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第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編
最後の夜
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「……では明日の正午までに港に集合してください。ベルネクス王国行きの船団はこちらで用意しておきますので」
グロウスター公爵は明日の段取りについて詳細を説明していく。
ライラ様もハンナさんも、そしてこの僕も集中して聞く中、ソフィアとカルラは真面目に聞いている様子は見受けられなかった。
カルラは全く興味がないといった感じで、つまらなそうにワインを口に含む。
そしてソフィアは、どこか悔しそうだった。
「? ソフィア様、どうされました?」
そんなソフィアの様子に気づいたグロウスター公爵が声を掛ける。
「……いえ、別に」
言いたくないのか、ソフィアがプイ、と顔を背けた。
まあ、どうでもいいか。
「それで……話はこれで終わりでしょうか?」
ライラ様が、グロウスター公爵に尋ねる。
「え、ええ、これで話は終わりです。執事長を船に搭乗させますので、不明な点等があれば、船上で尋ねてください」
「分かりました」
ライラ様は頷くと、ス、と席を立つ。
それを見た僕とハンナさんも、同じように席を立った。
「では、私達はこれで失礼します」
「はい……今日はありがとうございました……」
結局、僕達は料理もワインもほぼ手をつけることもないまま、部屋を出た。
グロウスター公爵も、これ以上話をしても無駄だということを悟っているのだろう。僕達のこの失礼な態度に、何も言うことはなかった。
「では、馬車を回してきます」
僕は二人から離れ、侍女に声を掛けて馬車の場所まで連れて行ってもらうと、馬車は屋敷の玄関から少し離れたところに控えていて、馬達が水を飲んでその身体を休めていた。
「……さあ、帰るよ」
馬首をポンポン、と優しく叩いて合図すると、御者席に座って手綱を手に取る。
そして、玄関へと馬車を回すと、僕の姿を見た二人が手を振ってくれた。
「ライラ様、ハンナさん、お待たせしました」
「アデル様……さあ、帰りましょう」
行きとは異なり、二人は公爵家の従者達の前でもはばからずに、社内ではなく御者席に乗った。
まあ、もう別に気を遣う必要もないし、それに……。
「ライラ様……」
僕は、ライラ様の肩をそっと抱き寄せた。
グロウスター公爵の前では気丈に振舞っていたけど、ライラ様は悔しい筈、つらい筈なんだ。
だから……せめて、僕達だけでもライラ様に寄り添いたいから……。
「ふふ……アデル様、あったかいです……」
ライラ様が僕の肩に頬を寄せる。
そして。
「……少しだけ……少しだけ、この、ままで……っ!」
……ライラ様が肩を震わせながら、声を殺して……泣いた。
◇
「それでは、おやすみなさい……それと、二人共明日があるんですから、程々にしてくださいね?」
ライラ様が少しおどけながら、僕とハンナさんにそう告げる。
「お嬢様、今日はこの国で最後の夜です。せっかくですから、この三人で一緒にいませんか?」
ハンナさんが眼鏡をクイ、と持ち上げながら提案した。
「あはは、そうですよ。最後の夜は、この三人で少し夜更かしをしましょう。これからの話をたくさんしながら」
「アデル様……! ハンナ……!」
ライラ様が、顔をくしゃくしゃにしながら僕の胸に抱きついた。
「さあ……部屋に入りましょう」
僕達は、ライラ様の部屋に一緒に入る。
「うふふ……では、下に行ってお酒とおつまみでも貰ってきますね」
ハンナさんが優雅にカーテシーをすると、部屋を出て行った。
「ハンナに……申し訳ないことをしてしまいましたね……」
「そんなこと、ないと思いますよ……? だって、ハンナさんも“妹”であるライラ様が気掛かりで、とても僕と二人でいられなかったと思いますし……」
それに……僕だって、ライラ様を一人にしたくなかったし……。
「ふふ……本当に、私は幸せです……」
涙ぐみながらも微笑むライラ様に、僕も微笑み返す。
「うふふ♪ お待たせしました♬」
ハンナさんがご機嫌な様子で扉を開けて部屋に戻ってきた。
右手にはワインのボトル、左手にはチーズや生ハム、それにバゲットの入ったカゴを持って。
「あ、じゃあグラス用意しますね」
僕は部屋に備え付けられているグラスを三つ取り出し、テーブルに並べる。
するとハンナさんがワインの栓を開け、グラスに注いだ。
「では、乾杯しましょう。ライラ様」
僕達はグラスを手に取ると、ライラ様に乾杯の音頭をお願いした。
「はい……二人共、これまでお疲れさまでした。今日はこのアルグレア王国で過ごす、最後の夜です」
「「…………………………」」
「この国での私達三人の過去は、決して良いものではありませんでした。ですが……この僅か数か月の間に、私達はこれ以上ない幸福を手にすることができました……」
そう言うと、ライラ様とハンナさんが僕のほうを見る。
僕も、二人を見つめた。
「私はこの幸せを、新しい地ではぐくんで行きたい。この、三人で……」
「「はい……」」
「その、私達の未来を祈念して……乾杯!」
「「乾杯!」」
僕達はグラスを掲げると、ワインを一気に呷った。
「ふふ……絶対に、幸せになりましょうね?」
「うふふ……お嬢様、きっとなります。だって」
「あはは……僕達三人、これからもずっと一緒なんですから」
僕達は、その日の夜遅くまで飲み明かした。
グロウスター公爵は明日の段取りについて詳細を説明していく。
ライラ様もハンナさんも、そしてこの僕も集中して聞く中、ソフィアとカルラは真面目に聞いている様子は見受けられなかった。
カルラは全く興味がないといった感じで、つまらなそうにワインを口に含む。
そしてソフィアは、どこか悔しそうだった。
「? ソフィア様、どうされました?」
そんなソフィアの様子に気づいたグロウスター公爵が声を掛ける。
「……いえ、別に」
言いたくないのか、ソフィアがプイ、と顔を背けた。
まあ、どうでもいいか。
「それで……話はこれで終わりでしょうか?」
ライラ様が、グロウスター公爵に尋ねる。
「え、ええ、これで話は終わりです。執事長を船に搭乗させますので、不明な点等があれば、船上で尋ねてください」
「分かりました」
ライラ様は頷くと、ス、と席を立つ。
それを見た僕とハンナさんも、同じように席を立った。
「では、私達はこれで失礼します」
「はい……今日はありがとうございました……」
結局、僕達は料理もワインもほぼ手をつけることもないまま、部屋を出た。
グロウスター公爵も、これ以上話をしても無駄だということを悟っているのだろう。僕達のこの失礼な態度に、何も言うことはなかった。
「では、馬車を回してきます」
僕は二人から離れ、侍女に声を掛けて馬車の場所まで連れて行ってもらうと、馬車は屋敷の玄関から少し離れたところに控えていて、馬達が水を飲んでその身体を休めていた。
「……さあ、帰るよ」
馬首をポンポン、と優しく叩いて合図すると、御者席に座って手綱を手に取る。
そして、玄関へと馬車を回すと、僕の姿を見た二人が手を振ってくれた。
「ライラ様、ハンナさん、お待たせしました」
「アデル様……さあ、帰りましょう」
行きとは異なり、二人は公爵家の従者達の前でもはばからずに、社内ではなく御者席に乗った。
まあ、もう別に気を遣う必要もないし、それに……。
「ライラ様……」
僕は、ライラ様の肩をそっと抱き寄せた。
グロウスター公爵の前では気丈に振舞っていたけど、ライラ様は悔しい筈、つらい筈なんだ。
だから……せめて、僕達だけでもライラ様に寄り添いたいから……。
「ふふ……アデル様、あったかいです……」
ライラ様が僕の肩に頬を寄せる。
そして。
「……少しだけ……少しだけ、この、ままで……っ!」
……ライラ様が肩を震わせながら、声を殺して……泣いた。
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「それでは、おやすみなさい……それと、二人共明日があるんですから、程々にしてくださいね?」
ライラ様が少しおどけながら、僕とハンナさんにそう告げる。
「お嬢様、今日はこの国で最後の夜です。せっかくですから、この三人で一緒にいませんか?」
ハンナさんが眼鏡をクイ、と持ち上げながら提案した。
「あはは、そうですよ。最後の夜は、この三人で少し夜更かしをしましょう。これからの話をたくさんしながら」
「アデル様……! ハンナ……!」
ライラ様が、顔をくしゃくしゃにしながら僕の胸に抱きついた。
「さあ……部屋に入りましょう」
僕達は、ライラ様の部屋に一緒に入る。
「うふふ……では、下に行ってお酒とおつまみでも貰ってきますね」
ハンナさんが優雅にカーテシーをすると、部屋を出て行った。
「ハンナに……申し訳ないことをしてしまいましたね……」
「そんなこと、ないと思いますよ……? だって、ハンナさんも“妹”であるライラ様が気掛かりで、とても僕と二人でいられなかったと思いますし……」
それに……僕だって、ライラ様を一人にしたくなかったし……。
「ふふ……本当に、私は幸せです……」
涙ぐみながらも微笑むライラ様に、僕も微笑み返す。
「うふふ♪ お待たせしました♬」
ハンナさんがご機嫌な様子で扉を開けて部屋に戻ってきた。
右手にはワインのボトル、左手にはチーズや生ハム、それにバゲットの入ったカゴを持って。
「あ、じゃあグラス用意しますね」
僕は部屋に備え付けられているグラスを三つ取り出し、テーブルに並べる。
するとハンナさんがワインの栓を開け、グラスに注いだ。
「では、乾杯しましょう。ライラ様」
僕達はグラスを手に取ると、ライラ様に乾杯の音頭をお願いした。
「はい……二人共、これまでお疲れさまでした。今日はこのアルグレア王国で過ごす、最後の夜です」
「「…………………………」」
「この国での私達三人の過去は、決して良いものではありませんでした。ですが……この僅か数か月の間に、私達はこれ以上ない幸福を手にすることができました……」
そう言うと、ライラ様とハンナさんが僕のほうを見る。
僕も、二人を見つめた。
「私はこの幸せを、新しい地ではぐくんで行きたい。この、三人で……」
「「はい……」」
「その、私達の未来を祈念して……乾杯!」
「「乾杯!」」
僕達はグラスを掲げると、ワインを一気に呷った。
「ふふ……絶対に、幸せになりましょうね?」
「うふふ……お嬢様、きっとなります。だって」
「あはは……僕達三人、これからもずっと一緒なんですから」
僕達は、その日の夜遅くまで飲み明かした。
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