俺に7人の伴侶が出来るまで

太郎月

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再会編

歯車の軋み8 エゴイラ


白い光が消えた後、ジン達が居た場所から後方に向かい、広範囲の景色が消失した。
塔のように立っていた岩石は消え、深く抉られた足場は地脈が覗き、マグマが溢れ、広がっていく。

既に日は沈み切った。暗い景色に、マグマの海に照らされたエゴイラが浮かんで見える。
足場などとうにない筈なのに、エゴイラは何かに立っていた。それはあまりにも太い巨木の幹だ。


「嗚呼、漸く従属の楔より解放された!」と灰白色の首が吼え

「憎き人間共めら、皆殺しにしてくれる…!」と松葉色の首が唸り

「劫火で焼き尽くしてやる!灰燼と帰せ!」と紅蓮色の首が怒鳴り

「誉れ高き余の身を弄んだ業を償って貰うぞ!」と淡青色の首が叫び

「血の一滴まで喰らい尽くしてやる!愚かなニンゲン共め!!」と金色こんじきの首が哮り立つ。


空まで震える怒号。焼けて燃えるはずの巨木の足場は燃えた端から再生し続けていたが、エゴイラ達の発した衝撃には耐え切れずにヒビ割れた。

「最早制約も無意味、命令も届かぬ」
「吾輩の技を吾輩の好きに出せる、爽快だ」
「頭の中にぬしらの煩わしい声もない」
「ああ、畜生。しかしカラダが不自由だ」
「二度と俺様に干渉するな老害共めが!!」

首は5つ、しかし身体は1つ。大きな翼を広げ、燃えて炭と化す足場を捨てて飛び上がる。
羽ばたきの一振りで豪風が吹き、マグマが波打つ。

エゴイラの目線が、マグマの海と化した先、まだ陸があるその地を見詰めた。


そこに高速で転がる黒い玉のようなものがある。


マグマ溜まりや岩を破壊しながら進んでいた黒い玉は、速度を落とさないまま翼を広げ、丸めていた身体を伸ばした。
その腹に包まれていた1人と1匹も、慣性の法則に従い速度を落とさぬままに地面を駆け出す。

「───あ、っぶねぇ!今のは凄かった!ドラゴ!身体は大丈夫か!」

ジンとフィルを掴んで、丸まって庇ってくれたドラゴは鱗が剥がれ、焼け、明らかに傷だらけだ。

「オレ様は元気いっぱい!!!」

低く飛行し、走るジンとフィルと並走しながら、ドラゴはやや腹を立てた声で高らかに宣言した。

転がる間、ドラゴごと防御結界を張った。
しかし防御したいのは、世界最強種と名高いドラゴンによる五属性複合と言う超大型魔術だ。

(正直、俺の結界じゃ役に立たないかと思ったが……シヴァの魔力か?結界が矢鱈と強化されていた)

それでも結界は何度も壊れた。張る感覚がいつもと違って戸惑ったのも理由だ。それでも、その度に張り直し、ドラゴの負荷を軽減する事は出来たと思う。しかしゼロには出来なかった。

怒りで痛みが鈍くなってるだけでないなら良いが、ひとまずジンはドラゴを信じて頷く。

「フィルは」

逆隣を並走するフィルを見る。怪我は多いが致命傷などはなさそうだ。ただ、熱さによるダメージが大きいようだ。

(…フィルの牙、『神牙穿孔しんがせんこう』は一撃必殺の最強技だ。牙は届いていた、でも倒れなかったのは、あの胸の何かのせいか)

まるでガラスでも割れたような音がして、結界が壊れた時のように光干渉を起こした魔力の残滓が胸から落ちていくのが見えた。
何かは分からないが、心臓ではなかったのだ。

ジンは背後に視線を送る。煌々と輝くマグマがゆっくりと広がっていく。
噴き上がるマグマの上、神々しくも凶々しい5つ首のドラゴンがこちらを見ている。

先程からの叫びは聞こえていた。理由は知らないが人間がとにかく嫌いなようだ。

(じゃあドラゴン好きかと言うと、どうも違うっぽい)

