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冒険者令嬢はリリースを希望します
一人でもおこ、パーティ組んでもおこ、ではどうしろと
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あの恥ずかしい出来事があった後、殿下はお兄様を伴って、三週間ほどの視察に向かわれた。途中、我が領地にも寄るらしい。私も行きたいと言ったのだけど、殿下陣営とお父様陣営の両方からダメだと言われてしまった。殿下はともかく、なぜにお父様までダメというのかしら。私がいうのもおかしいけど大分過保護というか心配性だっていうのに……。もしや、明日、槍でも降る??
まぁ、そういうわけで私は王都でお留守番なわけです。いや、待って、王都でお留守番っていうのもワケわかんないわね。
「……さて、今日は何しようかしら」
それはともかく、私はベッドの上で今日の予定を考える。昨日はルーサーさんのご厚意で鍛練場を使わせてもらったし、一昨日はカルドット様とエルンさんのところで和食を作ったり、異邦人の遺した本を読んだりしてた。さらにその前の日には王城の書庫で本をこれでもかってほど読んだ。
「よし、ギルドに行こう」
今日はギルドの日にしよう。薬草採取でも近場での魔物退治でもやろう。そうと決まれば、あとは行動あるのみ。
「アルセリア様、おはようございます」
「おはよう、シャルロさん、ココットさん」
ノックして部屋に入ってきたシャルロさんとココットさんに挨拶をして、本日の予定を伝える。化粧は薄めで髪は邪魔にならないようにお団子にしてもらう。男性用のシャツに長袖のジャケットを羽織って、パンツに膝下までの編み上げブーツを履いて、レッグホルスターにウエストポーチを装着。ホルスターには水の入った試験管数本にナイフ。ポーチには薬草などの採取に使う手袋やピンセットと応急処置のための包帯や消毒液を少し。
女と言えど露出は少なめに堅実にいく。レギンス短パンもありだけど、王都でそれはちょっとね。むしろ、お兄様にやるなよと言われてしまってるから。身軽なのは身軽だけどその分防御力が落ちてしまう。慣れてない土地ならなおのこと防御力の低下はイタい。
「アルセリア様、バッグはこちらでよろしかったですか?」
そう言ってココットさんが持ってきてくれたのは知人が作ってくれたショルダーバッグ。もう一つ、同じ知人が作ってくれたボンサックがあるけど、殿下にもお兄様にもシャルロさんたちにも使用が禁止されてしまったのよね。使い勝手いいのに。どうにも、持ったときの姿がこうなんともいえない感じになるらしいのよね。ショルダーもいいけど、ポシェットの方がと言われたときには何となく意味がわかった。確かにね、ポシェットの方が可愛いわよ、可愛いけど実用性とバッグに付与してあるものを考えると厳しいのよね。や、だって、ポシェットから魔獣の死体が出てくるとか絵面が酷いでしょ。だから、あえて大きめのバッグを持ちたいのだけど……。
それはともかくとして、行ってくるわねと私は町へ。執事のデイモンさんとかは護衛をとか言ってたけど、動きづらくもなるし、断っておいた。そもそも、お兄様より階級が下とはいえ冒険者ですし、私。
「お! ちょーど良かった。おじょー!」
門を出ようとしたらぶんぶんと黒腕を振る童顔の大男。え、なんでいるの?? 私は見送りに出てたデイモンさんたちが止めるのを聞かず、大男もといヒルへと駆け寄る。
「ヒル、なんで、王都に?」
「ん? クレム様におじょーのことを頼まれたから?」
おぅ、お父様、なんでヒルに頼んだし。彼、この国でも数少ないS級の冒険者よ? いや、そもそも、なんでかうちの領から離れてなかったけどさ。こてんと首を傾げるヒルはそういうことに気づいてないらしい。とりあえず、私はデイモンさんたちに行ってきますと挨拶をして、二人で歩きながら話をする。
「で、おじょー、今日の予定は?」
「えっと、ギルドで依頼を受ける予定よ」
「よし、じゃあ、久々にパーティ組もう! その方が守りやすし。あ、たぃ――メルチョルさんも誘おうぜ」
「いやー、メルはちょっと厳しいんじゃないかなー」
