【完結】初夜失敗? 気にするな! 俺はおまえが大好きだよ

古井重箱

文字の大きさ
9 / 19

09

しおりを挟む
 リッキー救出作戦の翌日。
 アシュレイは定宿の<草原の輝き亭>で朝食をとった。同じ宿に泊まっているクライヴはまだ寝ているようである。
 昨夜、淫らな夢を見てしまったからクライヴに合わせる顔がない。
 食後の薬草茶を飲んでいると、クライヴが食堂にやって来た。

「おはよう、アシュレイ。よく眠れたか?」

 爽やかな微笑みを向けられて、アシュレイは申し訳なさでいっぱいになった。クライヴがいくら美男だからといって、淫夢の餌食にしていいわけがない。アシュレイは低いボリュームで「おはよう」とだけ返した。

「夢の中におまえが出て来たぜ」
「えっ?」
「ふたりで羊を飼っている夢だった。羊の毛が七色なんだけどさ、モコモコしてて気持ちいいんだ」
「そうか。平和だな」
「アシュレイはどんな夢を見たんだ?」

 クライヴの琥珀色の瞳がまぶしくて、目を合わせていられない。アシュレイはクライヴから顔を逸らした。

「夢など見なかった」
「深い眠りだったんだな」
「俺はもう食事を済ませたから、お先に失礼する」
「そうか。アシュレイ、今日一緒に街に出かけないか?」

 これはデートのお誘いだろうか。いや、デートというのは恋人同士でないと成り立たない。アシュレイとクライヴは現状では単なる知り合いだから、デートではなくただの外出である。
 
「いろいろと行ってみたいところがあるんだ。それに、おまえのお気に入りの場所も教えてほしい」
「俺はダンジョンに潜る!」
「二日連続になるぞ。ちゃんと休む時は休めよ」
「おまえに指図される筋合いはない」

 こんなことを言いたいわけではないのに、口が勝手に動いてクライヴを拒んでしまう。これが恋というものなのか? まるで制御が効かない馬車に乗っているかのようだ。
 クライヴに想いを伝えたい。可愛い奴だと抱きしめてもらいたい。それなのに、アシュレイは眉間にシワを寄せて、ムスッという表情で黙り込んだ。

「昨日の戦いでアシュレイとの心の距離が縮まったと感じたが……俺の勘違いだったみたいだな」

 クライヴが悲しげにつぶやいた。
 そんな顔をしないでほしい。クライヴにはいつも笑っていてほしい。アシュレイがどんな言葉を紡げばいいか悩んでいると、クライヴが朝食を平らげて席を立った。

「じゃあな、アシュレイ。無理だけはするなよ」
「クライヴ……。俺は、その……」

 消え入りそうな声を出すことしかできない自分が情けない。アシュレイは自己嫌悪に陥った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

処理中です...