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再会編
騎士寮にて1
しおりを挟む「それで許しは貰えたか?」
ジンがギルバートに聞く。
騎士寮のギルバートの部屋。ジンは開いた窓に腰を掛けたまま、着替え中のギルバートへ声を掛けた。
クローゼットのドアを挟み、顔を見せずにギルバートは間を開けて呟いた。
「……まだだ。母と弟が納得してくれない」
弟?増えてねぇか?と思いつつ、シュバリエ家の肖像画を思い出しては諦めた。
家族仲が良いのだ。きっと仲間外れには出来ず、弟も話に混ぜたのだろう。
「……まあ、親父さんが許可してくれてんのがせめてもの救いだな」
ジンの言葉に、ギルバートは頷いた。
―――父ライオネルはすぐに許してくれた。理由は特に言わなかった。
ただ、その時ライオネルが話した事が理由なのだろうと、ギルバートは思っている。
『初めての子で、親の目から見てもお前には剣の才能があった。それが嬉しくて、色々と期待を掛けていた。幼いお前に背負わせるには、重過ぎたんじゃないかと思った時期もあったな…』
唐突な昔話に何の意図があるのか分からなかったが、珍しく饒舌な父の言葉をギルバートは黙って聞いていた。
その時のライオネルは真面目で、愚直で、真剣な、父親の顔をしていたのだが、眉間の皺はなかった。
『ギルバート、無理に俺を倣う必要はない』
それは、横着をして敗北した日に聞いた言葉と似ていた。
突き放されたのだと、見限られたのだと、そう思ったあの日の言葉。
『私は、騎士のお前を愛しているんじゃない、息子であるお前を愛している。だからお前が何を選ぼうと、それがお前らしく在れる生き方と言うのなら、そうしなさい』
父はあの日も、そう言っていたのか。
無理に騎士にならなくて良いと、俺の好きな事をして良いと、それでも、自分を愛していると。伝えたかったのは、この気持ちだったんだろう。
俺らしく在れる生き方。
それがどう言うものか分からないが、あの男が差し出してくれた手を握り締めていたいと心から思う。
そんな事を思うギルバートだが、肝心のジンにはライオネルとのやり取りの詳細を話していない。照れ臭いのではなく、単に蛇足と思っているからだ。ある種の短絡思考で、結果だけ教えればいいと思っていた。
なのでジンは、ライオネルが単に折れるしかなかったのではと思っている。
(ラークシャシ家の騒動時、親父さんは俺に頼りに来たが特に何した訳でもねぇからな、アレが許可の理由にはならねぇだろうし……似た者親子だから、息子が折れねぇと思って取り敢えず許した感じか?)
となれば、味方と言う訳でもないのだろう。
愛属は家族の許可の後――――とは了承したが、ひとつ、誤算とも言える事がある。
ジンは足音なく着替え終えたギルバートの後ろへと回った。クローゼットの扉を閉めるその瞬間、背後からギルバートを抱き締めた。相変わらず背丈がほぼ変わらない。ほんの数センチだけジンが超えたくらいだ。岩のように硬直したギルバートだが、顔が上気すると共に体温も急激に上がってくる。分厚くてがっちりとしていながら、柔らかい部分も多い。直に触れたくて、綺麗に入れこまれた裾を引っ張り出そうとすると、ギルバートの硬直が解けた。
ジンは手首を掴まれ、動きを封じられる。
「傍にいれば、ヤラなくて良いんだろ…!」
「くそ、覚えてやがる…」
「当たり前だ!!我慢するとお前が言ったんだろうが…!」
「いらねぇ事言ったもんだよ…」
どうやらギルバートの中では『愛属=性行為』と言う図式になっているようだ。いや分かる。響き的にそういう流れに感じるのは。しかし、その後どれだけ説明しても『愛属まではヤラない』と頑固野郎は心に決めたらしい。
「フェロモン撒き散らす癖にこのクソ野郎…」
今だって肌から上り立つ匂いが肺にまで染み込みそうな程に香っている。襟から覗く筋張る首筋に顔を擦り付けた。
「口が悪いぞ貴様!!」
「お前のフェロモンにムラムラすんだよ、あーくそ…」
手首を掴むギルバートの手から逃れ、両手は腹を抱き込んだ。今度は嫌がらず、ギルバートは困ったように頭を掻くだけ。
「……せめて、母が許してくれたら…。覚悟するから、待て」
「………分かったよ、騎士様」
そりゃ肉体だけが目的じゃない。ジンは諦め、ギルバートから離れた。
「それじゃあ、特訓でもするか」
騎士団に定められた鍛錬服ではなく、ピッタリと肌に張り付く黒のインナー姿のギルバート。それはジンの着ている物の、半袖バージョンだ。ジンがマントを収納すれば、2人は殆ど同じ姿となる。
「ああ、よろしく頼む」
気付いているのかいないのか、ギルバートは嬉しそうに微笑んだ。
.