なんせドラゴを食おうとしていたのだから。


「ジン!来るぞ!!」


ドラゴの声、数秒後に強い魔力の波動を背後から感じたと思った時には、背中に体当たりされたような衝撃を感じた。エゴイラ(恐らく灰白色の首)の風属性攻撃だ。ほぼ無意識に防御結界で身を守ったおかげで、背骨が折れるような事はなかったが、フィルですら耐え切れずに吹っ飛ばされる勢いに身体が浮いた。

「くッ───!!」

再び岩肌にぶつかる直前、ドラゴが風を切り裂きジンに突っ込んだ。角を掴んだジンが頭の上に着地すると、ドラゴは風の流れのまま上昇した。

「悪い、ドラゴ。助かった」

「流石のドラゴ!オレ様は役にたつ、すごいヤツだ!」

ふんふんと鼻息荒く自画自賛している。己を鼓舞しようとしているのだろう。黒い鱗を撫で、フィルの姿を探した。

フィルは山の中腹にある穴にいた。穴は恐らく洞窟に繋がっている。ちゃんと涼しい場所に逃げたようだ。ハッハッと苦しげに舌を出して呼吸している癖に、ジンと目が合うと飛び出てこようとした。

「フィルはそこで待機してくれ」

遠くからの指示でもフィルはしっかりと聞き取れる。内容に驚いたのか、耳を中心に寄せるように立てて、その後シュンと項垂れた。

(不服だよな。でもごめん、お前はこのマグマの中じゃ碌に戦えないだろ)

ドラゴの進路をフィルがいる山から真逆に向ける。

エゴイラは飛んではいるが、まだ低空飛行だ。翼の動きが不安定に見えた。
いくつかの顔がフィルを眺めていたが、ぬるりと蛇のようにドラゴとジンへ顔を向け直す。

「あの犬、未だ属性が発現していないのか」
「情けないのう、人間などに媚びるからだ」
「だが少しは腹の足しになるだろう、美味そうだ」

灰白色、淡青色、金色の首が呆れ、哀れみ、嘲笑う。

「……………えっ?フィルって属性あんの?」

思う所は多々あったが、何よりも衝撃的な言葉にジンは驚いた。
遠ざかったフィルへ一瞬だけ目線を向ける。

フィルは今まで一度も属性らしい属性を見せなかった。それは単に、ヒトにも魔物にも稀に存在する『無属性特化型』だと思っていたからだ。肉体の強化や防御、またヒトが扱う生活魔術などの殆どが『無属性』なので生活には何の支障もない。ただ、やはりヒトだろうが魔物だろうが、『無能』というレッテルが張られてしまうのだが、ジンはフィルが無属性でも気にした事はない。

だから誰かに相談する事もなく、そもそも聞かれない限りは属性について話題にもしなかった。

一度ロキにフィルの母親の属性について聞かれた事があったが、ジンは素直に知らないと答えた。あの時は子供で、他者の魔力を突き止められる程の感知能力も知識もなかったからだ。

(先生も不思議に思っていたんだろう。フィルに属性がない事。フェンリルに限らず、強い魔物に『無属性』はほぼ居ないから)

フェンリルは一子相伝型の魔物。殆どが属性も引き継ぐと聞く。複数持っていたとしても、必ず何かしら同じものを受け継ぐらしいが、フィルにはその気配はまるでない。もしかすると、母親すら無属性だった可能性もある──なんて思っていた。

学生時代、ロキと行った『魔力鑑定』の属性項目に記載された『解析不能数値検出』の文字。
愛属者からの付随特性を調べられないかと、今でも度々行う鑑定に出てくる。

色々と調べてみたが、属性の解析不可を解明した文献などなく今でも謎のままだった。
フィルの属性の可能性を疑わなかった訳ではないが、ジンにとっては割とどうでも良い事だったので最早気にしてなかった。

