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何も出来ない人間は
《第49話》何も出来ない人間は その4
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唯野さんとあった翌日。俺は普通に学校に来ていた。
「部長。今日の練習はどうしますか?」
後輩の2年が聞きに来た。
「まぁ、昨日の件もあるし、休みにした方がいいかなと思ったんだが、一応ウエイトとかはできるし、練習はあるぞ~」
後輩は少しガッカリしたような顔をした。
「そういえば、昨日のやつ原因分かったんですか?」
昨日のやつとはうちの部活全員の足が遅くなるあの謎の現象である。
あの現象の原因はうちの部活の後輩の前田颯太が悪魔の商人と契約して得た能力なのだが、そんなことをみんなに大っぴらに言えるわけがないのだ。
「うーーん。実はまだわからなくてな・・・とりあえず大会も近いし練習だ。俺は日直だから遅れていく、先に練習始めといて」
「うぃーす」
後輩は颯爽と去っていった。
さて、どうたもんだろな・・・
あの現象の原因は前田だった。ああなったのは俺のせいでもあるし、みんなや俺の速さが戻らないと大会にも勝てない・・・。
「かと言ってあんまり櫻口先輩たちも巻き込みたくないしなぁ~」
俺は昨日もらってポケットに入れっぱなしの唯野さんの電話番号が書かれたレシートを見て考えた。
日直の仕事を終え、この状況をどうするべきかなどと考えながら、スタスタとグラウンドに向かうと、そこには地面にばたりと倒れている部員と、鉄仮面に体にパイプが張り巡らされている前田(怪人態)が立っていた。
『遅かったじゃないですか・・・神田先輩』
その声からは前までの前田の爽やかな声は感じ取れないほどの、ねちっこい声が俺の耳に届いた。
「お前・・・本当に前田なのか?」
『そうですよ?何言ってるんですかぁ?』
「みんなに何をした・・・」
俺は震えそうな足をぐっと堪えてそう聞いた。
『何って、みんなの足の機能を奪いに来たんですよ・・・まぁ、今までの復讐と僕自身が速くなる為にですけど・・・』
「・・・俺の知ってる前田は、一生懸命努力して、タイムを伸ばして・・・みんなにバカにされようが挫けず頑張ってる前田だ。そんな卑怯な手を使うような人間じゃあ無いはずだ」
『随分と昔の話ですね・・・』
「そんな昔の話じゃないはずなんだ・・・」
『いいえ、俺は最後に先輩の速さを貰って、誰からもバカにされない、世界一速い男になってみせる・・・!』
と、言うと掃除機っぽい形をしている左腕を地面に打ち付けた。
「そうはさせるか!」
俺は「きゅおー~ーん」という音が聞こえると同時に脚だけ熊化して、一気に前方に高めに跳躍した。
「オラァ!」
俺の蹴りは2mほどある前田の頭に命中。ガチィィン!と鉄と鉄がぶつかったような音が響いた。
『甘々ですよ・・・先輩ィ!』
前田の肩から掃除機のヘットみたいなのが出てきて俺の脚に吸い付いた。
「ヌオォォッ!」
離れようともその場で固定されてしまい動けない。
キュポン!という音が鳴ると掃除機の吸引力が無くなり、俺は地面に叩きつけられた瞬間、グラウンドの奥の方に思いっきり蹴飛ばされた。
「グヘァッッ!」
『ふふふ・・・ついに手に入れたぞ・・・!最強のぉー速さをッッ!!』
完全にやられた。脚が完全に動かない・・・。
『最後に、あんたと俺を散々バカにした奴らを殺して終わり・・・あんたは俺に優しくしてくれた。だからあんたを最初にに殺す・・・』
前田がダスダスと近ずいてくる音が聞こえる。
神田輝幸の物語はここで終わりなのかもしれない。
『さよなら、せ・ん・ぱ・い』
前田は右手に持った砲丸を俺の頭目掛けて振り下ろしてきた。
その刹那。俺の頭に走馬灯が流れた。
生まれた時から今に至るまでの記憶がぶわーと流れてきた。
おれはギュッと目を瞑った。
『ギャルァァァ!俺の腕ごァァぁ!』
前田の絶叫が聞こえる。
パット目を開けてみると砲丸を持っていた方の腕と変な形の刀が地面に落ちていた。
何故か?
