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おまけその一とゆるふわな設定
おまけ(その一)
クズールもといクズとめでたく離縁手続きを済ませた私は、そのまま愛するケインと婚約を結びすぐに結婚式の準備に取り掛かる。
だが幸せで最高の結婚式を迎えるため、同時進行で先代侯爵夫婦の更なる罪を明らかにするための裁判を先に行ってもらうことを陛下にお願いした。
事前にオバンさん、これから私の義両親となる人たちに事前に話を通していたため、お義母様も他の証人となる者を探してくれていたのだ。流石に過去の記憶の為、殺害を指示した際お義母様以外にいた人物を思い出すことができず、強要した瞬間を目撃したという人を証人として召喚できなかったらしい。
それでも出産時に立ち会った者は当時、双子で生まれた事実と子を目にした二人の様子を証言し、侯爵家を離れた時のお義母様の様子を知っている者は、ケインを抱え暫くの間隠れるように過ごしたお義母様の様子を証言した。
どれも殺害を指示したという物的証拠ではなかったが、実際に戸籍に登録している者はクズのみだったために、貴族殺しを企て、未遂ではあるが実行したという話が認められ、法廷で有罪を言い渡された。
そしてケインの計らいで、二人には死刑ではなく重罪を犯した平民達が多数収容されている監獄で一生を過ごすこととなった。
果たして貴族の二人がそんな_殺人等の重罪を犯した平民たちがいる_監獄内で生きていられるかと思うが、それでもすぐに命を奪わないだけありがたいと思ってもらいたい。
こうして二人には人間社会の法に則って裁かれることになったのだ。
私によくしてくれた二人だけれど、でも罪悪感という感情はない。ケインが言った通り罪は償わなければならないからだ。
ちなみにクズに関しては離婚手続きをもって平民落ちした。
結婚してからすぐに精霊書によって契約していた為、私に関する処分については、精霊がすでに手を下したことで新たな罰は見送ったが、ケインに対する数々の悪行行為に対してはしっかりと償ってもらった。
『ケインはどうしたい?』と問うとケインは悩んだ様子で『今後俺達の前に現れないで欲しい』と願った。
まぁ確かにクズの顔など金輪際見たくもない気持ちはわかる。
ケインが侯爵家にきて、今までどのような扱いをされてきたのか話を聞いたときには怒りで思わず涙が出たほどだった。絶対にクズには報いを受けさせる、そう誓った。
それは侯爵領を維持するために頑張っていた精霊たちも同じ気持ちだった。
そして初めてケインが願いを口にしたのか、精霊たちはそれはもう張り切った。
クズの髪の次に自慢だった顔を変えたのだ。
目は豆粒に小さくなり、高かった鼻は低く、唇も蜂にでも刺されたかのように腫れ上がったのだ。
【これでもう寄り付く人もいないよね!】
【だね!……でも、まだ不安だなぁ】
【不安…不安…確かにそうだねぇ。こうなったら生殖機能もとっちゃうか!】
【いいねそれ!こいつみたいに不能な人間がもう現れないように徹底的にやろう!】
【うん!そしたらこいつも、こいつの二世三世も生まれないし、他のダメダメな人間たちも絶対にケインの前に現れないよね!僕たちって天才だね!】
【だね!】
キャッキャッと騒ぐ精霊たちはケインの願いをどう解釈したのかわからないが、それでもとても楽しそうに見える。
『い、いいのだろうか。少し過剰ではないか…?』
そう不安になるケインに私は言った。
『これぐらいは当然よ。貴方は優しすぎる。それに領地の民も、あの者の顔を見ることがなければそれでいい。としか願わなかったの。だから皆の為にもこれぐらいしなきゃ私が納得しないわ』
そういった私にケインは『そうか…俺が罪悪感を感じる理由はないんだな』と、自分に語りかけるように呟く。
精霊たちが張り切ったお陰で、クズが精霊の力に怯え私達の前だけじゃなくディオダ侯爵領にも現れることはないだろう。
そしてクズに関わって人生を台無しにする者も、クズの血を継ぎその性質を受け継ぐ可能性のある者も、もう二度と現れない。
何故って?クズから子孫を残す機能を奪ったからよ。
そして見事に解決し終えた後、私はケインとの結婚式を挙げるべくお父様と弟を招待。
案の定二度目の婚姻にお父様と弟は驚いた表情を見せながらも駆けつけてくれた。
ちなみに陛下に話を聞いたところ、あの日のパーティーにはお父様には招待状を送らなかったそうだ。
どうりで見かけなかったのねと思いながら話を聞くと、陛下曰く「殆ど領地から出てこないのは有名な話だからな」ということらしい。
それで招待状すら送らないのもどうかと思うが、お父様はそういう人だと陛下だけでなく周りからも認識されているようで、お父様が陛下に嫌われている、と誤解する人はいなかった。
それもそれでどうかと思うが。
「招待状を貰ったため来たが、これはどういうことなのだ?」
「どういうこともなにも、クズとは離縁したのです」
お父様の問いに私が返すと、すかさずケインが「クズールは爵位を取り上げられ平民となりました」とフォローする。
あ、そうか。クズではなくてクズールだったわね。
結構な間、内心でクズ呼ばわりしていたために口から出るのもクズになっていたことに気付く。
「離縁…?」
「姉さんはそれで大丈夫なの?」
お父様が首を傾げ、そして弟であるライル・ウェルアネスが尋ねたため、私はしっかりと大きく頷いた。
ちなみにライルは私の三歳下の弟だ。
クズのような傍若無人な性格とは真逆の、とてもいい子に育ってくれたことが姉としてとても嬉しく、そして自慢である。
更に言うとライルには婚約者が決まっており、その相手もライルにお似合いなとても可愛くて、性格も思わず「きゃわわぁ~~!」と悶えてしまう感じの令嬢だ。
勿論口に出していったことはない。可愛い弟の婚約者に阿呆な印象を抱かれたくないし、貴族としての心構えは持っている。
「ええ。私はケインと結婚出来てとても幸せなの」
そう答えた私にお父様は目を見開いて、とても驚いた表情をする。
寧ろあのクズと離婚せずに一緒のままだったら不幸一直線だ。
どうして私は離婚を視野にいれていなかったのだろうと不思議に思うが、まだケインへの愛が育ってなかった事を思い出す。
「…あの者がお前の運命の相手ではなかったのか…」
呟くようにいったお父様の言葉は、誰も言葉を発していない時だった為に皆の耳に届いたようだ。
この場にいる侯爵家で働くメイド達が手を止める。
ちなみにここは結婚式が行われるまでの控室として利用している部屋だ。
時間になれば私とケインの結婚式が行われる。
お父様はどうやらクズが私の運命の相手、のような発言をしていたが、私はその言葉が聞き捨てならなかった。
一体どういうことなのかと問い詰めると次のように語る。
「…妻が亡くなる前に言ったんだ。このディオダ侯爵家にお前を幸せにする運命の相手がいる、と」
「お母様が?」
私は首を傾げ、思わず隣に座るケインを見上げた。
初めて聞く内容ということもそうだったが、何故私の運命の相手がディオダ侯爵家にいるとお母様が思ったのかがわからなかったのだ。
「妻は精霊が見える者だったんだ」
「え…」
初耳だった。
といってもお母様は私が三歳の時に亡くなってしまったため、お母様に対する記憶はあまりない。
それに精霊が見えるということを公言する人もいないため、知らなくても当たり前のことだった。
「お母様は、精霊と話が出来たのですか?」
私の問いにお父様が首を振る。
「いや、ただ見えるだけだ。
だが息を引き取る直前、お前を生んだ時一度だけ声が聞こえたと言っていた。
そして“ディオダ侯爵家に運命の相手がいる”と妻に精霊が伝えたそうだ」
「それっきり精霊の声は聞こえることがなかったようだが…」と続ける父。
運命の相手。その言葉に私は精霊に目を向けた。
精霊たちは「てへへ」と笑ったり、グッと親指を立てたりと様々な表現をしていた為、精霊たちは知っていたことだけがわかった。
「じゃあ、お父様は私の運命の相手がいるからディオダ侯爵家に送ったのですか?