しかし、

「属性が発現するならさせてあげてぇよ。知ってんならやり方も教え 「気持ち悪い!」

「ええ……」

ドラゴが唐突に発音の良い悪口を叫んだ。エゴイラは途端に口を閉ざした。
まあ、ドラゴが口を挟まなかったとしても、エゴイラが懇切丁寧に教えてくれるとも思えないが。

「ジン!!見ろ!!アイツ首がいっぱいだ!!気持ち悪い!!」

「今?うーん、カカココも首ふたつあるだろ。カカココは良いのに、あれはダメなのか」

「何を言うか!!カカココとアイツは全然ちがう!!ちゃんと見ろ!ほら!全然ちがう!!!」

「いや、確かに5つ首は聞いたこともねぇが……気持ち悪いは言い過ぎだぞ。俺は結構かっこいいと思」

「オレ様の方がかっこいい!!!オマエはもっとちゃんと見ろ!!!」

数の多さに驚きはしたが、魔物に多頭は珍しくない。2つ3つがいるなら、5つが居ても変ではないとジンは思ったのだが、ドラゴにとっては何やら途轍もなく嫌なようだ。
かっこいいと褒める事も。

「気持ち悪い…だと……」

どの首かは分からなかったが、エゴイラが呟いた。




「「「「「人間風情が舐めた口を!!!」」」」」




そして全首で激怒した。


「あれ?今の俺が言ったことになってる?」


人間憎しのバイアスだろうか。とんだ濡れ衣を被せられた。弁解の余地もなく、灰色、紅蓮、金色の光がチラついた次の瞬間、風による斬撃、炎の雨、稲妻が空を埋め尽くした。

「頼むぜシヴァ」

ドラゴごと包み込む結界。意識すればするだけ、結界の強度が上がっていく。光属性特有の強さはないが、それでも随分と硬度な壁となる。それでも攻撃が重なった場所に罅が入った。耐久戦は不利だ。ドラゴは攻撃を掻い潜り、エゴイラへと特攻した。
だがエゴイラも同じくドラゴに向かって飛翔する。松葉色の首と淡青色の首が突っ込んできた。

ドラゴン同士の雄叫びが空気を震わせる。

ドラゴが松葉色の首と応戦し、ジンが淡青色の鼻先を短剣で斬り付け怯ませ、飛び降りる。結界は解除されるが、その代わり動きが制限されない。ジンは足元に見える紅蓮色の首目掛けて落下する。骨身に染みた『肉体強化』は当然のこと、更に『加速』と『加重』を自らに掛け、紅蓮色の頭を蹴りぬいた。
衝撃に仰け反った紅蓮色の牙へ『魔力綱』を引っ掛け、振り子の原理でぶら下がる。襲い来る灰白色の首目掛けて短剣を振り抜いた。『剣気術』による斬撃で灰白色の顔が幾重にも斬り裂かれる。衝撃と出血で遮られた視界で怯んだ灰白色の鼻先を踏み、更に振り子の幅を広げた。

エゴイラ達は首元で揺れるジンを上手く捉えられない。首はそれほど曲がらないし、魔術を撃てば誰かしらの首に当たると分かっているからだ。おまけに器用に避け、更に反撃までしてくるジンに苛立つ。

殺気を感じながらも、ジンは『魔力綱』を器用に操り、ぶら下りながら空中で方向転換を幾度も試み、エゴイラ達の首の隙間を抜けて背中へと飛び降りた。

(こんな図体相手に真っ向勝負は自殺行為だ。狙うは急所────心臓だろ)

駆け出したジンの動きを追うエゴイラ達の気を引く為、ドラゴが『龍息魔弾』を頭目掛けて撃ち込んだ。
『感知』を高め、心臓の位置を探った。

(さっきより深い位置に心臓がある。5つ首だからか、妙な場所ばかりだが、やる事は同じだ)

それぞれ綺麗に並んではいないが、どれも首の延長線上の内部で脈打っている。
身体の中央、背中側から最も浅めの位置にある心臓の真上に立った。背中の棘が邪魔だが、斜めに貫けばいけるだろう。

狙いを定める時間は刹那にも満たない。すかさず『剣気術』を纏わせた短剣を振り下ろす。


─────ガッ!!


