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お金のためなら人を殺すか、あるいは復讐のためか 1 (19話から数年後の話)
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眠りの魔法を使うホルダー・アッシュは昔、ある街で不治の病に侵された病人に眠りの魔法を掛ける仕事をしていた。
そこでアッシュはローマンという病人の面倒を看ていたが、突如2人の元に現れた大聖女カンパネラによりローマンの病気は完全に治療されてしまったのだった。
アッシュは看るべき病人がいなくなったことに絶望し、その街から出て行った。
それから数年後、アッシュはローマンがどうしているのかが気になり街に戻っていた。
そこでアッシュが知ったのは、ローマンがすでに死んでいたということだった。
「うぅ。」
頭が重い。昨日、お酒を飲みすぎたりしていただろうか。
目を覚ましたグリースは、ぼんやりとした頭でそんなことを考えて身じろぎをしようとした。
だが、
「!?」
グリースは身じろぎをすることができなかった。そして、グリースは自身の体が紐でイスに縛り付けられていることに気づいた。
「な、なんだよこれっ!?」
グリースは大きな声を上げて、目を見開き周囲を見渡した。
そこはグリースやグリースの仲間が使っている建物の一室だった。
自分の居る場所が自分のよく知っている場所ということに気づき、グリースの心は少しだけ落ち着いた。
(いったい誰がこんなことをしたんだ?敵対してる組の奴でも攻めてきたのか?)
グリースの腕は後ろ手に縛られていて、自分の力で紐を外すことはできそうにない。
周囲に注意を払いながら、グリースは自分の体を縛り上げた犯人について考えを巡らした。
グリースやグリースの仲間たちは、一言でいえば暴力団に属する人間だった。
彼らは建物を拠点にして、日常的に盗みや暴力を働いていた。
そして、街には彼ら以外にも暴力団のグループがあり、ときどきグループ間で争いが生じていたのだった。
このため、グリースが初めに考えたのは他の組が攻めてきたのだろうということだった。
(だが、それにしては様子が変だ。静かすぎる。)
グリースは現状に違和感を覚えていた。
グリースはイスに縛られていたが、周囲を見る限り部屋は荒らされた様子が一切なく、さらに、部屋の中にはグリースを除いて誰もいないようだった。
敵が攻めてきたなら部屋が荒らされているはずだし、わざわざ自分を縛りつけるなら見張りの1人くらいはいてもおかしくないはずだった。
(なんで誰もいないんだ?敵の奴らが来てるならもっと騒がしいはずだし、仲間も何人かは建物の中にいるはずだ。他の階にいるのか?だとしたらなんで俺だけこの部屋で縛られているんだ?)
「おい!だれかいないのか!」
グリースは大きい声を出して人を呼んだ。
普通に考えれば、建物のどこかにグリースを縛り上げた犯人がいるはずであり、そんな中で大声を出すのは危険だと思えるが、グリースは細かいことを考えない人間だった。
グリースの居る場所が、自分達が使用している建物だったこともグリースが心に余裕をもってしまう原因だったのかもしれない。
そして、
コツ、コツ、コツ
乾いた足音がグリースのいる部屋の外から聞こえてきた。
その足音はゆっくりと部屋に近づいてきているようだった。
グリースは緊張で息をのんだ。
(誰かが近づいてくる。いったい誰が来るんだ。足音からすると1人か?)
グリースは聞こえてくる足音が1つだと感じた。また、暴力団の関係者にしては足音が静かだと感じた。
暴力団の人間だったら、もっと他人を威圧するように大きな足音を立てる奴が多い。
コツ、コツ
足音が止まる、足音の主はすでに部屋の前まで来ているようだった。
そして間髪を入れず、
ガチャリ
グリースの座る位置から向かいにある扉が開けられた。
部屋に入ってきたのは1人の男だった。男はゆっくりとグリースの目の前まで近づいてきた。
「目が覚めたみたいだね。」
「なんだ!誰だお前は!」
怒鳴り声を出しながら、グリースは男を手早く観察した。
グリースが男に対して感じたのは、陰気な奴で、大した力を持っているようには見えないということだった。
(こいつは知ってる顔じゃない。暴力団の関係者じゃないのか?)
グリースは短い時間で男が誰なのか、知っている人間か記憶を辿ったが、グリースの記憶にこんな人間と会った記憶はなかった。
グリースから怒鳴り声を浴びた男は、それを気にした様子もなく口を開いた。
「俺の名前はアッシュだよ。お前はグリースだね。」
「お前がやったのか、ふざけたことしてるんじゃねぇぞ!さっさとこの紐を外せ!」
「いいよ。質問に答えたらね。」
怒り声を出すグリースに対して、犯人のアッシュは淡々とした口調で応える。
それがさらにグリースを苛立たせた。
「なめたこと言ってるなよ。ここは俺たちのホームなんだよ。殺されたくなかったら今すぐ紐を外せっていってるんだよ!」
グリースはアッシュに掴みかかる勢いで騒いだ。だが、
「……」
騒ぐグリースの様子を、アッシュは何も言わずに見ていた。
その表情にはなんの感情も見られなかった。
(こいつは何か変だ。)
グリースはアッシュの顔を睨みつけながら、言いようのない違和感を覚えていた。
(わざわざ俺を襲ったということは、こいつは俺達と関係があるに違いない。だが、俺達に復讐をしようとしているなら、もう少し表情に敵意か恐怖心があってもおかしくない気がする。こいつからはどちらの感情もあまり見られない。)
「質問に答えてほしいだけだし、あんまり拷問とかしたくないんだよね。」
アッシュは淡々とした口調でグリースに言った。
「拷問だとぉ。お前、俺に何かしたらぶっ殺すぞ。」
「そう。そしたら質問に答えてくれる?」
「ふざけるなよ。お前、俺達に脅しが通じるとでも思ってるのかよ。」
グリースがこの時考えていたことは、アッシュの言うことを無視して時間をどれだけ稼ぐかということだった。
(仲間が戻ってくれば、こんな奴はどうとでもなるんだ。)
グリースは仲間が来るまで時間を稼ぎ、アッシュを倒すことを考えていた。
対するアッシュはグリースに質問するのをやめて、再びグリースのことを静かに見ていた。
「あん?」
グリースは突然、アッシュの姿が二重になったように感じた。
(なんだ?めまいがする?)
そう感じたときには、すでにグリースは意識を失っていた。
そして、アッシュは意識を失ったグリースを冷たく見下ろし、ポケットからナイフを取り出してグリースに近づいていったのだった。
「あぁ?」
しばらくして、グリースは意識を取り戻した。
(何が起きたんだ?)
ぼんやりとした頭でグリースは正面を見る。
正面にいたのは先ほど出会った男、アッシュだった。いつのまにかイスに座ってこちらを見ている。
「お、お前。何しやがった!」
一瞬で目が覚めたグリースは、慌ててアッシュに文句を言った。
アッシュはいつのまにか片手にナイフを握っており、それがグリースの警戒心を高めさせた。
そして、アッシュは何も言わないまま、ゆっくりと指につまんだ何かをグリースに見せるようにした。
その何かはソーセージみたいな形で、その物体からはポタリポタリと赤い液体が垂れ落ちていた。
それは明らかに人間の指だった。
そしてグリースは、後ろ手に縛られていて見えない自分の指に強い痛みがあることに気づいた。
「お、おお前。それ、そそそれは何なんだよっ!!!」
グリースはすでにそれが何なのか気づいていたが、それでも騒がざるを得なかった。
「これは君の指だよ。」
アッシュが淡々とした口調で言う。
アッシュがつまんでいたグリースの指を離すと、グリースの指はボトリと床に落ちた。
グリースは床に落ちた自分の指を凝視した。先ほどまで自分の一部だった指が、今ではただのモノのようになっていた。
床に落ちた指の断面が自分に傷つけられているということを想像して、グリースが感じる痛みはさらに強くなっていた。
自分が本格的に拷問を受けつつあることを認識して、グリースは恐怖を感じていた。
そして、顔を引きつらせるグリースに対してアッシュの冷たい声が掛けられた。
「もう1本切ろうか?」