領地の発展の為ではなく?」
その問いにお父様は首を傾げた。
どうやら本当にわかっていないようだ。
「何故領地の発展のためにお前の結婚を決めなければならないんだ。
ウェルアネス領はうまくいっている。政略結婚なんて不要だ。
そんなものよりも私はお前に幸せになってもらいたいと考え、妻の言葉通りお前を幸せにしてくれるものがいるというディオダ侯爵家に婚姻の申し出をしたんだ」
「で、でも荒れた領地に私を送りましたよね?苦労するとは思わなかったのですか?」
「それは考えた。
だがお前は精霊が見えていたのだろう?
ウェルアネス領が発展しているのはお前のお陰でもあると、随分前からわかっていた。
だが、だからこそ、精霊が見えるお前ならと、ディオダ侯爵家に出すことを決めたんだ」
「…え…」
「姉さんは隠しているつもりだったと思うけど、父上の悩みに関連するような書物を、まだ小さい子供が偶然手に持っていたりするわけないじゃないか。数回なら偶然で済ませられるかもしれないけど、頻繁にあったなら尚更疑うよね」
まぁ姉さんよりも年下の僕はなにも感じてなかったけど。とライルが話すとお父様はコクリと首を縦に頷いた。
そしてお父様の言葉に、本当に私は今まで勘違いをしてきたことを知る。
【ごめんねシエル~、ケインがシエルの運命の人だって伝えてしまったら、うまくいくこともいかなくなると思って~】
【勿論ケインにも教えてないよ!ただ僕たちの愛し子だから大切にね!とは伝えたけどね!】
【シエルシエル!愛し子には番となる運命の相手がいるんだよ!見分け方は簡単!僕たち精霊の声が聞こえること!】
【まぁうまくいかなかったら…と思ったら流石にそれはシエルにも言えなかったわけだけどね】
【シエル誤解しないでね!嫌がらせじゃないんだよ!前の前の前の…あれ?どれくらい前だっけ?】
【とにかく!前の愛し子に運命の相手の存在を伝えたら、いつか巡り合えるわ!だって運命なんだから!とかいって全然会わなかったの。だから下手な事言えなかったの!】
ごめんねと謝る精霊たち。
陛下の言う通りだった。
私はお父様に愛されていた。仕事に極振りしすぎて全く相手にされていなかった事実は変わらないけれど、それでもなんであんなクズ男を選んだんだと、仕事が出来る父親だけに人の目だけはあるものだと思っていたが、全然違っていたのだとそう思っていたけど、そうじゃなかった。
お父様はお母様の言葉を信じた。
そしてディオダ侯爵家には本当に運命の相手であるケインがいたのだ。
それでも少しだけ、私の運命の相手があのクズなわけがないことを察してもらいたいものだけど。
でも、今まで誤解してきただけに嬉しさが振りきれて涙が溢れてしまいそうだった。
「お、奥様涙はこらえてください。これから結婚式なんですから!」
「ええ、…わかってるわ。
幸せに涙は、合わないものね」
ララが慌てる中、サシャがハンカチを私に差し出す。
私はハンカチを受け取って、少しだけあふれ出そうになった涙をハンカチに吸い取らせた。
「お父様、ディオダ侯爵家に嫁いでから色々ありましたけど、これだけは言えます。
私今本当に幸せですわ!」
満面の笑みを見せた私に、お父様とライルが笑みを浮かべる。
横を見上げると「よかったね」と伝えているようなケインの優しい笑みがそこにあって、私は更に幸せを感じたのだった。
おまけ(その一)終
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ゆるふわ設定
シエル・ウェルアネス伯爵 → シェル・ディオダ侯爵夫人
クズ夫と結婚することになった主人公で精霊の愛し子。
だけどそんな環境でも卑下することもなく前向きに生きる子。
父から愛は貰えていない、だから政略結婚に使われたと内心どこかで思っていたけど、それが誤解だとわかり、ケインと結婚してこれからも幸せに過ごす。