.
.
その日、ジンはいつもとは違い、もうひとつの用件を携えてギルバートへ会いに来た。
「これ、シヴァから茶会への招待状だ」
今日は休日と言うギルバートは、緩めのストレートパンツに薄いブルーのシャツを着ていた。初めて見るラフな格好だ。まだ数回しか会っていないのだから当たり前かもしれないが。いつもは鍛錬服だけなのだ。
恐ろしい事に、まだ一泊すらしたことがない。最初に泊まりたいとジンが言った時、ギルバートは床で寝ると言い出し、どれだけ『添い寝だけ』『何もしない』と言っても首を縦に振らなかったからだ。だから寝間着すら見た事ない。いや、こっそりと夜間に忍び込み知ってはいるのだが。
とにかく、今日のギルバートの服装にジンは気が引かれた。銀青の瞳に薄いブルーのシャツは良く似合う。椅子に浅く腰を下ろした姿も良い。騎士の休日と言う感じがよく出ている。実際、騎士の休日なのだから当然なのだろうが。くだらない事を考えていると自覚しつつ、小さなテーブルを挟んだ向かいの椅子へとジンは座った。
ギルバートは差し出された封書を受け取りながら、眉間の皺を深めた。
「………シヴァ先輩?あ、いや、もう司祭様か。……俺に茶会?何故?」
「俺の愛人達の集いだ。嫌なら無理に行かなくて良いぜ」
自分の口から言うのは気恥ずかしい気になりそうなものだが、ジンは愉快そうに笑い気にしてもいない。しかし心を通じ合わせて日が浅いギルバートには、気が重いかもしれないと思うくらいの気遣いは出来た。「あいじ…」ともごつく声で呟くギルバートに、(やっぱりか)と、参加を諦めかけた。
「……まあ、この日程なら大丈夫だろう。司祭様からの誘いを無碍にも出来ん」
「そうか、俺も行けたら行くつもりだから。会えたら良いな」
茶会も愛人と言う単語も拒まなかったギルバートに自然と頬が緩んだ。しかし、ギルバートはジンの言葉に逆に怪訝そうな目付きを見せて来た。語らずとも分かる、(来るのか?本当に?お前が?)と言う疑いの眼差しだ。
なんせ、みんな同じ目をしたから。
分かってる、行けるか最も怪しいのは他でもなく自分だから。
「で?どうよ、進捗は」
話題を変えるついでに、毎度尋ねる質問を口にする。
「………」
「ダメか」
ギルバートは無言で招待状を元に戻すと、封書をそっとテーブルに置いた。
この反応も毎度の事だ。
「……いや…」
「え?」
物凄く小さな声だった。意識が逸れていたジンは聞き逃してしまう。
「…………許してくれた」
たっぷりの間の後、朴訥と告げられた言葉。ジンは唐変木のようにギルバートを眺めて、これまたたっぷりと間を開けてから、やっと口を開いた。
「………言えよ。真っ先に」
心からの声が出た。
「……いや、まあ…どうせ聞いて来るだろうと思っていたからな」
「……お前、俺がどれだけ…」
「…………」
ジンの呟きにギルバートが顔を顰めたので、それ以上は言わない事にした。ギルバートだって分かっていた筈だし、責めるのは間違っていると気付いたから。ジンは立ち上がる。
「…まあ良い。めでたい日だ。騎士様、喜びを分かち合おうじゃねぇか」
「分かち合う…と言うと」
「キスしよう。俺達の今後を祝って」
座るギルバートへと歩み寄り、肩に手を置く。理解が遅れているのか、ただ見上げて来るだけのギルバートの顎を掴み、顔を寄せた。
甘やかな垂れ目が近付くにつれ徐々に、カッ開いた。
「…………ま、待てッ!!」
近い!!とでも言いそうに、顔を押し返される。ジンの首が変な方向を向いた。耐えようと思えば耐えられるが、そうはせずに大人しく押されるまま引いた。しかし顔は悔しそうに歪め、ギルバートをねめつける。
