上 下
1 / 1

この雨が嬉しい

しおりを挟む

 今日も彼に朝のコーヒーを入れる。
 
 二人でソファに座って手を繋いでみたり、肩にもたれたり、抱きしめあったりしてくっついていると段々と眠くなってくる。

 彼はこの後、会社のみんなと草野球の練習があるらしい。
 このまま、もう少しだけこうして一緒にいられたらなぁ、、。

 サァァァァ、、、、、、
 外から雨音が聴こえ始める。

 次第にバラバラと大きな粒の落ちる音になっていく。

 ザァーーーーーー、、、、!

 激しい雨音の後に彼の携帯電話が鳴った。

 「野球、中止になったっ」
 彼が笑いながら部屋に戻ってくる。
 私も笑い返す。

 この雨が私の小さな願いを叶えてくれた。

 メールを返している彼の背中をぎゅっとすると、彼が携帯を持ったまま脇から右手で頭を撫で撫でする。

 あともう少し一緒に、激しい雨音を聴いていられる。



 窓を雨が激しくつたって火照った夏を濡らしていく。
 束の間の雨の激しさが二人を次第に包んでいった。











しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...