ちなみに侯爵家の者には精霊が見えると話しているが、精霊書を用いて口外しない様にと約束させている。
年齢はあまり考えていないけど、女性の結婚適齢期が16~19。そして出産適齢期は18~24ぐらいかなと考えているので、20代という曖昧な設定です。
※王子殿下が成人(18)を迎えるというところで、女性が年上は嫌という考えを持っているためシエルは20代設定。でもここで愛娘を早々に他の男のもとへ行かせたくない父親の気持ちをわかっていただけたら…とも思います。
精霊
世界に繁栄をもたらす存在。
あまり詳しくは設定してないけど、人間社会に首を突っ込みすぎて愛し子から嫌われてしまうと、力を失うとか、そういう設定もいいよね。と思ってシエルにそれ以上はやっちゃだめと言わせました。
ライル・ウェルアネス
シエルの弟。 ウェルアネス伯爵の跡継ぎが必要な為に作ったキャラだから全く出てこないから、おまけに少しだけ登場させた。
クズール・ディオダ侯爵
クズ。シエルの最初の夫。
クズ過ぎて頭皮が丸見えになった。今後かつらを被ってもすぐに吹き飛ばされるために、ハゲのまま生きていくでしょう。
ちなみに罰が弱すぎじゃない?と思うかもしれないけども、契約書の全てを破っていないため精霊にとって軽めの罰。
でも王様の前で髪の毛なくなるのは十分辛いよね。
でもって最初の髪むしりは一体どこ(誰の前)で行われたのだろうと言う疑問は、ご想像にお任せします(笑)
シエルと結婚する前は金髪碧眼でイケメンチャラ男ナルシスト的な感じ。
学生時代はモテていたけど、遊び相手として人気があっただけで結婚相手となるとあほ過ぎて話にならない。
※シエルは田舎貴族の為学園には通ってない。
ちなみに精霊がディオダ侯爵領を守りたいのは、民のためという理由もあるが、シエルとケインのため。
何もしないクズの代わりに必死こいて出来ることを頑張っていた。
シエルに対しては契約内容が破ってないかと頭に血が登らない限り関わっていないため罰も弱いが、それ以外には酷いために精霊達のウップンも溜まってたと思う。
ケイン・リンカー → ケイン・ディオダ
ケイン侯爵家の次男でシエルの再婚相手。
シエルの運命の相手。
ケイン視点についてはおまけその二を用意したので是非読んでみてください!
オバン・リンカー
ディオダ侯爵家の元メイド長。
元々貴族出身だったが、ケインを連れて逃げた先で今の旦那(平民)と籍を入れたため、身分は平民となる。でも貴族教育は受けていたために、ケインに教養を教えていた。
旦那の名前は考えてない。ゆるふわ設定なので。
ララ/キャンリー/サシャ
シエル付きのメイドたち。キャンリーほぼ出てきてない。ごめんね…。
ララはドジっ子。サシャは真面目。キャンリーは…ごめんね。あまり考えてなかった。ゆるふわ設定なので。
コニス/ジャン/ヴァル
視察にいったときにお供した侯爵家の騎士たち。
それぞれの設定はあまり考えてないけど、コニスに関してだけは某巨人漫画の名前似ているあのキャラを想像しながら書いていたので、名前も似せました。
アグリー・ミーン
ハゲ…クズの恋人。平民。
クズは遊び相手を探していたところに、自分のドストライクの女の子を発見して関係を迫った。
アグリーも元が平民かつ少しだけ貧しい生活を送っていたために、贅沢になれると傲慢になってしまう。
シエルに追い出されたアグリーはどうしてるんだろう…。貴族の人に愛されてると思っていたところで、金になりそうなものは全部取り上げられ追い出されたので、これ以上の仕打ちは考えてません。
こんな感じのゆるふわ設定でした!
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
面白かったと感じましたらお気に入り登録、コメント等いただけると嬉しいです!
※ケイン視点のおまけも用意しました!投稿予約も設定済みです!
