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バーテンダー
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何となく夜の世界に憧れていた僕は成り行きで歌舞伎町でバーテンダーをすることになった。
それまでにバイトは7連続で落ちており、根暗な僕がバーなんてそうそう受からないと思い、あまり期待はしないで面接に臨んだ。が、後日あっさり合格の連絡が来た。嬉しかった、漸く社会に認められたような気がした。
研修では綺麗なお姉さんと会話し、ドリンクを頂いて飲む、初めは緊張したが少し慣れ自然体で話せるようになると「楽しい、楽な仕事だ」と余裕が生まれた。
これなら僕でも上手くやれそうだ、しかし、そう思えたのも束の間だった。
研修が終わり、店を僕ともう一人の新人、そして新人の店長で切り盛りしなくてはいけなくなった。
新しくできた店舗をほとんど未経験の3人が1から営業する。
僕たちがこの店を作り上げていくんだ。当初はそんなワクワクとした期待で溢れていた。
だがその実態は悲惨だった。
初日の売り上げはゼロだった。
肩を落とす僕に店長は「初日だから仕方がない
、これから頑張ろう」と言ってくれた。そして店長は「これ、入店祝い、サイズが合いそうならあげる」とディーゼルの高えジーパンを出した。信じられないぐらいパッツパツでピッチピチのスーパージャストサイズだったが欲しかったので無理矢理履いた。
今思えばやる気を出させるための店長の作戦だったのかもしれない。
結局、その後一週間経ってもお店に人は来なかった。
お店の看板を作ったり、SNSで宣伝したり、やれるだけのことをやったつもりだった。
店長はみるみるうちに暗く、やつれていった。見ていられない。
そんな状況に嫌気がさし、僕は友達を店に呼んでみることにした。
出来る限り声をかけ、最終的に来てくれた人数は5人。
その日、初めてお店の飲み物を開け、初めて注文を取り、初めて会計をした。
店として初めての客、ちゃんとした営業だった。
店長もこれで喜んでくれるかな?
さて、「どうでした?」僕は店長に微笑みかける。
「もうちょっとさあ」
「はい?」
「もうちょっとあそこでおかわりの確認とか、キャストドリンクのお願いとかそういうのできたら良かったかなぁ」
予想とは違い店長からはそんなアドバイスや説教ばかり飛んでくる。
あれ?おかしいぞ?だって今まで客一人も来なかったんだよ?今日は5人も来たんだぞ?0が5だぞ?少ない友達に無理に頼んで来てもらってんだけど?え?良くない??マジで?おいおいおいおい…お前がやる気も経験もないからこっちが頑張ってやってんだろうが。ふざけんなよコラ。何が売り上げだよ、てめえ一人じゃいつまでたってもゼロだろうがおいボケカスがよ。
キレた。バチクソキレた。
そうして僕は完全にやる気も失せ、客のいないバーにじっと佇み、新人と共にやや高い時給を食い潰すカスのバイトになっていた。
店長はそんな状況に絶望し、すっかりと生気も失せていた。
開店初日から1ヶ月が経とうとしたある日、とうとう店長が泣きついてきた。
「店の代表から怒りの連絡が来た、店の売上はほぼゼロ、一体何をやっているんだと言われてしまった」
まあそうだろうなと思った。店の代表は研修の際に会ったことがある。ヤクザのような風貌だった。あれに叱られるのは相当キツイだろう。
「俺も頑張るからさ、二人もどうか力を貸してほしい。今はこんな状況だけどここから巻き返して代表にも認めてもらおう」
店長の目には涙が滲んでいた。
後半は私情が絡んでいるような気もするが、嘘のない、誠意ある態度だった。
「うっす!!」
確かに、このままの状況じゃなんか悔しいし釈然としない。仕方ない、全力で足掻いてみよう。
きっとなんとかなる。根拠はない。
ただ、そんな気がした。
その2日後、店長からLINEがきた。
珍しい、何の用だろうか?
