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第15章 星のカーニバル
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【王宮のフィナンシェの部屋】
〈月に一度の検診の日。餡先生がフィナンシェの診察をする横で光の神が道具を並べている〉
「まあ、お友達が?そうですか…」
「敵方に付いてしまった感じですね」
「ザッハトルテ領で徴兵…わたくしも噂には聞いて居ましたけれど」
「おかしな事にならないと良いですけど…はい、次はアロマです」
〈フィナンシェはベッドに横になる〉
「さあ、男の子達は出ててね」
「にゃんでニャ?」
「良いから行くぞ、猫魔」
〈2人が部屋を出るとフィナンシェの身体に精油を塗りマッサージが始まる〉
「前に…仰っていたでしょう?「懐かしい感じがするのは魂が覚えているから」と」
「光君の事ですね?」
「ええ」
「例えば過去世で一緒だったのかも」
「光さんでは無く神様…」
「見てみます?」
「え?」
「フィナンシェ様の過去世」
「見る事が出来るのですか?」
〈微笑んで頷く餡先生をびっくりしてしばらく見つめるフィナンシェ。そしてゆっくりと頷く〉
「では、リラックスして静かに目を閉じてください」
〈餡先生に誘導され催眠に入って行くフィナンシェ〉
「その扉の中に入ってみてください…何が見えますか?」
「光…」
「光の中に入って行ってください…そこはどこですか?」
「ここは…神殿?」
「自分の足元を見てください…そして着ている服を見てください…」
「わたくし…」
「どんな服を着ていますか?」
「白い…わたくし…神…官?」
「そこに誰か居ますか?」
「救い主様」
〈そう言うと、フィナンシェの閉じられた瞳から一筋の涙がこぼれた〉
【ザッハトルテ領の練兵場】
「だらしないわね、本気でかかって来なさいよ」
「クソー!誰が女の隊長に従えるかよ!」
「口ばっかり一人前なんだから。そういう事はね、私に勝ってから言いなさい」
「野郎!」
「やっちまえ!」
〈小倉杏は剣を手に向かって来る兵士たちを次から次へと倒して行く〉
「そのぐらいにしておけ。公爵様がお呼びだ」
「え?私にいったい何の用?」
「良いから来い。それとな、この私は男爵だ。口の効き方に気をつけろ」
【司令官室】
「王宮の騎士どもは魔物退治に時間を取られているようです」
「もっともっと、どんどん魔物を召喚させろ」
「そろそろ警備の手薄な所を狙ってはいかがです?」
「うむ、そうだな。早速あの女を」
「失礼致します。連れて参りました」
「良いところに来た。女、名前は」
「(何よ「女」って)小倉杏です」
〈小倉杏は少し不機嫌に答えた〉
「出動だ」
「え?!」
「そう固くなるな。肩の力を抜け。フフフ、ハハハ、ハッハッハッハッハ」
「(悪い奴って、どうしてこうも良く笑うのかしら?)」
「何だ?その顔は。家族の命は保証してやったではないか」
「くっ(選択の余地は無いようね)」
【フィナンシェの部屋】
〈物思いながらバルコニーへ出るフィナンシェ〉
「あれは本当なのかしら?(あの時代わたくしは神官だったの?そしてあの方のそばに居た…救い主様…あれは光の神様…わたくしはあの方のそばに…あれは本当にわたくしの過去世なの?」
【北の川沿い】
〈雨の中作業をする市民達〉
「早く土嚢を積み上げねえと、どんどん雨が激しくなるぞ」
「魔物が出たりしねえよな?」
「魔物なんざ出たって、騎士隊が居るから心配ねえよ」
「騎士隊ったってよ、相手は魔物だぜ」
「ガタガタ言ってねえで、とっとと済ませちまうぞ」
〈その時一本の矢が飛んで来て土嚢に刺さる〉
「うわっ!」
「何だ?き、騎士様!」
〈また一本矢が飛んで来て騎士の乗った馬の鼻先を掠める〉
「ヒヒーン!」
〈馬が驚いて立ち上がる〉
「ボーガンか?何者だ?!」
「どこから射ている?!」
「姿を見せろ!卑怯者め!」
「山賊か何かかね?」
「怖えーよ」
【山の木陰】
「ちょっと貴方達!誰が攻撃して良いって言ったのよ?!」
「構わん!やれーーー!」
「おーーー!」