4/20 8:10 完結予定
クズールもといクズとめでたく離縁手続きを済ませた私は、そのまま愛するケインと婚約を結びすぐに結婚式の準備に取り掛かる。
だが幸せで最高の結婚式を迎えるため、同時進行で先代侯爵夫婦の更なる罪を明らかにするための裁判を先に行ってもらうことを陛下にお願いした。
事前にオバンさん、これから私の義両親となる人たちに事前に話を通していたため、お義母様も他の証人となる者を探してくれていたのだ。流石に過去の記憶の為、殺害を指示した際お義母様以外にいた人物を思い出すことができず、強要した瞬間を目撃したという人を証人として召喚できなかったらしい。
それでも出産時に立ち会った者は当時、双子で生まれた事実と子を目にした二人の様子を証言し、侯爵家を離れた時のお義母様の様子を知っている者は、ケインを抱え暫くの間隠れるように過ごしたお義母様の様子を証言した。
どれも殺害を指示したという物的証拠ではなかったが、実際に戸籍に登録している者はクズのみだったために、貴族殺しを企て、未遂ではあるが実行したという話が認められ、法廷で有罪を言い渡された。
そしてケインの計らいで、二人には死刑ではなく重罪を犯した平民達が多数収容されている監獄で一生を過ごすこととなった。
果たして貴族の二人がそんな_殺人等の重罪を犯した平民たちがいる_監獄内で生きていられるかと思うが、それでもすぐに命を奪わないだけありがたいと思ってもらいたい。
こうして二人には人間社会の法に則って裁かれることになったのだ。
私によくしてくれた二人だけれど、でも罪悪感という感情はない。ケインが言った通り罪は償わなければならないからだ。
ちなみにクズに関しては離婚手続きをもって平民落ちした。
結婚してからすぐに精霊書によって契約していた為、私に関する処分については、精霊がすでに手を下したことで新たな罰は見送ったが、ケインに対する数々の悪行行為に対してはしっかりと償ってもらった。
『ケインはどうしたい?』と問うとケインは悩んだ様子で『今後俺達の前に現れないで欲しい』と願った。
まぁ確かにクズの顔など金輪際見たくもない気持ちはわかる。
ケインが侯爵家にきて、今までどのような扱いをされてきたのか話を聞いたときには怒りで思わず涙が出たほどだった。絶対にクズには報いを受けさせる、そう誓った。
それは侯爵領を維持するために頑張っていた精霊たちも同じ気持ちだった。
そして初めてケインが願いを口にしたのか、精霊たちはそれはもう張り切った。
クズの髪の次に自慢だった顔を変えたのだ。
目は豆粒に小さくなり、高かった鼻は低く、唇も蜂にでも刺されたかのように腫れ上がったのだ。
【これでもう寄り付く人もいないよね!】
【だね!……でも、まだ不安だなぁ】
【不安…不安…確かにそうだねぇ。こうなったら生殖機能もとっちゃうか!】
【いいねそれ!こいつみたいに不能な人間がもう現れないように徹底的にやろう!】
【うん!そしたらこいつも、こいつの二世三世も生まれないし、他のダメダメな人間たちも絶対にケインの前に現れないよね!僕たちって天才だね!】
【だね!】
キャッキャッと騒ぐ精霊たちはケインの願いをどう解釈したのかわからないが、それでもとても楽しそうに見える。
『い、いいのだろうか。少し過剰ではないか…?』
そう不安になるケインに私は言った。
『これぐらいは当然よ。貴方は優しすぎる。それに領地の民も、あの者の顔を見ることがなければそれでいい。としか願わなかったの。だから皆の為にもこれぐらいしなきゃ私が納得しないわ』
そういった私にケインは『そうか…俺が罪悪感を感じる理由はないんだな』と、自分に語りかけるように呟く。
精霊たちが張り切ったお陰で、クズが精霊の力に怯え私達の前だけじゃなくディオダ侯爵領にも現れることはないだろう。
そしてクズに関わって人生を台無しにする者も、クズの血を継ぎその性質を受け継ぐ可能性のある者も、もう二度と現れない。
