機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

文字の大きさ
146 / 146
幕間⑥

地の底より来たりて

しおりを挟む
■???視点

「ふむ……久方振りの地上、であるな」

 おびただしく重なる“使徒”達の上に立ち、“崇高なるしゅ”は静かに呟いた。

「はい……この私めも、非常に懐かしく存じます」
「フ……“お主”にとっては、高々五百年の時など、あくびをする程度の時間に過ぎないであろうが」

 恭しく一礼しながら私はそう告げると、“崇高なる主”は口の端を持ち上げ、揶揄からかうようにそう言った。

「それで、“使徒”達はどうなっておる?」
「はい、既にこの街にいるニンゲン達で空腹を満たし、次の土地を目指しております」
「ふむ……で、あるか」

 “崇高なる主”は、その金色の顎髭をさすった。

「それで……この後・・・はどうなさいますか?」

 私は“崇高なる主”に尋ねる。
 五百年振りに『常世の門』の封印が解け、“崇高なる主”が久方振りにこの地上へと召されたのだ。

 あの時の恨み・・・・・・、ここで晴らすべきではあるのですが……恐らく、“崇高なる主”はそれをお求めにはならないでしょう……。

「フ……五百年前も今も、余の望みは変わらぬ」

 やはり……それでもなお、求めますか・・・・・
 もはや、そのようなものに何の価値もないというのに。

「承知しました。このアルビオニア島も一月のうちに全てのニンゲンが“使徒”の腹に収まることでしょう」
「む……それは困るな」

 私がそう話すと、“崇高なる主”はほんの僅かに顔をしかめた。
 ニンゲンのような下等なる生物に、まだ未練があるとでもいうのでしょうか……。

「……と、申しますと?」

 ですが、私はあえてそのことには触れ、平静を装って尋ねる。
 それを問い掛けてしまったら、この私のこれまでの想いが否定されてしまうと思ったから。

「うむ……“使徒”達の腹を満たすためにも、今後の供給のことを考えねばならん。そうなると、“家畜”として飼育することも視野に入れねばならぬからな」

 “崇高なる主”のそのお言葉を聞き、私は歓喜に震えた。
 まさか、“崇高なる主”が我々のためにそこまでお考えくださっていただなんて……!

「承知いたしました。でしたら、“使徒”達には、全体の一割程度は確保・・しておくように指示いたします。それと」

 私は“崇高なる主”の前へと出ると、その場で跪き。

「“家畜”の飼育につきまして、この私にお任せいただけますでしょうか」

 左胸に手を当て、そう願い出た。

 だが。

「いや、それは“ステノー”に任せるとしよう」
「……どうしてでしょうか。そのような大役、“ステノー”には難しいのでは……」

 私の申し出を断られてしまい、思わず“崇高なる主”に問いただしてしまった。
 ……いえ、これは“ステノー”への嫉妬、ですね。

「なに、簡単な話だ。そのような小事をわざわざお主に任せる程、余は愚かではない」
「っ!」

 “崇高なる主”の言葉に、私は思わず胸を詰まらせる。
 だって……今のお言葉は、この私めが“崇高なる主”にとって特別・・だとおっしゃっていただいているようなものなのだから。

「フ……近う」
「は、はい!」

 口元を緩めた“崇高なる主”に手招きされ、私は上ずった声で返事をするとそのお傍へと寄った。

 すると。

「ん……ちゅ……」

 “崇高なる主”は私を抱き寄せ、その高貴なるお口でこの私の口を塞がれた。

「ちゅ……ちゅく……ちゅぷ……」

 舌を絡め、私は“崇高なる主”を堪能する。
 それだけで、私は昇天してしまいそうになった。

「む……フフ、お主は余の大切な右腕なのだ。それを忘れぬように、な」
「はい……!」

 ああ……“崇高なる主”……!
 あなた様は、この私のでございます……!

「ところで……余が地上に遺した“戦術級使徒”はどうなっておる」
「は……」

 “崇高なる主”の問い掛けに、私は思わず言い淀んでしまう。

 “ベヘ=モト”に関しては、ゆっくりではあるがこの『常世の門』へと向かっているとの報告があった。
 一方……“ア=ズライグ”は……。

「申せ」
「ハ、ハッ! “ベヘ=モト”はこの『常世の門』を目指している最中でございます」
「そうか」

 そう言うと、“崇高なる主”は空を見上げた。

「“ア=ズライグ”は?」

 やはり、言わない訳にはいかないか……。

「ハ……“ア=ズライグ”は、“白銀の四肢を持つ者”によって葬られたようです……」
「ほう?」

 “崇高なる主”の眼光が鋭くなる。
 その視線に、私は俯いたまま唇を噛んだ。

 そもそも、ただの“使途”に蹂躙されるニンゲン共だ。
 本来であればあの“ア=ズライグ”が、ニンゲンがいくら束になってかかったところで、傷一つすらつけることはできない筈。

 だが……“ア=ズライグ”は倒されてしまった。
 それが、事実だ。

「フハハハハ! 面白い! 面白いではないか! 五百年の時を経て、ニンゲンは“戦術級使徒”を葬ることができる程の力をつけたか!」

 “崇高なる主”は嬉しそうに高らかに笑った。

「しゅ……主様?」
「ああいや、すまん。あまりにも嬉しくてな。それで、その“白銀の四肢を持つ者”とやらは?」
「イ、“イシュカ”からの報告によりますと、この島を既に出てしまったとのことです……」
「ふうむ……それは残念、であるな」

 “崇高なる主”は、がっかりした表情を浮かべ、肩を落とす。

「まあ、もうしばらくすれば大陸へと渡るのだから、その時の楽しみにしておくか」
「ハ……」

 私は“崇高なる主”に、改めて一礼する。

「うむ……では“ティティス”よ。引き続きアルビオニア島の制圧に取りかかるのだ」
「ハハッ!」

————————————————————————

お読みいただき、ありがとうございました!

お陰様をもちまして、これにて「機械仕掛けの殲滅少女」は第一部完結です!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

今後は、チョコチョコと閑話を入れつつ、夏ごろを目途に第二部「人魔大戦」編を再開予定です!

どうぞお楽しみに!
しおりを挟む
感想 64

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(64件)

花鳥風月(元オーちゃん)

アデルー!!(´;ω;`)
限界超えてまでやりおった(´;ω;`)
そして1度死に直面しての懸命な介護での帰還良かったヽ(;▽;)ノ

2021.05.16 サンボン

オーちゃんさん、コメントいただき、ありがとうございます!
はい、限界を超え、お嬢様に翼を、ハンナさんに弾丸を託しました!
さらに、聖女様と幼馴染まで魅せてくれました!
次回はいよいよア=ズライグ戦、決着!どうぞお楽しみに!
今後とも、どうぞよろしくお願いします!

解除
花鳥風月(元オーちゃん)

ソフィアさんマジでストーカー
最後の夜?•́ω•̀)?

2021.05.11 サンボン

オーちゃんさん、コメントいただき、ありがとうございます!
ストーカーではないと思いますが、ヤンデレなのは間違いありませんw
最後の夜の意味は、この国で過ごす最後の夜という意味です。
今後とも、どうぞよろしくお願いします!

解除
龍牙王
2021.05.06 龍牙王

ソフィア最後までつきまとうんかい

2021.05.06 サンボン

龍牙王さん、コメントいただき、ありがとうございます!
はい、結局つきまといますw
というか、物語のラストまでつきまとってくる予定ですwww
今後とも、どうぞよろしくお願いします!

解除

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。