「………お前はホント情緒どうなってんだよ。歯止めが利かなくなるって思って、キスも我慢してたんだぞ。まだ待てって言うのか、そろそろお利口ではいられねぇぞ」
「愛属」
「うん?」
「愛属を先に……しよう」
「………キスより先に?」
思わぬ提案にジンは耳を疑った。ギルバートの中で『愛属=性行為』になってると思っていたのは間違いだったか。キスより先にセックスしようなんて奔放な事を言える男ではない。
「そうだ。それより、先にだ。問題ないだろう?」
「まあ、そうだが……愛属の方が、キスより取り返しつかねぇぞ」
肌と肌が触れ合うだけで何の拘束力もない行為とは違い、契約は一度すれば、後はジンが解除しない限り一生続く。愛属契約自体に強制力はないが、それでも愛属主以外との性的行為の一切を禁じられるし、魔力の供給も自動で行われてしまう。
本当に好意があり、仮に一生解除されなくても良いと言う覚悟があるなら、悪い契約ではないだろうが、良いものとも言い難い。特に、愛属される側にとっては。
「………だから、先にと言ってるんだ」
ギルバートは少し目を伏せ、床を見ながらボソボソと呟いた。
(…つまりなんだ?先に俺のものになっておきたいって事か?)
ジンはぶん殴られたような気持ちになる。膝から崩れ落ちそうになる足を叱咤する事に忙しくなり、反応が遅れてしまう程だ。
「……お、前は…ホント……」
不意打ちの可愛さに理性が飛んでいこうとする。体面は保とうと、必死に表情を作っているが、口から転げ落ちた声は震えていた。「ン゛ッ」と大きく咳き込み、声を整える。
「……分かった。お前の言う通りにしよう。愛属紋は結構目立つぞ、どこに付ける?」
絵が一番上手いイルラに愛属紋を描き写して貰った。場所なのか、魔力の差なのか、サイズだけ各々異なるが、形も色も全く同じだから参考になると思ってギルバートに渡しておいた。彼のことだから目立たない場所が良いと言うに決まっている。
ギルバートは返事をせずに椅子から立ち上がり、ジンに背を向けると、徐にシャツの釦を外し始めた。
「周囲から、なるべく見えない場所に」
「そうなると………下半身だろ」
冗談ではなく事実としての提案だったが、わざと間を開け釦が全て外れた頃合いを見計らって言った辺り、ジンには明確な下心があった。ピタリと動きを止めたギルバートのうなじがみるみると赤くなる光景に、思わずジンの口端は吊り上がってしまう。
「騎士は上を脱ぐ事あるんだろ?どこに付けても見えると思うぞ」
逞しく広い背だ。今では自分よりも筋肉質なのではないかと思う。これが他の男なら食指は動かなかっただろう。そっと指先を伸ばし、シャツ越しに肩甲骨の隙間に触れた。
隆起をなぞると、ギルバートが背筋を震わせる。
ジンの首裏までゾクゾクする。
「俺は見えても構わねぇけど、……どうする?騎士様」
自ら下を脱いで欲しい。初めて肌を重ねた時のように。
ヤケクソの男らしい脱衣と、羞恥に歪んだ悔しげな顔がもう一度見たい。
そっと背中へと近付き、唆す。誑かす悪魔の囁きのように。
背丈が近いので耳元に唇を寄せるのも容易い。真っ赤に染まってしまった耳元が可愛くて、思わずそのまま口付けようとした。
触れる寸前で、勢いよく顔を背けたギルバートに回避されてしまう。挙句、足音荒く離れられてしまった。顔を真っ赤にしたまま、ギルバートが睨むように振り返り、シャツを脱ぎ捨てた。
「腕の内側」
背中に寄り添うポーズのまま、横目で動向を見守っていたジンだが、その言葉に腕を組む。