何故って?クズから子孫を残す機能を奪ったからよ。
そして見事に解決し終えた後、私はケインとの結婚式を挙げるべくお父様と弟を招待。
案の定二度目の婚姻にお父様と弟は驚いた表情を見せながらも駆けつけてくれた。
ちなみに陛下に話を聞いたところ、あの日のパーティーにはお父様には招待状を送らなかったそうだ。
どうりで見かけなかったのねと思いながら話を聞くと、陛下曰く「殆ど領地から出てこないのは有名な話だからな」ということらしい。
それで招待状すら送らないのもどうかと思うが、お父様はそういう人だと陛下だけでなく周りからも認識されているようで、お父様が陛下に嫌われている、と誤解する人はいなかった。
それもそれでどうかと思うが。
「招待状を貰ったため来たが、これはどういうことなのだ?」
「どういうこともなにも、クズとは離縁したのです」
お父様の問いに私が返すと、すかさずケインが「クズールは爵位を取り上げられ平民となりました」とフォローする。
あ、そうか。クズではなくてクズールだったわね。
結構な間、内心でクズ呼ばわりしていたために口から出るのもクズになっていたことに気付く。
「離縁…?」
「姉さんはそれで大丈夫なの?」
お父様が首を傾げ、そして弟であるライル・ウェルアネスが尋ねたため、私はしっかりと大きく頷いた。
ちなみにライルは私の三歳下の弟だ。
クズのような傍若無人な性格とは真逆の、とてもいい子に育ってくれたことが姉としてとても嬉しく、そして自慢である。
更に言うとライルには婚約者が決まっており、その相手もライルにお似合いなとても可愛くて、性格も思わず「きゃわわぁ~~!」と悶えてしまう感じの令嬢だ。
勿論口に出していったことはない。可愛い弟の婚約者に阿呆な印象を抱かれたくないし、貴族としての心構えは持っている。
「ええ。私はケインと結婚出来てとても幸せなの」
そう答えた私にお父様は目を見開いて、とても驚いた表情をする。
寧ろあのクズと離婚せずに一緒のままだったら不幸一直線だ。
どうして私は離婚を視野にいれていなかったのだろうと不思議に思うが、まだケインへの愛が育ってなかった事を思い出す。
「…あの者がお前の運命の相手ではなかったのか…」
呟くようにいったお父様の言葉は、誰も言葉を発していない時だった為に皆の耳に届いたようだ。
この場にいる侯爵家で働くメイド達が手を止める。
ちなみにここは結婚式が行われるまでの控室として利用している部屋だ。
時間になれば私とケインの結婚式が行われる。
お父様はどうやらクズが私の運命の相手、のような発言をしていたが、私はその言葉が聞き捨てならなかった。
一体どういうことなのかと問い詰めると次のように語る。
「…妻が亡くなる前に言ったんだ。このディオダ侯爵家にお前を幸せにする運命の相手がいる、と」
「お母様が?」
私は首を傾げ、思わず隣に座るケインを見上げた。
初めて聞く内容ということもそうだったが、何故私の運命の相手がディオダ侯爵家にいるとお母様が思ったのかがわからなかったのだ。
「妻は精霊が見える者だったんだ」
「え…」
初耳だった。
といってもお母様は私が三歳の時に亡くなってしまったため、お母様に対する記憶はあまりない。
それに精霊が見えるということを公言する人もいないため、知らなくても当たり前のことだった。
「お母様は、精霊と話が出来たのですか?」
私の問いにお父様が首を振る。
「いや、ただ見えるだけだ。
だが息を引き取る直前、お前を生んだ時一度だけ声が聞こえたと言っていた。
そして“ディオダ侯爵家に運命の相手がいる”と妻に精霊が伝えたそうだ」
「それっきり精霊の声は聞こえることがなかったようだが…」と続ける父。
運命の相手。その言葉に私は精霊に目を向けた。
精霊たちは「てへへ」と笑ったり、グッと親指を立てたりと様々な表現をしていた為、精霊たちは知っていたことだけがわかった。
「じゃあ、お父様は私の運命の相手がいるからディオダ侯爵家に送ったのですか?