意気揚々とそんなことをいうヒルに私は苦笑いを浮かべる。だって、メルだよ、メル。無理だよ。王都にいるからと言ってもいるのライ君とセットだからね。うちの領ならまだよしも、ここでは自由には――。
「あ、アル姉、それにヒルじゃん」
ないはずなんだけどね!? 出会っちゃいましたよ。ギルドの前で。
「よぉ、ライ坊、元気だったか」
「元気だよ。それにしても、二人でどうしたの? 逢引?」
「ちょ、それやったら、クレム様にぶっ殺されるから」
ないないないないと手と首を振るヒル。ちょっと、そんな嫌がりようは酷いんじゃないかしら。そういえば、似たような嫌がり方を騎士団の人達もしてたわね。もしかして、お父様と殿下、同類。いや、そんな、ないわ。お父様の方がかっこいいもの。
「で、実のところは?」
「ギルドで依頼を受けようとね。あれだったら、メルとパーティ組もうってヒルが」
「ねぇ、ヒル、ボクは? メル呼ぶなら、ボクもだよね」
私の答えにライ君はクワッと目を見開き、ヒルに詰め寄る。若干、影がゆらゆらしてるから闇魔法も使いかねない。
「いや、ほら、メルチョルさんは冒険者だろ。で、ライ坊はこの国の王子だ、関われるとしたらメルチョルさんだろ。誘えるならライ坊だって誘ってるさ」
「でも、すでにメルはボクのお嫁さんだって周知されてるからボクと大差ないと思うけど?」
「それは、な、単独行動の有無だ。嫁さんだって言ってもメルチョルさんは冒険者だし」
凄いわ、S級冒険者が冷や汗かいてるわ。言葉が必死すぎる。
「すでに揃ってるんだ。これでパーティを組めばいい。言い合っていても仕方あるまい」
「だよねー。過ぎたことだもんね」
「クレム様には報告をあげておく」
「お願い、上げてあげないで」
メルってば、ホント、お父様至上主義ね。私生活のことは流石に報告してないらしいけど、それ以外のことは殆ど報告してるらしいわ。
というより、私の言葉を気にすることなく、メルはさっさとギルドカウンターに向かって、手続きをしてる。ちなみにライ君はたじろぐヒルを訝しげに目を細めて見ていた。そして、なんだかんだあったけれど、私にヒル、ライ君とメルの四人でパーティ登録が完了した。
「で、依頼はどうする?」
「私は元々一人で来るつもりだったから採集系を考えてたんだけど、このメンバーだったら討伐も問題なさそうね」
「ないだろうな。S級が二人も揃ってるし」
「てか、アル姉、一人で依頼受けるとか兄上とかベルにまた危ないことしてとかって怒られるよ?」
「いやいや、私、冒険者だし、そもそも領地にいる時だって一人で依頼受けてたし」
もう、失礼しちゃうわ。そう思いながら、言ったのだけど、ヒルとメルには生暖かい目で見られ、ライ君には領地と王都じゃ勝手が違うだけだよと苦笑いを浮かべられた。何故だ。だって、ベアントビーを狩りに行った時も一人だったわ。ちょいちょい馴染みの人達とはすれ違ったけど。そんな違いなら、まぁ、あるわね。
「ライはCだから、依頼はいい所Bだな」
「好きでC級なんじゃないよ。もうちょっと時間があればB級に上がれてたって」
むうと膨れるライ君の頬を無言で正面から片手で潰すメル。むぎゅって聞こえたけど、いいの、それ。確かにライ君、顔小さいし、メルは手大きいけれども。
「ま、王都だから討伐依頼、ランク低いのばっかだな。ついでだから、複数受けとく?」
依頼ボードをみて、ヒルは私たちにそういう。確かにA級以上の討伐依頼は入ってないし、うちの領地と比べたらレベルは低い。代わりに採集依頼はレベルが高い。でも、基本的に依頼は一人につき一つ、一パーティにつき一つ。けど、パーティに実績があれば複数の依頼を持つこともまた可能なのよね。とはいっても、独占、妨害させないために五つまでという制限があるのだけど。
「三つくらいでいいんじゃない? あんまり遠くに行くわけじゃないし、近場であれば」
「それだったら、ここら辺じゃないかな」
「丁度、三つだな」
「じゃ、それで行きやしょーか」
ピピピッと近場の依頼を三枚依頼ボードから剥がすとヒルはカウンターで手続きを行う。ヒルとかメルがいると依頼が即決過ぎるわ。いや、楽なんだけどね。
