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飲み会
しおりを挟む「とにかく今日は頑張ったな!カンパーイ!」
「かんぱーい!」
「乾杯。」
「・・・・。」
ここは冒険者達が集まるジークデン酒場である。
一仕事した後に飲み会があるのは、日本でもこの世界でも一緒らしい。
(とはいえ最近は飲み会も特別な時だけになった・・・まあ、俺はそれすら誘われたことないけどね。)
最近は飲み会が無駄だという風潮なのでかなり限定的になった。
基本的には飲み会に誘うというのは、仲良くなりたいから誘う。
俺みたいな無能と仲良くなろうとする人間は、上司にも同僚にも誰もいない。
それどころか時間の無駄、そして仲良く思われる事自体・・・恥なのだ。
飲み会は苦手だったので良かったと思う反面・・・誘われないと、いかに自分は不要な人間なのかを思い知らされた。
なんか思い出すと泣けてきた。
「なんだ、泣いているのか?おいおい、久しぶりの迷宮だからビビったのか?そんなんじゃあ、これからやっていけないぞ!」
今までの会社での事を思い出して、不覚にも涙が出たのだが、バナザードに理解できないだろう。
「ああ、いえ、危険な迷宮に装備もなしで連れていかれたのがつらかったので・・・。」
「お!そうだったっけ・・・いや、あれはお前がどれだけ度胸がある奴か試したんだよ。それでビビる奴なら、田舎に帰って静かに生きろと言おうと思ってな・・・つまりは善意!すべては善意の行動だ。わからなかっただろうがなあ・・・。」
(いやいや、数合わせの荷物持ちに連れて行っただけだけで、絶対善意なんてないだろう・・・が思ったより悪意のない奴みたいだから、許して話にのってやるか。)
「そうだったんですね。誤解してました。」
「そうだよ、そうそう。あー、それよりもアリアさん綺麗だったよな!」
たしかに戦乙女アリアの美しさは異常だった。
そして強かった・・・現実にあんな人間は存在しないだろう。
「たしかにあの美しさは人間離れしてますね。女神でないと説明がつかないレベルです・・・。」
「女神かあ!よくわかってんじゃねえか!」
「ええ、まあ。」
「でも・・・言っておくがアリアさんに近づくなよ?わかってるよな?」
「もちろんです。俺なんかが近づいたら迷惑ですよ。」
「おお、そうか!それならいいんだ!」
そう言って俺の背中をバンバン叩く。
完全な酔っぱらいだ。
飲み会がこんな酔っぱらいばかりなら、今まで呼ばれなくて良かった気がしてきた。
「アルさん、先ほどぶりです。隣良いですか?」
突然肩を叩かれて驚いて振り返ると、話しかけてきたのは迷宮であったカナタだった。
「え、ああ、いいですよ。」
意外な人物から声をかけられて驚いたが、どの席に座ろうと自由だ。
断る理由はない。
了承を得て隣にカナタが座った途端、バナザードはそっぽを向いて他の仲間と雑談し始めた。
性格の不一致のせいか、苦手らしい。
そのおかげで酔っぱらいから解放されたので良かったかもしれない。
「迷宮ではどうも。えーと・・・もう寺院には行ってきたんですか?」
「ええ、死体は無事寺院に送り届けて、後の事はアリアさんに任せました。パーティメンバーもあそこで飲んでますよ。」
喧噪やかましい酒場の指さした丸テーブルには、メリアドールを筆頭とするメンバーたちが楽しそうに飲んでいた。
「なるほど、それで回収した彼らは生き返ったんですか?」
「それはわかりません、後はアリアさんたちの問題ですから。冷たく見えるかもしれませんが、あまり多くの死に立ち会うと気分が沈んでしまいます。だから、必要以上に関わらないようにしているのです。」
(死か・・・俺ももしかしたら迷宮で死ぬ事もあるかも知れない。)
この世界の感覚は現実と変わりないが、やはり俺の知っているゲームに似すぎて現実感がない。
しかし、今回は戦いをただ眺めていただけだからそう思えるだけなのかもしれない。
「どうしました?」
「いえ、なんでも・・・そういえば迷宮内で騎士ブレイブと親しいかどうかの質問をしましたよね?」
「そうです。実はその事について聞きたくて話しかけました。」
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