〈無数の矢が飛ぶ〉
「待ちなさいよ!民間人が居るのよ!」
「知った事か」
【近衛騎士隊の詰所】
「騎士隊長殿!大変です!川で作業をしている市民が襲撃されました!」
「襲撃だと?」
【王宮の門】
〈跳ね橋を渡り騎士達が出て行く〉
【山の木陰】
「女の指揮官には誰も従えんようだな。この私が指揮を執るぞ」
「民間人には手を出さないで!」
「誰に向かってものを言っている?私は男爵だと言ったはずだぞ」
「くっ、男爵…様。民間人が巻き添えになりませんように」
「フン、虫けらが如き平民などどうなっても良いわ」
【ヴェネツィーの街】
〈雨風が激しくなって来る。一人の市民が息を切らせて走って来る〉
「た、た、た、大変だ!川に土嚢を積みに行ってる奴らが襲われた!」
「何だって?!ウチのも行ってるんだよ!」
「魔物かい?」
「そ、それが、ゆ、弓矢だってよ。山賊か何からしい」
「山賊だあ?んなもん騎士様が付いてりゃ怖いもんか」
【ドリアン男爵家】
〈降り頻る雨の中馬車が帰って来る。玄関で公爵が馬車を降りて屋敷に入る。バタバタとそばに駆け寄る公爵夫人〉
「どうしてまたザッハトルテの軍隊なんかに…あたくしがフィナンシェ様に取り入ってもっと良い地位をって、言ってるじゃないの」
「ああ、うるさい!お前の仕事など待っていられるか!」
「あんな田舎町の軍に入って何が面白いのよ?せっかくフィナンシェ様とお近づきになれたのに、貴方と来たら全く」
〈夫人をうるさがっていた男爵がスッとそばによる〉
「フィナンシェ様は今度いつ城を出られる?」
「星のカーニバルの夜には御出座になるでしょうね」
「星のカーニバルか…フッ」
〈不気味に笑うドリアン男爵〉
【猫茶屋】
「ああ、鬱陶しいね全く。いつまで降り続くのかね?」
「星のカーニバルの日だけは降らないでほしいな」
「星のカーニバル?」
「うん。そうか、猫魔は初めてだよね。7月の7日だよ」
「カーニバルなら、また美味いもんが食えるニャ」
「夜だからね、皆んな酒呑んでドンチャン騒ぎさ」
「婆ちゃんも行くにょか?」
「ああ、年に一度だからね。だけど魔物が来やしないかね?」
「来たって近衛騎士隊が街には入れないよ。それに」
「俺が付いてるから大丈夫ニャ」
「そうかい?じゃあま、安心して楽しもうじゃないか」
【ヴェネツィーの街】
「雨が上がって良かったね」
「星が綺麗ね…ね、お兄ちゃん」
「ああ、綺麗だ」
「調子狂っちまうな。まあ、だいぶ慣れたけどよ」
「婆ちゃん、足が痛いならおんぶするニャ」
「ありがとよ。まだ歩けるよ」
「餡先生は?」
「さっきウチの屋台で呑んでたぜ」
「早っ」
「飲兵衛だからな。美人だけど、あれじゃ男は敵わねえや」
「くりきんとん。屋台時おばちゃんに任せっきりで良いの?」
「母ちゃんが良いってんだから、良いんだよ」
〈そんな会話をしながら歩く。いつの間にか猫魔の背中には安藤千代子お婆ちゃん〉
【栗金時の屋台】
「おばちゃん、もう一本ちょうだい」
「あいよ」
「このお肉美味しいわ」
「当ったり前さ。この時おばさんの自慢の料理だからね」
「お酒が進むわね」
「そろそろフィナンシェ様の馬車が来る頃じゃないかね?」
「もうそんな時間?」
「フィナンシェ様の御代になって色々と変わって住みやすくなったけどさ、魔物が現れたりしたんでお心を痛められてるんじゃないかね?餡ちゃん主治医だろ?どうなんだい?」
「ええ、それは仰っていたわね」
「ウチのバカ息子が、フィナンシェ様と友達だなんてぬかすもんだから「バカ野郎」って頭叩いてやったんだけどね、本当だったんでびっくりしたよ、全く」
「アハハ、それで団ちゃんの頭にコブが出来てたのね。おばちゃんやり過ぎよ」
「あんなもん、放っときゃ治るよ」
「一応手当てしといたわよ」
【城門】
〈東西南北の門を騎士達が警備している〉
「良いか!魔物どもを一匹たりとも街に入れるでないぞ!」
「はっ!」
【王宮】
〈物々しい騎士隊の警護で馬車に乗り込むフィナンシェ〉
【ヴェネツィーのメインストリート】
「フィナンシェ様の馬車が参られる!下がれ!これより一歩も前へ出てはならん!」
【栗金時の屋台】
