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リッキー救出作戦の翌日。
アシュレイは定宿の<草原の輝き亭>で朝食をとった。同じ宿に泊まっているクライヴはまだ寝ているようである。
昨夜、淫らな夢を見てしまったからクライヴに合わせる顔がない。
食後の薬草茶を飲んでいると、クライヴが食堂にやって来た。
「おはよう、アシュレイ。よく眠れたか?」
爽やかな微笑みを向けられて、アシュレイは申し訳なさでいっぱいになった。クライヴがいくら美男だからといって、淫夢の餌食にしていいわけがない。アシュレイは低いボリュームで「おはよう」とだけ返した。
「夢の中におまえが出て来たぜ」
「えっ?」
「ふたりで羊を飼っている夢だった。羊の毛が七色なんだけどさ、モコモコしてて気持ちいいんだ」
「そうか。平和だな」
「アシュレイはどんな夢を見たんだ?」
クライヴの琥珀色の瞳がまぶしくて、目を合わせていられない。アシュレイはクライヴから顔を逸らした。
「夢など見なかった」
「深い眠りだったんだな」
「俺はもう食事を済ませたから、お先に失礼する」
「そうか。アシュレイ、今日一緒に街に出かけないか?」
これはデートのお誘いだろうか。いや、デートというのは恋人同士でないと成り立たない。アシュレイとクライヴは現状では単なる知り合いだから、デートではなくただの外出である。
「いろいろと行ってみたいところがあるんだ。それに、おまえのお気に入りの場所も教えてほしい」
「俺はダンジョンに潜る!」
「二日連続になるぞ。ちゃんと休む時は休めよ」
「おまえに指図される筋合いはない」
こんなことを言いたいわけではないのに、口が勝手に動いてクライヴを拒んでしまう。これが恋というものなのか? まるで制御が効かない馬車に乗っているかのようだ。
クライヴに想いを伝えたい。可愛い奴だと抱きしめてもらいたい。それなのに、アシュレイは眉間にシワを寄せて、ムスッという表情で黙り込んだ。
「昨日の戦いでアシュレイとの心の距離が縮まったと感じたが……俺の勘違いだったみたいだな」
クライヴが悲しげにつぶやいた。
そんな顔をしないでほしい。クライヴにはいつも笑っていてほしい。アシュレイがどんな言葉を紡げばいいか悩んでいると、クライヴが朝食を平らげて席を立った。
「じゃあな、アシュレイ。無理だけはするなよ」
「クライヴ……。俺は、その……」
消え入りそうな声を出すことしかできない自分が情けない。アシュレイは自己嫌悪に陥った。
アシュレイは定宿の<草原の輝き亭>で朝食をとった。同じ宿に泊まっているクライヴはまだ寝ているようである。
昨夜、淫らな夢を見てしまったからクライヴに合わせる顔がない。
食後の薬草茶を飲んでいると、クライヴが食堂にやって来た。
「おはよう、アシュレイ。よく眠れたか?」
爽やかな微笑みを向けられて、アシュレイは申し訳なさでいっぱいになった。クライヴがいくら美男だからといって、淫夢の餌食にしていいわけがない。アシュレイは低いボリュームで「おはよう」とだけ返した。
「夢の中におまえが出て来たぜ」
「えっ?」
「ふたりで羊を飼っている夢だった。羊の毛が七色なんだけどさ、モコモコしてて気持ちいいんだ」
「そうか。平和だな」
「アシュレイはどんな夢を見たんだ?」
クライヴの琥珀色の瞳がまぶしくて、目を合わせていられない。アシュレイはクライヴから顔を逸らした。
「夢など見なかった」
「深い眠りだったんだな」
「俺はもう食事を済ませたから、お先に失礼する」
「そうか。アシュレイ、今日一緒に街に出かけないか?」
これはデートのお誘いだろうか。いや、デートというのは恋人同士でないと成り立たない。アシュレイとクライヴは現状では単なる知り合いだから、デートではなくただの外出である。
「いろいろと行ってみたいところがあるんだ。それに、おまえのお気に入りの場所も教えてほしい」
「俺はダンジョンに潜る!」
「二日連続になるぞ。ちゃんと休む時は休めよ」
「おまえに指図される筋合いはない」
こんなことを言いたいわけではないのに、口が勝手に動いてクライヴを拒んでしまう。これが恋というものなのか? まるで制御が効かない馬車に乗っているかのようだ。
クライヴに想いを伝えたい。可愛い奴だと抱きしめてもらいたい。それなのに、アシュレイは眉間にシワを寄せて、ムスッという表情で黙り込んだ。
「昨日の戦いでアシュレイとの心の距離が縮まったと感じたが……俺の勘違いだったみたいだな」
クライヴが悲しげにつぶやいた。
そんな顔をしないでほしい。クライヴにはいつも笑っていてほしい。アシュレイがどんな言葉を紡げばいいか悩んでいると、クライヴが朝食を平らげて席を立った。
「じゃあな、アシュレイ。無理だけはするなよ」
「クライヴ……。俺は、その……」
消え入りそうな声を出すことしかできない自分が情けない。アシュレイは自己嫌悪に陥った。
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