中年男が女性の井戸端会議の健康ネタを実践していく話☆

天仕事屋(てしごとや)

文字の大きさ
12 / 19
第六章 にわかに信じ難い

第十二話 水を飲んでも太る

しおりを挟む
 うちの母親は常に何かしらのダイエットをしている。
 
 今までも色んなその時々で流行ったものを一通り試している。
 りんごダイエット、甘酒、きゅうり、カカオ、すりおろし玉ねぎの味噌汁、ヨーグルトきのこなど様々なものを試しては「少し痩せたかも」とか「お通じが良くなった気がする」などと言っているが、その後続いているのを見たことがない。

 テレビで得た情報は家族の言うことよりも正しく、大抵のものは試してみる親だった。
 その他は骨盤クッションやエアロバイク、ぶら下がり健康器、腹筋ブルブルベルトなど実家に帰るたびに健康グッズが一つは増えている。

 そんなこんなで彼女は今現在は小太りおばさんである。ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に出てくるハンプティ・ダンプティという体が卵というキャラクターの体型に酷似している。

 「水を飲んでも太るのよ。」
 これが母親の口癖であった。
 私はまたこの口癖が体に及ぼす現象をこの時はまだ知らずに聞いていたのである。
 

 ___________________________________

 近所のスーパーの2階に100円ショップが入っている。
 その同じ並びの一角に小さな化粧品売り場がある。パネルで囲まれたそのスペースはお年寄りの憩いの場所となっているようで、大抵通りかかる時には一人二人とお客が座っているのを見かける。

 私は化粧品売り場には用は無いので素通りするのだけれど、店員とお客は楽しそうにそこで井戸端をしている。
 しかも個室で話している感覚でわりといつも盛り上がっている。
 だがパネルで仕切ってあるだけなので勿論会話は100均の方まで筒抜けなのである。

 たまたまちょっとした文具の買い忘れがあって、そのスーパーの100均に立ち寄った時の事である。


 何気なく私が買うものを探していると、化粧品売り場の方から年配の女性の声が聞こえてくる。

 「そーなの、あまり食べないようにしてるけど全然痩せないのよね~。」

 私は久しぶりの健康ネタの様なので一人で勝手にテンションが上がって、自然と聞き耳をたててしまう。

 「もうね、水飲んでも太るんだから~。」

 少し懐かしさすら感じるこのフレーズ。
 年配女性のあるあるなのかね?

 そうそう、食事の間にちょこちょこ完食してたりするんじゃないかな?大豆を食べなよ、と母親を見ていて思う事を心の中で言ってみる。
 自分の腹が少し凹んだのをいいことに、少しだけ先輩風を吹かしてみる。

 すると店員のハキハキ喋る女性が
 「人ってね、体内の60%以上が水で出来てるっていうでしょ?」
 「しかも水は人の事が大好きで、見返り無しに人に喜ばれようとしているらしいんだそうよ。」
 突然の水目線か?
 何かしらの宗教の教えだろうか??

 「だからね、もしも水でも太るのよって体に言い聞かせながら飲むと」
「その水はこの体を太らせなきゃいけないって頑張るらしいわよ~。」

 「えぇ~、そんなの嫌だわぁ。」
 「じゃあなんて言って飲めば痩せるのよぉ。」
 確かに。

 「私は〇〇キロまでしか太らないんです、って飲めばいいんだって。」
 (何それ?)

 「そうしたら希望体重キープ出来るって。」
 「あと老化を止めたい時は、『いつも若返らせてくれてありがとう』って言ってから飲むと良いらしいよ。」

 (お~、これはかなり胡散臭い話だ。)
 この店員さんは誰にこういう話を聞いたのだろうか?
 とても信じ難い話ではあるが、本当ならかなり面白い話ではある。

 現にうちの母親も少食にも関わらずお腹周りはかなり太っている。
 常にダイエットをしているにも関わらず確かに全然痩せる兆しすら見えない。
 最近はお腹もそんなに空かないので、朝と夜の2食にしていると言っていた。

 この話の通りだとうちの母親は毎日毎日自分で体に「水で太れ」と言い聞かせながら水分を取った結果、水が母親を喜ばせようと頑張って望みが叶って太ったという事になる。
 つまり水に罪はなく、人が望んだ結果通りになったのに嫌だ嫌だと不足しているという、、、なんとも水からしてみれば理不尽な事実なのだが人間のしている事の阿呆らしさに笑いを誘う話だ。
 
 この化粧品売り場では化粧品を売ることなくこんな不可思議な健康ネタを売っていたんですね、ご近所スーパーあなどれん。


 
 ふふっ、、、。

 母親の事を思って納得がいき過ぎて、少し笑ってしまった。


 こんな有力な情報を私が仕入れても、これを話したところで母親が耳を貸すことはないと言い切れる。
 なのでいつかテレビを通して同じ情報を母が知ることがあればな、と願うが、、。

 うーん、、、、、この話に出会う事は無いかな?
 だってこんな事、絶対にテレビでやってないものな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...