「いよいよ来るね。昔は市民は土下座させられたもんだけどね、先代の王様、フィナンシェ様のお父上の代から、自由に見物出来るようになったんだよ」
「そうなのね。その前は私まだ生まれてなかったわ」
「良い時代になったもんだよ。あたしが子供の頃は馬車が見たくたって顔も上げられなかったからね」
「おーい!馬車が見えて来たぞー!」
「フィナンシェ様だ!」
「ワー!ワー!」
「フィナンシェ様!」
【フィナンシェの馬車】
「(今年も大変な人出だ事)」
「下がれ!前へ出るな」
「騎士隊長さん、ケガ人が出ないように気をつけてくださいね」
「はっ、女王陛下!」
「姫様、いえフィナンシェ様はまだティラミス伯爵の事をそう呼んで居られるのですな」
「だって、わたくしがこんなに小さな頃からずっとそばに居て守ってくれていたのよ。その頃からそう呼んでいたのですもの」
「あそこに居るのは猫魔殿」
「えっ?まあ本当」
「ホッホッホッ、嬉しそうなお顔をなさる」
「(あの方もいらっしゃるかしら?)」
「姫様。身を乗り出しては、はしたないですぞ」
「爺だって、いつまでもわたくしを子供扱いして」
「姫様、いえ女王陛下がお生まれになったその日からお世話させて頂いているのですから。あの日の事は決して忘れはしません。それはそれはもう、本当にお可愛いくて…ブツブツ…ブツブツ…」
「ハイハイ。また始まったわ」
「「はい」は一つです」
「あ…(満さんと一緒に)」
〈高鳴る胸に手を当てるフィナンシェ〉
【メインストリート】
「馬車が行っちまった」
「もう少ししたら、団ちゃんの屋台の方を通るんじゃない?」
「おお!流石満ちゃん。先回りしようぜ」
「ああん、くりきんとん。待って!私も行く!」
「婆ちゃんも行くニャ」
「重いだろ?猫魔。あたしは良いからここへ置いて行っといでよ」
「一緒に行くニャ」
「お兄ちゃん、行こ」
「ああ、行こう」
〈メインストリートを近衛騎士隊に護られながらフィナンシェを乗せた馬車が行く。突然どこからか矢が飛んで来る〉
「何者だ?!」
〈栗金時の屋台の前で行列が止まる〉
「侍従長様、窓をお閉めください〉
「どうしたの?」
「何者かがこの行列を狙って居ります」
「まあ」
〈飛んで来る弓矢を騎士隊長が剣で叩き落とす〉
「窓を!馬車の窓をお閉めください!」
「一本の矢が馬車に当たる」
「姫様!フィナンシェ様!」
「わたくしは大丈夫です」
「フィナンシェ様は爺がお守り致します(この老いぼれの命に変えても)」
「何が有ったんだろ?」
「襲撃ニャ」
「え?フィナンシェちゃんの命を狙ってるの?」
「恐らくな」
「怪我人は?光君行くわよ」
「了解」
〈餡先生と光の神が走る〉
「お兄ちゃん、気をつけて」
「ああ。猫魔、満を、皆んなを頼む」
「任せろニャ」
〈餡先生と光の神が行列の所へ行くと、騎士達が弓で怪我をしている〉
「くっ…か、身体が…痺れて…」
「う…動けん」
「危ないから、馬からおろして!安全な所で治療します」
「怪我人を頼みます。我々はフィナンシェ様をお守りするぞ!」
「はっ」
「神経毒かしら?厄介だわ」
「(この身を盾にしても、フィナンシェ様だけはお守りせねば。すまぬ、餡殿。部下を頼みます)」
〈フィナンシェの馬車を騎士達が囲んで護る。飛んで来る毒矢や火矢を剣で叩き落とす〉
「市民に怪我人は出ていないかしら?(あの方は?猫魔さんや皆んなは無事かしら?)」
「姫様、お顔を上げてはなりません」
〈月に一度の検診の日。餡先生がフィナンシェの診察をする横で光の神が道具を並べている〉
「まあ、お友達が?そうですか…」
「敵方に付いてしまった感じですね」
「ザッハトルテ領で徴兵…わたくしも噂には聞いて居ましたけれど」
「おかしな事にならないと良いですけど…はい、次はアロマです」
〈フィナンシェはベッドに横になる〉
「さあ、男の子達は出ててね」
「にゃんでニャ?」
「良いから行くぞ、猫魔」
〈2人が部屋を出るとフィナンシェの身体に精油を塗りマッサージが始まる〉
「前に…仰っていたでしょう?「懐かしい感じがするのは魂が覚えているから」と」
「光君の事ですね?」
「ええ」
