【完結】いばらの向こうに君がいる

古井重箱

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14. 初夜 ※

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 その後、ふたりは清い交際を続けた。内藤は悠理が抱きついても、何もしてこなかった。キスはバードキス止まりだった。
 自分は内藤に多大な我慢を強いているのではないか? 悠理は悩んだが、内藤は結婚するまでバージンでいたいという願いを尊重してくれた。
 そうこうするうちに結婚式になった。
 白いタキシード姿の内藤を見た瞬間、悠理はポーッとなった。いつもと違って額を出しているところもカッコいい。

「その顔。さては惚れ直したな?」
「そっちだって」

 悠理は負けじと言い返した。内藤はそんな悠理が愛おしくてたまらないというように目を細めた。
 人前式のあと、披露宴が始まった。
 内藤の勤め先の人々が、悠理の席に集まってきた。

「あいつのこと、頼みましたよ」
「はい」
「こんな美人と結婚するとはな。内藤は果報者だな」
「新婚旅行はアイスランドなんだってね。楽しんできて」
「ありがとうございます」

 ふたりを結びつけてくれた映画の舞台を訪ねてみたい。そうリクエストしたのは悠理だった。フライトは今月末の予定である。
 続いて、悠理の親戚が内藤を取り囲んだ。

「まあ、男前ねぇ」
「おまけに××防災にお勤めなんでしょ?」
「悠理くん、いい人見つけたわね」

 内藤の美点はそれだけではない。何よりも未熟な悠理を受け止めてくれる。悠理は内藤と微笑みを交わした。
 そして披露宴が終わり、ふたりは新居に向かった。
 相談を重ねた結果、悠理の勤め先に近い一軒家を借りることにした。地下に防音室があるので、悠理は好きなだけピアノに集中することができる。内藤は通勤時間が長くなってしまったが、文句の一つも口にしない。心が広い男と結婚したものだと悠理は改めて思った。
 
「お疲れさん。俺の会社の奴らにジロジロ見られて疲れただろ」
「大丈夫。みんないい人だったよ」
「悠理くん、なんだか丸くなったな」
「物足りない?」
「いや、きみがあんまり素直だと誰かに攫われそうで怖い」
「心配しすぎ。俺、大人だよ?」

 悠理は腕を伸ばして、内藤の首にしがみついた。内藤が悠理の背中のラインを撫でる。

「もう始めていいの?」
「シャワー浴びてから」
「よっしゃ。悠理くんの気が変わらないうちに……」

 内藤はバスルームへと向かった。
 リビングのソファの上で、悠理はクッションを抱きしめた。これからどんなことが起きようとも内藤にすべてを任せよう。いやとかダメとか消極的なことはなるべく言わずに、内藤に気持ちよくなってもらおう。
 そう心がけたものの具体的に何をどうすればいいのかは、まるで分からなかった。そもそも悠理は頻繁に自慰をするタイプではない。男性器のどこを刺激すれば悦んでもらえるのだろう。

「お待たせ」

 湯上がりの内藤は腰にタオルを巻いただけだった。雄々しい膨らみがそれとなく見てとれる。

──あれがもっと大きくなって、俺のナカに入るの?

 悠理の緊張が一気に高まった。ソファから動けずにいると、内藤が言った。

「今日はやめておこうか?」
「ううん。俺、内藤さんにいっぱい我慢させたし」

 勇気を振り絞ってバスルームへと歩き出す。悠理は脱衣所で裸になった。
 掛け湯をしてバスタブに浸かる。思ったよりも広い。これなら一緒に入れそうだと思ったところで、悠理は首を横に振った。自分は何を考えているのだろう。結婚した途端にやる気満々になったら内藤に愛想を尽かされるかもしれない。
 バスタブを出て、ボディソープで体を清める。内藤の唇がどこに触れてもいいように入念に洗った。

──唇って……俺、エロいこと考えすぎじゃないか!?

 再びバスタブに浸かる。ここを出たらとうとう内藤とベッドインするのか。そう思うといつまでもバスルームにこもってモラトリアムを満喫していたいような気持ちになった。

──でも、俺はあの人の奥さんになったんだから……拒んじゃダメだよな。

 悠理はバスルームを出た。
 脱衣所に立ち、バスタオルで濡れた体を拭く。ルームウェアを着たあと、髪を乾かした。
 内藤は今、どんな心境なのだろう。
 ドライヤーのスイッチを切った悠理は、ベッドルームの扉を開いた。ベッドに寝そべっていた内藤が上半身を起こす。ジムで鍛えている体には贅肉が見当たらず、代わりに健康的な筋肉が隆起していた。

「悠理くん、怖い?」
「別に。だって相手はあんただもん」

 悠理はベッドに乗り上げた。そしてその勢いのままに、内藤に抱きついた。温かくて心地がいい。なんだ、セックスって簡単じゃんと思いかけた瞬間、唇を奪われた。

「ん……っ、ん、ぅっ」

 結婚式でのバードキスとはまるで違う。濃厚な舌遣いに悠理は翻弄された。内藤はキスをしながら悠理の尻肉を揉みしだいた。
 いたずらな手がルームウェアの隙間から忍んできて、悠理の乳首に触れた。くすぐったいような、むずむずするような妙な気分に見舞われていると、内藤の指の腹が乳頭を押し潰した。あっと声を上げたくても口を塞がれている。
 悠理は内藤の情熱的な愛撫を一身に浴びた。

「内藤さん……っ、そこ、きゅうってしないで」

 ずっといじられているうちに悠理の胸の突起は敏感になっていた。かりっと引っ掻くように触れられると、体の内側を電流のようなものが駆け抜けていった。ペニスがゆるゆると勃ち上がる。

「舐めてもいい?」
「やぁっ!」

 ベッドに押し倒されて、悠理は頭が真っ白になった。前戯でこんなにもドキドキさせられるのか。いざ挿入となったらどうなってしまうのだろう。
 内藤は、悠理の左右の粒をちゅぱちゅぱと音を立てて吸った。艶かしい音が耳に絡みついてくる。悠理のペニスがさらに硬くなった。
 涙目になって窮状を訴えれば、優しく抱きしめられた。

「ごめん。最初から飛ばしすぎた」
「……俺がさんざん焦らしたから」
「悠理くんのここ、可愛いね」
「あっ」

 皮を被った先端を撫でられて、悠理は腰が溶けそうになった。鼻にかかった甘えた声が漏れ出てしまう。壁の厚い物件を選んだとはいえ限度がある。悠理は声を押し殺そうとした。

「好きなだけ啼いていいよ」
「あぁっ、それ……っ、待って」
「待てない」

 内藤は悠理が着ているものをすべて取り去った。ぷるぷると震えるペニスに生暖かい舌が触れた。そのままねっとりとした舌遣いで舐められて、悠理は「あぁん」と嬌声を上げた。
 陰嚢を口に含まれたあと、会陰を舌でなぞられる。悠理の後孔は愛液で潤みきっていた。内藤の指先がアヌスの縁に触れた。

「ナカ、ほぐしてもいい?」
「……んっ」

 悠理は仰向けになった。
 内藤が悠理の膝の裏に手を添えて、大きく足を開かせた。秘所が丸見えになる。悠理は両手で顔を覆った。

「悠理くんのここ、すごく綺麗だよ」
「やっ、……感想とかいいから!」
「指、挿れるよ」

 つぷぷっと濡れた音を立てながら、内藤の指先が悠理のナカに分け入った。閉じ合わさっていた道が拓かれていく。悠理のナカが収縮して、内藤の指を食い締める。
 内藤が指でとある一点を擦った。その瞬間、悠理は顔を隠す余裕すらなくして、がくがくと腰を震わせた。

──今の感覚、なんだ……?

