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第43話 アルベルティーナvsベアトリス

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「次も1対1の決闘だ」

エリアスは宣言した。

「俺達になんの得があるんだ?」

俺は言った。実際そうだろう?

イェスタ一人いれば、対勇者パーティには楽勝だ。

なのに、何故、1対1に持ち込まれなければならない?

「得は無いかもしれんが、それでいいのか? 俺が何をしても?」

なんてこった。暗にエリアスはアリシアとベアトリスのことを・・・

「わ、わかった」

俺は仕方なく応じた。

「バカな、なぜ受けるのだ?」

アルベルティーナは不思議そうに驚く。

「アルベルテーナ殿、エリアスの腐った根性とレオン殿の性格を考えてみられよ」

イエスタが諭す。

「あっ!」

アルベルティーナは気がついた様だ。エリアスがアリシアとベアトリスを人質にとった事に。

「先ずはそこの貴族の娘とベアトリスだ」

エリアスはアルベルティーナとベアトリスの対決を促した。

「わかった。私に任せておけ」

「お兄ちゃん。馬鹿なの? なんでこんな不利な戦いを」

「ベアトリス、黙って闘え」

エリアスはベアトリスを黙らせた。

ベアトリスは自分の命が盾にされて、この戦いを仕向けられていることに気がついていない。

馬鹿な妹だが、死んで欲しくはない。

「アルベルティーナ頼む」

「うむ、頑張ろう」

ウォーロック同士の戦いが始まった。

「あなた、お兄ちゃんとどういう関係?」

「私はレオンの主であり、またレオンの従者でもある。それだけのことだ」

「本当に?」

「あら~? キスは何回もしてましたよね?」

ちょっと、エリスさん。突然何てこと言い出すの?

「コラ待て、エリス! いきなり何て事を言う!」

「じゃ、嘘なんですか?」

エリスがアルベルティーナのことをジト目で睨んだ。

「いや、嘘ではないが...」

アルベルティーナ、こんな場面で真面目に答えるのか?

とぼけろよ......

「つまり、あなたはお兄ちゃんの女って訳?」

「違うって。ちょっと、エリス。なんで火に油注ぐ?」

「知りません。ご自分で責任とってくださいね」

「いいわね、貴女......」

ベアトリスが呟く。

「お主、そんなにレオンの事が好きなのに、何でレオンの敵になるのだ?」

「私のものにならない位なら......」

「それは間違っとるぞ」

「妹が兄を好きなのよ。間違えるに決まってるわ!」

ベアトリスは目に涙を溜めながら答えた。

「ベアトリス、降参せい」

「嫌よ、私はエリアス様の正義の為に戦う。もう私にはエリアス様しかいないの!」

「多分、後悔することになるぞ」

「別に構わないわ」

妹は悲しげに呟いた。

「では、こちらから行くぞ」

アルべルティーナにはベアトリスの事を少し教えていた。

妹が炎の魔法が得意な事、下賜された灼熱の杖で、炎の魔法への補正が極大な事、俺が、ベアトリスを炎の魔法で倒した事。

「お主を炎の魔法で倒す!」

アルベルティーナはとんでも無い事を言い出した。

「あ、貴女も私のことを馬鹿にする気? 私は『爆炎の魔女』よ! この国で最高レベルのウォーロックよ! ああ分かった。貴女、貴族だからでしょ? どうせ、貴族さまに実戦経験なんてほとんど無いんでしょ?」

「確かに経験値では負けるかもしれん。しかし、私は勝つであろう。お主の得意な炎の魔法でな」

「ふざけないで」

「ふざけてなどおらん。アーネの仇、取らせてもらうぞ」

「ア、アーネ......」

「どうせ覚えておらんのだろ?」

「覚えてるわよ。私が、私がこの手で......」

「そうだ、お主の幼馴染のアーネを殺したんだ! 我らの仲間だったのに。許せない!」

ベアトリスの瞳は潤んでいた。ベアトリス、アーネの事を後悔しているのか?

少しは昔のベアトリスに戻ったのか?

「五月蠅い! アーネが悪い奴になったのがいけないのよ」

「ベアトリス、いいから早く闘え」

エリアスが先を促した。

「はい、エリアス様」

『フレアアロー』

初手はアルベルティーナからだった。

ベアトリスはフレアアローを受け、それでも急進した。

「しまった!」

アルベルティーナは不意を突かれた格好だ。戦いの経験の差が表れてる。

『ひらり』

直後にベアトリスの放った灼熱の杖の一撃を紙一重のところでかわした。

身体能力の加護がタレントクラス4のアルベルティーナなら、これくらいは当然出来る。

だが、それがベアトリスの狙いだった。アルベルティーナの不意を突いて、『(爆炎輪舞バーストロンド)』

ベアトリスのオリジナル魔法『(爆炎輪舞バーストロンド)』が発動する。

爆炎輪舞バーストロンドはフレアアロー並の速さで発動した。

その威力は炎の最上位魔法『フレアキル』とほぼ同レベルだ。

「きゃーーーーーーー」

「ふっ」

ベアトリスが不敵に笑う。だが、

「熱っ、リザレクション!」

『パーン』

何かが弾ける音がした。

「何? あなた何をしたの?」

「簡単だ。お主の貧弱な魔法を私の魔法で吹き飛ばしたのだ。少し、火傷したから治療の意味もあったがな」

「そんな、防御魔法も無いのに、軽い火傷だけで済むなんて」

アルベルティーナはベアトリスを嬲るつもりだ。アーネの復讐のために。

「お主の方こそ、早く防御魔法を唱えた方が良いぞ」

「クッソー、詠唱させなければ」

ベアトリスは灼熱の杖でアルベルティーナに襲いかかった。

剣を使えば簡単に決着がつくはずだった。だが、アルベルティーナは剣を使わなかった。

一呼吸置くと、「炎よ揺らめく輝きをもつものよ、その深紅の滾りをもって我が道を阻む愚かなるものをその身の一片に至るまで焼き尽くせ」

アルベルティーナはベアトリスの斬撃を紙一重のところで避しながら、呪文を詠唱し続けた。

俺も驚いた。

「なんで、あんなに動いてるのに呪文詠唱できるんだ?」

「多分、料理しながら、おしゃべりするのと同じ感覚ですよ」

エリスが説明してくれた。そういえば、エリスも料理しながらお喋りしていた。俺には考えられなかった。喋りながら包丁を同時に使うなんて。

『フレアキル』

アルベルティーナの魔法が完成する。完全詠唱だ。

『コールドシールド!』

ベアトリスが咄嗟に炎への簡易詠唱の防御魔法を唱える。

俺の『エグゾーダス』の時に感じた恐怖があったのだろう。

灼熱の杖は炎の攻撃魔法を90%軽減する。普段なら防御魔法など使わないだろう。

実際、アルベルティーナの『フレアキル』はベアトリスが使う炎の魔法を遥かに凌ぐ、故に正しい判断だ。

爆炎がベアトリスを炎の魔法が包む。

俺は少し、安堵した。防御魔法は間に合った。アルベルティーナの『フレアキル』は、俺の『エグゾーダス』より弱い。だから、命に別状は無いはずだ、だが!

『レザレクション』

爆炎の中からベアトリスは飛び出した。

「な、そんな」

アルベルティーナは驚いた。

またもや経験値の差が表れたか?

ベアトリスは最高度の治癒魔法『リザレクション』をかけながら、防御魔法の中から飛び出した。

何とか相手の隙を突こうとするが、

『斬』

アルベルティーナの剣がベアトリスの右腕を跳ね飛ばした。

「お主の負けだ」

アルベルティーナは最後の最後に剣を使った。

ベアトリスは灼熱の杖ごと右手を斬られていた。

そのまま剣先はベアトリスの喉笛に向かった。

「何よ、その剣捌き? あなたウォーロックでしょ、魔法使いじゃなかったの?」

「私は虚数戦士、クラス4の剣士でもあるのだ」

「そ、そんな......」

「もういい、ベアトリス、使え無い奴め。アリシア、次はお前の番だ。エリスと闘え」

エリアスはベアトリスが到底アルベルティーナに勝てない事を察したらしい。

「わかったわ、エリアス。でも、一つ条件がある。もし私が勝ったら、勇者パーティを抜けさせてもらえないかしら?」

「ふん、好きにすればいい。そろそろお前にも飽きてきたところだ」

次はアリシアとエリスが闘うことになった。

エリスはまともに戦えるだろうか?

彼女には人を殺した経験が無いんだ。
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