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『漕げなくなった自転車』
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ペダルに足を置き、二回ほどこいだら、バランスが崩れて転倒した。初めて自転車に乗った時の記憶。
世界に一つだけになった島。二週間前に死んだじーちゃんが教えてくれた。バカなやつらが世界を巻き込んだ戦争をおっ始めて、ミサイルの雨と火の雨が一年以上続いた。そして静かになった時にはこんな島になっていた。今そこで見える海。戦争が始まる前はすぐそこに本土があってな、よく橋を渡って向こうまで買い物に行ったんだ。帰りは夕陽を背にして逃げるように帰宅するんだ。
そう言われたが、僕が大きくなって見る海は、どこを見渡しても地平線だ。生まれて十二年、変わらず岸辺でごろごろしながら、夜の晩飯の魚釣り。日が暮れ始め、夕陽が空を紅く染めている。
「こんな色の雨なんて想像つかねーよ」
僕は自転車に跨った。キコキコ自転車は鳴きながら、僕を連れていく。コイツがあれば島中をどこへでも行ける気がする。じーちゃんが死んだから、もう北の方の禁止区域に行っても誰も僕を怒ったりするものはいない。
釣った魚があまった。まだ僕は一人に慣れていない。
今日の勉強は算数の日。じーちゃんに決められた一日、一科目、二時間、休憩十分。これをやらないとじーちゃんは遊びに行くことを許してくれない。抜け出すとじーちゃんにどやされてしまう。まあ、もうそんな怒鳴り声を聞くことはないのだけど、なんだかサボる気になれない。サボらないのはじーちゃんとの思い出を消したくないからだ。
今日は悲しいことが起こった。自転車が壊れたのだ。じーちゃんが生きていたら直してくれたのに、僕はチェーンの切れた自転車を呆然と眺めた。
何もかも僕の目の前から消えていく。寂しさのあまりじーちゃんに固く禁止されていた。北の禁止区域に向かうことにする。あそこに行くと死ぬぞ! そんなことをじーちゃんは言っていた。地獄みたいなところだと……今の僕はそんなことどうでもいいのだ。誰もいないこの状況こそが地獄ではないのか? 地獄なら北の場所も隔たりなんてない。僕は歩いた。好奇心と恐れを一度に抱きかかえながら。
何日かけただろ? ようやく最果てにきた。荒れ果てた荒野が続いてるものだとばかり思っていたら、辺り一面綺麗な花畑であった。
岸壁に座り、海を見る。何もない海原を一日眺めた。日が目の前で落ちていく。綺麗だなと見ていると、突然夕陽の真ん中に黒い巨大なものが浮き出し水を吐き出した。そしてすぐに海の中に沈んでいった。あっけに取られた僕はただ言葉を失っていた。遅れてきた感動にいても立っていられず歓喜の声をあげた。僕はここに住むことに決めた。
その後、一年で僕は変わり果てた、髪の毛がなくなり下痢嘔吐を繰り返している。何故なんだろう? すごく苦しい。移住してから体調がずっと悪い。自分の住処の前に立てた看板にもたれかかる。住み着いた時、近くに落ちていた。黒い丸が中央にあり、黒い扇のような形のマークが三つ付いている。カッコいいと思って突き刺した。それを引っこ抜き、杖代わりにして岸壁までいく。またあの黒い巨大な塊がでないかを僕は待ち続けている。
世界に一つだけになった島。二週間前に死んだじーちゃんが教えてくれた。バカなやつらが世界を巻き込んだ戦争をおっ始めて、ミサイルの雨と火の雨が一年以上続いた。そして静かになった時にはこんな島になっていた。今そこで見える海。戦争が始まる前はすぐそこに本土があってな、よく橋を渡って向こうまで買い物に行ったんだ。帰りは夕陽を背にして逃げるように帰宅するんだ。
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