデル様……!
このライラ=カートレット、今、あなたのお傍へと参ります……!
そして、とうとう右の瞳でもアデル様の姿を捉える。
アデル様は驚いた表情でこちらを見ているけど……ふふ、アデル様のそんな表情も可愛く、愛おしく想ってしまい、つい笑みが……………………って。
「私が……笑み、を……?」
私は思わず白銀の手で自分の頬を撫でる。
アデル様を想って、この私の表情が変わるだなんて……!
「ああ……! あああああ……!」
私は……私は……!
すると。
「ライラ様あああああああああああ!」
アデル様が必死で私の名を呼ぶ。
ただ、この私だけを見つめながら。
だから。
「アデル様あああああああああああ!」
私も、愛しいアデル様の名を必死で叫ぶ。
そして。
「アデル様!」
「ライラ様!」
捕まえた……とうとう、この腕の中にアデル様を……!
「本当に……ライラ様は……」
「ふふ……アデル様のいない世界に、何の価値がありましょう……」
私はアデル様に向け、おどけながら微笑みかけると、アデル様が息を飲んだ。
「ライラ様……その、お顔は……!」
「……あなたのお陰で、私は……取り戻せました……」
私の言葉に、アデル様の瞳から涙が溢れ出す。
「ライラ様……よかった……よかった……!」
「はい……はい……!」
私はクロウ=システムによってその場で静止すると、アデル様を抱き締める。
アデル様も、愛おしそうに私の頭を撫でながら、強く抱き締めてくれた。
そして。
「ん……ちゅ……」
アデル様が、優しく口づけをしてくれた。
「ライラ様……」
「アデル様……さあ、戻りましょう!」
「はい!」
——オオオオオオオオオオオオオ……。
穴の底からバケモノ共の声が聞こえる中、私はアデル様を抱き締めながらクロウ=システムで壁を滑るようにして昇る。
これは……あのヘイドンの街でハンナがフギンとムニンの訓練している時に見つけた、クロウ=システムの活用方法。
あの時、これを見つけておいてよかった……。
そのまま上昇を続ける私達。
そして。
「っ! ハンナ!」
紅く輝く私の左眼が、アデル様を追って頭から落下するハンナを捉えた。
0
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる