機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
138 / 146
第五章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 後編

ア=ズライグ①

しおりを挟む
 その“紅い竜”は異様だった。

 鼻の先に真っ直ぐに前へと伸びた角を持ち、大きなあぎとから覗く舌は、鋭利な槍のような形状をしていた。
 あかがねのような色をした鱗が全身を覆い、蝙蝠こうもりに似た大きな翼を羽ばたかせている。
 さらに、その巨体は港に停泊するどの舩よりも大きく、四本の手脚には何者をも切り裂くと思われる鋭い爪をあらわにしていた。

「こ……れが……“神の眷属”……」

 絶望したような声で、グロウスター公爵が呟く。
 だけど、この場にいる全ての者が、その圧倒的な姿に絶望しているだろう。

 だって……こんなの、どうしろっていうんだ……っ!

 そして。

「「「「「うわああああああああああああああああああ!?」」」」」

 港にいる全ての者が一斉に悲鳴を上げ、逃げ惑う。

 ある者は、海の中へと飛び込み。
 ある者は、建物の中へと隠れ。
 ある者は、船でこの場から離れようとし。
 ある者は、全身を震わせながらただ祈りを捧げる。

 ……そんなことをしても、無意味だというのに。

『ゴオオウウウアアアアアアアアアアッッッ!』

 “神の眷属”は、ブラムスの街全てに響き渡る程の咆哮を放つ。
 それを聞いた者達は、皆真っ青な表情でその場にへたり込んだ。

 ……それはもちろん、この僕も。

 そんな僕達の様子をあざけるかのように、“ア=ズライグ”は大きな口を開けると、口の中から閃光が走った。

 ——ドオオオオオオオオオオオンンン……!

 その閃光は一本の光の筋となり、その先にあった船が激しい音と共に次々と破壊され、海に沈んでいく。

 このたった一度の【竜の息吹ドラゴンブレス】で、港にあった船の三分の一程度が海の藻屑と化した。

 次に“ア=ズライグ”は、逃げ惑う人々へと目を付ける。
 大きな翼を羽ばたかせたかと思うと、“ア=ズライグ”が急降下した。

「ヒイッ!?」
「ハガガガガ!?」

 地面すれすれの低空飛行で旋回し、“ア=ズライグ”は人々をその口の中へ次々と攫って行く。

 ——ぼり、ぐしゃ、ぺき。

 ア=ズライグが咀嚼そしゃくするたび、ニンゲンが壊れる音が響き、その口元から鮮やかな赤色の雫が垂れた。

「あ……ああ……こんな……!?」

 僕と同様、地面で腰を抜かしているグロウスター公爵が、“ア=ズライグ”を絶望の表情で見上げながら、ずり、ずり、と少しずつ後ずさる。

 ——ギロリ。

 ……どうやら、今度は僕達に目を付けたみたいだ。

「……アデル様」

 気づくと、ライラ様とハンナさんが僕のすぐ後ろに控えていた。

「……私とハンナで何とか隙を作ります。その間に、アデル様はどうかお逃げください」
「っ!? な、何を!?」

 ライラ様の口から零れた衝撃の言葉に、僕は思わず声を荒げた。

「……あは♪ 大丈夫ですよ。あんな蜥蜴とかげ一匹、私達で仕留めてみせます」
「……うふふ♪ 私のフギンとムニンで、ハチの巣にしてやります」

 二人が身体を震わせながら強気の発言を繰り返す。
 この僕に心配かけまいと、精一杯の強がりで。

 そんな二人を見て、僕は……震えが止まった。

「あはは……なら、蜥蜴とかげ退治といきましょうか。僕達三人で」
「「っ!? アデル様!?」」

 二人が驚きの声を上げた、その瞬間。

「——【加工キャスト】!【製作クラフト】!」

『ゴア!?』

 ——ドオッ!

 僕は[技術者エンジニア]の能力を全開にして、“ア=ズライグ”の真下から勢いよく地面で突き上げた・・・・・・・・

 突然のことに驚いた様子の“ア=ズライグ”は、そのまま上空へと押し上げられていく。

「おおおおおおおおお! 【加工キャスト】!【製作クラフト】!」

 叫び声と共に地面を石や鉄、様々な物質に変化させ、“ア=ズライグ”を何重にも覆い、拘束した。

 さらに僕は、同時並行で【設計デザイン】する。

 あの、“ア=ズライグ”を倒す手段を。

「ぐうううううううううううううっ!?」
「「アデル様っ!?」」

 “神の眷属”を倒すっていうんだ。
 何度も超えた限界をさらに超え、これ以上ない程の激痛を味わうことは分かっていた。

 なら……耐えろ!

 僕はガキン、と歯が割れる程食いしばり、なおも【設計デザイン】を続ける。
 拘束して“ア=ズライグ”が身動き取れない、ほんの僅かな時間で答えを見つけるんだ……!

「【神の癒しキュア】!」

 いつの間にか僕の傍まで近寄っていたソフィアが、【神の癒しキュア】で僕の身体を治していく。

 くそ……しゃくだけど、今のこの状況じゃ頼るしかない……。

 そして。

「っ! 見えた!」

 無数に浮かび上がる図面が導き出した。

 ——ア=ズライグを倒すための、二つの答え・・・・・を。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...