「例えば過去世で一緒だったのかも」
「光さんでは無く神様…」
「見てみます?」
「え?」
「フィナンシェ様の過去世」
「見る事が出来るのですか?」
〈微笑んで頷く餡先生をびっくりしてしばらく見つめるフィナンシェ。そしてゆっくりと頷く〉
「では、リラックスして静かに目を閉じてください」
〈餡先生に誘導され催眠に入って行くフィナンシェ〉
「その扉の中に入ってみてください…何が見えますか?」
「光…」
「光の中に入って行ってください…そこはどこですか?」
「ここは…神殿?」
「自分の足元を見てください…そして着ている服を見てください…」
「わたくし…」
「どんな服を着ていますか?」
「白い…わたくし…神…官?」
「そこに誰か居ますか?」
「救い主様」
〈そう言うと、フィナンシェの閉じられた瞳から一筋の涙がこぼれた〉
【ザッハトルテ領の練兵場】
「だらしないわね、本気でかかって来なさいよ」
「クソー!誰が女の隊長に従えるかよ!」
「口ばっかり一人前なんだから。そういう事はね、私に勝ってから言いなさい」
「野郎!」
「やっちまえ!」
〈小倉杏は剣を手に向かって来る兵士たちを次から次へと倒して行く〉
「そのぐらいにしておけ。公爵様がお呼びだ」
「え?私にいったい何の用?」
「良いから来い。それとな、この私は男爵だ。口の効き方に気をつけろ」
【司令官室】
「王宮の騎士どもは魔物退治に時間を取られているようです」
「もっともっと、どんどん魔物を召喚させろ」
「そろそろ警備の手薄な所を狙ってはいかがです?」
「うむ、そうだな。早速あの女を」
「失礼致します。連れて参りました」
「良いところに来た。女、名前は」
「(何よ「女」って)小倉杏です」
〈小倉杏は少し不機嫌に答えた〉
「出動だ」
「え?!」
「そう固くなるな。肩の力を抜け。フフフ、ハハハ、ハッハッハッハッハ」
「(悪い奴って、どうしてこうも良く笑うのかしら?)」
「何だ?その顔は。家族の命は保証してやったではないか」
「くっ(選択の余地は無いようね)」
【フィナンシェの部屋】
〈物思いながらバルコニーへ出るフィナンシェ〉
「あれは本当なのかしら?(あの時代わたくしは神官だったの?そしてあの方のそばに居た…救い主様…あれは光の神様…わたくしはあの方のそばに…あれは本当にわたくしの過去世なの?」
【北の川沿い】
〈雨の中作業をする市民達〉
「早く土嚢を積み上げねえと、どんどん雨が激しくなるぞ」
「魔物が出たりしねえよな?」
「魔物なんざ出たって、騎士隊が居るから心配ねえよ」
「騎士隊ったってよ、相手は魔物だぜ」
「ガタガタ言ってねえで、とっとと済ませちまうぞ」
〈その時一本の矢が飛んで来て土嚢に刺さる〉
「うわっ!」
「何だ?き、騎士様!」
〈また一本矢が飛んで来て騎士の乗った馬の鼻先を掠める〉
「ヒヒーン!」
〈馬が驚いて立ち上がる〉
「ボーガンか?何者だ?!」
「どこから射ている?!」
「姿を見せろ!卑怯者め!」
「山賊か何かかね?」
「怖えーよ」
【山の木陰】
「ちょっと貴方達!誰が攻撃して良いって言ったのよ?!」
「構わん!やれーーー!」
「おーーー!」
〈無数の矢が飛ぶ〉
「待ちなさいよ!民間人が居るのよ!」
「知った事か」
【近衛騎士隊の詰所】
「騎士隊長殿!大変です!川で作業をしている市民が襲撃されました!」
「襲撃だと?」
【王宮の門】
〈跳ね橋を渡り騎士達が出て行く〉
【山の木陰】
「女の指揮官には誰も従えんようだな。この私が指揮を執るぞ」
「民間人には手を出さないで!」
「誰に向かってものを言っている?私は男爵だと言ったはずだぞ」
「くっ、男爵…様。民間人が巻き添えになりませんように」
「フン、虫けらが如き平民などどうなっても良いわ」
【ヴェネツィーの街】
〈雨風が激しくなって来る。一人の市民が息を切らせて走って来る〉
「た、た、た、大変だ!川に土嚢を積みに行ってる奴らが襲われた!」
「何だって?!ウチのも行ってるんだよ!」
「魔物かい?」
「そ、それが、ゆ、弓矢だってよ。山賊か何からしい」
「山賊だあ?んなもん騎士様が付いてりゃ怖いもんか」