短剣は途中で止まった。

「やっぱ、背中は硬ぇな」

そんな予感はしていた。ドラゴンは頭部と背面がかなり硬いのだ。
背面よりは腹側の方が柔く、骨も少ない。肋骨に守られてはいるが巨大な分、隙間も巨大だ。
短剣を持ち直した時、辺りが急に霞がかる。魔力の波動が急激に満ち、ジンは蹴るように踵を返して走り出す。

(水属性の派生、氷属性も使えるワケな。流石ドラゴン様だよ!)

どんどん白む景色の中、ひやりとした空気から氷の棘が四方八方から突き出て来た。目視出来ず、気配や背中を走る振動から、ジンの位置を把握してるのか、攻撃にはコンマ数秒ズレがあった。
ギリギリで躱しながら、霞に囲まれる前にジンは走り抜ける。

短剣に掛けている剣気術の精度を更に練り上げた。先程は心臓を狙う為に長さに注力したが、今度は強度と鋭さを最大まで引き上げる。攻撃範囲は短くなるが、確実に鱗を突き破れるように。

首の付け根が見えて来た。青と黄色(金か)の間。無遠慮に短剣を突き刺す。そして空中へと身を投げた。
左手に、短剣と繋がる『魔力綱』を握り締め。

弧を描いて落ちる中、ジンは振り返り、指を2本突き出す。狙いは変わらず心臓部。

(水を一点に集中させる。あの日、カプソディアが見せた水の弾丸を思い出せ)

指に水が絡み付き、先端が鋭く尖る。
急速に落下する視界、綱を掴む左手だけが支える不安定な姿勢。それでも、ドラゴが懸命に気を引いてくれている今、ひとつでも心臓を止める。

最高潮に高まった集中力が、ピタリと狙いを心臓の位置に照準を合わせた。

今だ────

「同じ手が二度も通ると思うなうつけが!!」

叫びと共にジンの身体は掴まれた。視界が急速に変わり、衝撃に魔術が中断される。

確実に射止めたくて近付き過ぎた。更に集中し過ぎて視野が狭くなっていた。

反省する間もなく、エゴイラは地面へと叩き付ける勢いでジンを投げた。

「や、ば…!」

凄まじい風圧、鼓膜を満たす風の音。
投げられた先はマグマの海。

(結界…いや、ダメだ)

マグマの深さが分からない以上、結界をしても沈む可能性がある。おまけに結界は温度は通す。『環境適応』を持っていても、ヒトの身体がマグマの熱さに適応出来るとは思えない。

そんな思考もいよいよマグマに落ちる寸前には吹き飛んだ。
ジンはとにかく指を鳴らした。

するとマグマが固まるかに、落下位置に地面が作り出される。
勢いは止まらず、ズザザザッと地面に身体を擦られ、更に二回ほど跳ねた。その距離分、地面はしっかりとジンを受け止めてくれていた。

「……い……ってぇ…」

肘をついて身を起こすと、口から血が垂れ落ちた。落下の衝撃は防御結界で軽減されたが、どうやらエゴイラに掴まれた時の激しい打ち付けで奥歯が割れ、口内を傷付けたようだ。口の中に転がる歯の破片ごと、血を吐き出した。

「は──まともに出血したの、久々だな。───マジで助かった、ユリウス」

足場はジンが落下した部分にのみ存在している。土属性で作り出された足場。自分が展開したものに違いないが、ユリウスと愛属していなければ、この足場はなかった。しかしマグマの熱で汗が大量に流れ落ちる。いくら『環境適応』と『体温維持』があっても、流石に長時間いるのは危険そうだ。土を撫で、立ち上がる。

上空では魔力光が夜空を憎らしいほど美しく彩っていた。

(さっきと違って完全に俺のこと警戒してんなって、そりゃそうか。…もう一度心臓を狙うのは無理だな)

自分の弱点くらいエゴイラだって分かっているだろう。おまけに既に一度成功した。易々と懐にいれるような真似はしないだろう。

ドラゴが激しい放電をエゴイラに向けて放つ。金色の首の雷がそれを打ち払う。

「人間に飼い馴らされた哀れな奴め」
「ドラゴンとしての誇りはないのか小童」
「何故にニンゲンの味方をしている」
「弱く、姑息で、卑怯。生きる価値などない」
「食い物か?それなら分かるぞ」

