上 下
14 / 14

第13話 初任務はゴブリンの巣の駆除という名のレベル上げ

しおりを挟む
 俺たちはゴブリンの巣に向かっていると、森の奥から魔物が現れた。先ほどのゴブリンの死骸で呼んでしまったのかもしれない。



「こいつらはウルフだ。見た目はオオカミと変わらないがとにかくスピードが速い。しかも個体によっては魔法を使う者もいる。気を抜くなよ」



 『ファイヤーボール』



 ファイヤボールをウルフが躱すと一気に距離を詰めてきた。



「は、速い!?」



 俺は咄嗟にウルフの右手の攻撃をブロンズソードの柄で防御した。

 俺は後ろに飛んで間合いを取ると、もう一匹のウルフが『遠吠え』を放った。



「な、何だ!? 体が動かない・・・・・・」



 俺の体が急に金縛りにでもあったかのように動かなくなった。その隙を見逃すウルフではなかった。吠えたウルフが俺にとびかかり今にも食い殺そうとしてくる。



「くそ、動け、動け・・・・・・動け―!!」



 ドスッ



 急に体が自由に動き、前を見るとウルフの首をグリムが装備していたナイフで刎ねていた。



「今のお前ではこいつの相手は二体以上はきついからな」



 グリムは「後の一帯は任せるぞ」と言って後ろにある樹に寄りかかって俺とウルフが戦うのを見てる。



 ウルフはグルルルッと興奮したように唸ると『遠吠え』を放った。



「同じ手はくらうか」



 俺は横っ飛びで躱し、『ファイヤーボール』を放つとまた躱された。ウルフは今度は『ウインドカッター』を放ってきた。俺は冷静にブロンズソードでウインドカッターを切り裂くと『ブリザード』を放った。ちょっと反応が遅れたウルフの足に当たり、氷漬けになった。身動きが取れなくなったウルフに『ファイヤボール』をぶつけ、粉々に砕いた。倒したウルフのところにドロップアイテムが出現し、中には毛皮コートが入っていた。冒険者カードで読み込むと詳細が出た。



 毛皮コート(ウルフ)・・・・・・ウルフを倒すとドロップすることがある。熱に強く、炎系の魔法は跳ね返すが、相手の実力によってはできない。レア度はR。



「役には立ちそうだな」



 俺は毛皮コート(ウルフ)を装備するとレベルも十になり、溜まったスキルポイントを使いフレイムバーストを熟練度五Max、最高まで上げた。残ったポイントは三。



 ウルフを倒して森の奥深くに行くといかにも怪しい洞窟が出てきた。



「ここが依頼にあったところか?」

「そうだ。間違いない。ちょっと待ってろ」



 グリムは依頼書を丸めて仕舞うと、洞窟の中を覗き、『サーチ』を発動した。中には魔物の気配が十匹反応があった。中には寝てるものもいるようだ。今がチャンスとしてこのことをレオスに伝えた。



「ライル。中のゴブリンは十匹ほどだ。いけるな」

「ああ、任せてくれ――あ、そうだ。一つ試したい魔法があるんだけどやっていいか?」

「? なんだかよくわからないがいいぞ」



 レオスは洞窟の入り口の前に立つと手をかざし、



『フレイムバースト』



 レオスから放たれた炎は凄まじい勢いで洞窟の中に広がっていき、しばらくするとゴブリンと思われる断末魔が響いた。



「よし!! 狙い通りだ」



 俺がガッツポーズして喜んでいると、グリムが後をかきながらやってきて



「・・・・・・お前、いくら魔物っといっても容赦ないな」

「倒せるときに倒しとかないと取り返しがつかないこともあるからな」



 レオスがどこか遠くを見ていることに気が付いて、そういや目の前で仲間を助けられなくったらしいからもう同じ過ちを繰り返したくないってことだろう。グリムは重くなった空気を一掃するように、



「さて、中がどうなったが確認に行くぞ」



 この時レオスはレベル十五に上がった。新たに覚えられるスキルは身体強化『オーバードライブ』。

ある一定時間パワー、スピードが何倍にもなる。ただし、その反動で効力が切れると十秒、無防備になる。



 一通り詳細を読んだレオスはこのスキルはいざというときに使うものと理解した。





 中に入ると魔物が焼けて獣臭がひどかった。



「こいつは派手にやったな」



 グリムが感心している。

 俺は辺りを見回してるとゴブリンのものと思われる棍棒や槍、弓矢を発見した。手に取ってみるとどれも俺には使いずらそうだった。その光景を見ていたグリムが、



「そこら辺に転がってる武器はいらなかったら町で売れるぞ」

「そうなのか・・・・・・でも、こんなには持っていけないな」

「冒険者カードを武器にかざしてみな」

「冒険者カードを? 何で!?」

「いいから。面白いことが起きるぞ」



 俺は言われたとおりに冒険者カードをかざした。すると、地面に転がってた武器が光ったと思うとカードに吸われていった。



 その光景を見てグリムが説明してくれた。



「冒険者カードはアイテムボックスにもなってるんだよ。だから、回収したいのはカードをかざせばとることができる。冒険者カードのアイテムってところを指で押すとジャンルごとに出てくるから売りたいものをその場でタッチすれば実体化してくれる。いまだにどういう仕組か誰もわかってないらしいんだけどすごいだろ」