「ごめんなさい、今のままだと経営が厳しいのであなたを解雇します」
まさかのクビである。
不思議と悔しさはなかった。
心のどこかでそうなるような気もしていたのかもしれない。
今でもパツパツのジーパンは大事に持っている。
履くたびに、どこかほろ苦い窮屈さを感じる。
それまでにバイトは7連続で落ちており、根暗な僕がバーなんてそうそう受からないと思い、あまり期待はしないで面接に臨んだ。が、後日あっさり合格の連絡が来た。嬉しかった、漸く社会に認められたような気がした。
研修では綺麗なお姉さんと会話し、ドリンクを頂いて飲む、初めは緊張したが少し慣れ自然体で話せるようになると「楽しい、楽な仕事だ」と余裕が生まれた。
これなら僕でも上手くやれそうだ、しかし、そう思えたのも束の間だった。
研修が終わり、店を僕ともう一人の新人、そして新人の店長で切り盛りしなくてはいけなくなった。
新しくできた店舗をほとんど未経験の3人が1から営業する。
僕たちがこの店を作り上げていくんだ。当初はそんなワクワクとした期待で溢れていた。
だがその実態は悲惨だった。
初日の売り上げはゼロだった。
肩を落とす僕に店長は「初日だから仕方がない
、これから頑張ろう」と言ってくれた。そして店長は「これ、入店祝い、サイズが合いそうならあげる」とディーゼルの高えジーパンを出した。信じられないぐらいパッツパツでピッチピチのスーパージャストサイズだったが欲しかったので無理矢理履いた。
今思えばやる気を出させるための店長の作戦だったのかもしれない。
結局、その後一週間経ってもお店に人は来なかった。
お店の看板を作ったり、SNSで宣伝したり、やれるだけのことをやったつもりだった。
店長はみるみるうちに暗く、やつれていった。見ていられない。
そんな状況に嫌気がさし、僕は友達を店に呼んでみることにした。
出来る限り声をかけ、最終的に来てくれた人数は5人。
その日、初めてお店の飲み物を開け、初めて注文を取り、初めて会計をした。
店として初めての客、ちゃんとした営業だった。
店長もこれで喜んでくれるかな?
さて、「どうでした?」僕は店長に微笑みかける。
「もうちょっとさあ」
「はい?」
「もうちょっとあそこでおかわりの確認とか、キャストドリンクのお願いとかそういうのできたら良かったかなぁ」
予想とは違い店長からはそんなアドバイスや説教ばかり飛んでくる。
あれ?おかしいぞ?だって今まで客一人も来なかったんだよ?今日は5人も来たんだぞ?0が5だぞ?少ない友達に無理に頼んで来てもらってんだけど?え?良くない??マジで?おいおいおいおい…お前がやる気も経験もないからこっちが頑張ってやってんだろうが。ふざけんなよコラ。何が売り上げだよ、てめえ一人じゃいつまでたってもゼロだろうがおいボケカスがよ。
キレた。バチクソキレた。
そうして僕は完全にやる気も失せ、客のいないバーにじっと佇み、新人と共にやや高い時給を食い潰すカスのバイトになっていた。
店長はそんな状況に絶望し、すっかりと生気も失せていた。
開店初日から1ヶ月が経とうとしたある日、とうとう店長が泣きついてきた。
「店の代表から怒りの連絡が来た、店の売上はほぼゼロ、一体何をやっているんだと言われてしまった」
まあそうだろうなと思った。店の代表は研修の際に会ったことがある。ヤクザのような風貌だった。あれに叱られるのは相当キツイだろう。
「俺も頑張るからさ、二人もどうか力を貸してほしい。今はこんな状況だけどここから巻き返して代表にも認めてもらおう」
店長の目には涙が滲んでいた。
後半は私情が絡んでいるような気もするが、嘘のない、誠意ある態度だった。
「うっす!!」
確かに、このままの状況じゃなんか悔しいし釈然としない。仕方ない、全力で足掻いてみよう。
きっとなんとかなる。根拠はない。
ただ、そんな気がした。
その2日後、店長からLINEがきた。
珍しい、何の用だろうか?
「ごめんなさい、今のままだと経営が厳しいのであなたを解雇します」
まさかのクビである。
不思議と悔しさはなかった。
心のどこかでそうなるような気もしていたのかもしれない。
今でもパツパツのジーパンは大事に持っている。
履くたびに、どこかほろ苦い窮屈さを感じる。
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