「二の腕って事か?」
「そうだ、そこなら、そこまで目立たないだろ」
「……俺は脇でも興奮出来るタイプだぞ」
「…? 脇の話などしてないだろ…………、脇は、見るな」
思惑通りに全然動かない。ロキもそうだが、ロキはジンの意図を分かった上での行動で、ギルバートはジンの意図など微塵も分からないままの行動だ。そこが可愛くもあり、憎たらしくもある。どちらも。
ジンは降参するように両手を見せた。
「分かった、内側。そうしよう。じゃあ腕を上げてくれ」
「座るか?」
「いや、変な高さになるとやり難い。立ったままの方が丁度良さそうだ。肘を軽く曲げて、内側を俺の方に…そう、良い。腕きつくないか?」
上げられたギルバートの右手を掴み、噛み易い姿勢を作る。頷き、大人しくされるがままのギルバートの様子から、本当に愛属に対しては何の抵抗もないのだと分かった。
腹の底だけでなく、胸の奥までむずむずする。
(可愛い奴め…)
肉体関係だけであれば、まだ逃げ道はある。その道を、自ずと捨ててくれたのだ。この男は。
「それじゃあ……俺が噛んだら、そこに集中してくれ。俺の魔力にお前の魔力を繋げるんだ。最初痛いと思うが…」
「大丈夫だ、問題ない」
そうは言うがギルバートは緊張に喉を鳴らした。
早く済ませてやろうと、ジンはすぐに腕に顔を寄せる。他の箇所と違って柔らかさの残る部分だ。血管や神経も多いのではないだろうか。
噛み千切るなどの失敗はしないだろうが、少しばかり慎重に行こう。
そう思って噛み締めた弾力のある肉。魔力を注ぎながら、歯を突き立てた。「……う」と押し殺したような声が聞こえる。
(痛いよな、頑張ってくれ)
ジンも最早やめる気などない。手に入れたいと思う気持ちを歯牙に込め、皮膚に埋め込んだ。血の味が、匂いが、ジンの五感を刺激する。
――――のに、ギルバートの魔力と繋がらない。
「……お前、本当に俺のこと好きなの」
通算4度目にして、ついにジンは不安を溢してしまった。
「好きに決まってるだろ!でなければ誰がこんな…!!」
焦っていたのはギルバートも同じで、思わずと言った具合に本音を吐き出した。ギルバートの両腕には4つの歯形がクッキリと出来上がっている。血が滲む、正真正銘のただの傷。
「……取り合えず、回復薬を飲め。その傷は何の意味もない」
ジンは『空間収納』から回復薬を取り出し、ギルバートへと差し出した。眉間の皺を深め、機嫌がすこぶる悪そうなギルバートは唇を噛んで、回復薬を受け取るのを渋ったが、ジンが無言で再度突き出すとやっと受け取った。
擦れると痛いので腕を少し浮かしたままだ。蓋を開け、回復薬を口に含む。高級品だから飲みやすいし、あんな傷程度きれいさっぱり治してくれる。案の定、半分もいかない内にギルバートの腕から歯形が消えた。
「……愛属はまた今度だな。無理しても同じ事の繰り返しだ」
なるべく優しく聞こえるように気を付けつつ、脱ぎ捨てられたシャツを拾い上げてジンは言った。取り繕った笑顔の裏で、内心ショックを受けている。だが悟られたくなかった。ギルバートにプレッシャーを与えたくない。
愛属は、相手が本気で惚れていなければ成立しない契約だ。
繋がらないと言うことは、つまり、まあ、そういう事だ。
『また今度』とは言うが、もう殆ど諦めている。無駄にガブガブと咬んだ所で、ギルバートが痛い思いをするだけだ。
成約の条件をギルバートも知っているから、自覚させてしまったかもしれない。
そこまで好きじゃなかったんだと。
(……確かに、先に愛属しようとして正解だったな)