「ああ、でも、取られたり失くしたりしたら危なくないか?」

「それは安心しろ。冒険者カードは登録者以外見ることはできないし、反応もしない。持ち主が死んだ場合もカードが消滅する。ちなみに持ち主が持っていたアイテムや金は所属ギルドに転送される。持ち主の死亡届と一緒にな」

「へ~、こんな便利なものがあるなら騎士団にも支給してくれたらよかったのに」

「そんなことは言うな。こいつを使えるのは冒険者の特権だぞ。でないと割に合わないぜ」



 そんなことをいいながら他に落ちているアイテムや武器がないか探していると地面が揺れたような気がした。



「なあ、グリム。今、地面が揺れなかったか?」

「気のせいじゃ――!?」



 今度は間違いじゃなかった。それにズシン、ズシンと何かがこちらに近づいてくる音がする。



『サーチ』



「こ、これは。近いぞ。油断するなライル。今まで戦ったやつよりやばいのが来ている」

「ああ、音が近い。どこだ・・・・・・」



 レオスが耳を澄ましていると壁からミシミシと音がして飛びのいた次の瞬間、



 ドッカーン!!!



 勢いよく壁が粉砕されて破片が降り注いだ。太陽の光が入り込み現れた者の姿を映し出した。



「こいつはゴブリンキングだ。B級以上の冒険者じゃないと立ち打ちできない。こいつは一緒に片付けるぞ」



 俺はグリムを手で制した。



「待ってくれ。ここは俺一人でやらせてくれ」



 まさか反対されると思ってなかったのかグリムが戸惑っていた。



「な、何を言ってるんだ。こいつは今までの奴とは違うんだ。お前の今のレベルでは無理だ。ここは一緒に――」

「それは分かってる。だけどこいつとは一対一でやらせてくれ。ここでこいつを倒せないようならキサラを、それにフレデリカも助ける事なんてできない。ここでこいつに打ち勝った時に前に進めるような気がするんだ。だから・・・・・・」

「・・・・・・ハア~、分かったよ。ただし、俺の判断で危ないと思ったら手を出すからな」



 グリムは後ろに後退した。



「待たせたな。このゴブリンヤロー。俺が相手だ」

「ギャァァァァァァァッ!!!!!!!」



 ゴブリンキングが駆けてくると斧を横凪に振りぬいた。俺はしゃがんで躱すとゴブリンキングの脇腹にブロンズソードを叩き込んだ。



「グギャッ」

「やったか・・・・・・そんな」



 ブロンズソードがゴブリンキングの皮膚をちょっと切っただけでとまっていた。



 ゴブリンキングは左手で俺のがら空きの腹に殴りつけてきた。



(これは避けれない)



 咄嗟に後ろに飛んだがくらって壁に叩きつけられた。



 俺はダメージを負ったもの何とか立ち上がった。



(後ろに飛んでなかったら今の攻撃で終わってたな)



 気持ちを切り替えると、



『フレイムバースト』



 炎の嵐がゴブリンキングに吹き荒れると斧を振りかざし炎を切り裂いた。



「何だと。 まさかあの斧は魔道具」



 魔道具とはあらかじめ一つの属性が封じ込まれている。その道具を持てば魔法を使えない人も扱うことができるという。炎を切り裂いたということはあの斧には風属性が封じ込まれてるんだろう。



(魔道具は魔力の代わりに使用回数があったはず。それを過ぎれば回復するまで使うことはできない。そこに勝機がある)



「と、普通は考えるだろうけどそんなちんたら戦ってたらこっちの魔力が先に底をついてしまう。ここは覚えたての魔法にかけるか」



俺は息を整えると、



『オーバードライブ』



 この効果は一分ほどしかない。俺は一気に勝負をつけるべく、高速移動で間合いを詰めた。そしてあらゆる方向からブロンズソードで切り刻んだが、致命傷にはなってない。



「グガァァァァァ!!」



 ゴブリンキングが斧を振りかざし、俺はそれにあわしてカウンターで、



『ブリザード』



 斧に命中し地面と一緒に氷づかせることに成功した。これでしばらくは使えないはずだ。



 俺はチャンスは今しかないと一気に畳みかけた。暫くすると膝が落ち、腕もだらんとさせてゴブリンキングの口が開いた。



「この時を待ってたんだ。『フレイムバースト』」



「グギャァァァァァァァッ!!!!!!」



 ゴブリンキングは断末魔を上げて燃えて灰になった。残されたのは斧だけだ。



「はぁはぁ、や、やった」



 俺の魔力はすっからかんになりその場で倒れた。



「お見事、よくやったな。今は寝ておけ」



 グリムが称賛を送った。



 冒険者カードからレベルが上がったお知らせが来てたが睡魔には勝てなかった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...