新しい世界で何をしよう?

ライドリア

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ギルド登録

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 少しばかり足止めを食らったけれど、その後は特にしつこく絡まれることなくカウンターまで来れた。カウンターまででアクスさんに気づいた冒険者の人はみんな「こんにちは」「よう!」「やっほー」と親しそうに話しかけていた。気軽に話しかけられるってことは信頼されている証だ。あんな風に周りから信頼される人間になりたいなと思う。アクスさんはカウンターに腰掛けて受付嬢のお姉さんと話している。

「こんにちは、本日はどのようなご用件でしょうか。」

「ああ、こっちの彼の冒険者登録をしたいんだが。」

「分かりました。それでは登録者本人とお代わりください。」

 アクスさんが席から立ち上がり僕が座るようにと促す。受付嬢さんは僕が座るのを笑顔で待っている。僕は緊張しつつ席に着いた。

「こんにちは。登録者様で間違い無いでしょうか。」

「はっ、はい。間違い無いでひゅ!」

 受付嬢さんが微笑ましそうな顔で見ている。思いっきり噛んでしまった。めっちゃ恥ずかしい。顔が熱い。これ絶対鏡見たら顔真っ赤になってるやつだ。もう無理。恥ずかし過ぎて前見れない。
もうこのまま下を向いていよう…。

「ごめんね、君みたいな子にはちょっと堅苦しすぎたよね。」

 受付嬢さんがなだめるような笑顔で話しかけてくれた。

「あの、すいません…。こういうのって慣れてなくて。つい緊張しちゃうんです。」

 実際こういう役場みたいなことをする機会はあまりなかったと思う。そもそも高校生だし役場なんて行く機会自体少ない。今は小中学生みたいな感じだけど。付け加えるとしたら受付嬢さん美人の女性なのもあるかも。

「うんうん、大丈夫だよ。君みたいな恥ずかしがりの人なんて受付してたらたくさん見るよ。でも君ぐらいの子が来るのは少ないかな?」

 受付嬢さんの悪戯っぽく笑いかけに僕は苦笑いで返すしかなかった。

「話が逸れちゃったね。本題に入ろっか。君はステータスプレートを作りにきたんだよね。」

 受付嬢さんの問いに頷く。

「オッケー。それじゃあ登録するにあたっての確認事項を説明するわね。」

 そこから受付嬢さんのステータスプレートについての説明をしてもらった。聞いたことを大まかに纏めるとこうだ。

・ステータスプレートは自分の能力を確認でき、それは常に最新の情報へと更新され続ける。

・ステータスプレートは身分証明となる。

・ステータスプレートを作るにはギルドに所属する、または役所で手続きをする必要がある。

・ギルドでのランクが上がってくるとお金を納める義務がある。

・犯罪に加担した場合、度合いによってはプレートを返還してもらう。返還の際にプレートの中身は初期化される。

 こんな感じだ。

「これで大体話し切ったけれど。大丈夫?ちゃんと理解できた?」

 受付嬢さんが心配そうに聞いてくる。確かに子供にとっては少し難しい内容だったかもしれない。

「大丈夫です。要は悪いことをしないで真面目に働けってことですよね」

「そうそう、ちゃんと分かってるわね。偉いぞ~。」ナデナデ

 受付嬢さんも僕がしっかり理解できているようでご機嫌だ。でも頭を撫でるのはちょっと恥ずかしいかな…。

「よしっ、細かい説明も終わったことだし早速作ろっか!」

 そう言うと受付嬢さんがカウンターの中をガサゴソと漁り始めた。

「えーと、確かこの辺に……あった!」

 そう言って取り出したのは四角いケースだった。あの中にプレートが入ってるのかな。そう思っていたが実際は違った。受付嬢さんが取り出したのは細い一本の針だった。それを見た瞬間に嫌な予感しかしなかった。

