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放課後は俺にとって癒しの時間である。
園芸部員として土いじりをしていると心が落ち着く。<花>は嫌いだけど、天然の植物は大好きだ。
グラウンドにほど近い花壇にはクロッカスが咲いている。凛として咲いている紫色の花は何回眺めても見飽きることがない。素晴らしい造形美だ。俺にマレビトなどという運命を課した神様は意地悪だけど、いい仕事もするな。
ジョウロで水をやっていた瞬間、俺の背中に鈍い痛みが走った。
ドッという音を立てて、サッカーボールが地面に転がる。これって、イジメか? 俺が振り返ると、そこには同じクラスの鈴木綺羅斗が立っていた。ライムグリーンのビブスをつけている。
イケメン揃いのサッカー部のなかでも、綺羅斗はトップクラスの美形である。大きな目にスッと通った鼻筋、薄い唇。すべてのパーツが華やかにできているのに見事に調和している。
綺羅斗はせっかくの綺麗な顔が台無しになるほど真っ青だった。
「ごめん、リフティングしてたら手元……じゃなくて足元が狂っちゃって」
「そういう時もあるだろ。花壇に当たってないから大丈夫だよ」
「この花壇って、三塚くんが担当してるの?」
「そうだよ」
「すごいね。俺、花のことは詳しくないけど、大事にされてるのが分かる……!」
無邪気な笑顔を見て、綺羅斗に対する印象が変わった。
サッカー部員って近寄りがたいイメージがあった。陰キャの俺にとって対極にある存在だからな。綺羅斗を含め、同じクラスのサッカー部員とこれまで話したことはない。彼らは教室で女子に囲まれているか、グラウンドでボールと戯れている。自分の席しか居場所がない俺とは大違いだ。
「この花、なんていうの?」
「クロッカス」
「花言葉は?」
「……青春の喜び」
「うわー! 高校生の俺らにぴったりじゃん。三塚くん、花言葉を意識して植えたの?」
「いや、先輩から引き継いだだけだよ」
「花言葉まで知ってるなんてすごいね。三塚くんって、花が好きなんだね」
綺羅斗はかなり人懐っこい性格らしい。こういう全方面に優しい陽キャもいるのか。陽キャって、俺のような陰キャを見下している印象があった。
「あのさ、三塚くん。明日、お昼おごらせて」
「えっ? いいってば、そんなの」
「ボール当てちゃったお詫びがしたいし、三塚くんともっと話してみたい!」
「……そうか」
俺は綺羅斗の申し出を受け入れた。
綺羅斗が俺に興味を持っているのか。にわかには信じられないが、悪い話ではない。もしかしたら俺たち、友達になれるかも?
あ、まずいと思った時には、ポポポッと体が熱くなって、ピンク色の薔薇が出現した。綺羅斗が目を丸くする。俺は事態を収束させるために、自己否定の呪文を心の中で唱えた。
俺のバカ。勘違い野郎。身の程知らず。調子乗りすぎ。
薔薇が枯れて砂へと変わった。さらさらと音を立てて、砂が足元の土と交わったのを見届けた俺は綺羅斗に謝った。
「ごめん。気色悪いだろ」
「今のって、嬉しいから咲いたんだよね?」
「……うん」
「そうなんだ! よかった。俺ってもしかして、三塚くんからの好感度高い?」
「……悪くはない」
「ほんと? 期待していい?」
このグイグイくる感じ、さすが陽キャだな。
俺は綺羅斗にサッカーボールを渡した。
「あんまり話し込んでると先輩に怒られるぞ」
「そうだね。それじゃ、明日の昼。楽しみにしてるから!」
爽やかな笑顔を残して、綺羅斗は去っていった。
園芸部員として土いじりをしていると心が落ち着く。<花>は嫌いだけど、天然の植物は大好きだ。
グラウンドにほど近い花壇にはクロッカスが咲いている。凛として咲いている紫色の花は何回眺めても見飽きることがない。素晴らしい造形美だ。俺にマレビトなどという運命を課した神様は意地悪だけど、いい仕事もするな。
ジョウロで水をやっていた瞬間、俺の背中に鈍い痛みが走った。
ドッという音を立てて、サッカーボールが地面に転がる。これって、イジメか? 俺が振り返ると、そこには同じクラスの鈴木綺羅斗が立っていた。ライムグリーンのビブスをつけている。
イケメン揃いのサッカー部のなかでも、綺羅斗はトップクラスの美形である。大きな目にスッと通った鼻筋、薄い唇。すべてのパーツが華やかにできているのに見事に調和している。
綺羅斗はせっかくの綺麗な顔が台無しになるほど真っ青だった。
「ごめん、リフティングしてたら手元……じゃなくて足元が狂っちゃって」
「そういう時もあるだろ。花壇に当たってないから大丈夫だよ」
「この花壇って、三塚くんが担当してるの?」
「そうだよ」
「すごいね。俺、花のことは詳しくないけど、大事にされてるのが分かる……!」
無邪気な笑顔を見て、綺羅斗に対する印象が変わった。
サッカー部員って近寄りがたいイメージがあった。陰キャの俺にとって対極にある存在だからな。綺羅斗を含め、同じクラスのサッカー部員とこれまで話したことはない。彼らは教室で女子に囲まれているか、グラウンドでボールと戯れている。自分の席しか居場所がない俺とは大違いだ。
「この花、なんていうの?」
「クロッカス」
「花言葉は?」
「……青春の喜び」
「うわー! 高校生の俺らにぴったりじゃん。三塚くん、花言葉を意識して植えたの?」
「いや、先輩から引き継いだだけだよ」
「花言葉まで知ってるなんてすごいね。三塚くんって、花が好きなんだね」
綺羅斗はかなり人懐っこい性格らしい。こういう全方面に優しい陽キャもいるのか。陽キャって、俺のような陰キャを見下している印象があった。
「あのさ、三塚くん。明日、お昼おごらせて」
「えっ? いいってば、そんなの」
「ボール当てちゃったお詫びがしたいし、三塚くんともっと話してみたい!」
「……そうか」
俺は綺羅斗の申し出を受け入れた。
綺羅斗が俺に興味を持っているのか。にわかには信じられないが、悪い話ではない。もしかしたら俺たち、友達になれるかも?
あ、まずいと思った時には、ポポポッと体が熱くなって、ピンク色の薔薇が出現した。綺羅斗が目を丸くする。俺は事態を収束させるために、自己否定の呪文を心の中で唱えた。
俺のバカ。勘違い野郎。身の程知らず。調子乗りすぎ。
薔薇が枯れて砂へと変わった。さらさらと音を立てて、砂が足元の土と交わったのを見届けた俺は綺羅斗に謝った。
「ごめん。気色悪いだろ」
「今のって、嬉しいから咲いたんだよね?」
「……うん」
「そうなんだ! よかった。俺ってもしかして、三塚くんからの好感度高い?」
「……悪くはない」
「ほんと? 期待していい?」
このグイグイくる感じ、さすが陽キャだな。
俺は綺羅斗にサッカーボールを渡した。
「あんまり話し込んでると先輩に怒られるぞ」
「そうだね。それじゃ、明日の昼。楽しみにしてるから!」
爽やかな笑顔を残して、綺羅斗は去っていった。
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