短いお話

クイン

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『帰るまでが修学旅行』

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 夏が過ぎ、秋の色が濃くなり始めた頃。とある小学生たちは修学旅行のため、先生とともにバスに乗っていた。賑やかなバス内は静まることを知らなかった。

「ねえ、『きーちゃんの呪い』って知ってる?」

 ある仲良しグループの女の子達は首を横に振る。

「なんでも修学旅行に行ったら帰れなくなるらしいの」

 こわーい、女の子たちの笑い混じりの可愛い悲鳴が響く。

 バスは、自然あふれる山道を走り、急カーブを曲がりトンネルへ……抜けると四方山で囲まれた集落が見えるのだった。

 バスは大きな広場に駐車した。小学生達は、各班に分かれ、泊めていただく家にそれぞれ向かった。

「ではよろしくお願いします」

 と先生の後に続けて、小学生達もお願いしますと言った。

「こちらこそ、よろしくね」

 気の良い老夫婦が、笑顔で子供達を迎えた。軽く自己紹介を終え、農作業や川遊びをし、夜は満天の星空の下、焚き火をした。家の中に入ると、大きなテーブルにホールのケーキが置いてかれていた。老婦人は

「子供たちが来ると知っていたから昨日町まで買いに行ってきたの」

 ケーキは六等分に切られ、みんなそれを残すことなく食した。

「毎年聞いていることだが、クラスは何人いるんだい?」

と老人が小学生たちに聞くと

「えっと……にじゅ……ふふ、うん。二十五人」

「へー、都会の子どもは多いんだね」

 感心する老人に一人の子が

「二クラスもあるんだよ」

 と言った。

「多いねー。いやーすごい。あー君たちの家はベットなのかな?」

 子供達は頷いた。

「布団で雑魚寝だけど大丈夫かい?」

 と老人は心配そうな顔をする。

「大丈夫だよ。平気」

 小学生たちは答えた。そして寝る準備をしていざ客室に行くと六つの布団が敷かれていた。皆、布団に入り、電気を消し眠ろうとした。風の音が窓を叩き、静かな家が揺れる。それを合図に一人の女の子が口を開いた。

「ねえ、変じゃない?」

 一緒に寝ていた女の子たちは、みな口を開いた子のほうに顔を向けた。

「どうしたの?」

「気になってたんだけど、一人多いのよ……」

 一同は理解できなかったのか隣同士顔を見合わせる

「よく考えてよ。修学旅行には二十五人で来ているのに、今ここに六人いるの……」

「それって何か問題があるの?」

 一人が恐る恐る尋ねる。

「バカ! 大アリよ。一クラス二十五人で班分けをしたら、六人グループになるところなんかないに決まっているでしょ」

 子ども達は自分を含む人数の確認をとった。

 1・2・3・4・5・6……。

 だれもが納得し、そして背すじから悪寒が走り、血の気が引いていく。

 古い家のため、ぎしぎしと誰かが歩いている床の音が響く。その音は小学生達の部屋の前で止まった。子どもたちは布団の中に隠れた。襖が開かれ、

「もう遅いから早く寝なさいね」

 と注意しにきたのは民泊の老婦人であった。

「よかった~」

 小学生達は、一気に安堵した。

 

「あーそれは、座敷童の仕業ね。この家に今住みついているのよ」

老婦人を囲む形で子どもたちは座っている。その姿は目を大きく見開き興奮していた。

「すごい! 本物の妖怪がここにいるなんて」

 みながざわつく。

「座敷童は幸せをもたらしてくれる妖怪、怖くないわ。会えたのはとてもラッキーなことよ。さ、明日も早いからみんなもう寝なさいね」

 といって襖は閉じられた。残された小学生達はみな顔を見合わせる。みな知っている顔であり、この中に座敷童がいるなんて誰も想像できなく、これ以上子供達は深く考えないことに決め、眠りに着いた。

 

 楽しい時間はあっという間に終わり、バスに乗る小学生達。名残おしそうにバスの窓から、やさしい老夫婦と家が小さくなっていく。バスはどんどんと進み、トンネルを潜り抜け急カーブに差し掛かった時、バスは大きく傾いた。バス内は悲鳴でいっぱいになり、誰にも気づかれることなく崖下に落ちていくのだった。

 その様子を老婦人はただ眺めていた。老婦人の家から急カーブのところはちょうど見える位置であった。

「今回も言い落ちっぷりね。毎年、現れるけど気分がいいわ」

 老婦人は満足した笑顔をしている。

 ここにきていた小学生たちは、五十年も前にバスの転落事故で亡くなっていた。唯一の生き残りは、いじめで登校拒否となり修学旅行に参加しなかった老婦人であった。彼女がまだ小学生の時分、献花に訪れた際、今自分が住んでいる家に泊まらせてもらった。その時、現れた座敷童に彼女は、ある願いをした。

「あの子たちは死んだことに気づかず、毎年修学旅行でここにきて楽しみ、突然の絶望に襲われ、痛みと恐怖を抱きながら死んでいく。私をいじめたあの子達が毎年そうなることが私の幸せ、座敷童が叶えてくれた幸せ。ふふふ……」

ただこのことで、老婦人はこの家から他所に移ることはできなくなった。しかし老婦人はそんなことなんとも思わなかった。老婦人は晴れやかな気持ちで手を合わせて、住んでいる家を拝む。

「菊子やー手伝ってくれ」

 自分を理解してくれる夫がずっといてくれる。老婦人は大きな声で返事をする。それは子どものように元気がよく、かつて老婦人がきーちゃんと可愛く呼ばれていた頃のように……。

 

――ねーきーちゃんの呪いって知ってる? 今年も修学旅行生たちの楽しい声が聞こえてくるのであった。
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感想 19

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みんなの感想(19件)

2023.05.07 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2023.05.07 クイン

ありがとうございます😊
また更新していきますので
よろしくお願いします。

解除
kyaox
2022.11.27 kyaox

怖い。が、集中して読んでしまった。

2022.11.27 クイン

お読みいただきありがとうございます^ ^
また更新していきますので、よろしくお願いします。

解除
けんじ
2022.11.07 けんじ

久しぶりに短編小説を読みましたが、インパクトがすごくて気づいたら引き込まれてました…!!

2022.11.07 クイン

感想ありがとうございます😊今後も更新していきますのでよろしくお願いします。

解除

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