「それじゃあ手を出してもらえるかな。ちょっと痛いけど我慢してね。」

 ああ、やっぱりそういうやつね。体から血の気が引くような感覚がした。そんな僕の様子をまったく気にしていないように受付嬢さんが僕の腕を掴んだ。

「あのぉ、僕ってそういうのダメなんですよ…。だから…その…、ね?別の方法とかって無いですかね…?」

 何か別の方法があるはずと、少しでも希望を持ちたいと思い自分なりに必死に訴える。それに対する受付嬢さんの答えは…。

「ない♪」

 受付嬢さん会心の笑顔でした。その返答と同時に僕は手を振りほどこうと必死になる。

「ほら、君も男?なんだからシャンとしなさい!」

 受付嬢さんも僕を押さえつけようと必死になる。

「嫌です!普通の注射でも怖いのに手なんて余計に痛いじゃないですか!」

「これから冒険者になるんでしょ?だったら大きい怪我だってするかもしれないじゃない。これくらいでビビってどうするの!」

「それでも嫌なものは嫌なんですー!」

 さっきから暴れているけれど全く振りほどけない受付嬢さんの力が強すぎるのかそれともこの体の力が弱すぎるのか。多分後者だと思う。

「あーもう!これじゃあ埒があかない!アクス、貴方も手伝って!」

 受付嬢さんが僕の後ろで見守っていたアクスさんに助けを求めた。

「アクスさん!この人の手を振りほどくの手伝ってください!」

 こっちも負けじとアクスさんに助けを求める。アクスさんは呆れ気味にため息を吐いて僕の方へ寄ってくる。

「はぁ、今回はこのパターンか…」

 そう言って僕の腕と体を抑えた。

「アクスさん!?なんで僕の腕を抑えるんですか!?助けてくださいよ!」

 アクスさんの力は強く、体を押さえられたらどうやっても振りほどくことが出来なかった。

「悪いけどこれ以外に方法が無いんだ。我慢してくれ。」

「そんなぁ…」

 半泣き半ベソで懇願の顔をアクスさんに向けるが目をそらされてしまった。

「それにこの後…」

 アクスさんが何か言っていたがよく聞き取れなかった。それよりも今は目の前の状況だ。
完全に動きを封じられて動けない。

「はい、チクっとするねー。」

 指先に針が近づいてくのが怖くて目をグッと閉じる。次の瞬間指先にチクリと痛みが走る。

「はい終わり。ね、大丈夫だったでしょ?」

 目を開くと指先からぷっくりと小さな血の塊が出ていた。

「まったく、こういう子の時は手がかかるから疲れるわ。」

 受付嬢さんはため息をつくように言った。痛み自体は一瞬で終わったので大したことはなかった。終わってみれば呆気ないものであれだけ騒いでいたのが恥ずかしくなる。アクスさんも作業が終わったのを確認したので僕から離れた。

「そのまま指をこのプレートに押し付けてちょうだい。それで完成よ。」

 言われた通りに血の出た指をプレートに押し付ける。すると血がプレートに染み込んでいき、触れた部分から全体に波紋が広がっていく。波紋は何度も発生し広がっていくたびにうっすらと表面に文字が浮かび上がっていく。数分ほどでプレートの表面に完全に文字が浮かび上がった。

「よし、これで登録は完了。細かい説明は今からするわね。」

 受付嬢さんの言葉に「はい」と返す。

「プレートには主に君の情報や能力が書かれているわ。情報は階層構造になってて通常時には表面に君の名前と写真、所属が見える状態になってると思うわ。」

☆ステータスプレート(表)

名前:コウキ

所属:冒険者ギルド

 プレートの表面には確かに言われた通りのものが表示されている。

「確認できたかしら。次は個人ステータスの話ね。細かい情報を見るように念じてくれるかしら。」

 自分の詳しい情報が知りたいと頭の中で考えてプレートを凝視する。すると表の情報が透けていき細かな情報が見えるようになった。

☆ステータスプレート(裏)

○基礎能力
       ・筋力:F
       ・魔力:G
       ・精神力:E
       ・知力:E
       ・魅力:C

○スキル
       ・鑑定:F
       ・自動翻訳:A

◎ユニークスキル

       ・秘められし才能オールラウンダー

「どう?今見えてるものが君のスキルと能力よ。注意事項としては他人に極力見せないようにすることね。どうしてか分かる?」

 受付嬢さんに頷き返す。情報っていうものがどれだけ重要なものかは十分理解してるつもりだ。自分の能力が相手に知られるって事は相手に自分の命を握られているに等しいのだから。

「よし!これで登録は終わりよ。良い冒険者ライフを送れるよう頑張ってね。」

「はい。ありがとうございました、受付嬢さん。」

 そう言うと受付嬢さんが何かに気づいたような表情をした。

「そういえばまだ名乗ってなかったわね。私の名前はマリナ。これから何度も顔を合わせるでしょうし覚えておいてね」

「はい!これからよろしくお願いします、マリナさん!」

「うん、よろしくね。」

 マリナさんは笑顔で返してくれた。登録も済んだので少し離れたところで待っていたアクスさんのところに戻ろうと思う。カウンターから離れる時にほんの少しマリナさんの表情が曇ったように見えた。やっぱり子供が冒険者になるなんて心配になるよね。
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