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〈降り頻る雨の中馬車が帰って来る。玄関で公爵が馬車を降りて屋敷に入る。バタバタとそばに駆け寄る公爵夫人〉
「どうしてまたザッハトルテの軍隊なんかに…あたくしがフィナンシェ様に取り入ってもっと良い地位をって、言ってるじゃないの」
「ああ、うるさい!お前の仕事など待っていられるか!」
「あんな田舎町の軍に入って何が面白いのよ?せっかくフィナンシェ様とお近づきになれたのに、貴方と来たら全く」
〈夫人をうるさがっていた男爵がスッとそばによる〉
「フィナンシェ様は今度いつ城を出られる?」
「星のカーニバルの夜には御出座になるでしょうね」
「星のカーニバルか…フッ」
〈不気味に笑うドリアン男爵〉
【猫茶屋】
「ああ、鬱陶しいね全く。いつまで降り続くのかね?」
「星のカーニバルの日だけは降らないでほしいな」
「星のカーニバル?」
「うん。そうか、猫魔は初めてだよね。7月の7日だよ」
「カーニバルなら、また美味いもんが食えるニャ」
「夜だからね、皆んな酒呑んでドンチャン騒ぎさ」
「婆ちゃんも行くにょか?」
「ああ、年に一度だからね。だけど魔物が来やしないかね?」
「来たって近衛騎士隊が街には入れないよ。それに」
「俺が付いてるから大丈夫ニャ」
「そうかい?じゃあま、安心して楽しもうじゃないか」
【ヴェネツィーの街】
「雨が上がって良かったね」
「星が綺麗ね…ね、お兄ちゃん」
「ああ、綺麗だ」
「調子狂っちまうな。まあ、だいぶ慣れたけどよ」
「婆ちゃん、足が痛いならおんぶするニャ」
「ありがとよ。まだ歩けるよ」
「餡先生は?」
「さっきウチの屋台で呑んでたぜ」
「早っ」
「飲兵衛だからな。美人だけど、あれじゃ男は敵わねえや」
「くりきんとん。屋台時おばちゃんに任せっきりで良いの?」
「母ちゃんが良いってんだから、良いんだよ」
〈そんな会話をしながら歩く。いつの間にか猫魔の背中には安藤千代子お婆ちゃん〉
【栗金時の屋台】
「おばちゃん、もう一本ちょうだい」
「あいよ」
「このお肉美味しいわ」
「当ったり前さ。この時おばさんの自慢の料理だからね」
「お酒が進むわね」
「そろそろフィナンシェ様の馬車が来る頃じゃないかね?」
「もうそんな時間?」
「フィナンシェ様の御代になって色々と変わって住みやすくなったけどさ、魔物が現れたりしたんでお心を痛められてるんじゃないかね?餡ちゃん主治医だろ?どうなんだい?」
「ええ、それは仰っていたわね」
「ウチのバカ息子が、フィナンシェ様と友達だなんてぬかすもんだから「バカ野郎」って頭叩いてやったんだけどね、本当だったんでびっくりしたよ、全く」
「アハハ、それで団ちゃんの頭にコブが出来てたのね。おばちゃんやり過ぎよ」
「あんなもん、放っときゃ治るよ」
「一応手当てしといたわよ」
【城門】
〈東西南北の門を騎士達が警備している〉
「良いか!魔物どもを一匹たりとも街に入れるでないぞ!」
「はっ!」
【王宮】
〈物々しい騎士隊の警護で馬車に乗り込むフィナンシェ〉
【ヴェネツィーのメインストリート】
「フィナンシェ様の馬車が参られる!下がれ!これより一歩も前へ出てはならん!」
【栗金時の屋台】
「いよいよ来るね。昔は市民は土下座させられたもんだけどね、先代の王様、フィナンシェ様のお父上の代から、自由に見物出来るようになったんだよ」
「そうなのね。その前は私まだ生まれてなかったわ」
「良い時代になったもんだよ。あたしが子供の頃は馬車が見たくたって顔も上げられなかったからね」
「おーい!馬車が見えて来たぞー!」
「フィナンシェ様だ!」
「ワー!ワー!」
「フィナンシェ様!」
【フィナンシェの馬車】
「(今年も大変な人出だ事)」
「下がれ!前へ出るな」
「騎士隊長さん、ケガ人が出ないように気をつけてくださいね」
「はっ、女王陛下!」
「姫様、いえフィナンシェ様はまだティラミス伯爵の事をそう呼んで居られるのですな」
「だって、わたくしがこんなに小さな頃からずっとそばに居て守ってくれていたのよ。その頃からそう呼んでいたのですもの」
「あそこに居るのは猫魔殿」
