奇夜に結ぶ鬼

蓮華空

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 裸のまま冬の夜空を滑空させられた卯月は凍える体を縮ませて木の根本に踞った。

 暗い森の中で、金髪の赤い瞳が頭上から見下ろされる。

 金髪は卯月の顎を掴み、黒髪に噛み付かれた傷跡を確認した。

『ふうん……。傷跡はもうないのか……』

 何かを言ったようだが、卯月には分からない。
 
 寒さで歯をガチガチと震わせながら、卯月はその手を振り払った。

「私に触らないでっ!」

「そうはいかないよ。今から色々と確認させてもらうから」

 卯月は驚いた。金髪が流暢な日本語を話したからだ。話が通じない訳ではなかったのだ。

「確認って……何をするつもり? それよりも、寒くてもうダメ……。これじゃあ凍え死んじゃう……」

「安心しろ。お前が唯一の女だったら、僕らの100倍は生命力が強い。何をしたって滅ぼせないのが我ら一族の女だ。寒さ程度で死ぬ事はない」

 卯月は金髪の言っている意味が全然分からなかった。一族の女? 何をしたって滅ぼせない? 日本語を話すようになっても、意味が分からなければ、気持ち悪さと恐怖しかない。

「言っても分からないようだな。それでは今からどうしたってお前が死なない事を確認してやる。もし借りに死んだとしたら、まあ、こっちの勘違いだ。普通に死ぬだけだから安心しろ」

 そんな事を言われて安心出来る人間なんてこの世にいる訳がない。それを本気で言っているこの男の感覚はそれこそ人間ではない。

 金髪は震える卯月の両手を取り、片手で宙に浮かせた。そして、もう一方の手を卯月の胸に当てると、そのまま胸の中に突き刺した。

 卯月の口から血泡が溢れた。肺を貫かれ心臓を鷲掴みにされる。苦痛で意識を失いかけたが、口から吐き出した血を舐めとる金髪の舌の感触で意識が戻される。苦痛と共に何故か快楽が卯月の体を襲った。

「あ……ぐっ……」

 と、苦鳴なのか、喘ぎなのか分からない声が溢れる。

「ふっはは……。体の中を鷲掴みにして傷つけられているのに、官能に震えるのか!そして、この甘味な血の味わい。やっぱり、お前が結鬼唯一の女なんだな。ふっふっふっ!お前を見つけたのは一族の中で僕が一番乗りか? お前、自覚なかったもんな。これはいい。女の血は何よりも生命力に溢れている。古傷がどんどん癒えるようだ……。このまま内蔵を食いつくしたらもっと力になるかな?」

 そう言って金髪は卯月の手を離し、肋骨に両手をかけた。どうやら一気に引き裂くつもりらしい。卯月は戦慄した。もう駄目だと思ったその時──。地中から突然、巨大な複数の刺が突き出し、金髪、卯月もろとも串刺しになった。そして、次の瞬間、頭上から巨大な烏のような影が見えたか思うと、煌めく銀色の刃で金髪の首を切り落とした。
 
 虚空に浮いた白い月を、朱色に染める勢いで血が吹き出す。それに続いて金髪の首が天に舞った。

 卯月の意識は既に痛みと恐怖のせいで乖離した状態だった。そして、茫洋としたその瞳に映ったのは、幼い頃から兄のように慣れ親しんだ四鵬の姿だった。

「卯月!卯月!!大丈夫か?!しっかりしろ!まだ意識はあるか?!」

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