「悠理くん、ここ好き?」
「あっ、やだ……っ。へんになる……っ」
「もっと乱れたきみが見たいな」
「やぁっ!」

 いいところを集中的に責められて、悠理のまなじりに涙が溜まった。汗でぐちゃぐちゃになった前髪に、内藤が優しくキスをする。内藤はアヌスをほぐしながら、悠理の太ももに口づけた。赤いキスマークが花びらのように白い肌に散っていく。
 快感に連動して、悠理の白い肢体が跳ねる。ピンク色のペニスがぷるんと揺れた。

「そろそろイきたいよね?」

 内藤が悠理のペニスを上下に扱いた。巧みな手つきによって、悠理はあっけなく陥落した。先端から放たれた白濁が、内藤の腹を汚す。悠理は恥ずかしさが極まったため、泣き出してしまった。そんな悠理を内藤が優しく抱きしめる。

「ごめんなさい! 俺……っ、汚しちゃった」
「気にしないで。俺たちは夫夫ふうふになったんだから」
「俺はぐちゃぐちゃなのに、内藤さんは余裕あってずるい」
「そう見える? きみを抱き潰さないようにセーブしてるんだけどな」
「もっとエッチなことしたいの?」
「うん」

 内藤は悠理に口づけた。
 すっかり猛々しい姿になったペニスが悠理の太ももに当たる。初めて感じる男の肉棒の硬さに悠理は戦慄した。

「こんなおっきいの、入んないよっ」
「悠理くんのここ、とろとろになってるから大丈夫だよ」
「あぁっ! あぁんっ!」

 内藤の切っ先が悠理の入り口にぴとりとあてがわれた。カウパーを帯びた陰茎は赤黒く光っている。優しい内藤と見るからに獰猛そうな逸物が結びつかなくて、悠理はひくんと肩を震わせた。

「悠理くん、行くよ」
「……ん、ぁ……っ、あぁーっ!」

 悠理の狭い肉筒に、内藤の雄が嵌め込まれた。熱い肉塊がもたらす圧迫感よりも、ついに内藤と体を合わせたという達成感が上回る。悠理は内藤の肩に必死でしがみついた。

「動いてもいい?」
「うんっ……。あっ、あぁっ」
「悠理くんのナカ、吸い付いてくる……」

 ぐぽっぐぽっという水音を立てながら、内藤の剛棒が悠理の花筒を往復した。悠理のナカはじゅくりと蜜を垂らしては、愛しい男をねぶった。ピストン運動の合間に乳首をつままれる。内藤の指に突起をまさぐられるたび、悠理のナカは意志を持った生き物のように蠢いた。

「好き……。内藤さんが好き……っ」
「俺もきみが大好きだよ」

 内藤が律動を速めた。内藤の丸く張り出した亀頭が、悠理の悦点を擦り上げる。
 悠理は内藤の背中に爪を立てた。

「あぁんっ! おちんぽ、気持ちいいっ!」
「悠理くん、これ、好き?」
「うん……っ。好き……っ」
「じゃあ、いっぱいエッチして赤ちゃん作ろうね?」
「俺、内藤さんの赤ちゃん……欲しい」

 内藤の眉間に皺が寄る。放熱の瞬間が近いようだ。
 悠理は目を閉じて、内藤のしぶきを感じた。

「反則だよ、悠理くん。可愛すぎ」

 すっかり大人しくなったペニスを引き抜くと、内藤は悠理を抱きしめた。悠理は涙ぐんだ。

「俺……もう内藤さんのものなんだ……」
「もしかして嫌だった?」
「ううん。嬉しくて……。俺、やっと好きな人と一緒になれた」
「悠理くん……」

 それから、ふたりは身を寄せ合ってベッドに横たわった。

「内藤さん、寝る時は裸なの? 風邪引くぞ!」
「悠理くんを抱っこしてるから大丈夫」
「だーめ。ちゃんとルームウェア着ろよ」

 内藤は微笑むと、悠理が用意したルームウェアに袖を通した。

「あれ? これって悠理くんとお揃いだね」
「たっ、たまたまだ!」
「可愛い……。俺の奥さんは本当に可愛いなあ」

 悠理の華奢な体を内藤のたくましい腕が包み込む。

「おやすみ、悠理くん」
「……おやすみ」

 愛しい人のぬくもりに抱かれながら、悠理は眠りについた。
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