領地の発展の為ではなく?」
その問いにお父様は首を傾げた。
どうやら本当にわかっていないようだ。
「何故領地の発展のためにお前の結婚を決めなければならないんだ。
ウェルアネス領はうまくいっている。政略結婚なんて不要だ。
そんなものよりも私はお前に幸せになってもらいたいと考え、妻の言葉通りお前を幸せにしてくれるものがいるというディオダ侯爵家に婚姻の申し出をしたんだ」
「で、でも荒れた領地に私を送りましたよね?苦労するとは思わなかったのですか?」
「それは考えた。
だがお前は精霊が見えていたのだろう?
ウェルアネス領が発展しているのはお前のお陰でもあると、随分前からわかっていた。
だが、だからこそ、精霊が見えるお前ならと、ディオダ侯爵家に出すことを決めたんだ」
「…え…」
「姉さんは隠しているつもりだったと思うけど、父上の悩みに関連するような書物を、まだ小さい子供が偶然手に持っていたりするわけないじゃないか。数回なら偶然で済ませられるかもしれないけど、頻繁にあったなら尚更疑うよね」
まぁ姉さんよりも年下の僕はなにも感じてなかったけど。とライルが話すとお父様はコクリと首を縦に頷いた。
そしてお父様の言葉に、本当に私は今まで勘違いをしてきたことを知る。
【ごめんねシエル~、ケインがシエルの運命の人だって伝えてしまったら、うまくいくこともいかなくなると思って~】
【勿論ケインにも教えてないよ!ただ僕たちの愛し子だから大切にね!とは伝えたけどね!】
【シエルシエル!愛し子には番となる運命の相手がいるんだよ!見分け方は簡単!僕たち精霊の声が聞こえること!】
【まぁうまくいかなかったら…と思ったら流石にそれはシエルにも言えなかったわけだけどね】
【シエル誤解しないでね!嫌がらせじゃないんだよ!前の前の前の…あれ?どれくらい前だっけ?】
【とにかく!前の愛し子に運命の相手の存在を伝えたら、いつか巡り合えるわ!だって運命なんだから!とかいって全然会わなかったの。だから下手な事言えなかったの!】
ごめんねと謝る精霊たち。
陛下の言う通りだった。
私はお父様に愛されていた。仕事に極振りしすぎて全く相手にされていなかった事実は変わらないけれど、それでもなんであんなクズ男を選んだんだと、仕事が出来る父親だけに人の目だけはあるものだと思っていたが、全然違っていたのだとそう思っていたけど、そうじゃなかった。
お父様はお母様の言葉を信じた。
そしてディオダ侯爵家には本当に運命の相手であるケインがいたのだ。
それでも少しだけ、私の運命の相手があのクズなわけがないことを察してもらいたいものだけど。
でも、今まで誤解してきただけに嬉しさが振りきれて涙が溢れてしまいそうだった。
「お、奥様涙はこらえてください。これから結婚式なんですから!」
「ええ、…わかってるわ。
幸せに涙は、合わないものね」
ララが慌てる中、サシャがハンカチを私に差し出す。
私はハンカチを受け取って、少しだけあふれ出そうになった涙をハンカチに吸い取らせた。
「お父様、ディオダ侯爵家に嫁いでから色々ありましたけど、これだけは言えます。
私今本当に幸せですわ!」
満面の笑みを見せた私に、お父様とライルが笑みを浮かべる。
横を見上げると「よかったね」と伝えているようなケインの優しい笑みがそこにあって、私は更に幸せを感じたのだった。
おまけ(その一)終
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ゆるふわ設定
シエル・ウェルアネス伯爵 → シェル・ディオダ侯爵夫人
クズ夫と結婚することになった主人公で精霊の愛し子。
だけどそんな環境でも卑下することもなく前向きに生きる子。
父から愛は貰えていない、だから政略結婚に使われたと内心どこかで思っていたけど、それが誤解だとわかり、ケインと結婚してこれからも幸せに過ごす。
ちなみに侯爵家の者には精霊が見えると話しているが、精霊書を用いて口外しない様にと約束させている。