灰白色、松葉色、紅蓮色、淡青色、金色が、魔術を放ちながら悠々とドラゴに語り掛ける。

「ぐるるーゥ…!いっぱい言うな!!うるさい!!」

様々な猛攻の中、ドラゴも負けじと上手いこと避けては吼える。稲妻を纏わせた闇火で、エゴイラ達の魔術のいくつかを消滅させた。
火力不足は否めないが、ドラゴの攻撃はしっかり通ってる。

(……俺が前に出るより、ドラゴに任せた方が良いかもしれない)

だが、ドラゴは感情任せになる所がある。まだ子供だからなのか、自分よりも強い相手との戦闘経験がないせいなのか。今だって闇雲に攻撃を連発しているだけだ。当たれば良いが、避けられてしまえば意味はない。

「ムキになるなドラゴ!!どこを狙うかしっかり考え、て───ッ!!」

ジンの声に紅蓮色の首が反応した。獰猛に燃える目がジロリと見下ろしてくる。嫌な予感と共にジンは地面を蹴り走り出す。紅蓮色が吐き出した巨大な火の玉が降り注ぎ、落ちた端からマグマが爆発するように火柱を上げる。足場だった土は破壊され、火柱がジンを追い詰める。
一歩踏み出すごとに足場を作り、マグマの海を駆け抜けた。

「ジン!!!」

「…ドラゴ!俺に構うな!!」

陸地か、マグマに負けずに残っている岩場を目指すジンの上にドラゴが舞い降りてくる。
見上げたジンの目に、ドラゴの背後に迫る松葉色の首。大きく開かれた口にドラゴが挟まれる瞬間を。

「ギャアッ!!」

「ドラゴ!!!!」

降り注ぐドラゴの血を浴びながら、ジンは身を翻し、作った足場を割る勢いで飛んだ。ドラゴを追いかけた事で下がった頭なら、全力で飛べば届きそうだったから。右手に、エゴイラに突き刺したままだった短剣を『回収』し、火属性の剣気術で炎を纏わせる。

「うつけが!!!」

「……ッ!!」

エゴイラの白く輝く尻尾が、ジンを弾き飛ばした。遠く離れた岩肌が、けたたましい音を立てて崩れ落ちる。

「離せ!!!何する!!!!」

牙を深く突き立てられながら、ドラゴは藻掻き、引っ掻き、何とか抜け出した。すぐにジンが吹っ飛ばされた方へと向かう。

「……何だ、おぬし、出来損ないか」

松葉色の声にドラゴの動きが止まった。

「嗚呼…哀れ、産み落としのしくじりか」
「なにゆえ、そんなにドラゴンらしさがないのかと思ったが、ただの失敗作か!」
「弱いから捨てるのだ、要らぬから捨てられたのだ」
「……だからこれほどまでに未熟だったか、折角のクロだと言うのに」

灰白色、紅蓮色、淡青色、金色の首が松葉色の言葉を瞬時に理解し、各々が好き勝手に言う。その言葉の意味を、ドラゴは理解出来ない。ただ、生まれて初めて、『恥』のようなものを感じて怒りが湧いた。


「オ……───オレ様をバカにするな!!!!」


何も分からないのに、ただただ怒りに打ち震えた。その怒りの裏側に、幼い頃から今に至るまでのジンが見える。『ドラゴはかっこいいよ』『お前はすごいドラゴンだ』───そう言ってくれるジンまで、バカにされたように感じた。

怒りのままに突っ込むドラゴに、灰白色の首が口をパカリと開いた。目に見えない振動。空気を大きく揺るがし、脳や神経まで届く波状攻撃。風属性魔術の派生、『超音波』による『咆哮』だ。

真正面から受けたドラゴは叫び声も上げられず、その場で全身を痙攣させ、泡を吹く。

「不憫な竜だ。人間など、信ずるに値しないと言うに」

灰白色が憐憫と呟いた。
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