グリースは痛みと恐怖で絶叫した。
そこでアッシュはローマンという病人の面倒を看ていたが、突如2人の元に現れた大聖女カンパネラによりローマンの病気は完全に治療されてしまったのだった。
アッシュは看るべき病人がいなくなったことに絶望し、その街から出て行った。
それから数年後、アッシュはローマンがどうしているのかが気になり街に戻っていた。
そこでアッシュが知ったのは、ローマンがすでに死んでいたということだった。
「うぅ。」
頭が重い。昨日、お酒を飲みすぎたりしていただろうか。
目を覚ましたグリースは、ぼんやりとした頭でそんなことを考えて身じろぎをしようとした。
だが、
「!?」
グリースは身じろぎをすることができなかった。そして、グリースは自身の体が紐でイスに縛り付けられていることに気づいた。
「な、なんだよこれっ!?」
グリースは大きな声を上げて、目を見開き周囲を見渡した。
そこはグリースやグリースの仲間が使っている建物の一室だった。
自分の居る場所が自分のよく知っている場所ということに気づき、グリースの心は少しだけ落ち着いた。
(いったい誰がこんなことをしたんだ?敵対してる組の奴でも攻めてきたのか?)
グリースの腕は後ろ手に縛られていて、自分の力で紐を外すことはできそうにない。
周囲に注意を払いながら、グリースは自分の体を縛り上げた犯人について考えを巡らした。
グリースやグリースの仲間たちは、一言でいえば暴力団に属する人間だった。
彼らは建物を拠点にして、日常的に盗みや暴力を働いていた。
そして、街には彼ら以外にも暴力団のグループがあり、ときどきグループ間で争いが生じていたのだった。
このため、グリースが初めに考えたのは他の組が攻めてきたのだろうということだった。
(だが、それにしては様子が変だ。静かすぎる。)
グリースは現状に違和感を覚えていた。
グリースはイスに縛られていたが、周囲を見る限り部屋は荒らされた様子が一切なく、さらに、部屋の中にはグリースを除いて誰もいないようだった。
敵が攻めてきたなら部屋が荒らされているはずだし、わざわざ自分を縛りつけるなら見張りの1人くらいはいてもおかしくないはずだった。
(なんで誰もいないんだ?敵の奴らが来てるならもっと騒がしいはずだし、仲間も何人かは建物の中にいるはずだ。他の階にいるのか?だとしたらなんで俺だけこの部屋で縛られているんだ?)
「おい!だれかいないのか!」
グリースは大きい声を出して人を呼んだ。
普通に考えれば、建物のどこかにグリースを縛り上げた犯人がいるはずであり、そんな中で大声を出すのは危険だと思えるが、グリースは細かいことを考えない人間だった。
グリースの居る場所が、自分達が使用している建物だったこともグリースが心に余裕をもってしまう原因だったのかもしれない。
そして、
コツ、コツ、コツ
乾いた足音がグリースのいる部屋の外から聞こえてきた。
その足音はゆっくりと部屋に近づいてきているようだった。
グリースは緊張で息をのんだ。
(誰かが近づいてくる。いったい誰が来るんだ。足音からすると1人か?)
グリースは聞こえてくる足音が1つだと感じた。また、暴力団の関係者にしては足音が静かだと感じた。
暴力団の人間だったら、もっと他人を威圧するように大きな足音を立てる奴が多い。
コツ、コツ
足音が止まる、足音の主はすでに部屋の前まで来ているようだった。
そして間髪を入れず、
ガチャリ
グリースの座る位置から向かいにある扉が開けられた。
部屋に入ってきたのは1人の男だった。男はゆっくりとグリースの目の前まで近づいてきた。
「目が覚めたみたいだね。」
「なんだ!誰だお前は!」
怒鳴り声を出しながら、グリースは男を手早く観察した。
グリースが男に対して感じたのは、陰気な奴で、大した力を持っているようには見えないということだった。
(こいつは知ってる顔じゃない。暴力団の関係者じゃないのか?)