「何故ならば、俺が助けに来たからだ」
後ろから声が聞こえたので、振り返ってみると、やばい雰囲気を垂れ流しているスーツ姿の男がいた。
「たっ・・・唯野さん・・・!」
「よぉ、生きてたか熊の中学生」
唯野さんは少しニヤッとしてそう言った。
「部長。今日の練習はどうしますか?」
後輩の2年が聞きに来た。
「まぁ、昨日の件もあるし、休みにした方がいいかなと思ったんだが、一応ウエイトとかはできるし、練習はあるぞ~」
後輩は少しガッカリしたような顔をした。
「そういえば、昨日のやつ原因分かったんですか?」
昨日のやつとはうちの部活全員の足が遅くなるあの謎の現象である。
あの現象の原因はうちの部活の後輩の前田颯太が悪魔の商人と契約して得た能力なのだが、そんなことをみんなに大っぴらに言えるわけがないのだ。
「うーーん。実はまだわからなくてな・・・とりあえず大会も近いし練習だ。俺は日直だから遅れていく、先に練習始めといて」
「うぃーす」
後輩は颯爽と去っていった。
さて、どうたもんだろな・・・
あの現象の原因は前田だった。ああなったのは俺のせいでもあるし、みんなや俺の速さが戻らないと大会にも勝てない・・・。
「かと言ってあんまり櫻口先輩たちも巻き込みたくないしなぁ~」
俺は昨日もらってポケットに入れっぱなしの唯野さんの電話番号が書かれたレシートを見て考えた。
日直の仕事を終え、この状況をどうするべきかなどと考えながら、スタスタとグラウンドに向かうと、そこには地面にばたりと倒れている部員と、鉄仮面に体にパイプが張り巡らされている前田(怪人態)が立っていた。
『遅かったじゃないですか・・・神田先輩』
その声からは前までの前田の爽やかな声は感じ取れないほどの、ねちっこい声が俺の耳に届いた。
「お前・・・本当に前田なのか?」
『そうですよ?何言ってるんですかぁ?』
「みんなに何をした・・・」
俺は震えそうな足をぐっと堪えてそう聞いた。
『何って、みんなの足の機能を奪いに来たんですよ・・・まぁ、今までの復讐と僕自身が速くなる為にですけど・・・』
「・・・俺の知ってる前田は、一生懸命努力して、タイムを伸ばして・・・みんなにバカにされようが挫けず頑張ってる前田だ。そんな卑怯な手を使うような人間じゃあ無いはずだ」
『随分と昔の話ですね・・・』
「そんな昔の話じゃないはずなんだ・・・」
『いいえ、俺は最後に先輩の速さを貰って、誰からもバカにされない、世界一速い男になってみせる・・・!』
と、言うと掃除機っぽい形をしている左腕を地面に打ち付けた。
「そうはさせるか!」
俺は「きゅおー~ーん」という音が聞こえると同時に脚だけ熊化して、一気に前方に高めに跳躍した。
「オラァ!」
俺の蹴りは2mほどある前田の頭に命中。ガチィィン!と鉄と鉄がぶつかったような音が響いた。
『甘々ですよ・・・先輩ィ!』
前田の肩から掃除機のヘットみたいなのが出てきて俺の脚に吸い付いた。
「ヌオォォッ!」
離れようともその場で固定されてしまい動けない。
キュポン!という音が鳴ると掃除機の吸引力が無くなり、俺は地面に叩きつけられた瞬間、グラウンドの奥の方に思いっきり蹴飛ばされた。
「グヘァッッ!」
『ふふふ・・・ついに手に入れたぞ・・・!最強のぉー速さをッッ!!』
完全にやられた。脚が完全に動かない・・・。
『最後に、あんたと俺を散々バカにした奴らを殺して終わり・・・あんたは俺に優しくしてくれた。だからあんたを最初にに殺す・・・』
前田がダスダスと近ずいてくる音が聞こえる。
神田輝幸の物語はここで終わりなのかもしれない。
『さよなら、せ・ん・ぱ・い』
前田は右手に持った砲丸を俺の頭目掛けて振り下ろしてきた。
その刹那。俺の頭に走馬灯が流れた。
生まれた時から今に至るまでの記憶がぶわーと流れてきた。
おれはギュッと目を瞑った。
『ギャルァァァ!俺の腕ごァァぁ!』
前田の絶叫が聞こえる。
パット目を開けてみると砲丸を持っていた方の腕と変な形の刀が地面に落ちていた。
何故か?
「何故ならば、俺が助けに来たからだ」
後ろから声が聞こえたので、振り返ってみると、やばい雰囲気を垂れ流しているスーツ姿の男がいた。
「たっ・・・唯野さん・・・!」
「よぉ、生きてたか熊の中学生」
唯野さんは少しニヤッとしてそう言った。
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