ちなみに依頼の内容はというと、全て討伐系で一つはホーンボアによる畑の被害が増えているため、畑に来るホーンボアを。も一つは森から来たのか頻繁に姿を見かけることが多くなったらしい暴食熊。最後に鹿薬。鹿薬は昔こそは角から肉、骨にかけての全てが薬になるからと言って乱獲され、数を減らしていたのだけど、今はほどほどに戻っているらしい。穏やかな気質という事もあって本来は薬の材料のため、増殖しすぎなどではないかぎり討伐対象になりうるものではないのだけど、今回はどうにも凶暴な種がいるとか。
「とりあえず、数日はこれらにかかりっきりね。あとで外泊許可とっておくわ」
「あ、おじょーはちゃんと屋敷に帰れよ」
「なんでよ。私よりもライ君ならわかるんだけど」
「いや、普通に考えて、アル姉はアウトだよ。ボクはほら、メルがいるし」
そもそも男三人の中に女の子一人入れてるって時点で兄上に怒られそうだしとライ君。私、まだ、殿下の求婚相手というだけで婚約者とかそういう立場じゃないんだけど。
「おじょー、屋敷に帰るのが嫌なんだったら依頼は一日で終わるやつにしようぜ」
「折角受けたんだから、やるわ。でも、三人をおいて家に帰るのは嫌」
「……おじょー」
「一人で野宿だってやったことあるもの」
絶対に譲ってなるつもりはないわ。むんっとない胸を反らして言ったものの、ヒルとライ君は困った顔。メルは表情が動いてないからわからない。
「夜は屋敷に戻れ。見張りは俺とライ、ヒルで持ち回りで行う。アルは貧乏でも貴族令嬢だ。それにクレム様に心配させたいのか?」
「……そんなわけないじゃない」
「だろう。ならば、俺たちの言葉を聞いてくれ」
むぅと口を尖らせるけど、内心は理解してる。わかってる。メルはずるい。私がお父様のこと大好きだって知ってるから、いざって時にそれを取り出すんだもの。メルはポンポンと大きな手で頭を撫で、日が落ちる前に依頼主に確認に行くぞと出発を促す。
「アル姉、メル好きになったらだめだよ」
「恋愛的にはならないわ。どちらかというと家族愛的な感じだし。小さい頃から色々教えてくれるお兄さんって感じだもの」
「……物語の世界ではそういうところから発展することもあるって」
「いやー、確かにね、ありうるけどね、私の場合あるとしたらお兄様になっちゃう」
お兄様、かっこいいんだものといえば、あーうん、そだねとライ君。なぜ、遠い目をするのかな? 君から振ってきた話じゃないか。前にメル、後ろにヒル、間に私とライ君であーだこーだと話をしながら依頼主の許へと向かった。
そういえば、討伐依頼って当たり外れあるんだけど、まぁ、階級は低いしどっちに転んでも大丈夫でしょう。
まぁ、そういうわけで私は王都でお留守番なわけです。いや、待って、王都でお留守番っていうのもワケわかんないわね。
「……さて、今日は何しようかしら」
それはともかく、私はベッドの上で今日の予定を考える。昨日はルーサーさんのご厚意で鍛練場を使わせてもらったし、一昨日はカルドット様とエルンさんのところで和食を作ったり、異邦人の遺した本を読んだりしてた。さらにその前の日には王城の書庫で本をこれでもかってほど読んだ。
「よし、ギルドに行こう」
今日はギルドの日にしよう。薬草採取でも近場での魔物退治でもやろう。そうと決まれば、あとは行動あるのみ。
「アルセリア様、おはようございます」
「おはよう、シャルロさん、ココットさん」
ノックして部屋に入ってきたシャルロさんとココットさんに挨拶をして、本日の予定を伝える。化粧は薄めで髪は邪魔にならないようにお団子にしてもらう。男性用のシャツに長袖のジャケットを羽織って、パンツに膝下までの編み上げブーツを履いて、レッグホルスターにウエストポーチを装着。ホルスターには水の入った試験管数本にナイフ。ポーチには薬草などの採取に使う手袋やピンセットと応急処置のための包帯や消毒液を少し。
女と言えど露出は少なめに堅実にいく。レギンス短パンもありだけど、王都でそれはちょっとね。むしろ、お兄様にやるなよと言われてしまってるから。身軽なのは身軽だけどその分防御力が落ちてしまう。慣れてない土地ならなおのこと防御力の低下はイタい。
「アルセリア様、バッグはこちらでよろしかったですか?」
