戦国異伝~悠久の将~

海土竜

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宿命の敵、略して、宿敵。

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 機内11ヶ国を支配し権勢をほしいままにしている三好長慶との対決の時が来た!

「秀頼様、三好長慶は飯盛山城に立て籠もり籠城の構えを見せております!」

 飯盛山城とは!
 天然の山を石垣で固め尾根に沿ってちょうだいの城壁を備える、まさに難攻不落の城である!

「攻めるには曲がりくねった細い山道を登らねばならず、城から矢を放たれては身を隠す場所もございません。多少の被害は仕方ありませぬ、老兵や新兵の弱兵で攻め相手が疲弊した頃を見計らって一気に落とすのがよいかと思いますが」

「うむ、なるほど……」

 確かにしろまでの道は細く坂を蛇行して登っていくため途中いくらでも城壁から攻撃できるようにはなっている。しかし城ではあるが、ここはただの山ではないのか?

「よし、城へと続く山道を石でふさいでしまえ」

「なんと? それではみすみす三好長慶を見逃すおつもりですか?」

「城から出てこないというなら出てこれなくしてやればよい、蓄えはあっても山の城に数年も籠っておれば、鬱になるは!」

「何という見事な計略! まさに戦わずして勝つ!」

「うむ、そうと成ればこんな山に用はない。道を塞いだら京都へ向かうぞ」

 激しいが戦を乗り越え、ついに秀頼は日本の中心京都へとやって来た。

「京もなかなか華やかでいいな、逢坂ほどではないがな」

「そうなのですか~、こんなに立派な建物は見た事ないですよ~」

「うーん、何か物足りないな、早々あの辺に聚楽第がないとしっくりこないな」

「ほうほう、早速築城の計画ですかな?」

「いきなり出て来るな松永。しかしそうだな城でも作らんと京の住民はみんな暇して河原で遊んでいるようだしな」

「子供たちがたくさんいますね~、大人も居ます、河原で勉強を教えているみたいですよ」

「河川敷の学校か、青空教育でのびのび育てるとか言う方針のやつだろ? 建物の中で勉強すればよいものの雨が降ったらどうするのだ?」

「どうするのでしょうね~? 見に行ってみますか」

 河川敷に降りては見たが近づいて見ても子供たちはやっぱり重い想いに石を並べている。
 これでは学校というよりは賽の河原だな。
 まさか、奴は鬼か!
 子供に石を積ませる鬼だな!
 国の将来を担う子供たちに何と惨い仕打ちを……許せん!

「おい、鬼! そこに名折れ、天下人であるこの俺が成敗してくれ様!」

「待ってください、僕は鬼じゃないですよ! 確かに父さんは鬼若子何て呼ばれてましたが」

「鬼若子が父だと? それにその声、その顔……お前、盛親じゃないのか、長宗我部盛親だろう!」

「まさか……秀頼様?……ワーん、お懐かしゅうございます!」

「逢坂城でとっくに死んでいたかと思ったが、良く生きていた……」

 いや、おかしいぞ?
 逢坂城はまだ掘りさえ無く足利義輝が現役で剣を振っているこの時代に、長宗我部盛親がなぜいる?
 長曾我部元親でさえまだ若輩、こいつが生まれている筈が無い。
 それなのに、逢坂城にはせ参じた時と変わらぬ姿など……まさか……。

「盛親……。なぜ京都にいる?」

「それが、逢坂城で戦っていたと思ったらいつの間にかここに来ていたのです」

「ほう、ここがどこだか分かっているのか?」

「はい、初めは戸惑いましたが、室町幕府の時代、まだ全国に戦乱の渦が広がっていない時代です!」

 こやつ、いつもボーっとしているだけの奴だと思っていたが、しっかり自分の置かれた立場を理解しているとは侮れんな。合戦でもそれくらい出来ていれば……。

「ならば、お前のするべき事は分かって居よう!」

「はい、もちろんです! 悲惨な歴史を繰り返さないために……」

「育つ前に有力大名を始末し、豊臣の名の下に天下を統一するのだ!」

「戦が起こらぬようにして、平和な国を作る事です!」

「えっ? なんだって?」

「秀頼様、何を言っているんですか、せっかく天から貰ったまたとない機会、今度こそ大きな戦が起こらぬように……」

「愚か者が! 天下統一を果たせば戦など起きる筈が無かろう!」

「それでは、また同じことの繰り返しに……」

「盛親、貴様主君に歯向かう気か! 貴様はこれまで何をした? 河原で子供に石を積ませていただけか?」

「これは子供たちに石を使って算術を……」

「石を並べて何の役に立つ! 槍か弓の扱いでも教えて置けば、戦場で無駄に死ぬこともないのだ!」

 子供の並べていた石を怒りに任せて蹴散らした。

「わーん、石がー」

「貴様の考えが軟弱だから子供も軟弱になる。蹴散らされて泣くぐらいなら蹴散らされぬだけの石垣を積めばいいのだ!」

「そんな……秀頼様……」

「まぁ良い、この時代には優秀な武将も多くいるからな、貴様は河原で石でも並べて置け。この豊臣秀頼が天下を取るのを指をくわえて待っていろ! ふわっはっはっは!」



「秀頼様……、そんな事は……おやめください……。いや、僕は……、再び大戦を起こすというなら、例え相手が秀頼様でも、止めなくちゃならないんだ……何としても……止めなくちゃ……」
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