失敗するとはまるで思っていなかった。自惚れが過ぎたんだ。ジンは深く反省した。だが、ちゃんと話し合うべき言葉からは逃げている。だから、来もしない『今度』を口実にした。
ギルバートは飲み残した回復薬の蓋を閉めている。無言だし、無表情だ。赤みも引いているし、フェロモンも治まっている。
「ほら、シャツ。着ろよ」
ギルバートの肩にシャツを羽織らせると、大人しく袖を通した。何も言わないギルバートに、笑みを崩さないままジンはほんの少し眉を下げる。
(……あの時、大人しくフれば良かったんだとギルバートに言われたら、正論過ぎて泣く)
再会の決闘を思い出す。実際、ギルバートは諦めようとしていたのだ。それを引き留めたのは自分だ。気持ちに差があっても何もおかしくはない。
(みっともねぇ思い出になる前に、退散するか?)
強い男として認めてくれたんだ。泣いたらますます幻滅させるだろう。今まで泣いた事などない癖に、そんな事を本気で考えてしまうくらいに、ジンは迷走していた。
ギルバートは無言のまま、回復薬を少し離れたベッドサイドの棚まで持っていった。離れた距離が、まるで心の距離のように思えて、ジンは腹を括る覚悟をした。何を言われても、今度はギルバートの意向に従おう。騒めく胸中を静めるべく、瞑想するように目を閉じた。暗闇に聞こえて来たのは、ギルバートの声ではなく、ベルトを外す音だった。
ぱっと瞼を開き、ギルバートを見た。背を向けているが、ベルトを弄っているのが分かる。布を擦る音を鳴らしてベルトは抜かれ、その場に落とされた。その仕草が誘っているように見えて、別の意味で騒めき出す胸の奥。固まっているとギルバートがポツリと呟いた。
「………ちゃんと準備をする、待ってくれ」
「…………じゅんび」
鸚鵡返しに繰り返すしか出来ない。ギルバートは何をするつもりなんだ。
「あー…あのな、言い難いし、非常に残念なんだが…」
これ以上の努力は無駄だと説明すべきかと、ジンは口を開いた。
「待て、と、言っている」
「……何を、待てば良いんだよ」
待てば好きになってくれるのか。この短時間で。そう口を突いて出そうだった。あまりにも自分勝手過ぎるだろうと自分に嫌気が差す。
「無理しなくて良いんだ、ギ 「待てと言ってるだろ!!」
悔しげに叫ぶギルバートにジンは目を丸くした。なんで怒鳴られたのか心底意味不明だった。ギルバートは悔しいのか、顔を赤らめているのが、後ろからでも分かる。ちらりと見えた目元が、微かに滲んでいる事も。
(……お前が、泣くのかよ)
それが悔し涙だとしても、ジンは心が軽くなった。しかし『待て』の意味はまだ分からない。ギルバートはズボンの前を震える手で開けようとしているようだった。本当にヤケクソにでもなってしまったのか。しかも何かぶつぶつ言っている。
「……歯止めがきかなくなるのは俺も同じだ……ずっと我慢していたから、集中出来ないだけで……ちゃんとするから、待ってくれ…ちゃんと……出来るまで、何度でも、どこでも、試せばいいだろ……出来ない訳が、ない…」
文句のような、愚痴のような、小さな呟き。心の内を白状しているとすぐに理解した。あっさりと身を引いたジンに怒っているのだ。上手く出来ない自分自身に腹を立てているのだ。
ジンは無言でギルバートへ近付き、肩を掴むと無理矢理振り向かせた。
「待てと……!」
「もう待てない」
股の間へ差し込むように踏み出したジンの足に引っ掛けられるように、ギルバートはそのままベッドへと押し倒された。
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