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飯盛山城 3
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「あれが鉄砲ですか!」
関所を抜け峠を上る坂道を駆けながら、三雲成持が言った。直ぐにでも話題にせねばいられないと言った様子で。
「迂闊に口にするな」
蒲生賢秀がたしなめたが、彼も関所を出てから何度も木々の間に目を向けていた。
関所を抜けるための策であった事も、鉄砲の構造も、それが音羽半蔵が撃った事も知らされていた。しかし、あれほどの轟音でありながら、轟音だったからこそ山や木々の間に響き、どこから撃たれたのか見当もつかなかった。
何処にいるのかも分からない相手が、兵士に守られた大将を討ち取ったのだ。
誰にも分かる勝鬨だけを残して。
今回は、味方によるものであったが、それが敵の手で使われたとしたらと考えると、妙な気分になった。
自分たちの主をどうやって守れば良いのか。その事に意識を持っていかれ、速度を落とせと、六角義賢の出した合図を見逃して、前を走る三雲成持にぶつかりそうになった。
「ん? 何やってんだ?」
「何でもない」
蒲生賢秀はすまして答えた。
振り返った六角義賢は彼らよりも、ずっと後ろに目を向け、肩で息をしながら遅れ始めていた足利義藤を見ていた。まだ走れるか、その様子を吟味しながらも、興味があったのか話に加わった。
「確かに鉄砲とは恐ろしき物だな。轟音を上げて敵将を討ちとり、姿を消す。雷に撃たれ、天意によって絶命したかと胆をつぶさずにはおられまい」
「それに音羽半蔵の話では、じきにあれの数を揃えられるそうですし」
「戦場で弓や槍の代わりに、鉄砲を持つのか?……」
三人の会話が急に止まった。
六角義賢は、進む足を止めたかと思うと地面を蹴って引き返し、追いつき始めていた足利義藤を担ぎ上げた。そして、これまで以上の速さで峠を駆け上がり、入れ替わるように坂を下る三雲成持とすれ違った。
「任せてください」
すれ違いざまに三雲成持が言った。
お互いに振り返らなかったが、その視線の先に坂の下から追ってくる人影が二つあった。
それも、太刀を水平に構えたまま、尋常ではない速度で駆けあがってくる。
問答無用で相手を貫こうとする太刀を三雲成持は逆手に握った短刀で受けた。甲高い金属のこすれる音を引き、太刀の刃を滑らせたが、相手の突進の勢いは凄まじく、体ごと押し上げられて足が宙に浮いた。
躊躇いのない踏み込みは、斬れずとも、そのまま踏みつけにして進む勢いだ。
だが、それが仇となった。
押し倒されるかと思えた三雲成持の体が、くるりと太刀を軸に回転した。そして、宙に浮いた足が太刀を突き出していた腕を絡めとる。
止まる事も、太刀を放す事も出来ない躊躇いのない突進は、ねじる力に変わって頭と足の位置を入れ替えながら峠道沿いの藪の中へ男を跳ね飛ばした。
さらにもう半回転して着地した三雲成持に、もう一人が水平に構えた太刀を突き出したが、初めの男ほどの勢いはなく、短刀で押さえるように受け流されて距離が詰まった胸元に蹴りを入れられた。
平地なら軽く後ろへ飛ばされただけだっただろうが、そこは急な坂道だった。後ろに飛ばされた分はそのまま高さとなって、気の毒になるほどの勢いで転がり落ちて行った。
「悪く思うなよ」
転がっていく相手に口の中で呟き、先に進んだ六角義賢たちの後を追った。
関所を抜け峠を上る坂道を駆けながら、三雲成持が言った。直ぐにでも話題にせねばいられないと言った様子で。
「迂闊に口にするな」
蒲生賢秀がたしなめたが、彼も関所を出てから何度も木々の間に目を向けていた。
関所を抜けるための策であった事も、鉄砲の構造も、それが音羽半蔵が撃った事も知らされていた。しかし、あれほどの轟音でありながら、轟音だったからこそ山や木々の間に響き、どこから撃たれたのか見当もつかなかった。
何処にいるのかも分からない相手が、兵士に守られた大将を討ち取ったのだ。
誰にも分かる勝鬨だけを残して。
今回は、味方によるものであったが、それが敵の手で使われたとしたらと考えると、妙な気分になった。
自分たちの主をどうやって守れば良いのか。その事に意識を持っていかれ、速度を落とせと、六角義賢の出した合図を見逃して、前を走る三雲成持にぶつかりそうになった。
「ん? 何やってんだ?」
「何でもない」
蒲生賢秀はすまして答えた。
振り返った六角義賢は彼らよりも、ずっと後ろに目を向け、肩で息をしながら遅れ始めていた足利義藤を見ていた。まだ走れるか、その様子を吟味しながらも、興味があったのか話に加わった。
「確かに鉄砲とは恐ろしき物だな。轟音を上げて敵将を討ちとり、姿を消す。雷に撃たれ、天意によって絶命したかと胆をつぶさずにはおられまい」
「それに音羽半蔵の話では、じきにあれの数を揃えられるそうですし」
「戦場で弓や槍の代わりに、鉄砲を持つのか?……」
三人の会話が急に止まった。
六角義賢は、進む足を止めたかと思うと地面を蹴って引き返し、追いつき始めていた足利義藤を担ぎ上げた。そして、これまで以上の速さで峠を駆け上がり、入れ替わるように坂を下る三雲成持とすれ違った。
「任せてください」
すれ違いざまに三雲成持が言った。
お互いに振り返らなかったが、その視線の先に坂の下から追ってくる人影が二つあった。
それも、太刀を水平に構えたまま、尋常ではない速度で駆けあがってくる。
問答無用で相手を貫こうとする太刀を三雲成持は逆手に握った短刀で受けた。甲高い金属のこすれる音を引き、太刀の刃を滑らせたが、相手の突進の勢いは凄まじく、体ごと押し上げられて足が宙に浮いた。
躊躇いのない踏み込みは、斬れずとも、そのまま踏みつけにして進む勢いだ。
だが、それが仇となった。
押し倒されるかと思えた三雲成持の体が、くるりと太刀を軸に回転した。そして、宙に浮いた足が太刀を突き出していた腕を絡めとる。
止まる事も、太刀を放す事も出来ない躊躇いのない突進は、ねじる力に変わって頭と足の位置を入れ替えながら峠道沿いの藪の中へ男を跳ね飛ばした。
さらにもう半回転して着地した三雲成持に、もう一人が水平に構えた太刀を突き出したが、初めの男ほどの勢いはなく、短刀で押さえるように受け流されて距離が詰まった胸元に蹴りを入れられた。
平地なら軽く後ろへ飛ばされただけだっただろうが、そこは急な坂道だった。後ろに飛ばされた分はそのまま高さとなって、気の毒になるほどの勢いで転がり落ちて行った。
「悪く思うなよ」
転がっていく相手に口の中で呟き、先に進んだ六角義賢たちの後を追った。
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