「えっ?まあ本当」
「ホッホッホッ、嬉しそうなお顔をなさる」
「(あの方もいらっしゃるかしら?)」
「姫様。身を乗り出しては、はしたないですぞ」
「爺だって、いつまでもわたくしを子供扱いして」
「姫様、いえ女王陛下がお生まれになったその日からお世話させて頂いているのですから。あの日の事は決して忘れはしません。それはそれはもう、本当にお可愛いくて…ブツブツ…ブツブツ…」
「ハイハイ。また始まったわ」
「「はい」は一つです」
「あ…(満さんと一緒に)」
〈高鳴る胸に手を当てるフィナンシェ〉
【メインストリート】
「馬車が行っちまった」
「もう少ししたら、団ちゃんの屋台の方を通るんじゃない?」
「おお!流石満ちゃん。先回りしようぜ」
「ああん、くりきんとん。待って!私も行く!」
「婆ちゃんも行くニャ」
「重いだろ?猫魔。あたしは良いからここへ置いて行っといでよ」
「一緒に行くニャ」
「お兄ちゃん、行こ」
「ああ、行こう」
〈メインストリートを近衛騎士隊に護られながらフィナンシェを乗せた馬車が行く。突然どこからか矢が飛んで来る〉
「何者だ?!」
〈栗金時の屋台の前で行列が止まる〉
「侍従長様、窓をお閉めください〉
「どうしたの?」
「何者かがこの行列を狙って居ります」
「まあ」
〈飛んで来る弓矢を騎士隊長が剣で叩き落とす〉
「窓を!馬車の窓をお閉めください!」
「一本の矢が馬車に当たる」
「姫様!フィナンシェ様!」
「わたくしは大丈夫です」
「フィナンシェ様は爺がお守り致します(この老いぼれの命に変えても)」
「何が有ったんだろ?」
「襲撃ニャ」
「え?フィナンシェちゃんの命を狙ってるの?」
「恐らくな」
「怪我人は?光君行くわよ」
「了解」
〈餡先生と光の神が走る〉
「お兄ちゃん、気をつけて」
「ああ。猫魔、満を、皆んなを頼む」
「任せろニャ」
〈餡先生と光の神が行列の所へ行くと、騎士達が弓で怪我をしている〉
「くっ…か、身体が…痺れて…」
「う…動けん」
「危ないから、馬からおろして!安全な所で治療します」
「怪我人を頼みます。我々はフィナンシェ様をお守りするぞ!」
「はっ」
「神経毒かしら?厄介だわ」
「(この身を盾にしても、フィナンシェ様だけはお守りせねば。すまぬ、餡殿。部下を頼みます)」
〈フィナンシェの馬車を騎士達が囲んで護る。飛んで来る毒矢や火矢を剣で叩き落とす〉
「市民に怪我人は出ていないかしら?(あの方は?猫魔さんや皆んなは無事かしら?)」
「姫様、お顔を上げてはなりません」
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独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
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「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」
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「かしこまりました」
――正直、本当に辞めたかったので。
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すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。
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ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。
さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。
噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。
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