機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

二人の想い

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■ハンナ視点

「「っ!? アデル様!?」」

 突然、師匠がアデル様とすれ違いざまに彼の身体を蹴り飛ばし……アデル様が穴の中へ……っ!?

 気がつけば、私は走り出していた。
 でもそれは私だけでなくて、お嬢様も。

「クハ! 待てよハンナ!」

 師匠が私を止めようと手を伸ばすのが見える。

 だけど。

 ——ドン!

「っ!?」

 私はその師匠……いえ、アデル様を暗闇へと突き落とした憎き男、ジャックに対し、躊躇ちゅうちょなくフギンの弾丸を撃つ。
 それが予想外だったのか、師匠はそれを避けるのに精一杯で、私から距離を空けてしまった。

 その隙に。

 ——タン。

 私は、暗闇の穴の中へと飛び込んだ。

 命綱もないのに。
 下には、バケモノが待ち構えているのに。

 私は、チラリ、と隣を見やる。

 そこには、復讐で身を焦がすことでしか表情を変えることができなかったお嬢様が、今にも泣きそうな表情を浮かべながら、ただ暗闇のみを見据えている。

 ああ……お嬢様も、本当に……。

 この時、私の中にあったのは二つの感情。

 一つは、アデル様を救うこと。
 救えないのならば、せめてその最後の時をアデル様と共に……。

 そして、もう一つ……。
 絶望し、復讐を果たすことだけが全てだったライラ様の、それすらも放棄してしまう程のアデル様への愛に対する……私の、嫉妬。

 アデル様への愛だけは、誰にも負けたくない。
 それは、たとえお嬢様であっても。

 だから。

 ——ドン! ドン! ドン! ドン!

 私はクルリ、と反転して上を向くと、天井へとフギンとムニンの引き金を引いた。
 その反動により、私の身体は穴の底に向けて加速する。

 うふふ……これで、私のほうが先にアデル様にたどり着ける。そう思っていた。

 でも。

 ——キイイイイイイイイイイイン……!

 お嬢様はクロウ=システムを発動させ、そして。

「アデル様あああああああああああ!」

 私を置き去りにして、一直線にアデル様へと飛び出して行った。

「悔しい……なあ……!」

 私は涙を零しながら、ポツリ、と呟く。

 あの、白銀の脚から青白い光を放つ、お嬢様の背中を見つめながら。

 ◇

■ライラ=カートレット視点

「アデル様あああああああああああ!」

 私は暗闇に向かって叫ぶ。

 愛しい……世界中の誰よりも愛しいアデル様を想って。

 アデル様を突き落とすなどという暴挙に出たあの男を八つ裂きにするのは後回し。
 今は、アデル様をお救いすることだけを考えるんだ!

 私はクロウ=システムの出力をさらに上げ、穴の中へと突撃すると………………………いた!

 私の左眼に、アデル様が半ば諦めるかのような表情で、穴へと吸い込まれていく姿が映った。

 アデル様……私が来ましたから、もう大丈夫です……!

 私はさらに……限界ギリギリで突き進む。

 ああ……アデル様……!
 このライラ=カートレット、今、あなたのお傍へと参ります……!

 そして、とうとう右の瞳でもアデル様の姿を捉える。
 アデル様は驚いた表情でこちらを見ているけど……ふふ、アデル様のそんな表情も可愛く、愛おしく想ってしまい、つい笑みが……………………って。

「私が……笑み、を……?」

 私は思わず白銀の手で自分の頬を撫でる。
 アデル様を想って、この私の表情が変わるだなんて……!

「ああ……! あああああ……!」

 私は……私は……!

 すると。

「ライラ様あああああああああああ!」

 アデル様が必死で私の名を呼ぶ。
 ただ、この私だけを見つめながら。

 だから。

「アデル様あああああああああああ!」

 私も、愛しいアデル様の名を必死で叫ぶ。

 そして。

「アデル様!」
「ライラ様!」

 捕まえた……とうとう、この腕の中にアデル様を……!

「本当に……ライラ様は……」
「ふふ……アデル様のいない世界に、何の価値がありましょう……」

 私はアデル様に向け、おどけながら微笑みかけると、アデル様が息を飲んだ。

「ライラ様……その、お顔は……!」
「……あなたのお陰で、私は……取り戻せました……」

 私の言葉に、アデル様の瞳から涙が溢れ出す。

「ライラ様……よかった……よかった……!」
「はい……はい……!」

 私はクロウ=システムによってその場で静止すると、アデル様を抱き締める。
 アデル様も、愛おしそうに私の頭を撫でながら、強く抱き締めてくれた。

 そして。

「ん……ちゅ……」

 アデル様が、優しく口づけをしてくれた。

「ライラ様……」
「アデル様……さあ、戻りましょう!」
「はい!」

 ——オオオオオオオオオオオオオ……。

 穴の底からバケモノ共の声が聞こえる中、私はアデル様を抱き締めながらクロウ=システムで壁を滑るようにして昇る。

 これは……あのヘイドンの街でハンナがフギンとムニンの訓練している時に見つけた、クロウ=システムの活用方法。

 あの時、これ・・を見つけておいてよかった……。

 そのまま上昇を続ける私達。

 そして。

「っ! ハンナ!」

 紅く輝く私の左眼が、アデル様を追って頭から落下するハンナを捉えた。
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