そう言ってココットさんが持ってきてくれたのは知人が作ってくれたショルダーバッグ。もう一つ、同じ知人が作ってくれたボンサックがあるけど、殿下にもお兄様にもシャルロさんたちにも使用が禁止されてしまったのよね。使い勝手いいのに。どうにも、持ったときの姿がこうなんともいえない感じになるらしいのよね。ショルダーもいいけど、ポシェットの方がと言われたときには何となく意味がわかった。確かにね、ポシェットの方が可愛いわよ、可愛いけど実用性とバッグに付与してあるものを考えると厳しいのよね。や、だって、ポシェットから魔獣の死体が出てくるとか絵面が酷いでしょ。だから、あえて大きめのバッグを持ちたいのだけど……。
それはともかくとして、行ってくるわねと私は町へ。執事のデイモンさんとかは護衛をとか言ってたけど、動きづらくもなるし、断っておいた。そもそも、お兄様より階級が下とはいえ冒険者ですし、私。
「お! ちょーど良かった。おじょー!」
門を出ようとしたらぶんぶんと黒腕を振る童顔の大男。え、なんでいるの?? 私は見送りに出てたデイモンさんたちが止めるのを聞かず、大男もといヒルへと駆け寄る。
「ヒル、なんで、王都に?」
「ん? クレム様におじょーのことを頼まれたから?」
おぅ、お父様、なんでヒルに頼んだし。彼、この国でも数少ないS級の冒険者よ? いや、そもそも、なんでかうちの領から離れてなかったけどさ。こてんと首を傾げるヒルはそういうことに気づいてないらしい。とりあえず、私はデイモンさんたちに行ってきますと挨拶をして、二人で歩きながら話をする。
「で、おじょー、今日の予定は?」
「えっと、ギルドで依頼を受ける予定よ」
「よし、じゃあ、久々にパーティ組もう! その方が守りやすし。あ、たぃ――メルチョルさんも誘おうぜ」
「いやー、メルはちょっと厳しいんじゃないかなー」
意気揚々とそんなことをいうヒルに私は苦笑いを浮かべる。だって、メルだよ、メル。無理だよ。王都にいるからと言ってもいるのライ君とセットだからね。うちの領ならまだよしも、ここでは自由には――。
「あ、アル姉、それにヒルじゃん」
ないはずなんだけどね!? 出会っちゃいましたよ。ギルドの前で。
「よぉ、ライ坊、元気だったか」
「元気だよ。それにしても、二人でどうしたの? 逢引?」
「ちょ、それやったら、クレム様にぶっ殺されるから」
ないないないないと手と首を振るヒル。ちょっと、そんな嫌がりようは酷いんじゃないかしら。そういえば、似たような嫌がり方を騎士団の人達もしてたわね。もしかして、お父様と殿下、同類。いや、そんな、ないわ。お父様の方がかっこいいもの。
「で、実のところは?」
「ギルドで依頼を受けようとね。あれだったら、メルとパーティ組もうってヒルが」
「ねぇ、ヒル、ボクは? メル呼ぶなら、ボクもだよね」
私の答えにライ君はクワッと目を見開き、ヒルに詰め寄る。若干、影がゆらゆらしてるから闇魔法も使いかねない。
「いや、ほら、メルチョルさんは冒険者だろ。で、ライ坊はこの国の王子だ、関われるとしたらメルチョルさんだろ。誘えるならライ坊だって誘ってるさ」
「でも、すでにメルはボクのお嫁さんだって周知されてるからボクと大差ないと思うけど?」
「それは、な、単独行動の有無だ。嫁さんだって言ってもメルチョルさんは冒険者だし」
凄いわ、S級冒険者が冷や汗かいてるわ。言葉が必死すぎる。
「すでに揃ってるんだ。これでパーティを組めばいい。言い合っていても仕方あるまい」
「だよねー。過ぎたことだもんね」
「クレム様には報告をあげておく」
「お願い、上げてあげないで」
メルってば、ホント、お父様至上主義ね。私生活のことは流石に報告してないらしいけど、それ以外のことは殆ど報告してるらしいわ。
というより、私の言葉を気にすることなく、メルはさっさとギルドカウンターに向かって、手続きをしてる。ちなみにライ君はたじろぐヒルを訝しげに目を細めて見ていた。そして、なんだかんだあったけれど、私にヒル、ライ君とメルの四人でパーティ登録が完了した。
「で、依頼はどうする?」
「私は元々一人で来るつもりだったから採集系を考えてたんだけど、このメンバーだったら討伐も問題なさそうね」
「ないだろうな。S級が二人も揃ってるし」
「てか、アル姉、一人で依頼受けるとか兄上とかベルにまた危ないことしてとかって怒られるよ?」
「いやいや、私、冒険者だし、そもそも領地にいる時だって一人で依頼受けてたし」
