新しい世界で何をしよう?

ライドリア

文字の大きさ
1 / 13

プロローグ

しおりを挟む
 ざわざわとざわめく教室の中で僕は隅の机で一人でライトノベルを読んでいた。

 今は昼休みでみんな友達とご飯を食べたり自由に休憩したりしているが、僕はラノベを読むためにさっさとご飯を食べてしまった。

 こうして本を読んでいると、周りとは隔絶された自分だけの世界に入れてとても気分が良い。正直ずっとこんな時間を過ごしたいたいと思ってしまう。だけどその時間はすぐに終わってしまった。

「おーい、幸樹ヨォ、ちょっと付き合ってくんね?」

 如何にも不良といった雰囲気のクラスメイトにそう声をかけられる。こいつはいつも僕のことを呼び出して、そして僕のことを殴ったり僕の恥ずかしい写真を撮ったりして暇を潰すそんな奴だ。

「あ、あのっ、少し待ってくれるかな…、すぐに行くから…」

 急に話しかけられたことと内気な性格が相まって吃ってしまった。

「あぁ?今すぐ来いっつってんだろが!」

ゴスッ!「うげっ」

 不良の拳が僕の腹に刺さりその場でうずくまる。

「口ごたえしてんじゃーよ、デブ。俺が来いっつったらすぐ来るんだよ、わかったか?」

「は、はい…」

 腹の痛みに苦しみながら手に持ったラノベを机に戻そうとする。

「おい、ちょっと待てよ、そいつを見せてみろ。」

 そう言って不良は僕からラノベを奪い、中身を開いた。

「うっわ、お前こんなん読んでんのかよ、きっめぇww」

「かっ、返してよ!」

 本を奪い返そうとするがいじめッ子はそれを掻い潜りクラスの真ん中へと向かって行く。

「おーいみんな、こいつこんなもん読んでんだぜーw」そう大きな声で言ってラノベによくある裸ギリギリの女の子の挿絵があるページを周りに見せるようにして開いた。

「うわ、何あれ、気持ち悪い…」
「やっぱあいつってそう言うやつだったんだな…」
「ないわー…」
(かわいい…)

 周りからの目線が僕にささる。今すぐここから逃げ出したい気持ちで一杯になる。どうしようもなくなった僕に不良が近づいて来る。

「なあ、お前もこんなところに居づらいだろ?一緒に屋上でも行って気晴らしでもしようぜ」

 不良が笑顔で言う。ただしその笑顔には気遣う気持ちなんて微塵も入ってない。僕はそのまま不良に連れられて屋上に向かう。教室を出るときにちらりと見えた地面に捨てられた本が処分されたりしないかが心配になった。

__________________

 屋上は誰もおらず僕と不良だけがいる。屋上は基本立ち入り禁止で真面目な一般生徒は入ってこない。

「なあ、幸樹ヨォ、俺昨日さあ、ゲーセンですげえ楽しいもん見つけたんだよ。パンチングマシンっつってな?それでそれをまたやりてーんだけど」

 ニヤニヤと笑いながら言う。嫌な笑顔だ。こいつが何か悪巧みしているときはいつもこの顔をする。

「じ、じゃあ僕がそのゲームのお金を出せばいいのかなっ?」

 少しでも穏便に済ませたいと思い財布を用意しようとするが不良はそれを止める。

「いやいや、金を出す必要なんてねーよ。」

 そう言うに続けて不良は悪魔のような笑顔でこう言った。

「俺さあ、思ったんだよ。パンチングマシンであれだけ楽しかったんならお前を殴ったらもっと楽しいんじゃないかってなっ!」

「えっ…」

ドッ 「っ!」

 言ったと同時に不良の拳が腹に突き刺さる。さっき殴られたこともあって口から昼食を戻しそうになる。

「ははっ、お前の腹やっぱ殴りやすいわ」

 表沙汰にならないように顔などは敢えて殴らずに胴体ばかりを殴ってくる。心では殴り返してやりたいと思っている。だけど体が動かない。今までやられてきた体が恐怖心に縛られている。立っているのも辛くなりフラフラとフェンスに寄りかかる。

(こんなに辛いんだったら死んだ方がマシなんじゃないかな…)

 そんなことを考えていると不良が拳を固めて近づいてくる。

「おいおい、俺はまだ全然満足してねえぞ?」

ゴッ!ガシャン!「あ……」

 殴られたと同時に寄りかかっていたフェンスが倒れて体が宙に放り出される。世界がとてもゆっくりに見えた。不良は目を見開いて間が抜けたように口を開けている。そのまま僕は屋上から地面へと向かって落ちていく。途中で窓を眺めていた女生徒と目があった。僕がその窓を過ぎ去る直前に彼女は状況を理解して驚き始めたようだが、それがとても滑稽に思えて自嘲気味に笑った。






 グシャ

 最後にそんな音を聞いた気がした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...