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急いで闇を切り裂いて

《第55話》急いで闇を切り裂いて その4

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 私がメンメンに飛びかかった瞬間。そこにはメンメンの姿はなかった。

 「なっ!」

 『遅すぎるっよ☆』

 メンメンは既に私の後ろにおり

 「ぐはっ!」

 地面に叩きつけられた。

 「このやろっ!!!」

 『だから・・・』

 またメンメンの姿が消えた。

 『当たんないって☆』

 ドカンと蹴りを加えられ、私は天井にめり込、砂埃がめちゃくちゃ舞った。
 「ってぇな・・・」

 私はギュッとコンクリートの壊れた部分を握りしめた。

 『これが結果☆世の中の理さ☆』

 メンメンが下で腕を組んでそう言う姿は非常に腹立たしいものであった。
 
 「なら・・・これでどうだァ!」

 私の体はそこらじゅう痛いが、気合いで天井を蹴ってメンメンに向かって突撃した。

 「っうおりゃぁぉぁぁ!!!」

 『だから当たんないって』

 「わかってんっよ!」

 空中で私の背後に現れたメンメンはまた私を蹴り落とすつもりだろう。

 「そりゃぁ!」

 私は体の方向を変え、天井に打ち付けられた時に手に握っておいたコンクリートの塊をメンメンに思いっ切り投げつけた。

 『な、ごぱっぅ!』

 見事メンメンの顔面に命中し、やつの顔面は吹っ飛んだ。

 「ずぁっぐぉったぁった・・・」

 急に空中で体勢を変えたせいで私は着地に失敗した。

 「・・・ってぇ・・・んで、勝ったか?」
 
 しかし、目に入ったのは体だけで動いているメンメンであった。

 「なんだコイツ・・・気持ちわりぃ・・・」

 体だけのメンメンは私の方に走ってきた。













 『そして、次の角を右・・・て、そろそろいいだろ!ワシを降ろせ!』

 「うるせー最後までちゃんと仕事しろ」

 俺は狸を担ぎ、狸ナビによって一の場所に誘導してもらっていた。

 「ところで、なんであんたは門番みたいな役割てしたんだ?」

 天の会ならもっとマシな戦闘員立っているだろうに、なんでこんな妖怪が・・・

 『このアジトは割と住宅街にあるからな・・・被害を最小限に抑えるため暗殺に向いてるワシが選ばれたのじゃ』

 「なるほど、あんたが選ばれるようじゃ、この組織もだいぶん廃れたな」

 『なんじゃと!!』

 「はよナビしろ、さもないとたぬき鍋だ」

 『ヒィ!えっと、あ!あの扉が終わりじゃ』

 人間も妖怪も老い先短い者の方が自分の命を惜しむものなのかな・・・と思いながら、鉄製の扉のドアノブに手をかけた。

 「かた!」

 そう、ドアノブが回らない。

 『ここはシンプルにドアノブが硬い部屋だ。そう簡単に開けれまい』

 「そうか、ならば解刀 鍵かいとう かぎ

 俺はカバンから先が鍵の形をしている奇妙な刀を取り出した。

 『な、なんじゃそりゃ!』

 「これはありとあらゆる鍵を開き、人の心にかかった鍵なんかも開けることが出来るんだよ」

 「なんだい最近の若いのは・・・プライバシーってもんが!」

 俺はたぬきの口を手で押えた。

 「人間みたいなこと言うな。それに俺ももう若くない」

 そういって解刀 鍵で扉を斬った。

 すると、キーと自動的に扉が開いた。

 「もう、案内はしてもらわなくてもいい。森やら川やらに消えろ」


 『はいはい、多分今から上からお説教だよ』

 「組織に帰るのはやめとけ、どうせ殺されるか改造されるかだ」

 そう言って狸を床に降ろした瞬間

 『馬鹿め!最初から罠だったんだよ!』

 狸が思いっ切りぶつかってきた。

 「うおっと、」

 俺は少しよろめき、部屋に片足を踏み入れた。その瞬間!無数の槍が部屋の横から飛んできた。

 「どぅぁっ!」

 無数の槍は俺の体をぶち抜いた。

 『ほーほーっほほよく騙してやりましたわね。たぬきさん』

 時代劇みたいな喋り方をする女が狸を褒めている。なるほど、文字通りの狸ジジイだった訳か

 『はい、全て貴女様の言う通りに致しましたので、どうか孫と娘を・・・』

 なるほど、つまるところこの狸は孫と娘を人質に取られていたという訳か・・・。

 なるほどだいたい分かったぞ。

 『あら、そんな約束した覚えはありんせん。もう鍋にして食ってしまいましたわ』

 「・・・なんて・・・酷い・・・」

 思わず声を出してしまった。

 『うぁぉぁぁぁん!なんでじゃ!なんでじゃぁ!!!』

 狸は泣き叫びながらぺたりと倒れた。

 すると、女は槍を持ち上げて語り始めた。

 『人間も妖怪も、大事な人を人質にしたらなんでもやるからの・・・まぁ、お前もあの世に送って差し上げましょ・・・では、さいなら』

 「ちょっと待ちな・・・」

 俺は女が狸に突き刺そうと槍を狸スレスレで止めた。その女の姿は花柄の着物を着ているが5本の腕が背中から生えているというものであった。

 『あら?唯野さん死んだはずでは?』

 女は俺を見て驚くわけでもなく、ニヤリと笑った。

 「生憎、あの程度の攻撃では死なないようになってるんですわ」

 『まぁ、調査済みですが・・・貴方も殺して差し上げましょう』


 「おいタヌキ!次こそ逃げろ」

 『っし、しかし、なんでワシを守るのじゃ!?』

 「この女が気に食わないのと道案内の礼だ」
 
 『ふーんいちいち律儀な男も嫌いじゃなくてよ!』

 女は槍をぶん回し、後方へ大ジャンプした。

 「あの女は俺がぶっ殺す。心置き無く森に帰れ」

 『・・・でも、でもでもでも!孫と・・・孫と娘の・・・』

 「仇は俺が取る。せめてあんただけでも守らせてくれ」

 そう言って俺は狸を出口に蹴飛ばした。



 『これで心置き無く戦えんしょう?』

 「しゃぁねぇ、まずこの槍をっ!」

 俺は刺さったまんまだった数本の槍を抜いた。その傷跡はすぐに治ったし、痛みも消えた。

 『知ってはおりましたが、直に見ると気色が悪ですわね』

 気色悪いのはあんたもだっつの、でもまぁ、自分を震え立たせよう。一も救わないとだしな。

 俺はすぅーと深呼吸をして、こう言い放った。

 「俺がお前をぶん倒す」
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