もう、失礼しちゃうわ。そう思いながら、言ったのだけど、ヒルとメルには生暖かい目で見られ、ライ君には領地と王都じゃ勝手が違うだけだよと苦笑いを浮かべられた。何故だ。だって、ベアントビーを狩りに行った時も一人だったわ。ちょいちょい馴染みの人達とはすれ違ったけど。そんな違いなら、まぁ、あるわね。
「ライはCだから、依頼はいい所Bだな」
「好きでC級なんじゃないよ。もうちょっと時間があればB級に上がれてたって」
むうと膨れるライ君の頬を無言で正面から片手で潰すメル。むぎゅって聞こえたけど、いいの、それ。確かにライ君、顔小さいし、メルは手大きいけれども。
「ま、王都だから討伐依頼、ランク低いのばっかだな。ついでだから、複数受けとく?」
依頼ボードをみて、ヒルは私たちにそういう。確かにA級以上の討伐依頼は入ってないし、うちの領地と比べたらレベルは低い。代わりに採集依頼はレベルが高い。でも、基本的に依頼は一人につき一つ、一パーティにつき一つ。けど、パーティに実績があれば複数の依頼を持つこともまた可能なのよね。とはいっても、独占、妨害させないために五つまでという制限があるのだけど。
「三つくらいでいいんじゃない? あんまり遠くに行くわけじゃないし、近場であれば」
「それだったら、ここら辺じゃないかな」
「丁度、三つだな」
「じゃ、それで行きやしょーか」
ピピピッと近場の依頼を三枚依頼ボードから剥がすとヒルはカウンターで手続きを行う。ヒルとかメルがいると依頼が即決過ぎるわ。いや、楽なんだけどね。
ちなみに依頼の内容はというと、全て討伐系で一つはホーンボアによる畑の被害が増えているため、畑に来るホーンボアを。も一つは森から来たのか頻繁に姿を見かけることが多くなったらしい暴食熊。最後に鹿薬。鹿薬は昔こそは角から肉、骨にかけての全てが薬になるからと言って乱獲され、数を減らしていたのだけど、今はほどほどに戻っているらしい。穏やかな気質という事もあって本来は薬の材料のため、増殖しすぎなどではないかぎり討伐対象になりうるものではないのだけど、今回はどうにも凶暴な種がいるとか。
「とりあえず、数日はこれらにかかりっきりね。あとで外泊許可とっておくわ」
「あ、おじょーはちゃんと屋敷に帰れよ」
「なんでよ。私よりもライ君ならわかるんだけど」
「いや、普通に考えて、アル姉はアウトだよ。ボクはほら、メルがいるし」
そもそも男三人の中に女の子一人入れてるって時点で兄上に怒られそうだしとライ君。私、まだ、殿下の求婚相手というだけで婚約者とかそういう立場じゃないんだけど。
「おじょー、屋敷に帰るのが嫌なんだったら依頼は一日で終わるやつにしようぜ」
「折角受けたんだから、やるわ。でも、三人をおいて家に帰るのは嫌」
「……おじょー」
「一人で野宿だってやったことあるもの」
絶対に譲ってなるつもりはないわ。むんっとない胸を反らして言ったものの、ヒルとライ君は困った顔。メルは表情が動いてないからわからない。
「夜は屋敷に戻れ。見張りは俺とライ、ヒルで持ち回りで行う。アルは貧乏でも貴族令嬢だ。それにクレム様に心配させたいのか?」
「……そんなわけないじゃない」
「だろう。ならば、俺たちの言葉を聞いてくれ」
むぅと口を尖らせるけど、内心は理解してる。わかってる。メルはずるい。私がお父様のこと大好きだって知ってるから、いざって時にそれを取り出すんだもの。メルはポンポンと大きな手で頭を撫で、日が落ちる前に依頼主に確認に行くぞと出発を促す。
「アル姉、メル好きになったらだめだよ」
「恋愛的にはならないわ。どちらかというと家族愛的な感じだし。小さい頃から色々教えてくれるお兄さんって感じだもの」
「……物語の世界ではそういうところから発展することもあるって」
「いやー、確かにね、ありうるけどね、私の場合あるとしたらお兄様になっちゃう」
お兄様、かっこいいんだものといえば、あーうん、そだねとライ君。なぜ、遠い目をするのかな? 君から振ってきた話じゃないか。前にメル、後ろにヒル、間に私とライ君であーだこーだと話をしながら依頼主の許へと向かった。
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