グリースは短い時間で男が誰なのか、知っている人間か記憶を辿ったが、グリースの記憶にこんな人間と会った記憶はなかった。
グリースから怒鳴り声を浴びた男は、それを気にした様子もなく口を開いた。
「俺の名前はアッシュだよ。お前はグリースだね。」
「お前がやったのか、ふざけたことしてるんじゃねぇぞ!さっさとこの紐を外せ!」
「いいよ。質問に答えたらね。」
怒り声を出すグリースに対して、犯人のアッシュは淡々とした口調で応える。
それがさらにグリースを苛立たせた。
「なめたこと言ってるなよ。ここは俺たちのホームなんだよ。殺されたくなかったら今すぐ紐を外せっていってるんだよ!」
グリースはアッシュに掴みかかる勢いで騒いだ。だが、
「……」
騒ぐグリースの様子を、アッシュは何も言わずに見ていた。
その表情にはなんの感情も見られなかった。
(こいつは何か変だ。)
グリースはアッシュの顔を睨みつけながら、言いようのない違和感を覚えていた。
(わざわざ俺を襲ったということは、こいつは俺達と関係があるに違いない。だが、俺達に復讐をしようとしているなら、もう少し表情に敵意か恐怖心があってもおかしくない気がする。こいつからはどちらの感情もあまり見られない。)
「質問に答えてほしいだけだし、あんまり拷問とかしたくないんだよね。」
アッシュは淡々とした口調でグリースに言った。
「拷問だとぉ。お前、俺に何かしたらぶっ殺すぞ。」
「そう。そしたら質問に答えてくれる?」
「ふざけるなよ。お前、俺達に脅しが通じるとでも思ってるのかよ。」
グリースがこの時考えていたことは、アッシュの言うことを無視して時間をどれだけ稼ぐかということだった。
(仲間が戻ってくれば、こんな奴はどうとでもなるんだ。)
グリースは仲間が来るまで時間を稼ぎ、アッシュを倒すことを考えていた。
対するアッシュはグリースに質問するのをやめて、再びグリースのことを静かに見ていた。
「あん?」
グリースは突然、アッシュの姿が二重になったように感じた。
(なんだ?めまいがする?)
そう感じたときには、すでにグリースは意識を失っていた。
そして、アッシュは意識を失ったグリースを冷たく見下ろし、ポケットからナイフを取り出してグリースに近づいていったのだった。
「あぁ?」
しばらくして、グリースは意識を取り戻した。
(何が起きたんだ?)
ぼんやりとした頭でグリースは正面を見る。
正面にいたのは先ほど出会った男、アッシュだった。いつのまにかイスに座ってこちらを見ている。
「お、お前。何しやがった!」
一瞬で目が覚めたグリースは、慌ててアッシュに文句を言った。
アッシュはいつのまにか片手にナイフを握っており、それがグリースの警戒心を高めさせた。
そして、アッシュは何も言わないまま、ゆっくりと指につまんだ何かをグリースに見せるようにした。
その何かはソーセージみたいな形で、その物体からはポタリポタリと赤い液体が垂れ落ちていた。
それは明らかに人間の指だった。
そしてグリースは、後ろ手に縛られていて見えない自分の指に強い痛みがあることに気づいた。
「お、おお前。それ、そそそれは何なんだよっ!!!」
グリースはすでにそれが何なのか気づいていたが、それでも騒がざるを得なかった。
「これは君の指だよ。」
アッシュが淡々とした口調で言う。
アッシュがつまんでいたグリースの指を離すと、グリースの指はボトリと床に落ちた。
グリースは床に落ちた自分の指を凝視した。先ほどまで自分の一部だった指が、今ではただのモノのようになっていた。
床に落ちた指の断面が自分に傷つけられているということを想像して、グリースが感じる痛みはさらに強くなっていた。
自分が本格的に拷問を受けつつあることを認識して、グリースは恐怖を感じていた。
そして、顔を引きつらせるグリースに対してアッシュの冷たい声が掛けられた。
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