【完結】嬉しいと花を咲かせちゃう俺は、モブになりたい

古井重箱

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01.

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 数学の問題用紙を見た瞬間、俺は戦慄した。
 ヤマが見事に的中してしまった。俺はこの問題をすらすらと解くことができる。
 赤点を免れるどころか、高得点を狙える。そう思うにつれて、俺の体に異変が起きた。全身がカッと熱くなり、視界が淡く白む。鉛筆を握った手には汗がぬるつきはじめた。
 まただ。また俺は、<花>をんでしまう。
 俺の肩から5センチほど離れた空間にピンクの薔薇が出現する。一つどころではない。数えきれないほどの薔薇の花が咲き誇り、教室を艶やかに彩っていく。匂いが濃い品種を喚んでしまったらしくて、俺の周りにむっと花の香りが立ち込めた。
 隣の席に座っている田中静香さんが、困ったように俺を見やった。
 ごめんなさい。俺の特異体質のせいでテストの邪魔をしてしまって。田中さんは医学部受験を公言している勉強家だ。今回の中間テストにかけた労力は並大抵のものではないだろう。

三塚みつか、またか」

 試験監督をしている村井先生が迷惑そうに俺を睨んだ。

「どうにか始末できんのか」
「すみません、今やってみます」

 みんながテストに集中しているのに遮ってしまって、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。それなのに突然現れたピンクの薔薇は風に吹かれた綿毛のごとく軽やかに中空を遊泳している。くそっ、怪しい<花>め。俺の心を嘲笑うかのように咲き誇りやがって。
 <花>を喚んでしまった時の対処法は一つしかない。俺はひたすら自己否定の言葉を胸の内側で唱えた。
 俺のアホ。空気が読めない変人。社会のはみ出し者。学園のお荷物。
 気分が沈むにつれて、ピンクの薔薇がくすみ、枯れていった。あとに残ったのは微香が漂う薄茶色の砂だけ。砂はぱらぱらと音を立てて床に散らばった。
 テストが終わったら掃除をしないといけない。
 俺は無表情をキープしたまま問題を解いていった。
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