年齢はあまり考えていないけど、女性の結婚適齢期が16~19。そして出産適齢期は18~24ぐらいかなと考えているので、20代という曖昧な設定です。
※王子殿下が成人(18)を迎えるというところで、女性が年上は嫌という考えを持っているためシエルは20代設定。でもここで愛娘を早々に他の男のもとへ行かせたくない父親の気持ちをわかっていただけたら…とも思います。
精霊
世界に繁栄をもたらす存在。
あまり詳しくは設定してないけど、人間社会に首を突っ込みすぎて愛し子から嫌われてしまうと、力を失うとか、そういう設定もいいよね。と思ってシエルにそれ以上はやっちゃだめと言わせました。
ライル・ウェルアネス
シエルの弟。 ウェルアネス伯爵の跡継ぎが必要な為に作ったキャラだから全く出てこないから、おまけに少しだけ登場させた。
クズール・ディオダ侯爵
クズ。シエルの最初の夫。
クズ過ぎて頭皮が丸見えになった。今後かつらを被ってもすぐに吹き飛ばされるために、ハゲのまま生きていくでしょう。
ちなみに罰が弱すぎじゃない?と思うかもしれないけども、契約書の全てを破っていないため精霊にとって軽めの罰。
でも王様の前で髪の毛なくなるのは十分辛いよね。
でもって最初の髪むしりは一体どこ(誰の前)で行われたのだろうと言う疑問は、ご想像にお任せします(笑)
シエルと結婚する前は金髪碧眼でイケメンチャラ男ナルシスト的な感じ。
学生時代はモテていたけど、遊び相手として人気があっただけで結婚相手となるとあほ過ぎて話にならない。
※シエルは田舎貴族の為学園には通ってない。
ちなみに精霊がディオダ侯爵領を守りたいのは、民のためという理由もあるが、シエルとケインのため。
何もしないクズの代わりに必死こいて出来ることを頑張っていた。
シエルに対しては契約内容が破ってないかと頭に血が登らない限り関わっていないため罰も弱いが、それ以外には酷いために精霊達のウップンも溜まってたと思う。
ケイン・リンカー → ケイン・ディオダ
ケイン侯爵家の次男でシエルの再婚相手。
シエルの運命の相手。
ケイン視点についてはおまけその二を用意したので是非読んでみてください!
オバン・リンカー
ディオダ侯爵家の元メイド長。
元々貴族出身だったが、ケインを連れて逃げた先で今の旦那(平民)と籍を入れたため、身分は平民となる。でも貴族教育は受けていたために、ケインに教養を教えていた。
旦那の名前は考えてない。ゆるふわ設定なので。
ララ/キャンリー/サシャ
シエル付きのメイドたち。キャンリーほぼ出てきてない。ごめんね…。
ララはドジっ子。サシャは真面目。キャンリーは…ごめんね。あまり考えてなかった。ゆるふわ設定なので。
コニス/ジャン/ヴァル
視察にいったときにお供した侯爵家の騎士たち。
それぞれの設定はあまり考えてないけど、コニスに関してだけは某巨人漫画の名前似ているあのキャラを想像しながら書いていたので、名前も似せました。
アグリー・ミーン
ハゲ…クズの恋人。平民。
クズは遊び相手を探していたところに、自分のドストライクの女の子を発見して関係を迫った。
アグリーも元が平民かつ少しだけ貧しい生活を送っていたために、贅沢になれると傲慢になってしまう。
シエルに追い出されたアグリーはどうしてるんだろう…。貴族の人に愛されてると思っていたところで、金になりそうなものは全部取り上げられ追い出されたので、これ以上の仕打ちは考えてません。
こんな感じのゆるふわ設定でした!
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
面白かったと感じましたらお気に入り登録、コメント等いただけると嬉しいです!
※ケイン視点のおまけも用意しました!投稿予約も設定済みです!
4/20 8:10 完結予定
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