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1.依頼
しおりを挟む如月高等学校。
日本でもトップクラスの進学校であり、政治、経済の有力者や芸能人の子供などが数多く在籍する、超有名私立高校である。
それだけでも悪目立ちするいうのに、さらに輪をかけて珍しい制度が存在する。生徒会に設置されている『目安箱』制度だ。
なんでも、数代前の生徒会が、『凛っ!!』とした女性生徒会長の異能漫画に感銘を受け
「私は、いついかなる時も、誰からの相談でも受け付ける!!」
と、漫画の内容と似たような事をやらかしてくれたらしい。異能は無かったが。
お陰で、小さな探し物から恋愛相談まで投書で溢れ、生徒会役員も日々奔走し、業務にも支障をきたしている始末。
…迷惑な話だ。
なぜ、生徒会長である僕が、こんな便利屋紛いのことをしなければならないんだろう?
いっそ廃止にしてしまえればいいのだけど、全校生徒の7割以上の賛成がない限り、校則を改正できない。
…あぁ。面倒臭い…
そして、1枚の投書と、ソファに座る眼前の少女を見比べた。
「…わたくしの相談は、その投書の通りですわ。」
今時、こんな口調の奴いないだろうと思っていたけど…存在するんだな。と妙に感心しながら口を開く。
「…早乙女さん。君の投書の内容だけど…街中で男に襲われそうになった。ということでいいんだね?」
「…っ。その通りですわ…」
少女、早乙女ミヤビは、あたりを気にしながら、苦々しく肯定した。
「安心しなよ。人払いもしてるし、防音もしっかりしてる。で?未遂?犯人の顔は見たのかい?」
「…未遂ですわ。防犯ベルを鳴らしたら逃げて行きましたもの。数人いましたが、顔は見ていませんわ。」
「…手がかりが少ないね。」
…まぁ、調べる方法はいくらでもあるんだけれど。
それにしても…早乙女…ねぇ…。
「…わかったよ。それで?犯人を見つけたら、どうしてほしいの?」
「…わたくしの前で、罰を受けさせたいですわ。2度とそんな気が起こらないような、厳しい罰を。」
「手段は?」
「問いませんわ。」
「…わかった。少々厳しいけど、この依頼。生徒会長である僕、氷山フユキが預かる。」
そういうと早乙女は驚きの表情を見せた。
「…あの高名な『エル』直々に動いていただけるとは、思っても見ませんでしたわ。」
「…なんでその通り名を知ってる?」
「知ってるも何も…全校生徒が知っているはずですわ。あの有名な死神漫画に登場する探偵のように、いえ、それ以上の切れ者だと。だから『エル』と呼ばれているのでしょう?」
「…否定はしないね。」
肩をすくめて言うと、彼女はにこやかに生徒会室を後にした。
…それと同時に、僕の背後に人の気配。
「…どう思います?相馬先生。」
「…お前が受けたんだろう?お前が考えろよ。」
衝立の後ろで様子を伺っていた、生徒会顧問である相馬アキトがやる気のなさそうに投げやりに言う。
ひどいなぁ。と笑うと
「…仕方がねぇな。しかし、お前はもう真相が見えているんだろ?」
「バレてましたか。」
「当たり前だろうが…俺を誰だと思ってる?」
「はいはい。生徒会顧問で化学教師で超優秀な相馬先生ですよー。」
「不正解。イケメンが抜けてる。」
「世の中理不尽ですよね。」
「ついでに、お前の幼馴染だろ。」
「幼馴染はついでなんだ?」
化学教師はからからと笑う。
「必要なら俺を呼べ。手伝ってやるよ。」
「頼りにしてるよ。」
当たり前だ。と頭を下げてわしゃわしゃと撫でられ、アキトは、そのまま外へと出て行った。
…さてと。まずは相手を探さなきゃな…
僕はある人物に電話をして、その結果を待つことにした。
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