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第三章
ありえない
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再び紫檀の扉を通り、水晶邸の一室に戻ると、卓水付きの女官たちが驚いたように現れた未令と奈生金を出迎えた。
「卓水はいるか」
奈生金が尊大な態度で聞くと、女官たちは低頭して控えた。
「いえ、主はただいま宮城の方へ行っております」
その返事を聞き、奈生金はちっと舌打ちすると「来いっ!」と未令の腕を痛いくらい引っ張る。
勝手に日本へ還っていたことが、よほど気に食わないらしい。痛みに顔をしかめると、女官の一人が「あの……」と遠慮がちに進み出た。
「なんだ?」
「未令さまをどこへお連れになるおつもりですか? 主より、もし未令さまが来られるようなことがあれば、自分が戻るまで水晶邸にておもてなしせよと仰せつかっております」
「はっ」
奈生金は鼻で笑った。
「なぜ力もないただの小娘をおもてなしする必要がある。あいつもおかしなことを言う。勝手に血族を日本へ還らせたり、何を考えているんだ」
「ですがその、未令さまは焔将さまのご側妃となられましたので……」
「はぁ?」
奈生金は眉をしかめ、未令の全身を見下ろした。
「冗談はよせ。あの焔将さまがこんな小娘を側妃に? 笑わせるな。ありえんだろう。あのお方は今までどんな美姫が望まれようと、誰にも見向きもされなかったお方だぞ。それが、こんな小娘を? 力もないただの、こんなどこにでもいる小娘。とびぬけて美人というわけでもない。相手にされるわけがなかろう」
ずいぶんな言われようだ。
「ですが、私共は主よりそのように聞き及んでおりますので。勝手に未令さまを連れていかれては―――」
「―――黙れ。卓水には私から直接問いただす。この女は私が連れていく。そこをどけ!」
奈生金の大喝に、女官たちははっとしたように固まり、後ずさった。水の血族であるこの女官たちより、金の長、奈生金の地位は圧倒的に上だ。奈生金の有無を言わさぬ態度に、女官たちは押し黙った。
けれど主の卓水から命令されていたことを遂行できない焦りがあるのだろう。
これ以上の引き留めは無理だとわかりながらも、どうしたらいいのかとこちらを見てくる。
「卓水に会えればわたしから言っておくから。大丈夫。―――火の屋敷に行くんですよね?」
「そうだが、ひとまず私も宮城へ行く。おまえはそこで火の血族に引き渡す」
「―――宮城へ行くなら卓水にも会えるかもしれないし、ね」
彼女たちがきちんと仕事をしようとしたことはちゃんと伝える。
そう約束し、半ば引き摺られるようにして未令は宮城へ向かった。
「卓水はいるか」
奈生金が尊大な態度で聞くと、女官たちは低頭して控えた。
「いえ、主はただいま宮城の方へ行っております」
その返事を聞き、奈生金はちっと舌打ちすると「来いっ!」と未令の腕を痛いくらい引っ張る。
勝手に日本へ還っていたことが、よほど気に食わないらしい。痛みに顔をしかめると、女官の一人が「あの……」と遠慮がちに進み出た。
「なんだ?」
「未令さまをどこへお連れになるおつもりですか? 主より、もし未令さまが来られるようなことがあれば、自分が戻るまで水晶邸にておもてなしせよと仰せつかっております」
「はっ」
奈生金は鼻で笑った。
「なぜ力もないただの小娘をおもてなしする必要がある。あいつもおかしなことを言う。勝手に血族を日本へ還らせたり、何を考えているんだ」
「ですがその、未令さまは焔将さまのご側妃となられましたので……」
「はぁ?」
奈生金は眉をしかめ、未令の全身を見下ろした。
「冗談はよせ。あの焔将さまがこんな小娘を側妃に? 笑わせるな。ありえんだろう。あのお方は今までどんな美姫が望まれようと、誰にも見向きもされなかったお方だぞ。それが、こんな小娘を? 力もないただの、こんなどこにでもいる小娘。とびぬけて美人というわけでもない。相手にされるわけがなかろう」
ずいぶんな言われようだ。
「ですが、私共は主よりそのように聞き及んでおりますので。勝手に未令さまを連れていかれては―――」
「―――黙れ。卓水には私から直接問いただす。この女は私が連れていく。そこをどけ!」
奈生金の大喝に、女官たちははっとしたように固まり、後ずさった。水の血族であるこの女官たちより、金の長、奈生金の地位は圧倒的に上だ。奈生金の有無を言わさぬ態度に、女官たちは押し黙った。
けれど主の卓水から命令されていたことを遂行できない焦りがあるのだろう。
これ以上の引き留めは無理だとわかりながらも、どうしたらいいのかとこちらを見てくる。
「卓水に会えればわたしから言っておくから。大丈夫。―――火の屋敷に行くんですよね?」
「そうだが、ひとまず私も宮城へ行く。おまえはそこで火の血族に引き渡す」
「―――宮城へ行くなら卓水にも会えるかもしれないし、ね」
彼女たちがきちんと仕事をしようとしたことはちゃんと伝える。
そう約束し、半ば引き摺られるようにして未令は宮城へ向かった。
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